子羊とオオカミ

 

*有無を言わせぬ。

 

オビ=ワンは、交渉ごとが得意だ。

「では、作戦を発表したいと思う。先陣を切るのは、私と、マスター・アイラ・セキュラ。続いて、マスター・プロ・クーンに援護に入っていただく。そして、アナキン、お前は、ほかのジェダイとの連絡を取りつつ、後ろを固めてもらおうか。もし、この作戦に賛同できないというのなら、今ここで……」

そうやって言葉を切ったオビ=ワンは、アナキンをちらりと眺めにやりと笑った。

「ただ、『ジェダイを辞す』とだけ言っていただければ結構」

師の汚いやり方に、アナキンの拳がぎゅっと握り締められた。

 

 

*望み叶う

 

アナキンが切られた腕を義手で補うため、入院を余儀なくされていたときの話しだ。

アナキンは、義手のリハビリが上手く行くまでの間、師の面会を拒んでいた。

「マスター・ケノービ、申し訳ないのですが、患者たっての望みですので、あなたにはしばらくの間、このメディカルセンターの立ち入りを禁止させていただきます」

「アナキンが好きな料理を作ってきたんだ。ほんの一口食べるだけでもいいから」

「申し訳ありません。食事もこちらで用意させていただいていますので」

オビ=ワンは、しょんぼりとセンターの前のベンチに座った。

師には上手くはできなかったが、いつもアナキンが上手に作る料理を真似て作ってきたのだ。

オビ=ワンは、仕方なくそれを口にした。

するとオビ=ワンの望みがかなった。

激しい腹痛を訴えたオビ=ワンは、立ち入り禁止となったメディカルセンターの中に担ぎ込まれたのだ。

 

 

*自己申告制

 

オビ=ワンは、新しい任務のデーターを見ていた。

「マスター、50年生まれと言うと、今何歳でしたっけ?」

クワイ=ガンは、ソファーに座ったまま、口を開いた。

「対象者が、男か、女かによって年のとり方が違うと思わないか? マイ・パダワン」

 

 

*スーパーリアリズム

 

クワイ=ガン・ジンの隠れた特技の一つに、絵を描くというものがあった。

任務途中の手慰みに、さらさらとその家の娘などを描いてやっていたのだが、ある時、館のメイドをモデルにデッサンをしていると、いかにもつんとした女主人が邪険にメイドを追い払った。

「あら、主人の周りをうろつくだけで、何をしているのかもわからない男だと思っていたのに、絵は上手いじゃない」

妙齢を呼ばれる年齢を随分に昔にすごした女主人は、クワイ=ガンと主人との打ち合わせに何度も乱入し、いつも必要以上にしゃべっていた。

勿体ぶった女主人がクワイ=ガンに言葉をかける。

「私も描いていただけるかしら?」

「ええ、マダム。私の絵は写実的なんですが、それでもかまわなければ」

 

 

*宣誓

 

ある星に降り立ったジェダイ師弟は、現地の将軍に事情を聞いていた。

今回は、内紛の調整だ。

「申し訳ありませんが、真実だけをお話しください。そうでなければ、我々にはまったく事情がわからない」

将軍は、大層、興奮していた。

「あの、くそ大臣めは私のことを「薄汚いくそ爺、すぐに力で解決しよとする豚、あたまのないとんまな案山子、のろまなロバ」と言いおった。これは、すべて間違いなく真実だ!!」

必死に苦笑をこらえるアナキンの足をオビ=ワンは踏んだ。

 

 

*望み叶えたまえ。

 

任務に出かけようとするクワイ=ガンを見送るオビ=ワンが、すこしうらやましそうに隣の若夫婦を見た。

「マスター。あそこのご夫婦とても仲がいいんですよ。いつも出かけるご主人が奥さんにキスをなさって」

オビ=ワンは、クワイ=ガンを見上げた。

「どうして、マスターはそうなさらないんですか?」

クワイ=ガンは、笑った。

「お前の望みはなんでも叶えててやりたいがな。そりゃ、無理だよ。マイ・パダワン。私は、まだ、あちらの奥さんと知り合いになってないんだ」