子羊と狼
*黙れ!任務の邪魔をするな!
「未だかつて、私は人に心を許したことがありません」
オビ=ワンは、真剣な面持ちで、とある星の教戒師に告白をしていた。
後ろに立っていたアナキンは、ぼそりと言った。
「体は俺に許しまくってますけどね……」
*しっかりして、マスター。
若いジェダイマスターが、任務を終え、家に帰ると、そこはきちんと片付けられ、かわいらしい笑顔の弟子が「おかえりなさい。マスター」と飛び出してくる。これは、夢かと、ジェダイは思う。
夢ならばまだいい。多分、オビ=ワンは帰る家を間違えたのだ。
*どこにしけ込んでますか?
電波掲示板の伝言のコーナーにこのような文章がアップされた。
「マスターのローブを送り返してくださった方へ。そろそろ中身を返してください」
クワイ=ガンが行方不明になってから、まるっと一月たっていたが、ジェダイの誰もが全く心配していなかった。
*本気ですか?
今回オビ=ワンが捕らえたのは、もうよぼよぼの老人だった。
これで老人は勇猛果敢なる分離主義者の旗手なのだ。
だが老人は、自分の外見を利用し弱者を装った。
「ワシは、もう長くは生きられない。病気もあるし、歩くこともおぼつかない。こんな状態で牢獄になど入れられたとしても、決してあんたが思うだけ長く牢の中で生きていることなどできんよ……」
オビ=ワンが極親身な表情で老人に話しかけた。
「そうだなぁ。確かに、あなたを教育するために費やされる10年という年月は長すぎるかもしれない」
老人に笑いかけるオビ=ワンの表情は隙なく優しい。
「だかね。頑張ってみることはできるんじゃないかと思うんだよ。人生最後の挑戦だと思って、是非、頑張って欲しい」
*アレで厳しい。
悪戯が見つかり、ベアグランが、現在聖堂で特別講師をしているオビ=ワンに呼び出しを受けた。
「うわっ、どうしよう。きっとすごく怒られるよね」
「でも、マスター・ケノービって、優しそうだし」
ベアグランたちが頭を寄せ合いひそひそやっているところに、アナキンが通りかかった。ベアグランが呼び止める。
「ねぇ、アナキン。マスターケノービは、うちのマスターみたいに、『おはようございます。マスター。ご機嫌はいかがですか?』って、きちんと声をかけたら、許してくれるかな?」
「あっ、それは、無理無理」
アナキンは、ひらひらと手を振った。
「もう俺、それ試したことあるけど、『おかげさまでね。上々だよ』って、笑ったまんま、拳骨が振ってきた」