奥さん野伏ですのbeer人さんから頂きました。
                     幸せ。幸せなのって幸せ。


くまのプー

配役 プー :ショーン
    うさぎ:オーランド
    クリストファー・ロビン:ヴィゴ

くまのプー ショーンは、ビールの匂いにつられて、ふらふらとウサギのオーランドうちまでやってきました。
ショーンは、入り口でオーランドを呼びましたが、オーランドは、いませんでした。
お留守のようです。
家の中からは、ビールのいい匂いがしています。
ショーンは、勝手にオーランドの家に入り込みました。
オーランドの家は、木の洞を入り口として、地下へと広がっていました。

ショーンは、オーランドがいないというのに、部屋にあったビールをすべて飲んでしまいました。
すっかり酔っぱらっています。
機嫌良く、帰ろうとしたショーンは、入り口だったときには、通り抜けられた木のうろに、おなかが引っかかるとこに気づきました。
「オーリは、なんて、作り方をしているんだ。入り口と、出口では、大きさが違う」
ショーンは、木のうろに引っかかったまま、文句を言いました。
違います。オーランドは、ちっとも悪くありません。
ショーンのおなかが、ビールで膨れてしまったせいで、通れなくなっただけです。

昼寝をしていたオーランドは、起きてきた部屋の中が、真っ暗なのに驚きました。
まだ、昼間のはずです。
黒い巻き毛も愛らしいオーランドウサギは、慌ててロウソクへと火を灯しました。

オーランドは、驚きました。
自分の家の入り口が、ショーンのお尻ですっかりふさがれています。
「どうして!?なにが、起こったの?ショーン!?」
ショーンは、オーランドにお尻を向けたまま言いました。
「お前ん家の入り口と、出口は大きさが違っていけない」
「なんで?一緒だよ?どうしたんだよ。ショーン。もしかして、嵌っちゃって動けないの!?」
オーランドは、ショーンのお尻を押したり、引いたりしましたが、ぴったりとはまりこんだショーンは、びくともしません。
「痛い!痛い!・・・オーリ、もう、いいよ。しばらく、ここでゆっくりしていく」
ショーンは、オーランドに不機嫌な声を出しました。
オーランドはびっくりです。
「ちょっと!?何、言ってんの!?しばらくここでって、そこ、俺んちの、唯一の出入り口なんだよ!?」
オーランドは、必死になって、ショーンのお尻を押しました。
ショーンは、痛がって、文句ばかりを言っています。
しかし、オーランドは、ショーンのお尻も好きでしたが、ショーンの顔だって大好きだったのです。
このまま、ショーンのお尻だけ見て暮らすわけにもいきません。
若いオーランドは、せっかちに、努力を続けました。
あまりに、焦って、部屋のなかで、じたばたと暴れ回るという無駄な動作も、混じっています。



「ショーン。遅いから、迎えに来たよ」
ヴィゴ(くりすとふぁー・ろびん)が、ショーンを迎えに来ました。
ショーンは、照れくさそうに笑いました。
「実はね。嵌って、出られなくなっちゃってね」
ヴィゴも、少しばかり、ショーンを引っ張ってみました。
しかし、ショーンは、痛がるばかりで、ちっとも動きませんでした。
「どうする?ショーン」
ヴィゴは聞きました。
「しばらく、ここにいるよ」
ショーンの言葉に、ヴィゴは、すこし目を見開いた程度でした。
にっこりと笑って、ショーンの頭を撫でました。
「そうかい。じゃぁ、寂しくないように、毎日、俺が遊びに来てやるよ」
ヴィゴと、ショーンは、呑気に約束を交わしました。
穴の中のオーランドは、ヴィゴの言葉に、毛が逆立つほどいらいらしました。
オーランドは、一生懸命ショーンのお尻を押しましたが、ショーンは、怒って反対にオーランドを蹴るだけです。
ショーンと、ヴィゴは、約束をもう一つ交わしました。
「なぁ、ヴィゴ。遊びに来るときに、ビールを持ってきてくれないか?」
「わかった。じゃぁ、また、明日」
穴の中から、オーランドが助けを求めているというのに、ヴィゴは、帰っていきます。

翌日は、雨が降っていました。
穴の中のオーランドは、くたくたになって、ショーンのお尻にもたれながら、うとうととしていました。
ヴィゴは、傘をさし、ショーンにビールを届けます。
「ショーン。雨が降っているから、傘を持ってきたよ。どう?少しは、動けるようになったかい?」
ヴィゴは、気楽な調子で、ショーンに尋ねました。
ショーンは、また、照れくさそうに笑いました。
「・・・まだなんだ。でも、いいよ。ヴィゴが遊びに来てくれたから」
「毎日だって、遊びに来るよ。ショーンに寂しい思いなんか、させないさ」
ヴィゴは、笑って、ショーンの隣に腰を下ろしました。
ショーンにビールを手渡し、自分は、持ってきたスケッチブックを開きました。
「こうやって、ゆっくりスケッチするのも、楽しいもんだ」
「そうかい?俺も、こうやって、君と二人でビールを飲むのはうまいと思ってたんだ」

夢うつつで、二人の会話を聞いていたオーランドは、むっくりと起きあがると家の中のシャベルを探し出しました。
自分のうちの床を掘り進みます。
オーランドは、呑気者の中年二人にこの事態を任せておくことが我慢できませんでした。
せかせかと、シャベルで土を掘ります。
ある程度、斜め下に掘りするんだら、今度は、上に向かって掘りました。
半日も、掘ったころでしょうか?
オーランドに光が差し込みました。
雨の粒も振ってきます。
「やった!外に出た!!」
地上にはい出した、オーランドが見たものは、まだ、呑気に、木の根本でスケッチをしているとヴィゴと、ビールの缶を手に持っているショーンの姿でした。
二人は、オーランドの姿に、目を丸くしています。



オーランドは、泥まみれの巻き毛で、木のうろに嵌ったままのショーンに近づきました。
「ショーン。どうして、そんなに呑気にしていられるのさ。ほら、ひっぱって上げるから、さっさとそこから、出るよ!」
「・・・オーリ、いいよ。引っ張ると痛いんだ。このまま、もう少し、ゆっくりしていくよ」
「オーリ。どうして、お前は、そんなにせっかちなんだ?いいじゃないか。ショーンが、ここで満足してるんだったら、ここで、一緒に楽しめばいい」
ヴィゴは、オーランドにたしなめるような口を利きました。
「あんた達ねぇ!」
オーランドは、泥まみれの顔を真っ赤にして怒鳴りました。
「いい加減にしなよ!ヴィゴも、せめて、ショーンにビールを飲ませないくらいの努力はしてよ!こんなとこで、いつまでもいられるわけがないんだから、ほら、引っ張るよ。ショーンも、もうすこし、我慢して。そうすれば、こんなところから、出られるんだから!」
オーランドは、がみがみと中年二人をしかりつけ、しぶしぶと手を出したショーンの腕を引っ張りました。

オーランドが、ショーンの腕を力一杯引っ張りました。
ミシミシミシ。
大きな音がして、オーランドが家にしていた木が二つに裂け始めました。
オーランドが、地面を掘ったため、木に傷がついたようでした。
ショーンの腹を締め付けていたうろも二つに、ぱっかりと割れます。
自由になったショーンは、にっこりと笑いました。
「やぁ、助かった。・・・でも、オーリは、大変なことになったな」
ショーンは、気の毒そうに、オーランドを見ました。
オーランドのうちは、屋根をなくして、すっかり家としての機能を失っていました。
雨が、オーランドの家のなかをすっかり濡らしています。
オーランドは、呆然と家の惨状を見ました。
ショーンが、オーランドの手を引きました。
「俺の家に来るかい?おまえの家のビールを飲んじまったお詫びに、しばらく居るといい」

ヴィゴと、ショーンと、そして、オーランドの3人は、森の中のショーンの家へと向かいました。
ヴィゴの持ってきた傘に、3人は仲良く入っています。

終わり。