厚さ3ミリの愛

 

それは、ボロミア最後になるシーンの映像だった。

「どう?とりあえず、少しだけ色補正をしてみたんだ」

パソコンの画面に映し出されているものを確認しながら、PJは特別試写会の招待客を振り返った。

特別試写会と言っても、他のメンバーに見つからないよう、ついたてを立て、休憩中の撮影所の端に椅子と机を並べたに過ぎない。

ベニア板を隔てた外は、がやがやと人が通り過ぎていた。

時々、大道具を運ぶ、小型のクレーンも通り過ぎていく。

全くの臨時、秘密の上映会会場で、招待客の一人であるショーンは照れくさそうに笑った。

「こんなに早く見せて貰えるなんて思ってなかった」

「これから、まだ、ずいぶんと弄るとは思うんだが、だいたいこのラインで行く。ヴィゴもどう?」

時間にしてみれば本当に短いシーンを再生させながら、PJは、ヴィゴの顔をのぞき込んだ。

「いいんじゃないのか?」

もう一人、そして、最後の招待客であるヴィゴは、にやにやと笑いながら、隣に座るショーンを肘でつついた。

珍しくショーンは、身を乗り出すようにして、画面に見入っていた。

ボロミアは、胸に矢を射られ、土の上に倒れている。

「言えよ。ショーン。感動的な場面だ。って。すばらしい名演技だって言っていいぞ」

ヴィゴは、煙草を口にくわえたまま、死んでいくボロミアにキスする自分の姿に重ね、チュッと、キスの音を送った。

画面の中のヴィゴは、友をなくすことになった後悔や、諦念、それだけでは足りない複雑な思いを胸にしたとても切ない表情をしていた。

ショーンが、片方の唇を引き上げ、作った渋い顔をした。

「誰の演技がだよ、ヴィゴ。俺の演技か?そりゃぁそうさ。ボロミアのラストシーンだ。きっと観客は、感動のあまり涙するね」

「そりゃぁ、観客は涙するさ。なんたって、これでもう、ボロミアを見なくてすむんだもんな。ほっとするあまり、つい涙しちまうって奴だろう?」

PJがごほんと咳をした。

「ヴィゴ。違うだろう?ヴィゴたちが、随分こだわっていたから、特別に見せてるんだ。もっとマシな感想を言え」

「ああ、PJ・・・」

ヴィゴは、肩をすくめ、椅子に座り直した。

「すばらしい出来映えだ。さすが、PJだと思うよ」

つられたようにショーンも口を開いた。

「ほんとだよ。PJ。こんなに感動的になっているとは思わなかった」

「満足してるか?ショーン?」

「ああ、PJ。ここに繋げられるようこれからもしっかりやらないといけない。と、改めて思った」

ショーンは、うつむくアラゴルンの横顔で止まったままの画面に視線を止めたまま、しきりに唇を触っていた。

ヴィゴは、椅子の背に寄りかかり、軽く前後にパイプ椅子を揺すっている。

PJは、もう一度その短いシーンを再生した。

ショーンがちらりとヴィゴを見た。

ヴィゴの煙草が、高い天井に向かって、煙を立ち上げていた。

「・・・ヴィゴ。気に入らない?」

「いいや。すばらしいって言ってるだろう?ボロミアのラストシーンだ。観客は大泣きさ」

ヴィゴの目は、パソコンの画面に留まってはいなかった。

 

「・・・ヴィゴ」

PJが、新しいシーンの撮影準備のため出ていくと、ショーンは、ヴィゴの腕を引いた。

「ヴィゴ。俺は、悪くないと思っているんだが。ヴィゴは本当のところ、気に入らないのか?」

撮影道具の材料になるベニア板で囲っただけのスペースには、PJが残したパソコンがそのまま置かれていた。

二人は、まだ、時間があることだし、ゆっくりしていけと、この狭いスペースに置いて行かれたのだ。

ヴィゴは、煙草に火を付けたままそっぽを向いていた顔をショーンにあわせた。

「あれ」

ショーンは、パソコンを顎で示した。

「あの演技じゃ、ヴィゴの気に入らないのか?あんた、殆ど画面を見てなかっただろう?」

ショーンは、ヴィゴを睨み付けた。

ヴィゴは、詰問するようなきつい目をしたショーンに困ったような笑いを向けた。

だが、ショーンは許しはしない。

「ヴィゴ。気に入らないんなら、はっきり言え。俺は、いくらでも撮り直しにつき合う」

ショーンは厳しい口調だった。

「違う。そんなんじゃない。ショーン」

「なら、どうして見ない?さっきの態度は、PJに対しても失礼だろう?」

ショーンの目は真剣だった。

ヴィゴはますます困った顔になった。

煙草を何度もくわえ直し、髪を弄り、小さなため息をついた。

「ショーン。PJは、俺の態度に満足してたよ」

詰め寄るショーンとの距離を少しとりながら、ヴィゴは小さく肩をすくめた。

「あの態度で?ヴィゴ。お前、殆ど画面なんか見てなかったじゃないか」

ショーンは、全く納得しなかった。

ヴィゴは、怒っているショーンの頬にそっと触れた。

ショーンは、顔を振って、手を払ってしまう。

ヴィゴはそれでも、もう一度、ショーンに触れた。

「ショーン。ショーンの演技はすばらしかった。俺も、かなり良い演技が出来ていたと思う。・・・だからこそ、見たくないんじゃないか。PJは、それに気づいていた。だから、すっかり満足して2回も上映していきやがった」

「ヴィゴ・・・?」

「もっと後になれば、あのシーンを誇らしい気持ちで見ることが出来ると思う。でも、今は、まだ、見るのが嫌だよ。いくら順番どおりに行かないとわかってる撮影でも、やっと親交が深まったばかりのボロミアを失うとこなんて見たいわけがない」

ヴィゴは、照れくさそうにショーンの頬を軽く叩いた。

PJは、仲間が死んでいくのに耐えられず、目をそらしてしまった俺にすっかり満足してたんだよ。ショーン、あんたの名演技のせいで、つい、涙ぐみそうになった俺のこと、どう?好きかい?」

ヴィゴの見つめる視線に、慌てたようにショーンは目をそらした。

「ヴィゴ・・・」

「かわいい男だろ。あんたが、手の位置がどうとか。顔の向き加減についてチェックしてる最中に、俺は、ボロミアの無念を思ったり、いま触れてる体温の暖かさをを神様に感謝したり、随分忙しかったんだ」

ヴィゴは、頬に触れている手を動かして、ショーンの耳に触れた。

ヴィゴの指に触れるショーンの体温は温かい。

「触っていい?ダーリン」

「やめろ。恥ずかしい奴だな」

ショーンの頬が少し赤かった。

「大丈夫。ここなら、誰からも見えないから」

ヴィゴは、ショーンの耳を優しく擽り、短くなった煙草を灰皿に押しつけると、ショーンを抱き寄せ髪に唇を寄せた。

「ショーン。大好きだよ。あんたがここにいてくれて、本当に嬉しい」

ヴィゴの唇が、今度は、頬に触れた。

ショーンは、ヴィゴの胸を押した。

鬘から見えるショーンの耳が赤かった。

「ヴィゴ。やめろって。こんなとこで」

「見つかるから?大丈夫。釘一本使ってないが、これでも、絶対に見つからない場所を作れというPJ命令に従った大道具チームの作品だ。外からは全く見えない」

PJは、お前にこんなことをさせるために、これを作ったんじゃない」

「でも、これは、そんなことするのにぴったりの出来だ」

「ヴィゴ!!」

ショーンが大きな声を出した。

ベニア板一枚の向こうは、撮影の準備にかかっていた。

遅れてきたらしい誰かの足音が駆けていく。

ヴィゴは、ショーンに頬を寄せて、耳元で、シーっとささやいた。

「ショーン。俺は、ついさっき、恋人に死なれた男だぞ。もっと優しくしてくれよ」

ショーンは、憮然とつぶやいた。

「じゃぁ、俺なんて、さっき死んだ死人じゃないか」

ヴィゴの唇がにんまりと笑った。

「それなら、暖めてめてやらないとな。死んだままじゃ冷たいだろう?」

ヴィゴは、まだ、文句を言おうとしていたショーンの唇を奪った。

 

「ショーン・・・」

ヴィゴは、机の上にショーンを押し倒すようにして覆い被さっていた。

ヴィゴの唇は、ショーンの顔の上に嫌になるほど押しつけられている。

だが、ショーンは、渋い顔をして、決してヴィゴに応えようとしなかった。

「ショーン・・・」

甘くささやいて、ヴィゴは、ショーンに口づけを繰り返す。

「ショーン。大好きだよ。あんたがここにいてくれて、本当に嬉しい」

ショーンは、決して流されはしなかった。

ベニア板の外では、大きく吠えているナスグル達の声が聞こえているのだ。

ライトの位置を変えているのか、巻き上がるチェーンの音もしている。

ショーンは、ぷいっと横を向いた。

「・・・確かに、俺がいりゃ、できるからな」

ヴィゴは、ショーンを抱きしめ、柔らかい頬に、キスを続けた。

「また、そういうことを言う。俺は、あんたほど即物的じゃないって言ってるだろう?」

「・・・じゃぁ、俺の太腿が味わってるものは、即物的感情の結果じゃないと言うつもりか?」

ショーンの目がじろりとヴィゴを睨んだ。

それだけでなく、ショーンは太腿を上げ、ヴィゴの高ぶったペニスを膝で、ぐりぐりと押す。

ヴィゴは、緑の目からわずかに視線をずらした。

ベニアの木目を見るようにして、唇の端を上げる。

「・・・まぁ、これは、なんというか。・・・ああ、そうだ。愛情の塊だな。あんたが、好きで好きで、しょうがないもんだから、どうしてもこうなる」

甘く囁くヴィゴは、続く抱擁で、ただの平机である作業台をがたがたと言わせた。

だが、ロマンティックな雰囲気を撮りを知らせるマイクの声が邪魔をする。

「休憩は終了。それぞれの位置についてくれ。リハーサルだ」

マイクは、イライジャ達に、続きで撮るシーンの打ち合わせを初めておくようにとも指示していた。

ざわめきは、本当に、薄い板一枚向こうにあるのだ。

「・・・ヴィゴ。あんた、本当にここでやろうっていうのか?」

ショーンは、慌てたようにヴィゴから逃れようとした。

「したくない?ショーン?」

ヴィゴの腕の中にあるショーンは、もう、すっかりヴィゴに抱きしめられ、その体温になじんでいた。

繰り返すキスも気持ちのいい感触だ。

ショーンは、迷う目をしていた。

だが、ショーンは、スタートをかけるマイクの声に後押しされるように口を開いた。

「こんな場所でなんて、俺は、明日の朝、気まずくて、朝日が拝めなくなる」

ショーンが言った遠回しな拒否の言葉は、ヴィゴの手を止めさせた。

ヴィゴは、何かを思い出すように、大きなライトがつり下がる天井を見上げた。

「・・・ショーン。あんた、明日って、午後出じゃなかったか?」

ライトに、撮影所の上空を漂う誇りがきらきらと光っていた。

ヴィゴの肩越しにむき出しの天井を見上げているショーンにも、ライトに光る埃が見えた。

「そうだが・・・」

ヴィゴは、嬉しそうな顔をして、ヴィゴのペニスを押しつぶすため曲げられていたショーンの太腿を掴んだ。

「じゃぁ、とりあえず、今は軽く済ませて、後で、あんたんちでゆっくりやろう。ショーンが朝起きて恥ずかしい思いをしなくてもすむように、昼間でぐっすり眠れるよう頑張らせて貰うさ。問題解決だろ?どう?」

ヴィゴは、大きく広げたショーンの足の間に、自分の体をぴったりと密着させた。

ショーンは、呆れたため息をついた。

そして、強引にヴィゴを押しのけると、机の上から身を起こした。

 

 

だが。

ショーンが、身を起こしたのは、ヴィゴを押しのけ、この物陰から出ていくためではなかった。

机から降りたショーンは、振り返り、自分の衣装に皺が寄っていないか、チェックした。

ショーンは、軽く衣装を叩き、すたすたと歩き出す。

まず、ショーンは、ベニア板を軽く押した。

勿論、それは、すぐに倒れそうになった。

小さな口笛を吹いたショーンは、それを避け、本物の壁に手を付いた。

肩越しにヴィゴを振り返り、人の悪い笑みを見せる。

「見つかった時は、お前、死んで詫びろよ」

信じられない台詞が、ショーンの口から飛び出した。

ショーンは、ヴィゴとのセックスに同意した。

ここは、ベニア板一枚で、囲われただけの全くセックスに不向きな場所だった。

なのに、ショーンは、誘う目つきで、ヴィゴを見つめる。

ヴィゴの方が驚いた。

ヴィゴは、ショーンを背中から抱きしめながら、いつ反撃されるかと体に力をいれた。

「好きだよ。ショーン」

しかし、髪を噛むように、ヴィゴが首筋に唇を埋めても、ショーンは、反撃してこない。

「・・・なぁ、どの口説き文句が、ショーンをその気にさせた?」

ヴィゴは、半信半疑のまま、ショーンの衣装を緩めていった。

上着を緩めようとすると、嫌がって首を振ったショーンに、ヴィゴの手は、慌ただしく下半身を彷徨う。

ショーンも後ろ手に、ヴィゴの腰を探った。

衣装を持ち上げるように高ぶっているペニスを布の上からなで回した。

「その気にさせた口説き文句?・・・リジ。どこにいるんだ?さっさと、現場に戻れ!っていうマイクの声?」

くるりと体返したショーンは、真っ正面からヴィゴの顔を見、にやにやと笑うと、急にしゃがんだ。

ヴィゴの足の間に膝をついたショーンは、ヴィゴから衣装の中に手を入れ、ペニスを引き摺り出す。

「・・・変な趣味だな。ショーン・・・」

ヴィゴは、ショーンの頭を見下ろした。

ショーンは、赤い舌を見せた。

思わせ振りに自分の唇を舐め、大きく口を開く。

「ヴィゴ。皆にばれたくなかったら、大きな声を出すなよ」

にやりと笑ったショーンは、ヴィゴのペニスを口に含んだ。

いつもより、ずっとせわしなく吸い上げだった。

ヴィゴは、ショーンの鬘に負担をかけないよう、ショーンの肩を掴んだ。

「・・・ううっ、ショーン。すごいサービスだな」

ショーンは、鼻から甘い息を漏らしながら、熱心にヴィゴのペニスに吸い付いていた。

ショーンの口内は、熱く、しめった感触だ。

ヴィゴのペニスを口全体を使って、ショーンは包み込んでいた。

「俺たちの名前が呼ばれないか、ヴィゴ。ちゃんと外の音、聞いてろよ」

絡みつく舌は、ヴィゴのペニスを優しく舐り、届く限り伸ばされて、陰毛まで濡らしていく。

「こういうのが、好きなのか?ショーン?」

ヴィゴの問いに、ショーンはペニスを含んだまま首を振った。

「その割に、随分、ハードだけど?」

ヴィゴは、ショーンの喉に向かって、腰を付き入れた。

ショーンは、自分のペースがいいと、ヴィゴの腰を強く掴んだ。

しかし、ヴィゴは、やめようとしない。

「・・・ショーン。あんたの魂胆はわかってる。似合わない真似をしたってダメだぞ。そうやって、乗り気な振りして、口を使わせるだけで終わろうと思ってるだろ」

ヴィゴは、ショーンの頬を両手で挟み込むと、チュッと額にキスをした。

ショーンは、顔をしかめた。

緑の目は、激しく喉を使われたショックで、潤んでいる。

唾液の溢れている唇を見つめながら、ヴィゴは、にやりと笑った。

「残念だったな。ショーン。さぁ、立って。その壁に手を付くんだ」

ヴィゴは、ショーンの腕を引いて重くしゃがみこんだままの体を立ち上がらせた。

「嫌?ショーン」

「・・・こんな場所で、誰かに聞かれるに決まってる。やめようぜ。ヴィゴ」

ヴィゴは、にんまりと笑った。

「いいね。その顔。そういう顔されると更に燃える。ショーンは俺の煽り方を良く知ってるよ。さて、大きな声を出すなよ。ショーン」

ショーンの下半身をむき出しにしたヴィゴは、今度は自分がしゃがみこみ、白い大きな尻を両手で思い切り開いて、その間に顔を埋めた。

 

「ヴィゴ。ダメだ。ヴィゴ。外・・・」

ヴィゴの舌は、ショーンの恥ずかしい穴の中に潜り込んでいた。

ねじ込むように押し進んだ舌は、中をなめ回し、ずりずりと後退していく。

ベニアの板一枚外では、普段どおりの撮影が続けられていた。

たまに、材料が積み重ねられているこの秘密の小部屋の回りに置かれた道具を取るため、近づいてくる足音さえもある。

「ヴィゴ。ダメだ・・・ううっ、そこ・・・ダメだ。ダメ・・・」

「どう、ダメなんだ?とろけそうに良いからダメだって言いたいのか?」

ヴィゴの舌は、きつく皺の寄るショーンの窪みを優しく押した。

ほどけているショーンの穴は、ヴィゴの舌を受け入れてしまう。

ヴィゴは、指を穴の淵に引っかけ、大きく広げると、中の赤い粘膜を丹念に舐めた。

押さえつけていた手が片方離れたことにより、ショーンは、大きな尻を振って嫌がった。

しかし、ヴィゴは、鼻を尻に押し付けるようにして、深く舌を挿入する。

嫌がるショーンをこらしめるように、軽く歯を立て、柔らかな尻の肉を噛んだ。

「・・・っ・・・ヴィゴ。・・・んっふは・・・んん・・・」

「静かに。ショーン。外に聞こえるだろう?」

ヴィゴは、容赦なく、濡れそぼった穴の中に指をねじ込んだ。

「・・・っふうっ!・・・んん・・・あ」

ショーンは、自分の手で、口をふさいだ。

ヴィゴの指は、押し広げるようにショーンの穴の中でぐりぐりと指を動かす。

「・・・っ!んんんんんっ!」

ショーンの尻穴の中で、ふくらんでいる部分、そこをじわじわと回りから攻められ、ショーンの腰が落ちそうになっていた。

目には涙が潤んでいる。

ヴィゴは、片手で、ショーンの尻を支え、そっとその部分を押した。

「・・・・っはぁ・・んあぁ・・ふっん・・・んんんんんん」

もの凄い力で、ショーンの尻は、ヴィゴの指を締め上げた。

腰は大きく揺れ、ペニスからは、ぽとぽとと先走りが漏れている。

「・・・はぁ・・・はぁ・・・ヴィゴ・・・」

荒い息のショーンが、肩越しにヴィゴを切なく見つめた。

ヴィゴは、ショーンの白い尻タブにキスをして、焦らすようにショーンを見上げた。

その時、マイクが、ヴィゴとショーンに呼び出しをかけた。

「ヴィゴ。ショーン。5分後にミーティングルームへ」

放送は、打ち合わせに来いと、二人の名前を呼んでいた。

名前を呼ばれたショーンの体はびくんっと緊張した。

ヴィゴの指は、またもや、痛いほどショーンに締め付けられる。

ヴィゴは、なだめるように、ショーンの太腿を撫でた。

「まだ、大丈夫だ。ショーン。だが、全然満足してないだろうけど、ちょっとばかし早まわしにしようか。約束どおり、今晩ゆっくり可愛がってやるから」

ショーンの目は、信じられないと言いたげにヴィゴを見下ろした。

「・・・やる気なのか?」

「やらないですむ状況か?」

ヴィゴは、ショーンの股の間から手を回し、濡れているショーンのペニスを軽くしごいた。

確かに、ショーンのペニスも終息を求めている。

だが、まだ、ショーンは、とんでもないものを見るような目で、ヴィゴを見下ろしていた。

ヴィゴは、立ち上がり、ショーンの尻にペニスの先を押し当てた。

「じゃぁ、あんたが大きくしたこっちの責任はどうやって取ってくれる気だ?」

ヴィゴは、面白がっているような顔で、引きつったショーンを抱きしめ、無理やりキスをした。

 

ヴィゴは、ひたすら早く終わって欲しがっているショーンの顔を見ながら腰を動かしていた。

壁に縋り付くショーンの指が、苛立ちを隠せていなかった。

理由は、ヴィゴにだって、よくわかっている。

放送は、ひっきりなしにヴィゴとショーンの名を呼んだ。

その上、何度放送が入っても現れないヴィゴとショーンを探して、ビリー、ドミニク、オーランドの三人が、面白がって大声で撮影所内を探し回っていた。

3人は、PJと、どこかに消えたとこまではわかってるんだよな。と、探偵気取りで、あちこちのセット裏を覗いている。

「・・ヴィゴ。早くいけ・・・」

ショーンは、青ざめた唇を噛みながら、小さな声で急かした。

「無理を言うな。持久力を誇るのが、俺たちの世代だろう?」

ヴィゴは、ショーンのうなじにキスをしながら、緩く腰を動かした。

内部からの直接的な刺激に、ショーンのペニスは、立ち上がったままだった。

だが、体ほど楽しんでいないショーンの精神は、苛立ちを瞳に浮かべて、ヴィゴを睨んだ。

「じゃぁ、やめろ」

ショーンは、ヴィゴにあわせるように振っていた腰を止めた。

オーランドが大きくショーンの名を呼んだ時から、ショーンは、いつもの慎みなど忘れ去ったように、思い切りヴィゴにあわせてきた。

終わらせようという目的がばればれだ。

「それも、無理だ」

ヴィゴは、軽やかな動きを失ったショーンの腰を抱き、強く腰を押しつけた。

そのまま、続けて、大きくペニスを出し入れする。

「・・・・んんっふ・・・っん」

ショーンは、慌てたように口を塞いだ。

ヴィゴは、そのまま、壁へと押しつけるようにショーンを揺さぶる。

「・・・・んっ!っっあ・・・ん・・・っふ・・あ」

そんな場合ではないのに、十分に内部をかき回されているショーンの口からは、甘い声が漏れてしまった。

自分から腰を振っていた時に、つい、良いところばかりを味わっていたのも、災いしている。

「静かに。ショーン」

足音が近づいていた。

いままでも、ヴィゴとショーンがいる材料置き場を模した小部屋の回りを通り抜けていく靴音はいくつもあったが、今度は、まともにこっちに向かっていた。

ヴィゴは、息の荒いショーンのため、自分の腕をショーンに噛ませた。

そして、自分も息を潜め、背中のマントを広げて、ショーンの体を覆い隠す。

「どこ行ったんだ?あの仲良し中年」

「放送の聞こえないとこ?ただ、単に寝てるだけだったりして」

ドミニクと、ビリー、オーランドの三人だった。

三人は、ふざけあって、発砲スチロールの岩などをどけると、大きな声で、ヴィゴの名を呼んだ。

「ヴィゴ。いませんか?いませんね。いるわけないよな。こんなとこ」

近く聞こえるビリーの声に、ショーンの体が緊張のあまり、小さく震えた。

めくれ上がった赤い粘膜は、痛いほど、ヴィゴのペニスを締め付けている。

「どこで、さぼってるんだ?あの二人組は」

ドミニクが、がたがたと足場を揺すった。

それには、さすがのヴィゴも息をのんだ。

その足場は、中にいる二人のベニア板をさりげなく支えるために置かれていたものだった。

もしベニア板が倒れでもしたら、中にいるヴィゴとショーンの二人は、丸見えだ。

幸いヴィゴのマントがショーンとの結合部は隠したが、隠しただけでは、乗り切れるような3人組みとは思えなかった。

息をつめて、外の様子を伺う二人によく聞こえる大きさの声で、オーランドが、ぼやいた。

「酷いよねぇ。あの二人。大人気ないっていうか。大きいグループだってのに、俺だけ仲間はずれ」

ドミニクが足場を揺するのをやめた。

しかし、支えの位置がずれたのか、全く外の見えなかったベニアの重なりに、隙間が出来た。

ちょうど、口を尖らしたエルフが見える。

「ショーンに近づくと、すぐ、ヴィゴが邪魔するし、だからと言ってヴィゴにくっついてようと思うと、あの人、するっと上手いこと逃げてくんだよ」

ドミニクが、オーランドに近づいた。

「何、言ってるんだよ。お前は、随分可愛がられてる方だと思うぞ。オヤジ達が隠れそうなとこ、俺たちよりずっと知ってるだろう?どう?この撮影現場以外に怪しいところはない?」

「んー。ちょっと遠いけど、森ん中は結構怪しい。あそこで、よく散歩してる」

「散歩。なるほど、じゃぁ、あのオヤジ達、森ん中で、迷子かもしれないな」

ドミニクが何気なく、ベニアに手をついた。

 

 

「ショーン。ちょっと緩めてくれ・・・」

ヴィゴは、ショーンの体を抱きしめながら、小さな声で、耳元にささやいた。

「そのままだと、痛くて動かせない。早く終わって欲しいんだろう?」

二人の気配は、板越しにもわかった。

幸い、あまりに頼りないベニアの感覚に、すぐさまドミニクは手を離した。

だが、まだ、すぐ側にいる。

二人は、たわいもない話に興じていた。

しかし、ヴィゴは、これ以上待っていてもらちがあかないと決断して、再びショーンを揺すり始めた。

放送の方も、かなり頻繁に二人の名を呼びだしている。

「くそうっ!・・・ヴィゴ!」

ショーンは、内部を擦り上げていくヴィゴの腕を強く噛んだ。

苛立ちがあった。

こんな場所をセックスするために選んだヴィゴが恨めしかったし、そんな場所でもしっかりと感じる自分が嫌だった。

だが、ヴィゴのペニスが付き入れられるたび、ショーンの腰に甘い衝撃が走る。

「ショーン。PJだけは、俺たちがここにいることを知ってるんだ。あんまりさぼりを決め込むと、覗きにくるかもしれないんだぜ?」

「その前に、ドムが、このベニアを退かしでもしたらどうしてくれる!」

「死んでお詫びをするんだったよな?」

ヴィゴは、自分の腰を動かしながら、ショーンのペニスを擦り上げた。

刺激に、ショーンは、後ろを強く締め付ける。

抜こうとしても大変だった。

「ショーン。あんたが、もの凄く緊張してるってのは、わかってる。だけど、きつすぎだ。ダーリン。もうちょっとお手柔らかにしてくれ」

ヴィゴは、こわばったショーンの頬に口づけた。

噛ませていた腕を放させ、色のなくなっている唇を撫でる。

「息を吐いて。そう。ゆっくり。・・・そう、そのまま・・・」

ヴィゴは、ショーンの口をふさぐと、思い切り腰を動かした。

激しいピストンで、ショーンの中を抉る。

「・・・んんっふ・・・んんん!」

「・・・・・・・・っっふあ!・・・んん!んんっ!」

「・・・っはぁ・・・ヴィ・・・んっ・・・ゴ!」

 

「外、見に行くか?」

「えー。かなり暑いぜ?外は」

まだ、ホビット、エルフ連合は、壁の外にいる。

 

「おい、ショーン。タオル・・・」

ヴィゴは、両手で、二人分の精液を受け止め、情けない格好で立っていた。

「っ、くっそう!持ってないのに、誘うな!」

小声だが、思い切り怒っているショーンが、ヴィゴにタオルを投げつけた。

「ショーンが持ってるから、いいじゃないか」

ヴィゴは、手を拭い、まだ、外にいる三人組の気配に眉の間に皺を寄せた。

「なぁ、ショーン。やっと外に出られる状況になったが、ここから、出ていったら、あいつらに何を言われるかわからないと思わないか?」

放送は、とうとう、諦めたようにヴィゴとショーンの名を呼ばなくなった。

変わりに、オーランドの名を呼んだ。

「グットタイミング!」

ヴィゴは、小さく口笛を吹いた。

ショーンがぎろりとヴィゴを睨んだ。

「・・・・もう今晩俺んちにくるなよ。お前!」

「なんでだ?ショーン、俺が行ってあんたが昼間で寝てられるようにしてやらないと、あんた、困るだろう?」

「困る原因になるようなことを二度とするな!寿命が縮まる」

「・・・良くなかったか?」

「・・・くそっ!よかったよ!畜生!」

 

PJが二人の呼び出しを諦めたのは、置いてきたパソコンで、二人が繰り返し、ボロミアのラストシーンを鑑賞していると思ったためだった。

だが、二人が夢中になっていたことは別のことだ。

 

END

 

 

ネタは見つかりましたでしょうか?某さま(苦笑)

めでたく不採用になった作品を、アプしてみました。

私が書くと、こんな感じ・・・。