ごめんなさい。
夏のバカンスの間に、一週間だけ予定が取れた。
旅行に行こうと言ったヴィゴに、渋い顔をしてみせたのは、ショーンだ。
「二人、落ち合うだけでも、そこまでで十分旅行だよ」
できれば、ずっと同じ場所に滞在したいとショーンは情けない声を出した。
ヴィゴは、その願いをかなえたが、代わりにひとつショーンに条件を飲ませた。
ヴィゴの遊びに付き合うこと。
ヴィゴは、電話口で、恩着せがましくショーンに言った。
「どんな遊びでも、嫌はなしだぜ?」
ヴィゴの心は、弾んでいた。
ショーンは、仕方がないなぁと、笑っていた。
ショーンは、バスローブ一枚で、ダイニングのテーブルに腰掛けていた。
これもヴィゴの注文だ。
この家から出る時は別として、ショーンはバスローブしか着させてもらえなかった。
折角、詰めてきた普段着の出番は無い。
一週間だけのレンタルハウスには、夏の日差しが差し込んでいた。
クーラーの利きがいいので、部屋の中にいる分には困らない。
まだ、家に慣れていなかったが、もう、日にちは、残りの方が少なかった。
ショーンは、足もとに蹲る犬を邪険にしながら、雑誌を捲っていた。
犬が吼える。
ヴィゴの遊びは、もう、幾つめになるのか数えるのが面倒になっていた。
遊びの内容も凝り出していた。
今は、ヴィゴが犬になりきっていた。
バウバウとしか、喋らない。
ショーンの足もとに蹲り、時々、ショーンの足に顔を乗せて、餌を欲しがった。
そのたびに、ショーンは、テーブルの上にあるパンをヴィゴの口元へと運んでいた。
30分前までは、犬のヴィゴに体中を舐め回されていた。
ショーンは、テーブルの下のヴィゴにパンを食べさせ、ついでに頭を撫でた。
雑誌の続きを捲る。
ヴィゴは昼寝の真似でも始めたのか、しばらく、静かな時間が続いた。
「…もう、飽きた」
3時間ぶりに、ヴィゴが人間の言葉を使った。
紅茶を飲みながら、雑誌を捲っていたショーンの足元から、ヴィゴが急に這い出てきた。
テーブルの下から出ると、大きく伸びをした。
あんなにも拘っていた犬語も、四つ足も止めていた。
「なんで?大人しくってよかったのに」
隣の椅子に腰掛けたヴィゴに、ショーンは軽い笑いを浮かべた。
「あんたがあんまり可愛がってくれないからね」
ヴィゴは、ショーンを軽く睨んだ。
「大きな犬は、甘やかして育てるもんじゃないだろ?」
ショーンは軽く受け流している。
ヴィゴは、紅茶を飲もうとした。
だが、人の分しか紅茶は用意されていなかったので、ヴィゴのカップは用意がなかった。
ヴィゴは、ショーンのカップに残った紅茶を勝手に啜った。
「ショーンときたら、せっかく遊んでもらおうと一生懸命舐めてるってのに、蹴り飛ばしやがるから」
「ちゃんと餌はやってただろう?」
ショーンは、ヴィゴに向かってパンの籠を差し出した。
ヴィゴの口元まで運ばれたパンの残りはほんの僅かだ。
「遊んでくれってアピールも通じていただろう?」
パンばかりで乾いていた口を紅茶で湿らせたヴィゴは、ショーンの目をのぞきこむようにして文句を言った。
ショーンは呆れ顔だ。
「ヴィゴは、その前に、ずっと俺のこと舐め回してただろうが」
バウバウ吼える器用な犬に、伸し掛かられてショーンは随分とあちこちを舐められた。
犬は、ショーンから、ミルクを搾り出すまで、悪戯にじゃれかかっていた。
ショーンは、じっと見つめるヴィゴの目に、呆れた笑いを返した。
ヴィゴは、もう一度、大きく伸びをすると、にやりと笑った。
「さてと」
ショーンが、なんだと、ヴィゴを見た。
「次の遊びにしようか。ショーン」
ショーンは、またか。と、ますます呆れ顔になった。
だが、ヴィゴは、止めない。
「今度のは、ショーンもなりきってやってくれよ。ショーンが客の役なんだ。それで、俺が、買われた男の役。設定はそうだな。初めてそういうことをするっていう初心い客ってことにしよう。セリフは、自由。場所を移動しよう。やっぱりこういうのは、ベッドでやらないと楽しくないだろう?」
「よく、そうそう思いつくな」
ショーンは、耳を掻きながら、面倒くさそうにヴィゴの顔を見た。
「あんた相手だとしてみたいことが沢山あるんだ。ほら、早く来いよ」
ヴィゴは、先に立って歩き出すと、さっきまでの犬ごっこで、くしゃくしゃになっていたシーツを綺麗に掛けなおした。
ドアの側に立ったヴィゴは遊びを始めた。
「こういうことするのは初めて?」
ヴィゴは、ショーンとの間に適当な距離を置きながら、にこやかな笑みを見せてショーンに笑いかけた。
緊張気味に肩を怒らせていたショーンは、驚いたようにヴィゴを見上げた。
上手い表情だ。
ヴィゴは、ショーンがこの遊びに前向きに取り組んでくれることを嬉しく思った。
ショーンの目がヴィゴの顔と身体を落ち着き無くさ迷う。
品定めしているようだ。
初めて男を買う客と、その男。というそれだけの設定で始めた遊びが、こんなにもスムーズに進むのは、ショーンが上手く合わせてくれるせいだ。
ヴィゴはまだ、ショーンの腰掛けるベッドまでは近づかなかった。
すこし距離を置いたまま、敵意のない笑みを見せた。
「大丈夫。俺にまかせておけば、とっても気持ちよくなれるから」
ヴィゴは、どのくらいこのセリフで相手が安心するのかわかりかねるな。と、思いながらも、常套句を口にした。
口元に笑いを浮かべ、目を細めてショーンに笑いかけた。
ショーンの目が、落ち着かなくヴィゴを見た。
「…あの…」
ショーンの声が、遠慮がちだ。
始めての経験にびくつく男にぴったりだ。
「なんですか?ハンサムなお客様」
ヴィゴは、すかさず、ショーンに対して媚を売った。
ヴィゴの言葉に、ショーンが驚いたように髪をかき上げ、頭を振った。
「俺は、ハンサムなんかじゃない。…そういう見え透いた嘘はやめてくれ」
ショーンの設定しているキャラクターは、極普通の勤め人だろうか?
色事に慣れていない雰囲気が、ぷんぷんしている。
「何を言ってるんですか。お客様は、ハンサムですよ。言われたことないですか?」
「…そんな…」
ショーンの顔に浮かぶ、困惑の表情。
ヴィゴは、そっとショーンに近づいて、ショーンの髪に触れた。
「この金髪。染めているわけでもないんでしょ?それに、その目。俺もこの商売が長いけど、なかなか売るほうにもこれだけの容姿の人間はいないですよ」
多分、こんな人間を前にしたホストは、強引にはでないだろう。
ヴィゴは、優しくショーンに、言葉をかけて、そっと隣に座った。
「お話を遮ってすみません。で、お客様のおっしゃろうとしていたことはなんでした?」
間近でヴィゴに微笑まれて、ショーンは、少し後ろへと下がった。
ヴィゴは、距離を詰めず、ショーンの顔をただ、優しく見つめた。
ショーンの目は、他人を見る目だ。
「…俺を驚かしてくれた、この招待に関係があります?」
ヴィゴは、さすがにショーンも役者だなと、思いながらも自分もキャラクターになりきっていた。
だだし、ヴィゴの好みに合わせて、すこし、複雑に話を振った。
ヴィゴの希望では、本当に初めてこういうことに手を染めるという男にショーンをしたかった。
「…悪い。あの…すまない。えっと、君は、普段はこういうことをしない?」
ショーンは、上手く話に乗ってくれた。
ヴィゴは、慣れていないショーンの態度にますます笑みを深めた。
「ええ、まぁ、しませんね。俺が所属している店は、女性が対象ですし」
ヴィゴは、ショーンに優しく微笑んだ。
「…悪い…家にあったカードを見てかけたもんだから。…あの…帰ってもらったほうがいいのかな?」
ショーンは、普段のしゃべりの滑らかさなど忘れてしまったようだ。
ぎこちない話し方をし、肩にも恐ろしく力を入れている。
「まぁ、いいです。お客様くらい美人でしたら、俺のほうも好みの範疇だし」
ショーンは、隣に座るヴィゴを困ったような目をして見た。
「好みの範疇って…あの、平気だってことか?」
「ええ、おっしゃるとおりで」
ヴィゴは、ショーンの膝を掌で触った。
途端に、足に力の入ったショーンをくすりとヴィゴは笑った。
「お客様こそ、俺でよかったですか?もっと、マッチョなタイプの方がよかった?それとも、もっと若いの?そういう関係の店にも、つてがあるから、なんだったら、チェンジしてもいいですよ。どういうのが御希望でした?」
ヴィゴも、普段のショーンとの会話を忘れた。
自然に、距離のある言葉が口をついて出た。
ヴィゴは、初めての客とコミュニケーションをとる男だ。
頭の大半は、この客は、チェンジなんてしないなと本気で考えていた。
だから、この初心な客をどうやって蕩かしてやるか。そればかりで、頭が一杯だ。
目の前の、ブロンドは、肩が小さく震えていた。
落ち着き無くさ迷う目が、本当にヴィゴの好みだった。
こんな泣きそうな目をして、電話をかけてくる客を抱きしめて気持ちのいい思いをさせてやるのが、ヴィゴの仕事だ。
心置きなく可愛がってやればいい。
「あ…あの、本当に、こういうことをするのは初めてで、あの…だから…できれば君で…あの…もう、誰かがやってくるのを待っているだけの勇気がないんだ」
ショーンは、膝に力を入れたまま、ヴィゴに許しを請うような顔をした。
かわいい。
「俺の方は、全く構いません。それよりも、お客様、本当に初めてで?えっと、失礼なことを聞きますけど、今までは?」
「あの…できれば、ショーンと。お客様と呼ばれるのは…」
「ああ、失礼。ショーン」
ヴィゴは、このタイミングに言葉遣いを変える気になった。
慣れないショーンをリラックスさせるためにも、もっとフランクな言葉の方がいい。
名前を呼ばれて安心したように頬を緩ませたショーンは、潤んだ目をして、ヴィゴをじっと見つめて、告白した。
「ごめん。迷惑をかけるけど、本当に、初めてなんだ。あの…妻と離婚したばかりで、その…ずっと違和感はあったんだけど、自分のことをノーマルだと信じてて。…家に残っていたカードをみて衝動的に電話してしまったんだ。あの…迷惑をかけてすまないと思ってる」
ヴィゴは、ショーンのことを飲み込んだ。
かなり好みの設定だ。
これだけわかれば、もう、客としては十分過ぎる自己紹介だ。
「…ショーン」
ヴィゴは、膝から手を離し、大きく腕を広げて、ショーンを抱きしめた。
ショーンは、逃げ出したそうに身じろぎしたが、すぐに、ヴィゴの肩に顎を乗せた。
自分が金を払って手に入れた身体を確かめるように、ヴィゴを抱きしめた。
「ショーン、どう?こうやって、抱きしめられるのは?」
ヴィゴは、ショーンの耳もとで、甘く囁いた。
「…想像してたのより、ずっといい」
ショーンは、おずおずと口にした。
ヴィゴは、ショーンの髪を撫でた。
「じゃぁ、キスしようか」
ヴィゴは、顔を傾け、まず、ショーンの頬にキスをした。
ショーンは、唇を尖らせて待っていて、ヴィゴのキスに目を大きく開けた。
当てが外れたような悲しそうな目をしていた。
ヴィゴは、優しく笑いかけた。
「大丈夫。これからたっぷりしてやるよ。まず、あんたの気持ちの良さそうな頬に触ってみたかったんだ」
ショーンは、照れたように笑った。
「そんなこと、言われたのはいつぶりだろう?さすがに、商売でやってると口が上手いな。俺みたいな中年の男相手なんて、ひどいカードを引いたと思っただろう?」
ヴィゴは、ショーンの唇に指先で触れた。
「しっ。これからは、商売ってことは忘れて欲しいな。さすがに俺も今回は思わずいろいろ聞き出しちまったけど、普段はもっとはじめから、恋人ムードなんだぜ?」
「恋人?」
「そう。ショーン。ショーンは、恋人を買ったんだ。だから、これから、ショーンはしばらく俺の恋人だ。かなり好みだ。あんた、自分のこと自信がないみたいだけど、すげー美人だぜ?金を払ってくれる人間がきっと一杯いる」
「嘘だ…でも、うれしいよ。…えっと…」
ショーンは、ヴィゴの顔を見て、聞くことが許されるのかどうか、戸惑った顔をした。
かわいらしい。
こんなかわいい客は、あまりいない。
ヴィゴは、ショーンの設定に感謝した。
「やっと名前を聞いてくれたな。ヴィゴだよ。ヴィゴ。言ってみて。ショーン」
「…ヴィゴ」
小さく呟くショーンの唇をかなり本気になってヴィゴは塞いだ。
ショーンをベッドへと押し倒したヴィゴは、何度も初めてだと繰り返したショーンを恐がらせないように、まず、丁寧にキスをした。
ショーンの薄い唇から見えている舌は、おどおどとしていて、とてもかわいらしい。
「緊張しないで。大丈夫。俺に任しておいてくれれば、絶対にいやな目には合わせないよ」
ヴィゴは、ショーンの強張った頬を撫で、ついでに、柔らかな髪を撫でた。
ショーンが、小さく息を吐き出す。
「そう。ショーン。大丈夫。落ち着いて。俺は、ショーンの唇にキスをするのが、好きだけど、ショーンは好きかな?こういうキスは、ショーンの好みにあってる?」
ヴィゴは、ショーンの上顎を擽り、口の奥へと逃げ込もうとしている舌を、舌先で触った。
「…ヴィゴ…あの、うん。気持ちがいいよ」
ショーンが生真面目に返事を返した。
いつまでも落ち着かない目が、ヴィゴを煽った。
「もっと、して欲しい?」
ヴィゴは、ショーンの髪を撫で、半開きになっている濡れた唇にキスをした。
「…あ、じゃぁ、もっと」
許されることなのかと、ショーンの言い方は、半信半疑だ。
ヴィゴは、柔らかく笑った。
「もっと、わがままを言っていいぜ?ショーン。本当は、キスより、もっとして欲しいことがあるんだろう?」
ショーンは、金を払ってまで、ヴィゴを呼んだのだ。
こんなキスだけで満足できるわけがない。
ショーンが、ヴィゴから、視線を外した。
ヴィゴは、初心なショーンの目元にキスを繰り返し、バスローブの襟元から手を入れて、ショーンの肩を撫でた。
「大丈夫。ここには俺と、ショーンの二人しかいないんだから、もっと素直になっても平気だ。…ショーン、気持ちのいい手触りだ。すこし、柔らかくて、でも、ちゃんと筋肉がついてる。…どうして欲しい?」
ショーンの肌は滑らかだった。
だが、肌が強張っていた。
いつもなら、ヴィゴの背中を抱く手が、どうしたらいいかというように、シーツの上をさ迷っていた。
それが、ヴィゴを煽る。…本気にさせる。
ショーンが、最初に見せたのと同じ、潤んだような目をして、ヴィゴの顔をうかがった。
「…言わないとダメか?」
「ダメじゃないさ。平気だよ。でも、口にしてご覧。俺は、ショーンのどんな望みだってかなえてやるよ。本物の恋人が出来たって、なかなかショーンの性格じゃ、して欲しいことなんて言えないだろう?だったら、こんな機会に思い切って理想どおりのセックスをしちまいなよ」
ヴィゴは、ショーンの胸に触って、大きな音を立てている心臓の鼓動を掌に味わった。
胸の盛り上がりも、ちょうどいい感触だ。
小さな乳首が、ぽつんと立ち上がっているのが、なんともかわいらしい。
ヴィゴは、何度か緩くショーンの胸を揉み、それから、乳首を指先で、撫でた。
「ここ、こういうところは、触って欲しくない?」
「……触って欲しい」
本当に、小さな声で呟いて、ショーンは、ヴィゴの洋服をきつく掴んだ。
ヴィゴは、ショーンのバスローブを緩めて、かわいらしい乳首を口に含んだ。
ちゅっ、ちゅっと、吸い上げる。
ショーンは、強く目を閉じて、ぎゅっとヴィゴの頭を抱いた。
ヴィゴは、ショーンのバスローブの裾を割って、長い足に触った。
膝下から、撫で上げる。
太腿の柔らかな感触は、ヴィゴの目を細めさせた。
ショーンの欲望は、立ち上がっている。
「ショーン…」
ヴィゴは、優しくショーンの名を呼び、手の中にペニスを握った。
一瞬身体を固くしたショーンだったが、すぐに、ヴィゴへと体を摺り寄せた。
「そう。ここ、触って欲しいんだよな。ショーンは。そうやって、正直にされると嬉しいよ。ショーンのことがもっと可愛がってやりたくなる」
ヴィゴは、濡れてぷっくらと膨らんでいる乳首を何度か吸い上げてやった。
そして、手の中のペニスを優しく扱いた。
ショーンは、泣きそうな目をしてヴィゴを見つめた。
「ショーン。かわいいね。もう少し、足を大きく広げようか」
ヴィゴは、ショーンの太腿に手をかけた。
慣れていないショーンが、少しだけ、抵抗を示した。
「大丈夫。ショーン」
滑らかな肌触りの太腿を何度かヴィゴが撫でてやると、ショーンは、ゆっくりと足を開いた。
ヴィゴは、ショーンの胸にキスをして、するりと身体を下に移動した。
まずは、なんともかわいらしい様子のショーンにサービスしてやるつもりだった。
固くなっているショーンのペニスをぺろりと舐める。
「…あっ、ヴィゴ!」
ショーンは慌てたように体を起こした。
ヴィゴは、ショーンの体を押し戻した。
「平気。ショーン。リラックス。さぁ、気持ちよくなっちまっていいから」
ヴィゴは、ショーンのペニスを口に含んで、舐め始めた。
ショーンのペニスは、ヴィゴの口のなかで、正直に快感を表現した。
ヴィゴは、そんなショーンがかわいらしく、熱心にショーンのペニスをしゃぶってやった。
金色の毛にも、優しくキスをしてやる。
「ショーン…」
垂れ下がっている玉にキスをしてやると、ショーンは、自分からもっと大きく足を開いた。
ヴィゴは、ペニスを扱きながら、玉を柔らかく口に含んだ。
「ヴィゴ!」
口の中で何度か転がし、舌先で包みこむように舐め溶かしてやると、ショーンが大きく腰を揺すった。
ノーマルで通してきた男らしい反応だ。
ヴィゴは、ショーンの動きに合わせて、顔を動かした。
鼻が、揺れているペニスに触れた。
「…かわいいねぇ」
ヴィゴは、短い毛の絡まる股の間に舌を走らせ、期待しているだろう小さく窄まった肛門を舐めた。
「うあっ!」
ショーンが、大きな声を上げた。
ヴィゴは、ペニスを扱いている手を早く動かし、ショーンを安心させてやりながら、何度も舌先でショーンの肛門を舐めた。
肛門の皺がぴくぴくと震えた。
ショーンの太腿にも必要以上に力が入った。
「石鹸の匂いがする。自分で綺麗にしたの?」
ヴィゴは、優しい言葉で、ショーンをからかった。
「……ごめん。…俺は…」
緊張に身体を固くしていたショーンが、泣き出した。
慌てたヴィゴは、ショーンの股の間から顔を上げ、泣いているブロンドの頭を抱きしめた。
正直ヴィゴはショーンの演技に驚いた。
ここまで、するか?という、驚きと共に、こんな可愛い顔をしてくれるなという、胸を締め付けられるような気分を味わった。
「泣くなよ。泣かないでくれ。俺が悪かった。責めたわけじゃないんだ。俺のために、綺麗にしてくれてたことがうれしかっただけで」
ショーンは、ヴィゴの腕の中でしゃくりあげた。
「…ちがう…そうじゃなくて…やっぱり…そこ…欲しかったんだって…」
苦悩と欲望を滲ませているショーンは、最高に色っぽかった。
「して欲しくて、当然だろう?ショーンを気持ちよくしてやるために、俺はがんばってるんだぞ。ああ、もう、そんな可愛い顔をして泣かないでくれ。どうしてやったらいいのか分からなくなるだろう?」
ヴィゴは、自分の唇と、舌をシーツで拭うと、泣いているショーンの顔にキスの雨を降らせた。
「かわいい。ショーン。あんたは、すごくかわいい」
ヴィゴの言葉には、演技を抜きにした響きがあった。
「もっと、ここで、気持ちよくしてやるから、泣かないでくれ。初めてのあんたでも、蕩けるほど感じさせてやるから、泣くのを止めてくれ」
ヴィゴはかなり本気でショーンを口説いていた。
キスを続けながら、ショーンの尻の間に手を忍ばせた。
柔らかい尻の肉を手の平のなかに納めて、緩く撫でながら、ベッドサイドの上をみた。
そこに、さっきまで使っていたジェルのチューブがあった。
設定でいけば、ショーンが用意しておいたものと見るべきか。
だが、そこまで手を伸ばして、ショーンと身体を離すことを嫌ったヴィゴは、自分のポケットを探り、中から違うパッケージの潤滑剤を取り出した。
ヴィゴは色事を仕事にしているという設定だ。
持っていても不思議じゃない。
普段なら、洋服の中にまで、ジェルを準備しているヴィゴを睨むショーンが、目元を赤く染めた。
ヴィゴは、慣れた手つきで、蓋を外す。
ショーンの高い鼻にキスをしながら、ヴィゴは、指先を濡らして、ショーンの尻を掻き分けた。
きつく閉じている肛門に触る。
ショーンが、何か言おうとしたので、ヴィゴは、キスで言葉を封じた。
まだ、涙に濡れる瞳が、ものいいたげにヴィゴを見つめた。
ヴィゴは、優しく笑いかけ、円を描くように、ショーンの肛門をマッサージした。
指の先に、ぎゅっと絞り込んでいく皺の感触があった。
「リラックスして、ショーン。ショーンを苛めようってわけじゃないんだ。ここをすこしだけ緩める努力をしてくれる?触られるのは気持ちいいだろう?」
ヴィゴは、爪の先だけを、ショーンの絞り込んだ穴の中に突き刺した。
爪先で、中から刺激する。
ショーンの腰が揺れた。
「かわいい。ショーン。そう。そうやって感じててくれればいいから。ほら、俺に身体を預けて」
ヴィゴは、ショーンにキスをしながら、指先を中へと押し込んでいった。
すこしだけ、ショーンが苦しそうな顔をする。
ヴィゴは、ショーンにキスを続けながら、ゆっくりと広げるように指を入れていった。
「ショーンは、中の感触まで、気持ちがいい」
ヴィゴが、ショーンを誉めると、ショーンは、顰めていた眉を開いて、にこりと笑った。
ヴィゴは、心の打ちぬかれる思いだった。
まだ、瞳は濡れている。
好奇心もあるだろうが、未知の恐怖の方が、ショーンには大きいだろう。
なんと言っても、このショーンは、初めてなのだ。
なのに、誉められて嬉しそうに笑うのだ。
ヴィゴは、殊更愛情を込めて、ショーンの内部に触れていった。
ショーンのいい部分を探す。
「ショーン、あんた、ほんとうにかわいい」
ヴィゴは、キスを繰り返しながら、ショーンの尻の間で、指を動かし続けた。
事実を言えば、ショーンの穴の中が、すこし緩かった。
当たり前だ。
ここにいるショーンは、バージンだが、本物のショーンは、今日だけで、2回ヴィゴに突っ込まれていた。
ショーンは、本気で尻に力を入れて、締めて掛かってきていた。
ショーン自身は、初めてだという設定を忠実に守ろうとしていた。
ヴィゴは、そのことを、気付かない振りでやり過ごしてしまうか、それともこの話に利用しようか、少し考えた。
ヴィゴは、ショーンの努力を可愛く思い、耳元に唇を寄せた。
「ショーン。すこしだけ、柔らかくなってる。洗ってくれたとき、遊んじゃった?」
ヴィゴは、内部の緩みを話に利用することにした。
ショーンが、顔中を赤くして、ヴィゴの視線から逃れようとした。
ヴィゴは、ショーンを片手で捕まえ、潤みを増した目元にキスを贈った。
この男は、よく泣く男だ。
だが、とてもかわいらしい。
演技とはいえ、なんの準備もなく始めた遊びだ。
ショーンの中の隠された人格なのかもしれない。
「ショーン?」
キスを続けながら、ヴィゴは、もう一度ショーンの名を呼んだ。
くちゅくちゅといつまでも、指だけで、ショーンの中を押し広げた。
「あの…ヴィゴ。あの…」
ショーンは、ヴィゴの質問に答えるべきなのかどうか、悩んでいた。
ヴィゴは、目尻に皺を寄せて笑った。
「なに?ショーン」
「あの…俺、おかしい?」
心配そうに見上げるショーンにヴィゴは何度もキスをした。
「確かにちょっと、おかしいかもな。こんなに気持ちのいい穴を持っている奴なんてなかなかいない」
ヴィゴは、優しく笑いながら、深くまで指を押し込んだ。
「あの…そうじゃなくて…あ…あの…」
焦ったようなショーンの声が、ヴィゴを止めた。
ヴィゴは、穴のなかで、指をくるりと動かした。
ショーンのペニスがぴくんと跳ねる。
「ここで、こんなに感じられるか?って質問?それは、俺の腕がいいからだと思って欲しいな。…いいじゃないか。気持ちがいい方が幸せだろう?」
ヴィゴは、潤んでいる目に何度もキスをして、中だけでも十分感じられるショーンのペニスを優しく扱き上げた。
ショーンの腰が揺れる。
気持ちの良さそうな顔だ。
ショーンは、ヴィゴがするバージン相手の手ぬるい愛撫に、安心した顔を隠していた。
その顔が時々覗く。
「ショーン、愛の言葉は迷惑?」
ヴィゴは、いつもなら、もう、とっくに、突っ込んでいた。
ショーンが、困ったような目でヴィゴが見た。
「ショーン」
ヴィゴは、にっこりと笑い、甘く名前を呼んで、本物のバージンを抱くように丹念にショーンの肛門を解した。
ペニスを咥え込んだショーンは、とろりとした顔をした。
十分に、ショーンを蕩かしたヴィゴは、そっとペニスをショーンに突き刺した。
ショーンの顔が普段に近い。
ヴィゴは、ショーンの首筋にキスをしながら、緩く腰を打ち付けた。
いい部分を突上げられると、ショーンは声を押さえられない。
バージンは、こんな甘ったるい顔をしない。
ヴィゴの突上げに、鼻声を上げない。
さすがに、肛姦での快感に、ショーンの演技力も、崩れ落ちた。
あんなにも、ヴィゴを見ていた緑の目が、閉じられていた。
まだ、客とホストとしての関係だったら、ショーンは目が閉じられるほど、安心していなかったはずだ。
だが、ヴィゴの方は、演技を続行中だった。
「ショーン、大丈夫?」
ショーンは、肛門を使って、性交をすることに慣れていた。
ヴィゴが慣れさせた。
何が、大丈夫なんだ?と、自分自身で思いながら、ヴィゴは、ショーンを気遣う声をかけた。
ショーンが、慌てたように目を開けた。
自分の置かれている状況を思い出したようだ。
バージンの仮面を被った。
「…大丈夫」
開いた唇から漏れている息は熱い。
だが、ショーンは、その快感を持て余すような顔をした。
味わったことのない快感に困惑している表情を作った。
ヴィゴは、ショーンのその顔にやられた。
こんなショーンは、本当の初めてだって、お目にかかったことがなかった。
これほどかわいらしい顔をするとは思ってもいなかった。
ヴィゴは、よかったと、ショーンの頬を撫でながら、遠慮しすぎなくらいゆっくりと腰を動かした。
「痛くない?」
「…痛くない」
十分に気遣いながらも、ヴィゴは、ショーンに夢中になった。
本物のバージンを抱くように、無理な動きは一切せず、ショーンを突上げるだけでなく、体中を撫で回した。
何度も何度もキスを繰り返し、普段なら後ろだけでいくまで攻め上げるのを優しくペニスを扱いて、精液を絞りだしてやった。
ぐったりとしたショーンを、ヴィゴは、くすりと笑って揺さぶった。
「どう?ショーン。気持ちいい?」
ヴィゴは、もう、ただのショーンに聞いたつもりだった。
「あ?…ああ、すごく気持ちがいい」
まだ、演技を続行中のショーンは、生真面目にヴィゴへと答えを返した。
自分から絡ませていた足を恥じるように引っ込め、尻に強く力を入れた。
ヴィゴは、馴染んだそこが、固く締め付けるのを、残念に思った。
「ショーン。もう、やめようか。ここから先は、普通に楽しまないか?」
バージンのショーンをいかせたヴィゴは、もう、満足していた。
ここから先は、自分の欲望を満足させるためにも、普段のショーンに帰って来て欲しかった。
ヴィゴは、ショーンの顔を覗き込んで、潤んだ緑の目にキスをした。
ショーンが表情を切り替えて、ヴィゴの唇に齧り付いた。
「…ヴィゴ」
甘く名前を呼ばれて、ヴィゴはその気になった。
だが、ショーンは、遊びが終わりだと知ると、脂下がっていたヴィゴの顔に平手を食らわした。
「ショーン!?」
それほど手ひどく叩かれた訳ではなかったが、ヴィゴは驚いて、ショーンの手をベッドへと張りつけにした。
今の、今まで、ショーンはヴィゴといい雰囲気だった。
ショーンは、ヴィゴの顔をきつく睨んで、顎を突き出した。
「…ヴィゴ。もう、全部の遊びを終わりにする。説明なしで頷けるか?」
ショーンは本気だった。
あんなにも潤んでいた目が、きつく吊り上がっていた。
ヴィゴは思わず頷いた。
頷かなかったら、ショーンが酷く傷つくような気がした。
ショーンは大きなため息を付いた。
「…なぁ、ヴィゴ。そろそろ、ただの俺とセックスしてくれ」
ショーンは、ヴィゴの拘束を抜け出し、平手打ちをした頬を優しく撫でた。
「遊びも楽しくないわけじゃないが…ヴィゴ。あんた知ってたか?ここに着いてから、俺がただのショーンだったのは、あんたが着くまでの間だけだったんだぜ?」
ヴィゴは、ショーンの中にペニスを突っ込んだままで、茫然と顔を見下ろした。
「…普段の俺には飽きた?」
ショーンの目が恨みがましく、ヴィゴを見た。
ヴィゴは慌てて首を振った。
「初心な反応をする俺が好きなのか?」
ショーンの目は、まだ、ヴィゴを疑っていた。
「…違う。いや、あの、あんなことしておいて言い訳がましいが…いや、勿論、ああいうあんたも物凄く可愛くて、大好きなんだが、でも、普通のショーンだって大好きだ。愛してるんだ」
ショーンがじっとヴィゴを見ていた。
ヴィゴは、本気になって、謝った。
「ごめん。悪かった。ショーン。…本当に、悪かった。許してくれ」
抱きしめてキスをしたら、まだ、入ったままのヴィゴのペニスに、ショーンがうめいた。
ショーンは、ヴィゴをみつめて、キスを返した。
「ごめん。ヴィゴ。悪いが、俺はこらえ性がないんだ。折角会えた一週間を、ずっとこのままでなんて我慢できない。もう、犬になったヴィゴもごめんだし、俺が演技をするのも嫌なんだ」
「本当に、悪かった。ショーンがそんなに嫌な思いをしてるなんて考えてなかったんだ」
ヴィゴは、謝罪を繰り返した。
「約束を守らなかったって、意地の悪いことをしないか?」
ショーンは、まだ、ヴィゴを疑った。
「ごめん。本当に、悪かった。ショーン。もう、何も要求しない。許してくれ。愛してる」
ヴィゴのキスに、ショーンは首を振った。
「ヴィゴ。要求はしてくれ。ほら、これ。これで、もっと俺を可愛がりたいんだって、要求してくれよ」
ショーンは自分から腰を動かした。
そして、腕も足もヴィゴに回して、きつく拘束した。
口を開けてキスを待っている。
ヴィゴは、改めて、この恋人の懐の深さに、感謝した。
End
Back
バージンの豆。本当はAUにでもして書こうかと思ったのですが、モーちゃんとの遊びとして取り入れてみました。
いつものいちゃいちゃものですね(笑)