子羊とオオカミ 102〜106

 

*実は結構いける口です。

 

その星では、まだジェダイは信用を勝ち得ていなかった。

オビ=ワンは困った顔で笑っている。

「もう一つ、質問をしていいかね?」

議会の代表者に尋ねられ、オビ=ワンは頷いた。

「ええ、なんでしょう?」

「ジェダイは酒を飲むのか?」

この星の風俗、習慣、宗教などを思い出したが、その時、オビ=ワンは、酒がタブーであったかどうかよく思い出せなかった。

だから、オビ=ワンはにっこりと微笑んでこちらから尋ねてみた。

「それは、お誘いですか? それとも……?」

 

 

*ああ馬鹿ばかしい。

 

友好関係を結んで間もない星に行くとよくあることだが、……いや、ないことが本来ジェダイとして当たり前のことだと常々オビ=ワンは思っているのだが、オビ=ワンの弟子は、よく仲間から決闘の誘いを受ける。

勿論アナキンは、正々堂々と決闘を受けてたとうとするのだが、その度、面倒ごとを避けたいオビ=ワンは元師匠としての立場でごり押しをして、自分で決闘を引き受けた。

礼儀正しいジェダイだと言われるオビ=ワンは、決闘の方法まで、誠実だ。

その朝、時間通りに決闘の場所に着いた相手は、どうやら時間よりずっと前に来ていたらしいオビ=ワンの付添い人から一通の手紙を受け取った。

誠実の人であるジェネラル・ケノービは、こう書く。

「お約束が守れず大変申し訳ありませんが、私、どうしても外せぬ仕事がありまして、時間通りにその場に行くことができません。しかし、それでは貴兄の腹が納まりませんでしょうから、どうぞ、是非、私を待たず、先に撃ってください」

 

 

*色仕掛けでも、ダメ!

 

オビ=ワンは言い出しにくそうに頬を染め、視線を床へと落とした。

しかし、意を決して、ぐっと顔を上げるとアナキンを見つめる。大きな目が潤んでいる。頬ばかりか耳まで赤い。

「……ア・アナキン。その、……この部屋と、お前の部屋の間にあるドア……なんだが、その……鍵がかからないらしくて」

アナキンは誠実に頷いた。

「どうぞ、ご心配なく。ドアの前に椅子を積み上げときます」

アナキンのスピーダーは、誰かさんのせいで、機体に酷い傷がついているのだ。

 

 

*ジェダイにはコネがあります。

 

意地の悪いホロネットのコメンテーターたちが言うほどには、アナキンは容姿ばかりの人間ではないとオビ=ワンは評価している。

しかし、こんな時、オビ=ワンは、これを弟子の性格の悪さだと判断すべきか、それとも、やはり馬鹿なのだと思うべきなのか、悩むのだ。

 

「アナキン。私のスピーダーの調子が悪いんだ」

「俺、忙しいんで、修理は無理です」

「じゃぁ、連絡を付けといてくれ」

「……誰に?」

確かにあの時、そのくらいのこと自分でして欲しいと、アナキンの顔には書いてあった。

だが、オビ=ワンは、師匠の権威でそれをねじ伏せた。わかりきったことを聞くアナキンを馬鹿にし、オビ=ワンは嫌味を言い捨て背を向けた。

「なんだったら、あそこの社長でも呼ぶか?」

 

オビ=ワンは、額を押さえ、吐き出したくなるため息を堪えていた。

確かに、オールスカイカンパニー社の社長は気さくな人物だ。

しかし。

「私でお役に立てるかどうか自信がないんですけれどね」

片手に工具箱を提げるスピーダーの生産銀河一位の社長を相手に、さすがのオビ=ワンも言葉が出ない。

 

 

*そうするつもりだったんです

 

アナキンは風呂に入っていた。すると、玄関のベルが鳴った。仕方なく入ったばかりの風呂から出たアナキンは、バスローブを纏い、玄関に急いだ。すると、レトロブームだとかで近頃また流行りだした電報が届けられた。しかし、その内容といえば、「面白いだろ?オビ=ワン」と、まことどうでもいいような、流行にかぶれたオビ=ワンからのものだった。苦笑をもらしたアナキンは、もう温くなりかけていたが風呂に浸かり、今度こそのんびりしようとした。すると、今度は、通信機がアナキンを呼び立てる。

「はい。なんなんです? オビ=ワン?」

「電報、届いたか?」

「……届きますよ。だって、あなた送ったんでしょう?」

濡れた髪のせいで、通信中にも何度か背中にぞくりと寒気が走り、大慌てでアナキンは風呂に戻った。しかし、風呂の湯は冷たくなっていた。その上、また、ドアのチャイムが鳴る。

木枯らしの吹く外へと向かってドアを開けたアナキンは、大きなくしゃみをした。

オビ=ワンはびっくり顔だ。

「なんだ。アナキン。風邪か? せっかく私が居なかったんだし、ゆっくりと、熱い風呂にでも入ってればよかったのに……」