俺は悪くない

 

まだ暗い部屋に蛍光灯をつけた。部屋の中にはまだ、夜の気配が漂っていた。

ヴィゴは、スイッチに手を掛けたまま、ベッドの上を見た。ベッドでは、ショーンが金の髪をのぞかせ、シーツの中にうずもれている。突然付けられた明かりに顔がしかめられている。だが、目は開けられていない。

「ショーン」

声をかけても、ショーンに目覚める気配はなかった。仕方が無い。まだ、4時だ。いくら勤勉なかれでも、この時間は早すぎる。

ヴィゴは、ショーンの眠るベッドに腰掛けた。しばらく寝顔を見つめ、気難しい顔をしている恋人のシーツをめくった。

大きな足が、シーツから現れる。真っ直ぐな脛から続く、くるぶしが高く張り出していてとてもセクシーな形だ。

「ショーン、悪いが起きてくれ」

ちいさく唸るような声を上げて、ショーンは、足を丸め込んだ。ヴィゴが足首を触ったせいだ。ショーンは、子供が眠るように丸くなった。

「ショーン」

ヴィゴは、骨の出っ張りに舌を這わせた。

冷たい感触に、ショーンは、足を動かし、嫌がった。ヴィゴは動く足を掴んで、指先を口に含んだ。

ショーンの体が、突然の感触に強張った。

「……な…に?」

一本だけを舐め回すなんてお上品なことができなくて、ヴィゴは、口に入るだけ足の指を銜えた。

硬い足の裏と、柔らかい指の間を舌で舐め回す。

「…ヴ……ィゴ…?」

ショーンは、蛍光灯の光を眩しがり、長い指で目の上を覆った。鈍い動作であくびをした。指の間からヴィゴの姿を見て、呆れた表情になった。ヴィゴはそのいちいちを目に焼き付けた。

「…おいしいか?」

「最高だね」

ヴィゴは、爪と肉の間を舌で愛撫した。

ショーンは、一瞬、目を細めて、官能的な表情をした。それから、にやりと笑うと、ヴィゴに向かって足を伸ばした。真っ直ぐな長い足だ。ヴィゴの口の奥、深くまでショーンの指が入り込んだ。ショーンの長くなっている親指の爪が、上顎を威嚇した。

「ショーン」

ヴィゴは降参した。

「人の足なんて舐めるな」

ショーンは、ヴィゴから自分の足を取り戻した。ヴィゴの唾液で濡れたのをシーツへと擦りつける。

「今、何時?」

枕に頭を戻して、もう一度あくびをしながら尋ねる。ヴィゴは、ショーンから目を反らした。

「何時?ヴィゴ」

「…怒らないか?」

「夜中なのか?」

ショーンは、顔を顰めてヴィゴを見た。

「夜中ではないが…朝の4時だよ」

ショーンは、シーツに潜り込んだ。ヴィゴを全く無視して、丸くなって、目を閉じた。

ヴィゴは、その背中に覆い被さった。ショーンは、うるさそうに唸った。

ベッドが二人分の重みに沈んだ。起きたばかりのショーン印象は、柔らかで、吸い込まれるようにヴィゴは背中に鼻を埋めた。匂いを吸い込んだシーツが、ヴィゴを擽る。

誘われるままに、ヴィゴはずり上がって、ショーンの首筋のあたりに鼻を突っ込んだ。シーツ越しに、ショーンの匂いをかぐ。金の髪からは、昨日一緒に使ったシャンプーの匂いがした。

ヴィゴは、やはり、自分の判断ミスを呪った。会社のためとはいえ、24時間も経たないうちに、このぬくもりから離れなければならない決断をくだした自分を後悔した。

「…あの…な。昨日、言い出せなかったんだが、仕事の予定が変わって、今日の午前中に帰らないといけないことになったんだ」

シーツからショーンの目が出た。僅かにだが、機嫌が悪くなっていた。

グリーンの目が、それで?と、ヴィゴを威嚇した。

「悪い…な」

ヴィゴは、情けない声で謝り、ショーンの背中をさすった。ヴィゴ自身、緊急の帰国を承諾した自分に謝って欲しい気分だった。

「…夕べの電話か?…仕事じゃ仕方ない」

ショーンは、そっけない口調だった。ため息も小さく、ヴィゴには物足りなかった。

「物分りが良すぎると淋しいもんだな」

怒りを煽ると分かっていながら、ヴィゴは背中に文句をいった。

ショーンの身体に力が入る。振り返ったショーンの目に苛立ちが篭っていた。

「…駄々をこねたところで、あんたは帰るんだろう?」

ヴィゴは、小さく頷いた。ショーンの目は、ヴィゴを攻め立てていた。しかし、文句は言わなかった。

「何時まで平気なんだ?」

ヴィゴは、憎らしいことを言う唇に噛り付いた。情熱的な口付けを、ショーンは、首を振って嫌がった。ヴィゴは、形のいい耳を掴んで押さえつけ、薄い唇が開かれるまでキスを繰り返した。

ショーンが諦めて唇を開いた

ヴィゴの舌は狡猾に隙間へと潜り込んだ。舌の付け根まで絡めあう。

「キスで誤魔化すのか?」

「誤魔化さないよ。ショーンこそ、キスだけで誤魔化す気か?」

キスで濡れた唇のまま、ショーンは、ぷい、と顔を背けた。ヴィゴは、ショーンに伸し掛かり、彼の腰を体の下に敷き込んだ。ヴィゴは尻にあたるショーンの腰骨に感じた。ヴィゴはショーンの前髪を払った。

「あんたを早く起こした訳が知りたいか?」

ヴィゴは、ショーンの目をのぞきこんだ。ショーンの目は、訝しげにヴィゴを見上げていた。

「この時間を利用して、もう一度、あんたとセックスしたいんだ」

ショーンが顔を顰めて、身を起こそうとするのを、ヴィゴは腕を押さえつけてベッドに縫いつけた。そのままショーンの首筋に顔を突っ込んで、耳に、頬にと口付けをした。ショーンは、首を捩って嫌がった。

「昨日しただろ?」

ショーンの冷たい言葉に、ヴィゴは舌打ちをした。派手にショーンの顔を舐め回した。

「やめろよ。ヴィゴ」

「したくないのか?」

ショーンがいつまでも逃げるのに苛立ち、ヴィゴは、ショーンの顔を掴んで、目をのぞきこんだ。

「この状況でしたがると思うのか?」

ショーンは、真っ直ぐにヴィゴを睨みつけた。

「俺が帰るから?」

「そうだよ。もう少し、ショックに打ちひしがれる時間をくれてもいいだろ」

「時間がおしい。一分間なら、考慮してもいい」

ショーンは、盛大に額に皺を寄せた。自分の言い草に、呆れたものを感じながらも、ヴィゴは、その皺の間に舌を這わせた。

ショーンの手が伸びて、ヴィゴの顔を追い払った。

ヴィゴは、仕方なくショーンを見下ろす位置に戻った。

「昨日の分だけで、ショーンは、満足したのか?」

ヴィゴは、機嫌の悪い緑の目を見た。眉間には皺が寄り、手が、顔をブロックしている。

「…今回のデートをそればっかりにするつもりなのか?」

「だめか?」

ヴィゴは、ショーンの腕を掴んで、背けた頬に口付けを繰り返した。

「落ち着けよ」

「いやだね」

ヴィゴは、シーツの中へと手を潜り込ませた。

夕べ、ことが済んだ後、きちんとTシャツを着込んだショーンの胸をなで回す。

「夕べもヴィゴは、強引だったぞ」

「そういうのは、好きだろ?」

胸を捩って逃げようとするショーンを押さえ込み、慎み深い乳首を爪の先で引っ掛けた。

ショーンは、ヴィゴの手首を掴んで、本当にキツイ目をしてヴィゴを睨んだ。

「自分勝手過ぎないか?」

「昨日の今日で、生理だとでも言う気かい?」

ショーンの目の色が濃くなった。腹を立てている。ヴィゴの態度が許せないでいる。

「それとも、中を洗うまで、待っていて欲しいのか?」

ヴィゴは、更にショーンを怒らせる言葉を口にした。ショーンの言葉通り、自分勝手な男だ。自分で帰国を決めておきながら、そうしなければならないことに腹が立ってしょうがないのだ。

ショーンは、ヴィゴに向かって手を伸ばして、髪を掴むと、強引に顔を引き寄せた。

痛くて引きつる唇に噛み付く。

「ヴィゴ、怒らせたいのか、謝りたいのかどっちなんだ」

ヴィゴは、ショーンの忍耐強さに、ため息が漏れた。たしかにこれ位我慢強くなければ、盛りがついたようにホテルのドアで、ことに及ぼうとする恋人と付き合っていくことは難しいのかもしれない。

髪を掴まれたまま、ヴィゴは、ショーンの強張った顔を見下ろした。

「謝ったら、やらせてくれるか?」

ショーンは、大きく舌打ちした。なんて言い方だと、ヴィゴ自身呆れた。

しかし、偽らざる本心だから、ヴィゴは訂正しなかった。

ショーンが、ヴィゴの頬をつねった。ヴィゴは、痛みに耐えて、表情だけで、どうだ?と答えを催促した。

「馬鹿馬鹿しい」

ショーンは、ヴィゴの背中に手を回した。

「やらせてくれるのか?」

「謝ったらな」

高い鼻に皺を寄せて、不機嫌な顔のままショーンは、ヴィゴの背中を撫でた。彼の手が、裸のままの背中を撫で、下着の中へと伸びた。ヴィゴは、ショーンの長い指が尻の肉を揉むのを気持ちよく受け入れ、ショーンのTシャツの中へと手を潜り込ませた。

「謝ってからだ」

ショーンは、体を捩った。ヴィゴは、謝罪の言葉を口にせず、ショーンの首筋に唇を寄せた。

ショーンの細い首が嫌がって振られる。

「ヴィゴ、謝るんだろ?」

ヴィゴは腰を摺り寄せて、ショーンに自分の現状を伝えた。

「立派なことで」

ショーンは、口元を歪めて笑うと、尻をもんでいた手を抜き、もう一度、ヴィゴの下着へと手を入れ直した。長い指がヴィゴのペニスに絡みつく。遠慮もなくヘアを擦り、垂れ下がる二つの玉さえ手の平に包み込む。

「情緒の欠片もない」

ショーンの指に息が上がりそうになるのを抑え、ヴィゴは、ショーンをたしなめた。

ショーンは、また鼻に皺を寄せた。ヴィゴの下着のなかで動く手は、ヴィゴをきつく握り締めた。親指の爪が、先端に食い込んだ。

「ショーン」

ヴィゴが叱ると、ショーンは、手の動きを再開させた。ヴィゴはショーンの腕を握って止めた。そして、乗り上げていたショーンの腰から降り、ショーンの体も起こさせた。

「ショーン、服を抜いて、身体をみせてくれ」

ヴィゴは主導権を取り戻すため、ショーンを見つめて要求した。

こうやって改めて要求することに意味が合った。

濡れた手を見ていたショーンは、眉を寄せた。

「ショーン、あんたの乳首や股ぐらを俺に見せてくれってお願いしている」

ヴィゴは、ショーンの耳に唇をよせ、わざと嫌がる言葉を流し込み、じっと顔を見つめた。

ショーンが苦手とし、ヴィゴが好みとする時間の始まりだ。

視線を嫌って、ショーンは、シーツの中に潜り込んだ。

ヴィゴは、シーツを剥いだ。砦を奪われてショーンは、いやいやヴィゴに視線を合わせた。

「そういうのは、嫌いだって言っているだろ」

ショーンの目元が赤く染まっていた。首筋もほんのりと染まり、ヴィゴは、やに下がった顔を引き締めなければならなかった。

「夕べはあんた好みのセックスだったろ。今度は俺に合わせろ」

…好み?ショーンの額にまた皺が寄った。そのまま刻まれてしまいかねないほど、何度も寄せられる皺が、気になるのか、しきりに額を撫でた。

しばらくにらみ合いが続いたが、ショーンは、首を振ってため息をついた。

「俺は、部屋に押し込まれた途端、襲い掛かられたと思ったんだが」

ショーンは呆れ顔だった。

「でも、希望どおりシャワーを浴びさせてやったろ」

「あんた、シャワーだけじゃないもんも、俺にぶっかけただろうが」

「先に食らいついたのは、あんただ」

ヴィゴは、ショーンを見下ろして、もう一度、ショーンに服を脱ぐように要求した。ショーンは、Tシャツの裾に指を掛けながら、まだ、文句を口にしていた。

「諦めろ。俺は絶対に譲らないぞ」

ヴィゴは、腕を組んで、ショーンを見下ろした。

「こんなことされる位なら、いきなり襲い掛かられるほうがマシだ…」

ショーンは、しぶしぶTシャツを脱ぎだした。

「変態め」

ヴィゴはのろのろと動くショーンの手を見ていた。

「もっと自然なセックスをすればいいじゃないか」

ショーンは、ヴィゴの視線を嫌って、目を伏せたままTシャツを首から抜いた。

「今日は喧嘩をしている時間がないから譲歩するけどな、今度は絶対こんなのは許さないからな」

色の白い肌を赤く染めて、ショーンは、ベッドに膝立ちになった。

下着に手を掛け、ゆっくりとずらしていく。

ショーンは、いつのまにか、ヴィゴに慣らされていた。羞恥を嫌って、ショーンがさっさと洋服を脱ぐのを、ヴィゴはいちいち最初からやり直させた。

それが、獣のように求めあった最初の段階を越した一番初めの喧嘩の原因だ。

「ショーン、恥ずかしい?」

「当たり前だろ。趣味が悪い。中年に羞恥を求めるな!」

ヴィゴはじっとショーンを見ていた。文句を言う一瞬だけヴィゴに食らいついた緑の目も記憶に収めた。太腿の赤みも、平らな腹が震えるのも、期待するペニスが立ち上がりかけているのも目に焼き付けた。

「俺は、楽しい」

「そうだろうさ。あんたは、いかれてるからな」

ショーンは、ゆるゆると、足から下着を抜く。

ヴィゴの要求ととおり、足を開いて横になる。

「いい眺めだね」

口笛を吹いたヴィゴに、ショーンは、枕を投げつけた。ヴィゴは余裕を持って避け、ショーンの脛を撫でた。

「さっさとやろうぜ」

ショーンの足が揺れた。

「そういうのは、好みじゃないと言っているだろ」

餓えてる時のあんたのほうが好きだ。

ショーンは、小さな声で呟いて、顔をシーツに押し付けた。

ヴィゴはゆっくりとショーンの膝を撫で摩った。ショーンの皮膚が染まっている。全身が緊張して、固くなっている。恥らうショーンは、とても魅力的だ。どんなに嫌がられても、こんなそそる姿を拝まずに済ますことなんてできない。

「ショーン、もう少し足を広げて」

ショーンは、大きく足を広げた。大雑把なやり方に、ヴィゴは足首を掴み、もう一度やり直させる。

「ショーン」

「…嫌だって言ってるだろう…」

足を揃えたショーンは、今度はまったく開こうとしなかった。ヴィゴは、身体をずらし、ショーンの緩く立ち上がっているものを口に含んだ。

ショーンは、小さく息を吐いた。

足を広げようとはしないが、ヴィゴの髪に指を絡めて、押し付ける動きをした。

「ショーン、舐めて欲しければ、足を開いて」

ショーンの足が、ヴィゴの好み通りゆっくりと開かれた。内股が緊張でかすかに震えていた。

まったく、ヴィゴを煽ることばかりだ。

「ショーンだって、楽しめるだろ?」

ヴィゴはショーン足の間に身体をはさみ、硬くなったものを握って唇を寄せた。

「こんな風じゃなきゃ、もっと楽しいよ」

ショーンは、長い指で目を覆い、羞恥に耐えていた。

「より深くショーンに快感を味わってもらいたいね」

「俺は、さっさとやるのが性に合ってるんだ」

ヴィゴはショーンを口に含んだ。張り出している部分に舌を這わせ、ショーンの口から声を吐き出させる。ショーンは、ヴィゴの体を足で挟み込もうとした。

ヴィゴは、力をいれず、内股を押し返して、ショーンのたくらみを防いだ。

「ショーン、大人しく。焦りすぎはよくない」

ショーンは、ヴィゴの背中に足を回して、足首をクロスさせた。

「情熱的だけどね、今はそういうのをして欲しいわけじゃない」

ヴィゴは、ショーンの足を掴んで、組み合わせようとするのを外し、そのまま腹へと足を押し付けた。ショーンは、益々体に力を入れる。覆われた目の下あたりの皮膚が赤く染まっていた。

「なんで、こういうのは恥ずかしいんだろうな?ショーン」

ヴィゴはショーンの足首を舐めた。ショーンは震えた。

「でも、気に入ってきてるんだよな」

ヴィゴは足の指を口に含みながら、指先で立ち上がっているショーンを弾いた。

「本当に趣味の悪い男だ」

ショーンは、指の間から、ヴィゴを睨んだ。ヴィゴは、にやりとつま先を舐めた。

「でも、あんたの男だよ」

ショーンは、また文句を撒き散らし、ついに、諦めたようにヴィゴの名を呼んだ。

「ヴィゴ、キスを」

ヴィゴは舐めていた足を手放した。

伸び上がるヴィゴの背中に性懲りもなくショーンの足が絡みつく。

「このまま、入れてほしいんだろ」

ショーンから伸ばされる舌に応えながら、ヴィゴは、ショーンの目をのぞいて、にやりと笑った。

「ダメなんだろ。どうせ、たっぷりあんたの趣味に付き合わなきゃ、もう一度とかなんとか言う気なんだ」

ショーンは、目元を赤く染めたまま、ふてくされた顔をした。

「かわいい顔ばかりするなよ。あんたの言いなりになりたくなるだろ」

「いいなりになれよ。その方がさっさと気持ちよくなれるぜ」

ヴィゴはショーンの目元に口付けを落した。手を二人の間に割り込ませて、ショーンのペニスを包んだ。

ヴィゴの指の動きに、ショーンの顎が角度を上げる。

ヴィゴは、そのまま緩くショーンを擦り上げた。反らした顎と喉に唇で触れる。

ショーンは、ヴィゴの性器に向かって手を伸ばした。ヴィゴは軽い舌打ちの音を何度かさせてショーンをたしなめたが、手を止めることはしなかった。

「ヴィゴ」

ショーンの手が熱心にヴィゴに絡みつく。ショーンの長い指は、ヴィゴを緩く握り締めて、上下する。

「ショーン、足を上げて、自分の胸につけるんだ」

ショーンは、首を振ったが、ゆるゆると足を広げて胸につけた。ご褒美にヴィゴはショーンの体を移動して、ペニスを口に含んだ。

ショーンは、ヴィゴの髪に指を絡めて、何度も息を吐き出した。

吸い上げるたび、ショーンの指の力が強くなる。ヴィゴは、昨日、散々、広げた穴の方へと指を伸ばした。くるりと、周りの皮膚を撫でると、ショーンが足を引きつらせた。ヴィゴは、焦らすように何度も周辺を撫で、ひくつく部分は、じっと目で見つめるだけに留めた。

ショーンは、腰を捩って、刺激を望んでいた。

「指を入れてほしい?」

「言わなきゃわからないのか?」

「言わなきゃ、入れないのだけは確かだな」

ショーンは、唇を噛んだ。薄い唇の間に白い歯が見える。

「入れろよ……入れてくれ。ヴィゴ」

ヴィゴは指を舐め、ショーンの中へ押し込んだ。ショーンは、そこを軸にしたように身体を固くし、それから柔らかく指を取り込んだ。

ヴィゴは、押し広げる動きと共に、穴の奥へと指を入れ込み、ショーンの体を小刻みに震えさせた。指を増やしていっても、ショーンの体は同じ反応を返した。

ヴィゴは、舐めていたペニスから口を離し、指で広がった部分へと舌を入れ込んだ。

「それは…嫌いだ」

ショーンの手がヴィゴの髪を掴んで顔を離させようとした。

「気持ちがいいからか?」

ヴィゴはますます舌を中へと差し込んだ。

ショーンが身を捩った。ヴィゴは、腰を押さえつけ、益々執拗に舌で舐った。指を伝って、ヴィゴの唾液がシーツに落ちていた。

ショーンは、唸るような喘ぎを漏らしながら、何度も身体を離そうとした。ヴィゴの手がそのたびにショーンを引き寄せ、中を抉る指が、深くまで突き刺さった。

「ヴィゴ、もう…いいだろ」

気が済んだか?と言わんばかりに身を捩ったショーンは、体を起こして、ヴィゴの背中に覆い被さり、縋りついた。

角度が変わって、ヴィゴは思うように、舌を入れ込むことが出来なくなった。

仕方なく、周辺を舐め回し、指だけで、ショーンを揺さぶった。

ショーンは、身体を前倒しにし、ヴィゴの行為を邪魔した。

「悪いことばかり覚えるな」

ヴィゴは、ショーンの中を早い速度で何度も擦った。ショーンは、ヴィゴの背中を噛んだ。

「…ヴィゴ、もう、終わりにしよう」

明らかにショーンの息は熱くなっていた。

「まだだ。もう一度、横になって俺に舐めさせろ」

ヴィゴの冷静な声に、ショーンは、体中で反発した。

「もう一度、もう一度、あんたはそればっかりだ!」

それでも、真っ赤な顔をして泣きそうになると、顔を覆って、ベッドへと倒れこんだ。

足は、胸につけられ、濡れて光る部分を晒している。

「やれよ!気が済むまで勝手にしろ!」

「いいだろ?ショーン。出しちまってもいいんだぜ?」

ヴィゴは、片方の足首を持ち、もっと大きく広げさせると指を一緒に舌を差し込んだ。

ショーンの体が震えた。ヴィゴは、ゆっくりと、執拗にショーンを舐め回す。

ショーンは、とうとう泣き声のようなぐずつく声をもらすようになった。ヴィゴはそれでも、ショーンに舌を入れ込むことを止めない。

とうとうショーンは、ヴィゴの首筋に精液を撒き散らした。

ショーンは、顔を覆ったまま、身体を震わせ、何度もしゃくりあげた。ヴィゴの指をくわえ込んでいる部分もその度、収縮した。

ヴィゴは、ショーンの精液をシーツで軽く拭い、ショーンをうつ伏せにした。

やっとの状態に、ほうっと、ショーンが息を吐き出す。しかし、ヴィゴは、ペニスを突っ込まず、自分の顔をショーンの尻に突っ込んだ。

「もう、嫌だ!」

ショーンが膝でいざるのを、ヴィゴはしっかり腿を掴んで逃がさない。

「とろとろになるまでさせろよ」

「もう、嫌だ!もう、嫌だ!」

ショーンの体はとっくに溶けていた。わからないはずはないのに、ヴィゴは、指を差し込み鍵状にして、ショーンの中から何度も引き出した。

ヴィゴが支えていなければ、とっくにショーンの体はシーツに沈んでいた。震える足には力が入らず、涙に目がかすんで、自分の格好を想像することもせず顔をシーツに擦りつけた。

「かわいいな、あんた」

ヴィゴは何度もショーンの尻に口付けを与えた。

ヴィゴはやっとショーンに覆い被さった。

「ショーン」

名を呼んで、性器を擦りつけると、ショーンは、自分から尻を突き出した。

唾液で滑る部分へと先端を押し付け、ヴィゴは、まだ、ショーンを焦らした。

ショーンは、何度もヴィゴの名を呼んで、腰を引くヴィゴへと腕を後ろへ伸ばした。

「欲しい?」

「欲しい…欲しい。ヴィゴ」

「さっさと終わりたいから?」

「違う…もう、頼むから…こういうのはダメなんだ…知っているくせに…ヴィゴ…もう嫌だ」

ねだりがましくショーンが尻を押し付けても、まだ、ヴィゴは入れようとしなかった。

ショーンは、ヴィゴを振り返った。緑の目が、とうとう怒っていた。

「あんたは…本当に趣味が悪い…最悪だ!」

ヴィゴは自分の唇を舐め、満足の表情を浮かべると、ショーンの怒る目を舐めた。

「その位欲しがってくれないと、俺は、満たされないんだよ」

ヴィゴは、ショーンの中へとペニスをねじ込んだ。

ショーンは、食いちぎるような勢いで、ヴィゴのペニスを締め上げた。あまりの力の入れように、ヴィゴは、奥に進めず、ショーンの尻を叩いた。

「ゆっくり食えよ」

ショーンは、舌打ちをして、身体から力を抜いた。ヴィゴは、徐々に中へと進み、ショーンを征服した。ショーンは、腰が進むたび、小さく息を吐き、甘いため息を漏した。

だが、思うような刺激は与えられない。

「ヴィゴ、まだ、苛める気なのか」

ヴィゴの腰が、ショーンの奥に留まり、動かないことに、焦れたショーンは、自ら腰を振った。

ヴィゴは、にやにやと笑って、ショーンに合わせた動きをした。つまり、小さな動きだ。

「ヴィゴ!」

ショーンの叱責が鋭く飛んだ。ヴィゴは、ショーンに腰を打ちつけた。ショーンの口から、焦ったような悲鳴が押し出された。ヴィゴはそのまま、ショーンを揺さぶる。

ショーンは、シーツを掴んで、背中の筋肉を緊張させた。

固くなった背中にヴィゴは何度も口付けを送った。腰を押し付けるたび、ショーンは、喉から普段より高い声を搾り出した。

「ショーン、ああ、このまま、ずっとしていたよ。君は最高だ。君の中以上に、いいところを俺は知らないよ」

ヴィゴは、ショーンの尻に指を食い込ませた。

「…俺は、ずっと……なんて嫌だね」

ショーンは、切れ切れにしか言葉を口にできないくせに、憎まれ口をきいた。

きれいな背中をねじって、ヴィゴを振り返った。与えられた刺激に、目を濡れた目が、挑戦的に煌いていた。ヴィゴは、うっとりとその顔を眺めた。

首を伸ばして、ショーンがキスを求めた。

ヴィゴは、ショーンの奥を小さく擦りながら、首を伸ばして、キスに応えた。

「相変わらず、冷たいね」

「あんたに…付き合っていたら…身体が持たない」

「よくしてあげるよ?」

「…だから、俺は、もっと簡単なのが…好きなんだ」

ヴィゴは、ずっと、ショーンのいいところの周りだけを刺激していた。ショーンは、耐えるように目を瞑っていた。ショーンは、もっと欲しかったが、ヴィゴの気が向くまで、この生殺しの状態が続く。

ショーンは、自分のものに、手を伸ばした。中の刺激と相まって、擦り上げれば、いつよりずっといいのはわかっていた。

ショーンは、短い息を繰り返した。

ヴィゴの視線に晒されるのに耐えれば、いくことができる。

ショーンの手がペニスを掴んだ。手の動きは速くなった。

しかし、いつも通り、ヴィゴは自分が視覚で楽しむと、ショーンの手を止めた。

ショーンは、ヴィゴの指に爪を立てた。

ヴィゴは、笑って、背中に何度もキスをした。

キスは、項を辿り、髪の中にも入り込んだ。深くなった挿入に、ヴィゴの先が、ショーンのいいところを掠めた。

ショーンは、体中で震えた。喉からは、悲鳴が上がった。

そこを擦ってくれるなら、自分の手など必要なかった。

ショーンは、自分から大きく足を開いて、尻を高く上げた。

「相変わらず、正直で」

ヴィゴの声が、ショーンを揶揄した。ペニスも、からかうように挿入が浅くなった。ショーンは、悔しくて、ベッドを叩いた。

ヴィゴが笑う。笑う振動でさえ、今のショーンには、心地いい。

「ヴィゴ!ヴィゴ!」

「なに?ショーン」

「もっと…もっとしてくれ」

「できないよ。そんなことしたら、俺がいっちまうだろ?」

ヴィゴは、また、挿入を浅くした。ショーンは、腹がたって、ヴィゴの足に爪を立てた。

「痛いよ。ショーンが、良すぎるから、いけないんだろ?」

「ヴィゴ!!」

ショーンの内壁は、ヴィゴを包み込んで、ぴったりと張り付いていた。ずるりと抜くたびに、赤い粘膜が捲れあがって、ヴィゴを引きとめようとした。中は、ショーンの欲望のままに、ヴィゴを強く締め付け、離そうとしなかった。

白い尻の間に、赤黒いペニスが出入りする。

ヴィゴの息も、上がってきていた。

口で言うほど、ショーンを焦らしておけないと、ヴィゴ自身、自覚していた。

それでも、精一杯色付いた身体を震わせるショーンを視姦した。

耐えられないぎりぎりで、ショーンの指を足からはがし、ヴィゴは、ショーンを裏返した。

ペニスが抜けた時、見せた切ないショーンの表情が印象的だった。

皺の寄った額にキスをした。

今度は、一気に奥へとスライドさせた。ショーンがヴィゴの腰に足を絡めて、擦れた声を上げた。

ヴィゴの耳に、快感の信号が突き刺さった。

「本当に、我慢できないじゃないか。どうしてくれるんだ」

「…ざま…あみろ」

ショーンは、ヴィゴの首に縋り付いて、キスを繰り返した。

ショーンは、そのまま顎を伝い、首にキスを続けた。時々、無理に身体を曲げて、ヴィゴの乳首にも吸い付いた。

「ショーン」

ヴィゴの額に皺が寄った。あられもないショーンの態度に、余裕なく、ショーンを揺すった。ショーンのいい部分へと先端を擦りつけて小刻みに動かした。

ショーンは、顔を顰めて苦痛にでも堪えるような表情をした。しかし、漏れ出した声は明らかに違っていた。

「…ああ…うっく…あ…ああっ」

ヴィゴの首に縋りつく力が強くなった。

もう、キスをする余裕も無い様子だ。眉をきつく寄せ、首をかくんと折った。ヴィゴがその頭を抱くと、鼻先をヴィゴの摺り寄せ、ただひたすら刺激に耐えた。

「ショーン…ショーン…」

ヴィゴもショーンの名を繰り返した。

ショーンの頭をベッドに戻し、膝裏を救い上げて、ショーンの最奥を抉った。

ショーンが、痙攣を始めた。

酷い快感に、何度も首を振って嫌がった。

「ショーン、いいね。いくよ」

ヴィゴは、激しく腰を動かした。ショーンは、唇を噛んで、ヴィゴに縋った。

 

ショーンの投げ出した足に、ヴィゴはキスを繰り返していた。足の爪から始まり、今は膝裏だ。

ショーンは、太腿を這い上がってくる唇を、うるさそうに押しのけた。

「もう、しないからな」

「そんな冷たいこと、言うなよ」

「時計を見てみろ。あんた、1時間以上、俺を揺さぶってたんだぞ」

「たった一時間じゃないか」

正確にいえば、揺さぶっていたのが、一時間という話で今は、6時を回ろうとしていた。

「夕べから、どれだけしてると思ってるんだ」

ヴィゴの歯が、ショーンの内腿の肉を軽く噛んだ。ショーンは、甘い声を上げたが、恥じるように、ヴィゴの頭を叩いた。

ヴィゴは、ショーンの足の下をわざと潜り抜け、ショーンの真上へと乗り上げた。

「飯は食えそう?」

「食えないね。腹ん中は、あんたで一杯だ」

「妊娠しそう?」

ヴィゴは、ショーンの固い腹筋に耳を寄せた。

ショーンは、その頭を両手で掴んで力を込めた。ヴィゴはおどけたように痛がった。

「空港まで見送りに行けなかったら、どうしてくれる」

ショーンは、立ち上がる気力も無い自分に情けない顔をした。

「ショーン、俺が嫌いになった?」

ショーンは、ヴィゴの首を引き寄せ、唇に噛り付いた。

「大好きだよ。こん畜生」

これでいいかと、鼻にも噛り付いた。

「俺も大好きだよ。ショーンと離れるのが辛い」

ヴィゴは、ショーンの肩へと顔を埋めた。

唇が、耳を啄ばみ、髪を掻き分け、匂いを吸い込んだ。

ショーンもヴィゴの頭を抱き、ヴィゴの頬に唇を寄せた。

 

結局、じっと抱き合った二人は、タイムリミットぎりぎりまで、お互いを離さなかった。

 

END

 

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