ゆりかご
子供のようにトレーラーの床に座って、長い足を投げ出して本を読んでいるジャレッドの足の間に座るのは、周りに誰もいない時のジェンセンのひそかな楽しみだ。
勿論、それなりに育った自分の体は、子供のようにすっぽりというわけにはいかないが、それでも、大きなジャレッドの体は安定してジェンセンを受け止める。
「休憩?」
「そう」
ジェンセンが前に来れば、ジャレッドは本をどかし、足を大きく開いてくれる。ジェンセンは、遠慮なく足の間に腰を下ろす。そして、ジャレッドにもたれかかる。
「お疲れ」
ジャレッドの手が、ジェンセンの短い髪を撫でる。ジェンセンが、まっ、ねと、唇だけで返事を返すと、大きな体はくすくすと笑いの振動を伝える。
「したいのは椅子になることじゃないんだけどなぁ」
ジャレッドはそう言いながらも、暫くはジェンセンの髪を撫でるだけだ。
さて、そろそろかなと、思う頃に、やはり、ジャレッドの手が、ジェンセンの太腿へと伸びてきた。座り心地のいい椅子で寛がせてもらった分は、ジェンセンも大人しくその手を受け入れる。いや、正直に言えば、恋人の手で体を撫でられるのは気持ちがいい。大きな手は、最初は遠慮がちに、次第にジェンセンの興奮を引き出そうとしながら触れてくる。内腿の深いところを触られるのが、気持ちいいのは当然として、何故、捕まれた足首を撫でられるのに、これほど体が高ぶるのか、ジェンセンはわからない。
柔らかく、けれど強引に開いた足に、ジャレッドは好きなように触っている。強く、弱く、ジャレッドは着衣の上から快感を煽り、自分には椅子以外の役目もできることをジェンセンに教え込もうとする。
「ジャレ……」
気持ちのいい接触は、ジェンセンに甘く恋人の名を呼ばせた。
ジャレッドが、ジェンセンの項に口付ける。何度か、押し付けるようにしてキスをすると、舌が悪戯するように襟足を舐めた。
「……ひゃっ!」
ぞくりとするくすぐったさに、ジェンセンが首を竦める。それでも、ジェンセンがジャレッドの膝から降りないと、ジェンセンは、ジャレッドをぐいっと引き寄せ、腰の上へと乗せた。
「ご存知だとは思うんですけどね、このまま座ってて、これの始末つける気あるの? ジェン?」
止めたと言い出すタイミングをくれる優しい恋人に、ジェンセンはふっと、笑ってしまった。
「ライトの調子が悪いだけなんだ。スペアを倉庫から取ってくるって言ってただけだから、後5分も時間がない」
「5分で済むかもよ?」
ジャレッドは、時々本気を出す。例えば今だ。優しいばかりの態度だったはずなのに、ぐいっと腰をジェンセンの尻に押し付け、どうしたいかを思い知らせる。
けれど、太く力強い恋人の腕は、抱きしめるだけでジェンセンを拘束しておらず、ジェンセンは首を捻って、体に見合いの心の広い恋人にキスを求めた。
「お前、そんなに短いの?」
たっぷり舌を絡めるキスをして短い休憩を満足したジェンセンは、ぽんっと恋人の肩を叩き、座り心地のいい椅子から立ち上がる。
きっと唇が赤いだろう。だから、少し早めに帰る。
「本の続き読めば? ジャレ」
振り返れば、ジャレッドは小さく肩をすくめていた。
「俺は、ありがとうって言うべき? ジェン?」
「うん? 礼はいいよ。言うなら俺の方だろ。……ジャレ。いつも一人で処理してくれてありがとな」
にやにやとさも嬉しげに笑う恋人の後姿を見送りながら、ジャレッドはもう何度も浮かべた苦笑をまた顔に浮かべた。
END