罰ゲームバトン。パート2 小話5話
*天職
撮影の合間の短い休日、二人でドライブに出かけたのだが、途中で車が故障してしまった。辺りに牛はいるが、人はいない。民家も30分は見ていない。それでも、ショーンは、ヴィゴがとても器用になんでもこなすから、きっと大丈夫だと、道具箱に座って時々注文のレンチなどを出しながら、のんきにビールを飲んでいたのだ。
しかし、1時間経ち、2時間経ち、そろそろショーンも不安になってきた。
「ヴィゴ……、これは……一体?」
振り返ってショーンはもっと不安になった。修理というより分解だ。
ヴィゴは肩を竦めてみせた。
「ショーン。どうも俺の天職は、俳優みたいだ」
*それだけは我慢できない。
まだ、ショーンは、ヴィゴと付き合っていることを誰にも気付かれていないと思っていた。
それは、ホテルの都合で部屋が隣同士になってしまっているイライジャにもだ。
しかし、ある朝、とうにヴィゴを帰し、朝食を食べに行こうと廊下に出たショーンを、イライジャが待ち構えていた。
Tシャツの上にガウンを羽織ったイライジャは寝起きのようだ。髪を跳ねさせ、腕を組んだままショーンを睨み上げる。
ショーンが挨拶するより先に口を開く。
「あのね、ショーン。わざとらしい誤魔化しにも付き合ってあげる。夜、うるさいのも我慢してあげる。朝方までごそごそしてるのにも、大変なダーリン相手にお疲れ様って言ってあげてもいい。だから、ヴィゴに、毎回僕の朝刊を持って帰るのをやめろって言っといて!」
バタンと、イライジャは部屋のドアを閉めた。
*メモ
撮影所の椅子に座っていたショーンに、スタッフの女性がメモを渡した。
お礼を言って受け取ったショーンは、開いてみて驚いた。
『今夜、僕の部屋で二人きりの夕食を楽しむ栄誉を僕に与えてくれませんでしょうか? あなたを僕は、長い間、賛美の目で見つめ、崇拝してまいりました。美しい方、あなたこそ、僕のただ一人の人です オーランド』
ショーンは、自分の読むメモが信じられなくて、目を見開く。
オーランドは、騒がしいものの、大変かわいらしい若者だ。ショーンも気に入っている。しかし、これは困る。
『追伸:もし、今晩、あなたがお忙しいようでしたら、隣の方にこのメモをお渡しください』
ショーンは、隣に座っていたPJの肩をつついて、メモを回した。
*自慢……?
撮影は天気待ちで一時中止となった。
暇を持て余すドミニクは、ヴィゴに話しかけた。
「なぁ、ヴィゴ。あの手伝いで今日来てる子。すっごくきれいな脚だと思わないか? おっぱいのせり出し方もたまんないよな」
「そうか?」
サングラス越しに眺めたヴィゴの返事はあまり乗り気じゃない。
「なんだよ。ヴィゴは、赤毛は趣味じゃない? 俺、あの子だったら、きっと明日の太陽が黄色くなるまで頑張っちゃうね」
「ドム。向こうのテントの金髪、あの尻、あっちの方が、もっとすごい。俺はあっちだったら、ヒイヒイ泣き出すまでやりまくる自信があるぞ?」
ドミニクは、うんざり顔で、やに下がったヴィゴを眺めた。
「……ヴィゴ。…………あれ、ショーン」
*悪戯
ふうーっとため息をつく英国人をイライジャこそ、ため息を吐き出しつつ見下ろしていた。
「俺が悪いっていうのか?」
イライジャは、ショーンの隣に腰掛けた。
「事情を話してくれる?」
「昨日は、無理やり撮影を早引きしただろ? あれはヴィゴがそうしろって言ったんだ。ヴィゴは強引に俺を家に連れ帰って……」ショーンの顔が険しくなる。
「うん。まぁ、でもさ、二人、上手くいってたじゃん。そりゃぁ、撮影を抜けさせるなんてのはどうかと思うけど、年とってからの恋愛って、結構激しかったりするんでしょ? そんなんで、ヴィゴの顔に痣が残るほど殴るのはどうかな?」
「二階の寝室に連れ込んで、ベッドに放り出し、俺の服を脱がせた。そして、アイツは言ったんだ。『ショーン。今日はエイプリール・フールだ』って」
「そりゃぁ、殴ってもいい」
END
どれか、気に入る話しがあるといいなぁ……