狼と子羊
*お望みのままに。
分離主義者の一人を前に、アナキンは、ライトセーバーを構えていた。
「ちっ、どうせ、ひと思いにやるつもりなんだろう。畜生、ジェダイのくせに!」
アナキンの強情な面構えに、分離主義者は震えを抑えることも出来ず怒鳴った。
少しも口を割ろうとしない分離主義者にアナキンが大きく振りかぶる。
すると、オビ=ワンがアナキンを止めた。
「なぁ、じゃぁ、アナキン。ジェダイらしく、誠実に、一寸刻みにじっくり時間をかけてやることにしようか。どうだい。それの方がいいんだろう?」
*学ぶ
オビ=ワンとアナキンが潜んだ下町の宿は酷いものだった。
シャワーをひねろうと水は出ず、そして、屋根には大穴が開いていた。
「雨水が落ちてくるんですが」
アナキンは、宿のオーナーに交渉した。
「はぁ? あんたたち、ワシに天からシャンパンでも降らせろっていうんかね。ワシャ神様じゃねぇんでな。そんな無理なこと相談されても困るんじゃが」
「ええっと、じゃぁ、水道から、水が出なくて」
「よし、それは、もう、10パーセント宿代に上乗せしてくれたら解決してやる」
「ええ、でも、結構」
オビ=ワンはアナキンを引き寄せ、叱責した。
「お前、あのごうつく爺の顔見て、想像がつかないのか?奴は、大穴の下に、バスタブを持ってくるだけだ」
人生とは、厳しい。そして、バスタブを穴の下に引きずり、本当にそれで入浴を済まそうとする師にアナキンは、ミミズ食いを責められるいわれはないような気がした。
*いいことするのって難しいね。
またもや師がアナキンのためにテンプルに呼び出されることになったその日、小さなアナキンは、本屋にて、師の機嫌を取るためのプレゼントを一生懸命探していた。しかし、アナキンは、迷っているようで、なかなか決まらない。
「プレゼントされる人は、どんな物語が好きなんだい?」
親切な本屋の主人が口を出した。しかし、アナキンは首を振る。
「お話しは嫌いかい? じゃぁ、偉い人の伝記なんかは、どうだろう?」
アナキンは困ったように眉を寄せる。
本屋の主人は、次々にディスクを出していく。
「そうかい。じゃぁ、何かの実用書? ああ、それとも、ユーモアのある面白い話なんてのもいいかもしれない」
それでも、アナキンは頷かなかった。
「あっ、坊やは、ジェダイか? じゃぁ、体術の本なんていうのは、いや、それはいらないか」
「うん……」
積み上げたディスクの山を前に、本屋の主人は、すこしばかりイラついた顔をした。
「じゃぁ、坊や。君のマスターとかいう人物が欲しがってるものは、何だね?」
「多分……素直でかわいい男の子」
思いつめたような深刻さで口にするアナキンの様子に、本屋の主人は顔色を変えた。
またもや、オビ=ワンに苦難が降りかかった。
*失敗
オビ=ワンは、とある人物の病室に入り込もうとしていた。
しかし、病室の前に座る女性が呼び止めた。
「面会謝絶なんです」
「ええ、分かっています。私は、彼の弟なのです」
オビ=ワンがドアに手をかけようとすると、すくっと、女性が立ち上がった。
「まぁ、始めまして。私、彼の母です。知りませんでしたわ。あの子より年上の弟を私が生んでいたなんて」
交渉上手のオビ=ワンといえど、たまに失敗する。
*どこに行かれたんですか! マスター!!
クワイガンが、ダースモールとの戦いで命を落とし、その葬儀が行われていた日、クワイガンと同姓同名の男が、鉄鋼産業の視察のため、溶岩の星、ムスタファーに行っていた。
彼は、自分の名宛で、妻に文章だけの通信を送った。
それは、とんだ間違いの果て、葬儀中のクワイガンのコムリンクへと届いた。
鳴り出したコムリンクに、葬儀を見守っていたきらびやかで大勢のクワイガンの元恋人たちがオビ=ワンへと視線を投げかける。オビ=ワンは、驚きながらもそれを開いた。
オビ=ワンは、まさか。と、思いつつも、生前の師匠の行いに滂沱と涙を流した。
「ココハ、トテモ、アツイ」