スパナチュ小話(女の子と兄弟)

 

*世界一腹立たしい兄弟。(メグちゃん)

 

メグは顔を引きつらせながら、サムに怒鳴っていた。

「じゃぁ、なんであんたは兄貴を置いて一人で行こうと思ったわけ? どうして知り合った私に話しかけたの?」

サムは大きな体をしょぼんと縮こまらせている。

「一緒にバスに乗ろうともしたわよね? そのまま行ったら、きっと私達はキスもした。ううん。それどころか、きっと一緒のモーテルにも泊まったわ。サム。あなた、そんな雰囲気だった。なのに、なんで今更、ディーンなの? じゃぁ、なんであんなことしたの?」

サムが顔を上げる。その顔は真剣だ。

「……あの、なんていうか、……実は俺のディーンへの気持ちを確かめたかったというか」

 

 

*温度差(メグちゃん)

 

ディーンを床へと跪かせ、メグはサムとディーン二人に油断なく銃を向けていた。だが、実のところメグとサムは共謀中だ。と、いうか、サムを得たいメグが強引な方法に出たのだ。

「そうね、ディーン。今、私に必要なのはほんの少しだけなの。その上私は遠慮深いからどっちか一つでいいわ。選んでディーン。有り金全部か、それともサムか。どっちかひとつ」

沈黙が流れる。銃を後頭部に押し付けられたディーンは両手を肩の辺りへと上げたまま口を開かない。メグがサムを流し見る。サムの顔ハラハラだ。

「ディーン? ……兄貴?」

ディーンがサムを叱り飛ばす。

「急かすな! サム。 今、考えているんだ!」

 

 

*へぇ……そうだったの。(ジョー)

 

あるとき、兄弟のハンティングに無理やり同行したジョーは、敬虔深く頭を垂れたサムが祈るのを耳にした。

「神様、もしあなたが兄弟で愛し合うことを許さないのだったら、ディーンをあんなに愛らしくはお創りにならなかったはず……」

 

 

*もうさ、何してくれててもいいんだけどさ。(ジョー)

 

兄弟と同室のモーテルへとバックを忘れたジョーは、ドアの前に立っていた。

「ねぇ、兄貴、このいやらしい唇は誰ものもなの?」

「……お前……だよ。サミー」

しかし、部屋の中ではなにやら取り込み中のようだ。さすがにジョーも中には入れない。しばらく忙しなさの伴った沈黙が続き、また声が聞こえる。

「ねぇ、兄貴、じゃぁ、このかわいいお尻は誰のものかな? 俺は触っていい?」

「サミー、サミー。勿論、お前のものだ。でも、……いやだ、その触り方は」

「ん? でも、ほら、前にエッチな触り方はよせって」

「……意地悪なこと……言うな」

二人はもつれ合う音をさせ、ベッドになだれ込んだようだ。

「ねぇ、兄貴、この硬くなってる乳首は……」

「お前のだ。サミー、ベッドの上のものは全部、お前の!」

思わずジョーは慌ててドアを叩いた。

「ダメ! 枕もとのバックは私の!!」

 

 

*それは違うと思うな(ジョー)

 

エチケットがなってないと、ディーンはジョーになじられた。

「サムに教えてもらったら?」

 

「えっ? エチケット?」

サムはジョーが睨んでいるというのにフォークを振り回すディーンの目を見つめ、にこりと笑う。

「ああ、『ちょうだい!』って叫びたいときに、『いらない』って言う、あれ。大丈夫、兄貴、ベッドでいつも言ってるじゃん」