*緑のかわいい人

 

オビ=ワンは、才能のあるすばらしい弟子に恵まれ、過不足のない毎日だった。

弟子は、多少、人格的に問題があったが、オビ=ワンは、きっと彼を正しい道へと導いてやれると信じていた。

それよりも、オビ=ワンを悩ませているのは、自分自身の問題だ。

若きジェダイマスターは、気付くと雄々しく育っていく弟子が好きになってしまったのだ。

オビ=ワンは、その気持ちを忘れようとした。

しかし、いけないと思えば思うほど、気持ちは募る。

オビ=ワンは、日々、日記に気持ちを書き綴り、せめてその感情の慰めとした。

しかし、とうとう、この清廉なジェダイマスターにも、気持ちが抑えられなくなる日がきた。

その夜、オビ=ワンは日記をやめ、手紙に熱い気持ちを書き記した。

決して出すつもりはないが、ラブレターのつもりだ。

書き終えたオビ=ワンは、気持ちの開放感から、つい、机にそれを置いたままにしてしまった。

 

次の朝、オビ=ワンの部屋に、機嫌良く笑うヨーダがいた。

「おはようございます。マスターヨーダ」

力あるジェダイたちにとって、電子ロックの扉はないにも等しい。

多少顔がひきつったが、オビ=ワンは、礼儀正しく朝の挨拶をした。

「おはよう。マスターオビ=ワン」

ヨーダは、鷹揚に返事を返す。

「何かご用ですか? マスター」

「いや、ちょっと寄っただけなのだが。オビ=ワン、お前の使いをしておいてやったぞ」

おっとりと微笑むヨーダは、人と仲の良い、妖精のようだ。

「えっ?」

「手紙だよ。オビ=ワン。パダワンと、何か仲違いでもしたんだろう? アナキンに渡したい。という気持ちに満ちておった。お前達は、意外に遠慮しあう仲なのだな」

 

またもや、オビ=ワンの部屋の電子ロックが破られた。

転げるように駆け込む人物は、身体の到着より先に、歓喜の感情で、オビ=ワンを抱き潰した。

「マスター!!」

「おお、もう、アナキンがやってきたぞ。お前からの歩み寄りに、大層うれしがっているようではないか」

恋愛などという感情からは解脱しきって、その存在すら忘れていそうなヨーダが、柔らかく微笑んだ。

最強にして最高のジェダイマスターは、オビ=ワンの指導者としての資質を褒めさえする。

「オビ=ワン、麗しい師弟愛だな」

「マスター! あの手紙、本当ですか? 俺、嬉しいです!!」

 オビ=ワンは、妖精という種族が、良いことだけをするわけではないということを思いだした。

だが、高揚した頬をして、獣の目を持つ弟子を前に、最早、オビ=ワンに言い逃れはできなかった。

机の上には、毎晩書きつづった日記まで置いてあるのだ。

 

 

 

      緑のかわいい人 2

 

ヨーダは、オビ=ワンに背中に背負うようにと言った。

「ダメです。どうしてマスターは、時々、そういうことをしたがるんですか?」

これから会議にでるという大勢の議員たちの前だった。

栄えあるマスターヨーダを背中に負ぶうなど、オビ=ワンにとっては、どちらに対しても礼を失した態度だった。

しかし、ヨーダは、いかにも疲れたように杖を着き、オビ=ワンを見上げた。

「オビ=ワン、わしは、疲れたのじゃ。どうしても、ダメか?」

 時々、ヨーダは、こうやって年寄りぶった遊びをしたがった。

「ダメです」

オビ=ワンは、先ほどまでヨーダがライトセーバーを振り回し、三人のパダワン見習いを相手に、トレーニングをきびきび行っていたことを知っている。

「オビ=ワン。もし、負ぶってくれたら、ナプー議員が、お前のパダワンの耳元で囁いたことを教えてやるぞ」

ヨーダが、オビ=ワンの袖を引いた。

オビ=ワンは、慌ててヨーダの足下にかがんだ。

「どうぞ、背中に乗ってください。マスターヨーダ。私は、彼のマスターとして、そのことについて知らねばなりません」

オビ=ワンの心は、若いパダワンの動向に千々に乱れていたが、表面上は、師として弟子を心配する態度を必死に守った。

ヨーダは、オビ=ワンの背中でほくほくと笑いながら言った。

「パドメ議員はな、会議はいつ始まるのですか?と、言ったのじゃよ。オビ=ワン」

 

 

 

* 用意周到

 

事を終え、師匠の髪を撫でていた若いパダワンは、ふと思いついたように聞いた。

「マスター、始めようとすると、どうしていつも嫌がるんですか?」

若いパダワンにとって、毎度抵抗を繰り返す、師匠は、不思議な存在だった。

確かに、そうされると、アナキンは余計にオビ=ワンが欲しくなる。

しかし、そんな遊びを取り入れなくても、二人の間は十分ホットだ。

アナキンの胸で顔を上げたオビ=ワンが言った。

「……アナキン……、私は、師匠として、何もしないと言うわけには……」

こういう時、頼りない目をするマスターが、アナキンには堪らなく愛しい。

「でも、マスター、そればっかりでは、そのうち俺だって、嫌気がさして、部屋を出ていくかもしれませんよ」

アナキンは、少しばかり彼の師匠を困らせてやりたかった。

しかし、若きジェダイマスターはにっこりと笑った。

「それは、大丈夫だ。アナキン。扉の鍵はお前の力では開けられない」

いつの間にか、オビ=ワンの扉には、古典的な錠前というフォースでは爆破して壊すしかないという立派な鍵がついていた。

 

 

 

アナオビらしい作品がやっと書けました。(っていっても、こんな話なんだけどね。苦笑)