驚愕
約束の時間より早いドアチャイムに、ヴィゴは、笑いながらベッドから起き上がった。
服は皺まみれだった。
枕もとには、思いついた言葉を書き散らしたノートが置きっぱなしだ。
自分のカバンから出したペンと、ホテルのボールペンが、ごっちゃになってシーツの上に転がっていた。
だが、ヴィゴは、そのままで、ホテルの絨毯を踏みしめていった。
畏まらなければならない相手ではない。
それよりも、早く顔が見たかった。
ベッドの上に開かれたままのノートに書き散らされた言葉は、色気のある言葉が多かった。
胸の中から自然にわきあがってくる言葉に、逆らう事無く文字を綴れば、そういうことになった。
ドアに近づくヴィゴの頬がやさしく緩む。
作為の必要なんて無い。
ただ、一人のひとを思えば自然と言葉は湧き上がる。
その人が、ドアの外でヴィゴを待っているはずだった。
部屋の鍵を開け、ホテルの廊下にたった人を見たヴィゴは、一瞬、ドアスコープからの確認を怠った自分を罵った。
顔を伏せたその人を知らない人物だと思った。
約束の時間までは、確かにまだ早かった。
けれど、ヴィゴはショーン以外の誰も、想像せずに、ドアを開いたのだ。
ドアを開けたら、抱きしめて、部屋に連れ込むつもりもしていた。
実際、手は、もう伸ばされていた。
だが、ドアを大きく開けて、顔を伏せたままそこに立つシルエットを見て、ヴィゴは、わが目を疑った。
大きさが違った。
だが、人違いではなかった。
確かに、ショーンだった。
ただし、この間までと、あまりにも違っていた。
ヴィゴの伸ばした手は、その場で固まってしまった。
「…ヴィゴ?」
ショーンは、茫然と目を見開いて、ドアの前で立ち塞がるヴィゴに不審な目を向けた。
廊下を進む人の気配をうかがいながら、そっと顔を上げたショーンは、部屋に入れてくれようとしない恋人に、僅かに小首を傾げた。
いつもなら、寸暇も惜しんで、部屋に連れ込もうとするヴィゴが、その場で、立ちすくんでいた。
ヴィゴは、ブラウンの落ちついた絨毯を裸足で踏んで、ブルーの目を大きく見開き、小さく口を開けたまま、じっとショーンを見つめていた。
「ヴィゴ、どうした?中に入れてくれないのか?」
宵の口だといえる時間のホテルの廊下はわずかにではあるが、人通りがあった。
ドアの前に立っているショーンと、ヴィゴを不躾に見ていく者もあった。
そのうちのほんの僅かは、ヴィゴの顔を見て、首を傾げていったりする。
こんな場を誰かに見られたいわけではなかった。
ショーンは、もう一度ヴィゴの名を呼んだ。
ショーンが、二度ヴィゴの名前を呼び、やっとヴィゴは、我に返った顔をした。
身体を引き、ショーンのために道を開けた。
けれども、抱きしめようともせず、ただ、確かめるような視線で、ショーンのことを見つめつづけた。
ショーンが、ヴィゴの脇を通り抜け、部屋の中へと進んでも、検分するような視線が、ショーンの体を追ってきた。
「何?ヴィゴ」
ベッドの上にカバンを置いて、ショーンは、ヴィゴを振り返った。
ショーンは、うるさいくらいに身体を見つめつづけるだけで、触れようともしないヴィゴの視線に、煩わしさを覚えていた。
自分の肘を支えるようにして、顎をしきりと触っているヴィゴを、振り返って軽く睨んだ。
ヴィゴは、ショーンの視線を受けて、困ったように首を振った。
「何って…ショーン、一体、俺はなんて言えばいいんだ?一瞬誰かと思ったよ。どうして、そんなに痩せてるんだ?」
ヴィゴは、明らかに困惑した声を出した。
だが、やっと、自分を取り戻したように、ショーンに近づき、ショーンの腰に腕を回した。
「ほら、すっかり手が余る。ビックリしたよ。ダーリン。ダイエットしたのか?」
ヴィゴは、この間抱きしめたときより、確実に細くなった腰を引き寄せ、ショーンの頬に口付けた。
頬も、この間キスしたときより、削げ落ちていた。
口付けた頬の弾力が違っていた。
ショーンは笑って、ヴィゴの腰を抱きしめた。
キスを返しながら、ヴィゴの耳に齧り付いた。
「ウエイトのコントロールなんて、誰でもするだろ?役柄に合わせて体型を変えられないようでは、役者をやってられない」
ショーンは、当たり前のことを言うように笑いながら、ヴィゴの髪をかき回した。
耳から、首筋に唇を押し付け、ショーンの高い鼻が、ヴィゴの首で押しつぶされた。
ショーンの体温が、ヴィゴを抱きしめた。
「久し振りだな。ヴィゴ…会いたかった。こっちで、少しでも会えると分かって、本当に嬉しかった」
「ショーン…」
ヴィゴは、忙しく身体をはい回る恋人の指の動きを感じながらも、上手く応えることが出来ずにいた。
そのくらいショーンの変化は、衝撃的だった。
どのくらい体重を落したのかわからないが、確実に一回りは痩せていた。
ショーンが、キスを仕掛けてこないヴィゴに焦れて、唇を突き出す。
しかし、その魅力的な唇も、すっかり細くなった頬のラインに気を取られるヴィゴのせいで、キスではなく、文句を言うために使われることになった。
「ヴィゴ?どうした?気が乗らないのか?楽しみにしていたのは、俺だけか?」
ショーンは、長くしている金髪をかきあげながら、ヴィゴを睨んだ。
睨まれても、ヴィゴは、すっかり両腕があまる恋人の抱き心地に落ちつかなかった。
「…いや…その…。ちょっと、ショーン、ちょっと、身体を見せてくれ。一体どうなってるんだ。どのくらい、あんた痩せたんだ」
ヴィゴは、腕の中の感触に我慢できなくて、ショーンの服を脱がしにかかった。
忙しく上着を脱がされ、ショーンが、呆れたため息を落した。
ヴィゴの目から見ると、オーダーメイドのはずのショーンの上着は、肩がすかすかと余っていた。
ズボンも、足が泳いでいた。
ヴィゴは、じろりと機嫌悪く睨んでいる緑の目から視線を反らしながら、落ち着かない気持ちで、気ぜわしく恋人を裸にしていった。
ショーンのジムに通って太くしていたはず首も、細くなり、そこから続く肩は、すんなりと丸くなっていた。
盛り上がっていた胸は、平らに近くなり、腹は、全くの平らだった。
たっぷりと肉のついていた尻が一回りは確実に小さくなっていた。
足だって、もっと、太腿が太かった。
ホテルの柔らかい光が、丸みよりも、縦のラインを主張するショーンの体を照らし出した。
どう見たって、ショーンの体は前に見た時より一回りは縮んでいた。
「もともとの体型はこっちなんだ。そんな変な目で見るな」
ショーンは、不機嫌な顔で、じろじろと身体を見つめるヴィゴを押し退けるとベッドに腰掛けた。
ヴィゴは、痛ましいものでもみるような視線で、痩せてしまったショーンの身体を眺め回した。
「おかしいか?おかしくないだろう?ちゃんとコントロールしながら、落してるんだ。筋肉だって無くなったわけじゃない」
ショーンは、脚をくんで、苛立たしげに舌打ちした。
洋服だけ脱がせて、馬鹿面をさらしている恋人を掬い上げるように冷たく見据えた。
ヴィゴは、他にもみるべきところは沢山あるというのにショーンの腹の辺りをばかりを注視していた。
「…俺の好きだった腹が…」
ヴィゴが、小さく呟いた。
「なんだって?ヴィゴ?」
ショーンは、悲しげなヴィゴの声に苛付いた声を出した。
足の先で、ベッドの脇に立つヴィゴの足を蹴った。
ぴしゃりと怒られ、ヴィゴは、やっと大人らしい紳士的な笑いを顔に貼り付けた。
それでもショーンは、その顔を鼻で笑った。
ヴィゴは、身体を折り曲げて、機嫌の悪い恋人の耳元で囁いた。
「ショーン、痩せてるあんたは、魅力的だよ。ああ、そうだな。少し若く見える。でも、俺は、太ってるあんたのこともとても愛してたんだ。だから、少し、動揺してる。…悪かったよ。ちょっと、びっくりしたんだ。シャワーに行くかい?そんな格好のままでは寒いだろう?」
ヴィゴはショーンをあやすように猫なで声をだした。
久し振りにあった恋人として相応しくない態度を取った自分を言い分けしつつ、ショーンの手を引いて、ベッドから立ち上がらせようとした。
しかし、反対にショーンがヴィゴの手を引いた。
ただでさえ、前かがみになっていたヴィゴは、ショーンの体に覆い被さるようにベッドの上に倒れ込んだ。
弾みで、ベッドの上に置きっぱなしになっていたノートとペンが跳ねた。
「ヴィゴ」
ショーンが、甘い声でヴィゴの名を呼んだ。
ショーンの手が、ヴィゴの背を抱いた。
重なったショーンの胸の厚みの無さに、ヴィゴはやはり淋しい思いをした。
しかし、そこは、気持ちを捻じ伏せて、恋人の身体に腕を回した。
肉の落ちた背中を撫で、細くなった腰を抱き、ヴィゴは、ショーンに口付けを送った。
「ショーン。会えて嬉しい。そして、こんなに積極的で、とても嬉しいよ」
ヴィゴは、口を開けてヴィゴに襲い掛かるショーンの髪を撫で、気のすむまでキスに付き合った。
どういう加減なのか、いつもより野性味たっぷりのショーンは、ヴィゴの上に乗り上げ、服を毟りとるようにしながら、そこかしこにキスをしていった。
まるで、餓えているようだった。
ヴィゴの身体を腿で挟み、逃げられないようにして、唇で啄ばみ、舌で味わっていた。
その熱心さは、食べられそうだとヴィゴが怖くなるほどだった。
ショーンは、ヴィゴの身体に惚れ惚れするような視線を向けて、唇で、ヴィゴの身体を辿る。
胸毛に隠れた乳首に無心に吸い付いて、ヴィゴをうめかせるまで舐め回した。
そこに気が済むと、ショーンは、臍にまで舌を突っ込んだ。
舌先が、臍を擽る。
「どうしたんだ?ショーン?」
擽ったいヴィゴは、ショーンの頭を片手で押さえた。
柔らかいショーンの髪が、ヴィゴの指の間に入り込んだ。
ショーンは、怒ったような顔で、ヴィゴのことを見た。
額に皺を寄せていた。
「ヴィゴ、あんたが、のんびりしてるからだ。言っておいただろう?今晩は泊っていけないんだ。俺のことが好きだったら、もっと時間を大切にしてくれ」
ショーンは、言葉まで早口で言い立てた。
首を振ってヴィゴの手から逃れると、ショーンは、反対にヴィゴの手を掴んで、自分の尻に触れさせた。
驚くほどせっかちだった。
ショーンは、ヴィゴの指を掴み、穴の入り口に宛がう。
尻を揺らして、ヴィゴを挑発する。
そこまでされて、ヴィゴは、ショーンの内部に触らずにはいられなかった。
山の低くなったショーンの尻は、簡単にヴィゴへと場所を教えていた。
ヴィゴは、ゆっくりと指を入れ込んだ。
入り口を爪の先で引っかくようにした。
ヴィゴは、指先にぬるりとした感触を感じた。
「…ショーン」
ヴィゴは、苛立たしげな緑の目を、ほうっと、感嘆の思いで見つめた。
ショーンは、唇を尖らせ、しかし、自慢気にしていた。
ショーンが泊っているホテルから、このホテルまでは、それ程近くなかった。
つまり、かなりの人間を振り返らせることのできる魅力的な俳優が、少しでも時間を節約するため、居心地の悪い思いをしながら、ここまで移動してきたということだ。
ショーンは、自分から、ヴィゴの指に尻を押し付けた。
爪の先が肉に食い込む。
「こっちは、準備万端なんだよ。ヴィゴ、そろそろ、その気になってくれないか?」
恋人に掠れた声でそんなことを言われて、ヴィゴがその気にならないわけがなかった。
ヴィゴは、ショーンを抱きこんで、膝の上に抱え込んでいた。
今までだったら、かなり無理のある体位だった。
腕の太さすら、ヴィゴと違ってしまったショーンは、ヴィゴに背中から抱き上げられ、脚を折り曲げられ、抱え込まれても、両腕の中からはみ出すことがなかった。
ヴィゴは正座した膝の上にショーンを乗せていた。
それは勿論、楽々と、と、いうわけにはいかないが、それでも、いままでと違い、ショーンを揺すってやることが可能だった。
ショーンは、ヴィゴの膝から落ちないように後ろに手を回して、ヴィゴの腰に掴まりながら、深くペニスを差し込まれて、目を閉じて、熱い息を吐き出していた。
ヴィゴの腿に足を乗せ、自分から腰を上下させた。
ショーンの全体重が掛かっても、ヴィゴに負担が掛かりすぎるということは無かった。
確かに、ヴィゴは、前の撮影の時から、変わらない体型を維持していて、今のショーンに比べると、1〜2割増しだといえたが、前のショーンは、ヴィゴよりも、1〜2割増しだった。
「すごく、軽くなってる」
「…そりゃぁ、そうさ。努力してるからな…だけど、あんたは不満そうだな」
ショーンは、首を捻じ曲げて、ヴィゴの頬に齧り付いた。
熱い息が、ヴィゴの頬にかかった。
ヴィゴは、ショーンの足を離して、腹に腕を回すと、ショーンの肩にキスを送った。
ショーンは、肩を捩ってキスを嫌がった。
そして、自分から忙しく腰を振った。
ヴィゴの膝に手をついて身体を支えたショーンが、腰を上下させる。
「ショーン、そんなに怒るなよ。ちょっと、淋しく思ってるだけだろ?ここのあった柔らかい肉がどこかに消えちまったのかと思うと、少し寂しいって言ってるだけだ」
ヴィゴは、ショーンの腰を掴んで、動きを止めた。
そして、ショーンの腹を摘んだ。
そこにしっかり腹筋はあったが、柔らかく巻いていた脂肪は影も形もなかった。
ヴィゴの指先が触るのは固い肉の感触だけだ。
「俺、あの柔らかい感じが結構好きだったのに…」
ヴィゴは、つい、悲しい声をだした。
ショーンは、振り返ると、もう一度ヴィゴに齧り付いた。
「人のことを、散々、ビール腹だのなんだのと、からかってたくせに」
「そんなの愛情だろ?あんた、尻だって、こんなに小さくなっちまって、俺の手の中に入っちまうじゃないか。どうするんだよ。こんなになっちまって」
ヴィゴが、ショーンの尻を掬い上げるように持ち上げると、ショーンは、一瞬その感覚にうっとりしたように目を閉じたが、もう一度、目を開けたときには、はっきりと軽蔑の色を浮かべていた。
「俺じゃなくて、肉が好きだったのか?ヴィゴ?」
低い声は脅しではなかった。
ショーンは、薄くなった尻の肉を痛ましげに指で揉むヴィゴの足を後ろ蹴りすると、ヴィゴの膝の上から、降りてしまった。
怒ったショーンは、近づこうとするヴィゴを足を使って追い払った。
ヴィゴは、ショーンの足首をつかんで、つま先にキスを繰り返した。
ヴィゴも、ショーンも、体は正直に欲望を示しており、もし、冷静に自分を見詰めることができたなら、情けない思いに捕らわれるに違いない光景だった。
「ごめん。ショーン。あんたが体を作るのに努力してるってのに、俺は全く、協力的じゃなかった。いや、痩せてても魅力的だよ。本当だ。膝の上に抱き上げられるなんてちょっと感動的だったし、痩せてるのが嫌いだとか、そういうわけじゃないんだ」
ショーンは、開いている足の角度を大きくして、ヴィゴを煽りながらも、ヴィゴがそれ以上近づこうとすると、足を蹴り出して、近づかせはしなかった。
「ショーン、大好きだ。本当だ。どんな風になったって、ショーンは、ショーンだ。腹の肉が減ったって、尻が小さくなったって、ショーンにはかわりがない。変わりなく俺は愛している」
ヴィゴは、ショーンの足に口付けを繰り返した。
しかし、ショーンは、強引にヴィゴから足を取り返すと、ぐりぐりとヴィゴの頬につま先をめり込ませた。
ヴィゴの頬が歪む、容赦のなさだった。
「あんたの好みがよく分かったよ。ヴィゴ。けど、あんた、言ったよな。俺の何が好きなんだった?」
ヴィゴは、頬の痛みに耐えながら、忠実に欲望を示しているショーンのペニスを見て言った。
ショーンの足の爪は伸びていた。
「俺は、ショーンという人間のありようが好きだ」
ヴィゴは、ショーンの足首を掴んで頬からつま先を撤退させると、伸びている爪に舌を這わせた。
爪と肉の間を舌が触っていくと、ショーンが薄く目を閉じた。
さげずんだような目が、それでも潤んでヴィゴを見た。
「そうだったよな。じゃぁ、俺が痩せようが、太ろうが関係ないだろう?」
「そのとおり。あんたの体型によって、俺の愛情が揺らいだりはしない」
ヴィゴが、堂々言い放つと、ショーンは、足をばたつかせ、ヴィゴの手から逃れ、ばったりとベッドに倒れこんだ。
「うそつきめ!」
ショーンは、大声で決め付け、そのまま、ベッドの上でうつ伏せになった。
やはりヴィゴの目には小さくなったとしか思えない二つの山が、ヴィゴの目に晒された。
ショーンの手の届くところにヴィゴが置いたままにしておいたノートがあった。
それをショーンが引き寄せた。
ちらりと、ヴィゴを振り返り、冷たく睨みつけると、にじり寄ろうとしたヴィゴを無視して、ショーンはノートに頭を突っ込んだ。
多分、ヴィゴを無下にする態度が取れれば、何でもよかったのだ。
ショーンの背中が、ヴィゴを拒絶していた。
曲げられた足が、何度もシーツを打ちつけた。
大きな音を立てるそれは、ヴィゴに対する威嚇だった。
しかし、ノートを読み進むうちに、ショーンの様子が変わってきた。
照れたように何度も髪をかきあげ、頭を緩く振り、困ったような舌打ちをした。
そういうつもりではなかったが、ショーンが来るまでの間に書いておいた言葉が、苛立っていたショーンを口説き落とした。
「ここを、読んでくれ」
ショーンは、ヴィゴにノートを突き出した。
書き散らした汚い文字を、ショーンが指で差した。
ノートには、愛の言葉も、ただの欲求もごちゃ混ぜになって飛び交っていた。
このホテルに来るまでに使った道のルートまで書いてあった。
ヴィゴは、ショーンの言うとおり、ノートの言葉を口にした。
「神様、感謝しています。在るだけで、いい。それで、いい。」
ショーンが選んだのは、ヴィゴがノートに綴った中で、一番色気のない言葉だった。
だが、口に出すのは恥かしい言葉だった。
愛していると囁くよりも、ヴィゴは照れて、何度もつかえた。
ショーンは、にんまりと笑った。
口元を両方とも均等に引き上げ、とても幸せそうな笑い方だった。
そして、ヴィゴに向かって手を伸ばした。
「さて、時間がないんだ。ヴィゴ、そろそろ、始めようじゃないか」
ヴィゴからノートを奪い取ったショーンは、ノートをベットから遠くへ投げ飛ばし、ヴィゴの身体を抱きしめた。
「ヴィゴ…ヴィゴ」
ショーンは、ヴィゴの体の下で、胸に付くまで足を折り曲げられ、尻を抉られていた。
ヴィゴが上から体重を掛け、伸し掛かっていたから、ショーンには身動きが出来なかった。
その状態で、ヴィゴは、浅い抜き差しを繰り返していた。
ショーンは、もっと深く抉って欲しかった。
ヴィゴは、ショーンの足を掴んで動けないようにし、焦らす動きばかりを繰り返していた。
「ヴィゴ…もっと、奥まで…」
小さく折りたたまれたショーンは、唯一自由になる腕を伸ばして、ヴィゴを抱きしめようとした。
ヴィゴは、汗を滲ませた顔で笑いながら、あやすようにショーンにキスを繰り返した。
だが、焦らすだけの動きは止めない。
ショーンがしきりと尻をもぞもぞとさせた。
だが、ヴィゴが押さえつけているせいで、ショーンの思い通りには動けなかった。
「やっぱり、痩せたあんたもいいな。ずっとこうやっていても、腹が苦しいとかなんとか、文句を言わない」
ヴィゴはにやりと笑った。
ショーンは、目を吊り上げた。
ヴィゴの髪を掴んで、ぐいっと顔に近づけた。
「ヴィゴ!もっと、真面目にやれ!」
ショーンは、ヴィゴの鼻を噛んだ。
それから、しつこく舐め回した。
ヴィゴは、少しだけ、大きく腰を動かしながら、ショーンを笑った。
「ショーン、ダイエットが、結構きついんだろう。あんた、今日は、俺を噛んだり舐めたり、俺は、食われちまうんじゃないかとはらはらしてるよ」
そして、ヴィゴは、ショーンが、文句を言う前に、大きく腰を動かした。
折りたたんでいたショーンの脚を伸ばして、肩の上にかつぎ上げ、尻を打つ音がするほど、激しく腰を打ちつけた。
「あっ…ヴィゴ!…あっ…あっ」
ショーンは、大きく身体を揺らしながら、ヴィゴの動きに声を上げた。
きつく目を閉じ、ヴィゴの動きに合わせて、ぴんと立ったペニスを揺らした。
「ショーン、あんたは、相変らず気持ちいいよ」
ヴィゴは、ショーンの太腿を抱かえ直し、尻をシーツから完全に浮かせてしまうと、ぐりぐりと奥まで、ペニスをねじ込み、そこで小刻みに動かした。
ショーンが、歯を食いしばる。
けれども、押さえきれないうめきが漏れた。
ペニスの先が、とろとろと、先走りを零していた。
ヴィゴは、それを指で掬って、平らな腹に塗りつけた。
ショーンが、濡れた目をそっと開く。
ヴィゴは、きつく締め付けてくるショーンに奥歯を食いしばったままで、にやりと笑った。
「だけどな。ショーン、一つだけ、お願いがあるんだが…」
ショーンは、早い息を繰り返しながら、小さく小首を傾げた。
腰が刺激を欲しがって、小さく動いていた。
しかし、何かを思いついたのか、ぱちりと目を開いて、にやりと笑った。
ショーンの薄い唇は、ぴったりと閉じられていたが、息が漏れ出すのを止めることは出来なかった。
「お願いを言ってもいい?」
ヴィゴは、額の汗を掌で拭いながら、ショーンを見つめた。
ショーンの目が意地悪く細められた。
「「もうちょっと、尻に肉をつけてくれ」」
同じ言葉を口にした二人は、お互いの身体を叩き合って、笑いあった。
ショーンは、その合間にも、笑いの振動によってもたらされる快感に小さな色っぽい声を出した。
「あと、どのくらい、時間がある?」
ショーンは、ヴィゴの腕の中で、うっとりとした顔をして尋ねた。
ショーンの切れ上がった目尻が下がり、穏やかな顔をしていた。
2人は、まだ繋がったままで、どちらも終わりを迎えていなかった。
ショーンの後ろは、とろとろに蕩けて、ヴィゴを柔らかく締め付けていた。
そして、ショーンのペニスは、溢れ出した先走りでべっとりと濡れて、頭髪よりは濃い色のヘアをぐっしょりと濡らしていた。
「あと、1時間くらい?あんたが、急いでシャワーを浴びてくれるんだったら、まだ、このままでいられるな」
ヴィゴのペニスも、ショーンの中で溶け出しそうなほど、その場所に馴染んでいた。
そして、時計から目を離したヴィゴの目は、とても穏やかだった。
「ヴィゴ、お休みのキスをする時間を計算に入れてくれ」
ショーンは、笑って唇を突き出しながら、ヴィゴに言った。
「それは、今、済ましておこう」
ヴィゴも笑いながら、ショーンの唇を吸った。
小刻みに動かすヴィゴの腰が、2人の間で押しつぶされるショーンのペニスを刺激した。
ペニスを咥え込んでいる、中は、もう、何をされてもいいとしか、感じなかった。
ヴィゴの舌が、ショーンにやさしく絡みついた。
ヴィゴの鍛えられた腹は、過不足なくショーンのペニスを捏ね回した。
「あっ…いく」
僅かに唇を離した瞬間、ショーンは、小さくうめいた。
身体を震わせて、ヴィゴにきつくしがみついた。
ショーンの体全部が、ヴィゴをしっかりと抱きしめた。
はぁはぁと、ショーンが、息を漏らした。
繰り返す息は、ショーンの腹を何度もへこませた。
緩やかな絶頂は、深い満足をショーンに与えたようだった。
ショーンは、とろんとした目をして、ヴィゴを見上げ、柔らかく笑った。
ヴィゴは、ショーンの髪をかきあげ、額に何度もキスをした。
「ヴィゴ…好きだ」
「俺も、好きだよ。ショーン」
甘い口付けを繰り返し、息の整ったショーンに許可を貰ったヴィゴは、もう一度、ショーンに快感の声を上げさせた。
終わりは、また、どっちのせいで時間に遅れたかと喧嘩になる2人だったが、それまでは、とても仲良く過ごした。
END
BACK
米プレミアの写真を見たんです。
そしたら、豆が痩せていた!
私は、やばいくらいぷにゅぷにゅしてるのが好きなんで、画面にむかって、ひーって叫んだわけですね。
いえ、勿論、痩せてても豆は可愛いです。
髪がぺちゃんとしてたりして、めっちゃキュートでした。
でも、でも、あのお腹がないのが淋しい(泣)