子羊とオオカミ(パタオビオンリー)
*ジェダイって奴は。
「不倫は、殺人と同じくらい邪悪なことだと思いませんか? マスター」
明け方、真っ赤に目を腫らしたクワイ=ガンのパダワンは、ドアのところに立ちふさがり、むすっとした顔を隠そうとはなしなかった。
クワイ=ガンは、唇を噛みしめ怒りに震えるオビ=ワンの顔にどうしようもない色気を感じた。
「そうだな。オビ=ワン」
クワイ=ガンは、せっかくの朝帰りも、全く自分に効果を与えないことに、小さなため息をついた。
「たしかに、私は、両方とも経験済みだが、お前の言うとおり、後味が悪いという意味においては、両者は全くかわらんよ」
*ねぇ、マスター。本当にその報告でいいの?
ある悪人の辿った末路について、クワイ=ガンは評議会に報告していた。
「追跡しておりました彼ですが、残念なことに、彼を恨む組織の方が先に拉致しまして暴虐の限りを尽くし、撲殺致しめたものと思われ」
評議会のメンバーは、クワイ=ガンの話に耳を傾けていた。
「ですが、彼は、その前日に、全ての現金及び、有価証券を偽名で銀行へと預けたのです。ですから、幸いなことに、被害は、彼の命だけに留まっております」
*力持ちだね
「昨日は酷い目にあった」
クワイ=ガンは、腰をさすりながら、メイスに話しかけた。
「ああ、クワイ=ガン、窓から見ていた。お前のローブが飛んでしまったのだろう?」
「そうなんだよ。あれに中身が詰まっていたことにお前は気付いたか? 訓練中の弟子の尻を、ちょっと撫でたら、偉い目にあったよ」
*偽善者
ソファーに座っていたクワイ=ガンは、不意に顔を上げて、オビ=ワンに聞いた。
「なぁ、オビ=ワン、偽善者っていうのは、どういう奴だと思う?」
「そうですね。マスター。あなたみたいな方でしょうか?」
忙しく立ち働いていたオビ=ワンは、師のローブから、女文字のメモを取り出した。
*ホントに、それ?
クワイ=ガンは、まだ、眠る弟子の頬にキスをして、優しくオビ=ワンを起こした。
「疲れているだろう? 今日の朝は、私がしよう。何がいい?」
「マスターは、俺の好みをご存じでしょう?」
幸福そうに微笑んだオビ=ワンは、体中についたキスマークを恥ずかしがって、シーツの中に潜り込もうとした。
「おや、困ったね。私のかわいいパダワンは。だけど時には食事もしないとお腹が減ってしまわないかね?」
クワイ=ガンももう一度シーツの中に潜り込んだ。
*過労
オビ=ワンが睡眠不足による過労で倒れた。
「しばらくは、絶対に安静です」
医師は、クワイ=ガンに注意を与えた。
ただの睡眠不足だとわかってほっとしたクワイ=ガンが返答を返した。
「大丈夫です。先生。今、私のパダワンは、死んだように眠っていて、私が何をしようとも、決して目を覚まさないほどです」
「それはいい。そのままそっと寝かして置いてください」
医師は、じっとクワイ=ガンの目を見て言った。
「わかりますね? そのままそっと寝かして置くんですよ」