*え! えっ!?

 

深い関係になりたい相手が上流階級の人間なのだと、とうとうダルタニアンは酔いに負け漏らしてしまった。だから、きっと自分には無理なのだと。しかし、数多くの女性たちの良き恋人であるアラミスは、若造の弱音を笑うことなく、では、素敵な詩を贈るといいと洒脱な笑みで流してくれた。

 

「アトス!」

鍛錬場からの帰り、やっと仲間たちと別れ一人になったアトスに声をかけることが出来たダルタニアンの頬は期待で輝いていた。石畳に響く大きな声に驚いた顔で振り返ったアトスは、しかし、相手がダルタニアンだとわかると、上品な、けれども親しみ深いとても魅力的なやり方で目元を細めた。

「ダルタニアン。私も君を探していたんだ」

年上の銃士は、笑顔でダルタニアンが自分に追いつくのを待つ。

「君が贈ってくれた詩は、とてもすばらしかった。本当にありがとう。ダルタニアン」

午後の陽に輝く柔らかな髪の色まで上品な金である相手の言葉に、ダルタニアンの心では、祝福のラッパが高らかに鳴った。けれど、年下の男は必死に表情を引き締め、相手を見下ろす。

「でも、二行目、おかしかったろ? あまり気に入ってないんだ」

真っ直ぐにアトスはダルタニアンを見上げていた。見上げる位置にあるダルタニアンを少しまぶしそうにしたその笑顔は、慎みや、誠実さ、世の中にある良いものばかりで作ったかのように、とても魅力的なものだ。上品で、親しみ深い口元の形だって、さっきとまるで変わらない。

「ん? 忙しくて、まだそこまで読めてないんだ」

 

大きなため息をつきつつ酒を飲む、不景気な顔をした若造は、深い関係どころか、まず、上流階級の人間との付き合い方から、アラミスに習い始めた。