愛し合う恋人たちは、時にマニアックなのだ。
足を投げ出して眠っているショーンの傍らヴィゴが立った。ヴィゴは、軽くシーツをめくると眠るショーンの足をそっと持ち上げ、膝へとキスをした。
その感触にショーンの目が開く。しかし、寝起きはあまり芳しくない。ショーンはくっつきそうになっている瞼を押し上げたものの、目の上を手で覆い、朝の日差しを拒んでいる。
ヴィゴは、にっこりと笑って、ショーンに声をかけた。
「ベイビー。どう? 気分は最悪?」
「……まぁな」
ショーンは、ため息と共に、ヴィゴの質問を完全肯定した。もぞもぞと足を動かすショーンの唇が、不満そうに尖っている。
だが、そう言いたくなるだけの事情がショーンにはあったのだ。この時期だというのに、Tシャツ一枚で眠っているショーンの下腹部を覆っているものは、病人ででも無い限り、ほぼ中年男性には使用されることの無いものなのだ。その上、それが、重く、濡れている。
ヴィゴは、にやにやとショーンを見つめ笑った。
「まっ、しょうがない。夕べは楽しかったしな。もう少しの我慢だよ。ショーン。今、きれいにしてやるから」
ヴィゴの手には、暖かく絞った濡れタオルが握られ、そして、床には、お湯を張ったバケツが置かれていた。
それは、ショーンのために用意されたものだ。
夕べ、人様に話すには、少しばかり恥ずかしい楽しみ方をして、愛し合った二人は、その代償を支払う必要があった。ヴィゴの結構お気に入りで、実は、ショーンも決して嫌いでは無いそのプレイは、尿道にカテーテルを通し、前から、前立腺を刺激する遊び。
毎回それを始めようとするとショーンは恐がって、ヴィゴを楽しませてくれるのだが、始まってしまえば、その刺激の強さに、ショーンから、もっと、と、ヴィゴに求めた。
だが、このお楽しみには代償が付いて回る。
ショーンは、散々弄ったため、緩み、今日一日程度は、尿漏れの恐れのあるペニスの心配をしなければならなかったし、ヴィゴは、一緒に楽しんだはずなのに、自分ばかりが被害を残し損をしている。とご立腹中の恋人の世話をしなければならなかった。
しかし、恋人の世話をするのが大好きなヴィゴは、ベッドの上に乗り上げて、陽気な顔でショーンの足元へと回る。
「ベイビー。ベイビー。俺のかわいいベイビーちゃん」
わざと外した音程で歌うヴィゴの手が、ショーンの足を大きく広げた。
ヴィゴが遠慮することなく、ショーンの股間を覆う濡れた布、つまりは、布オムツを掴む。
そして、その感触に楽しげに笑った。
「ぐっしょりだ」
「……夕べは飲みすぎた」
顔を顰めているショーンの声には、後悔が含まれていた。たしかに夕べのショーンは飲みすぎだった。だが、それは、ショーンのせいばかりではない。ヴィゴの策略だったのだ。カテーテルに強制排尿されるショーンが、身も世もなく恥ずかしがるのがかわいくて、夕食の時には、もう遊び方を決めていたヴィゴは、たっぷりのビールをショーンへと用意した。
それをショーンは、調子よくそれを飲んだのだ。おかげで、ショーンは、なかなか射精できないもどかしさでぐずることになった上、何度も何度も尿意を催し、たまらなくヴィゴを楽しませた。
ヴィゴは大変機嫌のいい顔で、ショーンのTシャツをめくり上げ、オムツを覆う防水カバーのテープをべりべりとはがす。
「さて、さて、ベイビー」
ショーンを剥いていくことに、鼻歌でも歌いだしそうなヴィゴにショーンが文句を言った。
「……うるさい。誰が、ベイビーだ。畜生」
だが、ショーンは、口を噤んで真っ赤になった。
今までだってその恥ずかしい匂いは臭っていたものの、オムツカバーが広げられ、篭っていた匂いが部屋中に広がったのだ。
長い指で隠された顔の中で見えているショーンの高い鼻が、ひくひくと動いていた。恥ずかしいのなら、やめておけばいいのに、ショーンは、わざわざ、鼻をうごめかして、匂いに反応している。
ヴィゴは、あまりにもかわいらしい恋人の姿にくすりと笑った。
二人は、もう、何度か、こういう朝を迎えており、ショーンだって、いい加減慣れてもいいはずだというのに、恥ずかしがり屋の恋人は、いつまでたっても、羞恥に慣れない。
しかし、ショーンは、真っ赤になりながらも、自分で決めている通り、全ての面倒をヴィゴに看させるつもりのようだった。
ショーンは、王様のようにベッドに寝転がり、指一本、ヴィゴのためには動かさない。
ショーンは、尿道を使ったセックスの後遺症で自分だけが嫌な思いをするのなど、絶対許せないと、言うのだ。
だから、ヴィゴは、ショーンの面倒をみなければならない。
だが、この罰は、ヴィゴにとって、特別楽しい楽しみなだけで、決して嫌なことなどではなかった。
ヴィゴは、生ぬるく濡れている布の匂いには、まるで頓着せず、ショーンのペニスを隠す布を指先で摘む。ヴィゴは、恋人の大事なところを覆っていた布の表面をしげしげと見つめた。ほっと胸から息を吐き出す。
「ショーン。平気だ。夕べもどこも傷つけたりしなかったみたいだ」
布は、黄色い染みを作っているだけだった。
繊細な場所だけに、傷つけているのでは、と、それが一番ヴィゴの気がかりなのだ。
「……この上、怪我までしてたら、もったところがない」
ショーンだってほっとしているくせに、ぷいっと横を向いた。
「なんだよ。あんただって、好きだろう? あんなによがってたくせに」
時間が解決する尿道の緩みだけで、そのほか、ショーンを苦しめるような事態が何もなかったことに、白い歯を見せて笑うヴィゴは、やわらかなショーンの尻を持ち上げ、カバーの上のおしめだけを引き抜いた。重い大人の尻だから、赤子のもののように片手で持ち上げるのは、少しばかり難しい。しかし、気難し屋の恋人は、こんな日は、臍を曲げて決して協力的ではないため、ヴィゴは、どこかのプリンセスベビーのおしめでも取り替えるように、そうっと、ショーンの尻を持ち上げた。そして、濡れた布を引き抜く。一瞬の早業をもう、ヴィゴは習得している。
「さぁ、とりあえず、気持ちの悪かったおしめはなくなったぞ。ベイビー」
ショーンの世話を焼くことを別段苦だとは思わないヴィゴは、楽しげにショーンへと語りかける。
世話を焼かれるのが恥ずかしいのか、恋人の腹は、せわしない呼吸を伝えている。そんな風に我慢しなければならないのなら、ヴィゴの手など借りなくてもショーンは、自分の手で処理できるはずなのに、ショーンは、ただ、寝転がっている。
かわいらしいことこの上ない、この連帯責任制をヴィゴはとても愛していた。
そっとオムツカバーの上へと、ショーンの尻を下ろしたヴィゴは、濡れた布をとりあえず、ゴミ箱に向かって投げた。
オムツは、上手くゴミ箱へと入る。
「さて、きれい、きれいしてやるからな」
ショーンが赤ん坊のように自分に語りかけられることにむっとしていることは知っていたが、ヴィゴはこの遊びが大好きだった。
ヴィゴは、シーツの上へと放ってあったタオルを広げ、その暖かを確かめる。
ほどよく温度を下げたタオルを片手に、ショーンの太ももを纏めて片腕で抱き上げる。
防水の利いたカバーは、散々楽しんだプレイのため、まだ上手く収縮することが出来ずいる尿道口から漏れたもので、少しばかり湿っていた。そこから、柔らかく乾いたシーツへと白い尻を移してやるため、二つの山をぬぐってやるのだ。
タオルの暖かさに、つい、ショーンの口から、ため息が漏れた。
恋人を優しく見つめるヴィゴは、丁寧にショーンの尻をぬぐってやると、そっとシーツへと白い尻を下ろした。
カバーはオムツと同じように、とりあえず、ゴミ箱へと投げ入れる。
ヴィゴは、汲んでおいたバケツの湯で、タオルを洗いながら、やっと気持ちのいいシーツの上に移り、尻をモゾモゾさせているショーンを眺めた。
「気持ちよくなったろ。ショーン。……なぁ、やっぱり、紙おむつにでもしたほうが良くないか?あれだったら、吸収されるから、もう少し不快感は薄れるぞ。濡れるの気持ち悪いだろ」
ヴィゴは、ショーンのために、この提案を何度もしていた。だが、ショーンは受け入れない。
「やだね。ヴィゴ。お前が楽をすることなんて、決して認めない」
ショーンは、ヴィゴに濡れたオムツを洗わすことで、仕返しをしているつもりらしいのだ。
そんなことは、全くヴィゴにとって堪えないのだが。
確かに、オムツ自体を洗うことは、それほど楽しくはないが、しかし、吸収率の悪い布オムツのせいで、恥ずかしい匂いをさせている恋人の股の間をきれいにしてやるのは、ヴィゴにとって楽しい遊びだった。
タオルを絞ったヴィゴは、ショーンに近づき、今度は、ペニスを中心に拭いてやる。
下腹部を覆う陰毛も、ぐっしょりと濡れているから、ヴィゴは、そこも丁寧に拭う。
くすぐったいのか、ショーンの尻に力が入った。
ヴィゴは、タオルをひっくり返し、それでもショーンの陰毛を拭う。
「くすぐったい」
「きれいに拭いておかないと、痒くなるだろ?」
ヴィゴのご奉仕が気に入らなければ、とても機嫌を悪くしたショーンが、シャワーを浴びに行くのだ。そうなったら、しばらく尿道を攻めるプレイはお預けとなる。ヴィゴは、ショーンの世話に余念が無い。
タオルを洗いなおしたヴィゴは、ショーンの足を抱いた。
今度は、股の間を拭うのだ。
「ベイビー。足、開こうな」
ヴィゴは、左右に割り裂いたショーンの足をそっと胸へと押し付けた。あまり強く押し付けると、夕べ刺激を受けた膀胱が、ショーンに恥ずかしい思いをさせる。
ヴィゴの手にある暖かなタオルが、ショーンの玉を優しく包んだ。
ショーンの口がぽっかり開いている。
体はすっかり弛緩していた。
「気持ちのよさそうな顔をして……」
ヴィゴは、しばらくそこを緩やかに揉んでやった。
快感に弱いショーンは、くふんと、かわいらしい鼻に抜けた声を漏らす。
本当に、ショーンは、快感に弱い。だから、昨夜だって、針を入れられることに、ものすごく脅えておきながらも、管が出し入れされ、尿道を取り巻く前立腺が快感を訴え始めると、顔を真っ赤にしながら、はっ、はっ、と、喘ぎだした。ヴィゴの手を止めようとしていたきれいな指が、まるで、自慰するように、自分のペニスを握り、その格好で、ショーンは身悶える。
「いいっ!……んっ! ぁ……っぁい……い!」
後ろにヴィゴのペニスを嵌めてやり、前からも、後ろからも、攻めてやると、泣きながら、きつく尻を締めてきた。
「っぁ……あっ……ぁっ!」
「っぁっ、も……っと……もっと……して、くれ、……ヴィゴ」
管の中を黄色い液体が通り、ヴィゴに殴りかかりそうなほど、恥ずかしがって怒っていた人物と同じとは思えないほど、ショーンは、管でいじめられると喜ぶのだ。
整った顔がくしゃくしゃだ。
「んんっん!んっ!……ん!」
玉を緩やかに刺激されたことで、ショーンのペニスが、ほんの少し元気になっていて、ヴィゴは、タオルを裏返しにすると、もうきれいになっているペニスを包み、くちゅり、くちゅり、と、動かしてやった。
ショーンが腰を捩る。
「いい。……もう、そこは、いいから。ヴィゴ」
「そうか? 触って欲しそうにしてるけど?」
ヴィゴは、余裕でショーンのペニスを弄り続けた。
しかし、ショーンがヴィゴを睨んだ。
その目があまりに色っぽかったのだ。
ヴィゴは降参した。
「今、襲い掛かったら、あんた、俺のこと許さないよな?」
結構気に入っている幼児プレイを投げ出し、このM字に開いている足を掴み上げて、乗り上げてやりたいと思うほど、ショーンの目付きは色っぽかった。きつく睨む、その目付きに色気があるのだから、つい、ショーンに悪戯を仕掛けてしまうヴィゴは、いつだって気持ちを揺さぶられてしまう。
「あたり前だ」
ショーンの返事は、そっけなかった。しかし、その顔は満更でもなさそうなのだ。
ヴィゴは、この先に期待を残し、タオルに包んだペニスの先にキスをした。
「まっ、じゃぁ、後でな」
タオルを絞り、ヴィゴは、まだ、拭いきれていないショーンの股の間と、肛門付近をきれいに拭いてやる。
ついでに、状態のチェックも忘れない。
「ここも腫れてないぞ」
ヴィゴは、おとなしげにきゅっと窄んでいる尻穴の皺をタオルで、とんとんっと、優しく触れ、ショーンに報告した。
ショーンは、嫌な顔をした。
だが、尻穴のほうは、正直で、ヴィゴが与えた刺激に、ひくひくと動いている。
これが誘惑でないというのだから、恐ろしい。
どこもかしこも、恋人の体は、ヴィゴをそそったが、ヴィゴは、今、ショーンに無理をさせるのが、得策ではないと知っているので、従順に恋人の世話に尽くした。
丁寧にショーンをきれいにしたヴィゴは、仕上げに用意してあった天花粉をパフにつけ、ショーンの尻へと叩く。
何が好きかといって、この幼児プレイの中で、ヴィゴは、このときが一番好きだ。なんというか、この匂いは、とても懐かしい。
嫌がられるから言わないが、ヴィゴは、心の中で、「きれいになりまちたねぇ。赤ちゃん。お粉をつけときましちょうね」など、幼児語を溢れかえらせながら、ショーンの尻にパフを叩いている。
ヴィゴの顔は、締まりなく緩むほど楽しげだ。
しかし、ショーンは、粉にむせる。
「……ヴィゴ。この粉っぽいのは、やめるわけにはいかないのか?」
「さらさらになるから、いいじゃないか」
「尻が真っ白の粉まみれだ。……結構、情けないんだぞ」
「尻が荒れないぞ?」
ヴィゴは、丁寧にショーンの股間を粉まみれにしていく。
ショーンの眉間には皺が寄っている。
「……誰も、俺の尻の荒れなんか、気にしない」
「そうであって欲しいけどな……」
ショーンが嫌がっているのは知っていたが、ヴィゴはとてもこの行為が好きなので、どう言われようが全くやめる気がなかった。
満足に仕事を終えて、ヴィゴは、ショーンを抱き起こす。
ヴィゴは、手近に用意しておいた乾いたタオルを手に取ると、ショーンのペニスを包んだ。
まだ、ショーンのペニスは、おもらし注意だ。
「しばらく、このままでいるだろう?」
尿道プレイをした後は、一晩、たっぷりと濡れたおしめに尻が包まることになるショーンは、その後、しばらく、ヌードのままで過ごしたがる。
その間、ヴィゴは、どうしても濡れてしまうペニスのタオルを何度でも取り替えてやる。
「飯、運んできてもいいか?」
「……軽くていい」
「分かってる」
ヴィゴは、濡れたオムツやら、オムツカバーやら、バケツの中に放り込むと、ショーンの朝食を運ぶため、部屋を出た。
天気がいいから、洗濯ものはすぐ乾く。
朝食を運んだヴィゴは、ショーンの腰を抱きながら、シリアルを掬って、恋人の口へと運んでいた。
ヴィゴの口にスプーンを咥えさせたヴィゴは、恋人の頬へとキスをする。
「なぁ、ショーン。あんた、昨日すごかったな。何度か、意識ふっとばしたろ」
ヴィゴは、甘く恋人の耳にささやいた。
「結構よかった?」
ショーンは、昨日の記憶が巻き戻って困惑した。
ショーンは、確かに、何度も、失神した。
尿道をぬちゃぬちゃとヴィゴに弄られ、その上、後ろからも突き上げられ、ヴィゴの膝の上に載せられ息も絶え絶えに喘ぐうちに、脳がその快感を処理しきれなくなったのだ。
苦しくて、でも、確かによかった。
しかし、ヴィゴが図に乗るからショーンは、それを言わない。
ショーンはシリアルをもぐもぐと噛みながら、嫌そうにヴィゴを見た。
「ヴィゴが、しつこくするからだ」
にやりと笑ったヴィゴがショーンの目を覗き込む。
「いいや、ショーンが、してくれって頼むからだ」
ヴィゴが、優しいキスを繰り返す。
頼んだ記憶がショーンにはあったから、話題を変えた。
「ヴィゴ。俺、オレンジが食いたいんだが」
ショーンは、十分ヴィゴに甘えて満足すれば、ジーンズの尻をオムツでもこもこにして、居間のソファーでごろごろしだした。
大きなお尻のかわいさに、ヴィゴは、結構幸せに、ショーンの隣に座ることになる。
たまに、こういう日をこの恋人たちは楽しむ。
実は、結構二人とも好き者だから、たまに。と、いうよりは、もしかしたら、回数は多いかもしれない。
ヴィゴの家の庭で、オムツが翻っていた。
それは、まもなく乾きそうだ。
END
真弓さんとこと、おざこさんとこで話題になっていた雑誌に載っていたとかいう豆のおむつネタ。
おもしろいねぇ。と、読ませていただいて寝たんですけど、一晩たったら、頭の中で、発酵してしまったようです……。
それも、なんか、悪い方へと発酵した……;;
……マニアック過ぎだ……。