愛してるよ
ブルゾンのポケットに手を突っ込み、少し背中を丸めるようにしてドアの前に立っていたショーンに、ヴィゴはにっこりと笑って、家の中へと招き入れた。
ショーンは、背中を丸めたまま、ドアをくぐる。
「なぁ、ヴィゴ。本当にいいのか? 家を訪ねたりしても」
「ああ、構わない。迷わずこれたか?」
ショーンは、前に会った上品なスタイルとはまるで雰囲気の違う、男っぽさを前面に押し出す新しい魅力を振りまきながらも、相変わらず落ち着かない目をして、何度も床とヴィゴの顔の間で視線を往復させた。
その目がかわいい。いつだって、ヴィゴにとってショーンは、かわいい。
ヴィゴの微笑みはますます深くなる。
ヴィゴは、ショーンの目を覗き込む。
「ショーン」
ショーンの目の動きがやっと止まった。
目じりに笑みを刻んだヴィゴが口を開く。
「ショーン。両手を出して」
ショーンは、ヴィゴに言われて、自分の手がポケットの中に入ったままだったことに気付いた。
慌てて、両手をポケットから出す。するとその手をヴィゴが掴んだ。ヴィゴは、ショーンの手を優しくなでていく。
「……どうした? ヴィゴ」
再会後のヴィゴは、いつだって甘くショーンを甘やかす。だが、ヴィゴにくすぐったいような優しさで撫でられる恥ずかしさにショーンは頬を赤くした。
「ん? どうもしないよ」
ヴィゴは、ショーンの指を口元へと持って行き、カーブのきれいな指先に口付けた。ショーンは、その行為に照れて、顔を顰めているかのように片目を瞑る。
爪の先をヴィゴの舌が舐めていく。
ショーンの視線がヴィゴからそらされる。頬がすっかり赤くなっている。
「……恥ずかしいことするなよ。ヴィゴ」
「なんで? どこが恥ずかしい?」
ヴィゴの声は、いやになるほど甘ったるい。
だが、その数瞬後、恥ずかしさのあまり、目を伏せていたショーンは、その場の甘さに似合わぬ痛みを、腕に感じた。
固い、多分、鉄の固い金属ようなもので、腕を上から押さえつけられた。
耳は、「がちゃり」と、いう音を拾った。腕には痛みと重みがあった。
「……ヴィゴ!!」
慌てたショーンが見た右手には、銀色の輪っかがぶら下がっていた。
怒鳴るショーンの声を笑って受け流すヴィゴが、ショーンのもう片方の腕へと手錠を押し当てていた。
『ガチャリ』
無常にも鉄の輪は、わずかな痛みを与えて、ショーンの腕を噛む。鉄の噛みあう音がしてショーンの腕は両方とも繋がれてしまう。
「なんで!? 何だ! 一体これは!」
ショーンは怒鳴った。
「似合う。さすがに、よく似合う。あんたの『お上品な』新しい髪形を見た時、絶対にしてやろうと思ったんだよ」
楽しげに笑うヴィゴは、ショーンの両腕を繋ぐ鎖を引っ張った。
ヴィゴの口元に浮かぶ笑みは、本当に幸せそうだ。
「かわいいよ。あんたに手錠はよく似合う。こっちにおいで。ショーン」
笑うヴィゴは、ショーンの動揺を全く受け付けなかった。開いてしまっているショーンの唇は、押し出しのいい雰囲気とは逆にあまりの驚きに小さく震えている。しかし、ヴィゴは、そんなショーンに構うことなく楽しげに笑いながら、ショーンの腕を繋ぐ銀の鎖を引っ張っていった。
手錠は、容赦なくショーンの手首を噛んでおり、ショーンは、ヴィゴの後をついて行くしかない。
「何を?……何をするつもりなんだ? ヴィゴ……?」
ショーンの声は、心臓の音と同じくらい落ち着かなかった。
新しい遊びが始まったのかもしれない。きっと、ヴィゴはすぐこの手錠をはずしてくれるはずだ。と、ショーンは、なんとか自分に都合のいい解釈を試みようとするが、思い出す過去に、その望みが薄いことをショーンは知っていた。
ヴィゴは、手錠の鎖を引っ張ったまま、楽しげに歩いていく。
ショーンは、その後をついて行くしかない。
「なぁ、ヴィゴ。……何をする気なんだ? 手錠は、手首に跡が残るから嫌だよ」
「あんたが、抵抗しなきゃ、平気だよ」
ヴィゴは、家の奥へと進みながら、格好よく盛り上がったジーンズの尻ポケットから、もう一つ手錠を引っ張り出した。
「ヴィゴ!?」
ショーンは、短く切った髪の効果で、いつも以上の迫力となった顔に似合わぬ、脅えた声を出した。
ヴィゴは、寝室のドアを開ける。
「ショーン。そんなかわいい声出すなよ。あんたに似合いすぎ。男っぷりが上がったその顔で、そんな声出して、あんたって、ほんと俺の煽り方知ってるな」
くるりと振り返ったヴィゴは、ショーンを繋いでいる銀の鎖と手に持っていた手錠を繋いだ。
信じられない者でも見るようなショーンをヴィゴは抱き寄せる。
「かわいいよ。ショーン。その極悪な面構えが、泣き出しそうに歪んだらどんなに素敵だろうと考えると、ここんとこ毎晩楽しかった」
「ヴィゴ……?」
「ショーン。新しいあんたがどれほど俺の股間を直撃したか、教えてやるからな」
ショーンは、両手をつながれたまま、ヴィゴからの激しいキスを受けた。
ヴィゴの唇が口ひげに覆われたショーンの口を覆っている。舌は無遠慮にショーンの喉まで到達し、上顎をべろりと舐めていく。
舌が、ショーンを絡め取った。
「んんっ……ヴィゴ」
腕を拘束されることは、ショーンにとって業腹だったが、テクニックたっぷりの恋人からキスに、抵抗することがショーンにはできなかった。ヴィゴとのキス自体が久しぶりだ。ショーンは、ヴィゴを渇望している。
手錠のことには目を瞑り、ショーンはヴィゴを求めて舌を伸ばした。口ひげを汚しながら、ショーンが強く口をヴィゴへと押し付ける。
「んっ……ん」
ショーンの鼻から抜ける甘えた声を聞いたヴィゴは嬉しげにサービスを増やした。腕を手錠に噛まれた窮屈な状態のショーンをきつく抱きしめ、その尻を揉む。
「ショーン、いやらしい尻をしやがって。なんでここばっかり、こんなに柔らかいんだ? そんなにケツを突き出すなよ」
「ヴィゴ……」
ヴィゴの指がジーンズの縫い目が教える尻の割れ目を指で辿った。
ショーンの足からかくんと力が抜ける。勿論、それなりに場数を踏んできたショーンがこの程度で体勢を維持できなくなったというわけではない。わざとショーンは足の力を抜き、ヴィゴにもたれかかったのだ。ヴィゴの胸に重みがかかる。少し汗の匂いがする首筋が、噛み付いてくれ、と、謂わんばかりにショーンは、ヴィゴの口元へと喉を差し出す。
これは、愛情深い行為への移行に同意するショーンのサインだった。
手錠をかけられたままだというのに、ショーンは、ヴィゴに承諾をした。
勿論、ヴィゴは、そのメッセージを受け取る。
ベッドへの2歩を予測している恋人の体を抱いたヴィゴは、ショーンを抱いたまま2歩ではなく、5歩ほど、後ろにずり下がった。
キスを求める恋人の口ひげに甘い口付けを降らしながら、ヴィゴは、ショーンをベッドの枕元まで連れて行く。
そこで、ショーンが不信感を抱くよりも前に、恋人の体ごと床へと沈んだヴィゴは、腕からぶら下がる銀の手錠を手に取った。
ヴィゴは、銀の拘束具の端をベッドの足へとガチャリと嵌める。
「ショーン」
床に座り込むようにしてショーンを膝の上に抱くヴィゴの顔には、とろけそうな笑顔があった。
「……ヴィゴ?」
両腕をベッドの足に向かって差し出すような体勢を無理やり取らされているショーンの上げた顔は、剣呑さと不安をごちゃ混ぜにした、とても魅力的な表情が彩っていた。
この状況に、ショーンの眉は釣りあがっている。目も釣りあがっているが、緑は、自体を把握できないでいる混乱に揺れている。
ショーンの舌が、ぺろりと唇を舐める。
「……これは、何の真似だ? ヴィゴ?」
声は、屈辱に震えていた。
当然だ。ショーンの両手は、一まとめにされて手錠でベッドの足へと繋がれている。
ヴィゴは、ショーンの頭を抱かえ込み、傷跡さえ、はっきり見える短い髪に口付けた。
髪質がやわらかいから、髪というよりは、地肌にキスをしているような感触だ。
がちゃがちゃと手首の手錠を鳴らす恋人にヴィゴは言い聞かすように口を開いた。
「これは、ショーンの新しい髪形を俺がすごく気に入っているってことを表現するための行為ってとこか?」
「はっ!?」
理解しがたいとはっきりと顔に書いたショーンをごくあっさりと膝の上から下ろすと、ヴィゴは立ち上がりショーンに背中を見せた。
これから、ヴィゴはじっくり楽しむつもりなのだ。
ショーンが新しいヘアスタイルに変わったことを知ってから、ずっとしてみたかったこと。
恋人の新しいスタイルに似合いのやり方で愛してやること。
ショーンは、何が始まるのかわからず、落ち着かない顔でその背中を見つめていた。
その視線をいやというほど、ヴィゴは背中に感じる。
ヴィゴは、寝室にたった一つ置いてある椅子へと腰をおろすと、背もたれに肘を乗せて、ショーンを見下ろした。
「あんた、自分じゃ見えなくて残念だな。今のスタイルに、その格好は、ものすごく似合っている」
手錠で無理やりベッドへと繋がれているショーンの全身をヴィゴの視線が舐めていった。
じっとりと嘗め回されて、ショーンは、思い切り顔を顰めた。
「一体どこが楽しい遊びなんだ?」
ショーンが、イライラと怒鳴る。
「今度のあんたスタイルは、すっごく苛めてやりたくなるって、言ってるんだよ。本当なら、殴り飛ばしてやって、目も開けられない位腫れ上がった顔のあんたのこと無茶苦茶にレイプしてやりたいんだけどな。さすがに、それは、嫌われるだろうから、やめておく」
ショーンが、床をドンと叩いた。
「はっ!? ヴィゴ、お前、俺をこんな目にあわせて、それでまだ、俺に嫌わないとでも思ってんのか?このサイコ野郎!」
遅れて手錠の鎖が荒々しく床を打った。
ショーンは、床を踏み荒らす。
「髪型が変わったら、口まで悪くなったな。ショーン。……似合うけどね」
ヴィゴは、一つウインクを恋人に贈る。
「くそっ! ヴィゴ、殴ってやる!」
ショーンは無理矢理立ちあがろうとし、ベッドへと繋がっている鎖に引っ張られ、そこにひっくり返った。
ドンっと、足が床を蹴る。
「外せ! 外せ! ヴィゴ!!」
「好きなだけ、わめいていいぞ」
ヴィゴは、椅子の背もたれにもたれかかったまま、うっとりとした目で、ベッドの足へと繋がれているショーンを眺めた。
「お前っ、何考えてるんだ!」
ヴィゴの唇は、とても満足そうなカーブを描いている。
「ショーン、髪型の変化にも気付いてくれない、無粋な恋人なんて嫌だろう?」
「こんな変態な恋人はもっと嫌だ!!」
ショーンは、怒鳴る。そして、暴れる。
ヴィゴは、ショーンの奮闘をずっと甘い目つきで眺めていた。
山ほどの罵倒の言葉と、何百回も床を蹴った足。商売モノの腕は、さすがに傷を残したくないのか、ショーンは、それほど無茶には腕を振り回したりはしなかった。
しかし、ヴィゴを罵るボキャブラリーが尽きると、ショーンが小ざかしくも手錠から何とか腕を抜こうとしたものだから、手首の皮膚が赤くなってしまっている。
勿論、素人に手錠抜けなんてことはできやしない。だから、途中からは、ショーンは、闇雲に腕を振っていただけだ。しかし、そんなことをしたところで、しっかりと手首に嵌った手錠が抜け落ちるなんてことはあり得ない。
勿論、その間も、ヴィゴは、じっとショーンを眺めていた。
ショーンの顔が怒りに赤くなっていた。
迫力を持って吊り上った目は、あまりの怒りにか、目じりがうっすら濡れていた。
口ひげのある口は、口汚くヴィゴを罵った。
「くそっ! なんで、外れないんだ! 畜生! ヴィゴ! 外せ! 外せ!」
短い髪の地肌が、うっすら赤くなっていた。
ヴィゴは、心が弾むのを止めることが出来なかった。
「くそっ! ヴィゴ、外せってんだろうが!!」
「なんてかわいいんだ……」
ヴィゴの目には、悪人面のショーンが、暴れ、怒り狂う行動が、小さくいたいけな動物が、罠にかかって、必死に抜け出そうともがいているようにしか見えなかった。
動物は、ヴィゴの手の中にいた。ヴィゴは、いつまでだって、わめくショーンをみつめていることが出来た。
あの鎖を外してやれる者はヴィゴしかいない。
思わず目じりが下がってしまう。
「畜生! テメー、このサイコ! 手錠をはずせ! 今なら、許してやる。ヴィゴ、手錠をはずせ!」
怒鳴ったところで、自体は好転しないというのに、ショーンは、わめき続けていた。
とても頭が悪い。
その頭の悪そうな感じは、ショーンの今のスタイルにぴったりと嵌って、ヴィゴの気持ちはますます高揚した。
今度、ショーンは、ベッドを持ち上げようとしている。
それは、ヴィゴが前段階にベッドの足を床へと固定しておいたから実現できない。
気付いたショーンが、唸り声を上げて、わめき散らした。出来ないとわかると、自分の体をベッドにぶつけて、ヴィゴに抗議さえした。
本当にかわいらしい。
その全てを、ヴィゴは、愛しげに見つめた。
ヴィゴは、いつもの、上品さを感じさせるショーンのことだって大好きだ。
しかし、今回のショーンの決して柄がいいとは言えないスタイルは、ぞくぞくとヴィゴを刺激したのだ。
小さな女の子を持つ母親が決して近づきたくないと思うような、迫力あるショーンの悪人面。それが、怒り、わめき、終わりには、不安をにじませ、落ち着きなく目をさまよわせるようになったとしたら。
ヴィゴは、とうとうショーンが、懇願の声を上げるところまで、じっとショーンを眺めていた。
屈辱に顔を赤く染めながら、「手錠を解いてくれ。頼む。ヴィゴ。頼むから……」と、ショーンが何度繰り返しても、まだ、ヴィゴはじっと椅子から動かなかった。
久しぶりのデートでこんな目に合わされる情けなさにショーンが、ぐすりと鼻から音を立てても、まだ、ヴィゴはショーンを愛しげに見つめた。
そして、とうとう疲れ果てたショーンが、手錠に繋がれたまま、床に転がって、うとうとし始めて、やっと恋人の側へと近づいたのだ。
ヴィゴは、ショーンの体をそっと足で蹴った。
「ショーン。ショーン」
ヴィゴは、たっぷりとショーンの寝顔も楽しんだから、ショーンが、手錠に繋がれてから、最早三時間が経過していた。
「おい、ショーン、そろそろ、起きろよ。なんだよ。床の上がいいのか?」
不機嫌なショーンは、目が覚めたくせに、なかなか目を開けようとせず、ヴィゴは、仕方なく、くるりと背中を向けた。
ひくひくと動いている瞼がやたらとかわいかったのだ。抱きしめて、キスしてしまいたい気持ちで一杯だった。
自分を見下ろすヴィゴが居なくなると、ショーンは慌てて目を開けた。
「おい! ヴィゴ! どこへ行く気だ。行く前に手錠を外せ! もう遊びは終わりだ!」
「ゲームオーバーを決めるのは、俺だよ。ショーン。鍵は、俺にしか持ってないんだ」
ヴィゴは、ベッドボードをかき回した。
探し物をしていた。
そこになかったから、ヴィゴは、クローゼットを開ける。
「ショーン。やっぱり、あんた、最高にかわいいよ。あんたのかわいさが俺を滅茶苦茶にする。……困るんだよ。ほんと、ショーン」
ヴィゴは、ため息をつく被害者ぶりで、クローゼットを漁った。
色々なものを押しのけ、ヴィゴはやっと目当ての物を見つける。
振り返ったヴィゴが持っているものに、ショーンは、歯を剥いて怒鳴った。
「外せ! ヴィゴ! 手錠を外せ! そんなもの突っ込みやがったら、許さない!」
ヴィゴの手には、セックス用の小道具が握られている。
「そんなことないね。ショーンは、コレのこと結構好きなはずだ。いつだったかは、忘れたが、結構ノリが良かった」
ヴィゴは、小さなローターを手にショーンのもとに戻った。
ショーンは、ヴィゴを蹴り上げようと、足をばたつかせた。
その足をヴィゴは掴む。
ヴィゴは、靴の先に小さなキスを落とすと、むっちりとした恋人の腰からジーンズを脱がしにかかった。
ショーンときたら、いくら痩せても、腰のいやらしさは、変わらない。それがヴィゴを楽しませる。
「ヴィゴ! やめろ!」
ショーンは暴れた。だが、商売ものの体を傷つけることにためらいがあるから、拘束された体は、ヴィゴの腕を阻止しきれない。
「ヴィゴ!!」
「うん? 愛してるよ。ショーン」
下着ごと、ショーンのジーンズを太ももまで下げたヴィゴは、陰毛に埋もれる中途半端に勃起したペニスにちゅっと口付けをした。
そして、挨拶をする。
「久しぶり」
それから、ヴィゴは、ショーンをくるりと裏返すと、幸せ一杯の顔で白い尻に頬ずりした。
「相変わらず、いい尻だな」
ヴィゴの声は、本気だ。ショーンは、何度も尻に口付けられ、げんなりとした。
しかし、ショーンは、恋人の呆れた変態ぶりにため息などついている場合ではなかった。
ヴィゴの尻ポケットは、セックスジェルまで入っていた。ヴィゴは、ショーンの白い尻を抱え込んで、濡れた指を近づける。
ショーンはぎゅっと尻穴に力を入れた。尻山にも力が入る。
ヴィゴは、力が入り固くなった尻を撫で回した。
「ショーン。そんなに嫌がられると、レイプしてるようで興奮する」
ショーンは、思い切り顔を顰めて怒鳴った。
「何がレイプだ。この変態!」
「……ショーン、そんなに俺のこと煽らないでくれ」
ヴィゴは、ショーンにすがりつくようにして、慌しく尻の肉を掻き分けた。
「あんた、その顔で、嫌がって、泣きそうな顔して、それがどれだけ凶悪だか、わかってないだろう!」
「ヴィゴ! 顔は生まれつきだ! 畜生! 本当にやめろって!」
必死に力を入れているというのに、尻は、ヴィゴの手によって大きく広げられ、尻穴を隠す短い陰毛が空気に触れる。
ショーンは、勿論、ヴィゴに腹を立てていた。
だが、ショーンは、ヴィゴが自分の理屈で押し通してくることに、慣れてしまってもいた。しかし、それでも、久しぶりのセックスが、床に手錠で繋がれたまま、だということに激しい抵抗感があるのだ。ベッドの上での遊びなら、まだ許せる。しかし、床に、まるで動物にように四足で繋がれているというのは、決してショーンに許せなかった。
ショーンは、ヴィゴと抱き合いたい。
延々何時間も床に繋いだ恋人を眺めているヴィゴの趣味など理解できない。
「ヴィゴ、やめろっ!」
「いやだ。今日は、このままショーンとやる」
こうと決めてかかったヴィゴの思い込みの激しさは、最悪だった。ヴィゴは思いの丈、そのままに、ずぶりと、ショーンの尻穴に指を突っ込んだ。
「ヴィゴ!!」
奥、深くまでいきなり指を突っ込まれ、ショーンの声がひっくり返る。
「いやだったら、死ぬ気で締めてかかればいいだろ。ショーン」
舌なめずりをしたヴィゴは、慌しくショーンの中へとジェルを塗りたくっていく。
「もともと広がるように出来てるんだ! 死ぬ気で締めたって、締まるか! 畜生!」
慣れた指が、もののついでとばかりに前立腺を押し、刺激するのに、ショーンの腰がビクリと、震えた。
ぎゅっと、下腹が熱くなる。
そこを押されると、ショーンはたまらない。
「まぁ、仕方ないよな。ショーンは、俺の、うまそうに頬張るの好きだもんな」
ヴィゴは、息を吐き出すような音で笑った。
指先が、いたぶる様にショーンのいいところばかりを掠める。
「クソ! 最悪だ。ヴィゴ。お前は、最低だ!」
口汚くヴィゴを罵るショーンの姿は、激しくヴィゴを興奮させていた。
その口調は、とっても今のショーンの姿に似合うのだ。
ヴィゴは、小さな卵型のローターを手に取る。
「じゃ、もっとショーンのこと気持ちよくしてやるからな」
「やめろっ! やめろって言ってるだろうが!!」
ヴィゴの指が、ショーンの中へとローターを押し込む。
「……ぐうぅ……ヴィゴ!」
尻の穴に力を入れて、ローターの侵入を阻んでいるショーンが唸った。
ヴィゴは、にやにやと笑う。
「力を抜きなって。ショーン。抵抗するとあんたが苦しいだけだぞ。俺の方は、その顔で嫌がって貰えば、貰うほど興奮しちまう」
ヴィゴは剣呑な目付きで睨んでくるショーンを本当に幸せそうに眺めていた。
「やめろ……ヴィゴ」
怒りによる興奮のため、ショーンの睫が濡れていた。
「平気だ。ショーン。こんなもの軽いだろ?」
実際、ヴィゴとのセックスに慣れたショーンの尻は、難なくローターを受け入れる。
ジェルで濡れた腸壁が、ローターを包み込んでいる。
ヴィゴの指が触れると、ビクビクと動く。
「中、柔らかくて、気持ちいいぞ。ショーン。……さて、俺ばっかり楽しんでないで、ショーンにも楽しませてやらないとな」
ヴィゴは、自分がどれほどショーンに感じているのか、ジーンズの前をくっきりと盛り上げているペニスでショーンの尻を擦り上げ示すと、ショーンの尻から垂れ下がるコードのスイッチを入れた。
「ヴィゴっ! お前っ!!」
ヴィゴは、ローターをショーンの前立腺より少し奥の位置に入れた。しかし、ちゃんとローターがショーンの前立腺を掠めるだけの配慮も忘れない。ショーンの体がビクビクと跳ねた。
尻の中をローターがこね回す。
どうしても、ショーンの腰がうねってしまう。
腰の奥深いところが、ぐっと、熱くなってしまうのだ。
バイブレーションが、ショーンに欲しくもない快感を与えていた。
ヴィゴは、ショーンに背中からのしかかる。
コードを生やした尻に勃起したペニスを包むジーンズを押し付け、ショーンの体を揺すった。
ショーンは、ベッドの足に向かって、繋がれた両手を差し出したまま、ヴィゴに抱きしめられている。
ブルゾンの背中は、固くこわばっている。鎖が床を打つ。
「ショーン、……かわいい、ショーン。ショーン」
新しい髪形によって作り出された『ガラの悪い』ショーンを無理やり好きに扱っているというシュチエーションが、激しくヴィゴを刺激していた。このいかにも悪そうなショーンが、尻をやられて、腰を捩ってしまうのがたまらない。
ヴィゴは、尻尾の生えたショーンの尻を持ち上げ、まるでセックスのように、激しく腰を打ち付けた。
裸の尻にジーンズが当たり、にぶいと音を立てる。
ショーンは、床を叩いて抗議した。
ガシャンと、手首の手錠が床を打つ。
喘ぎ声を漏らさないためか、ショーンが歯を食いしばったまま、唸る。
「ショーン、もっとゆっくり揺すって欲しいのか?」
ヴィゴは、ショーンのうなじにキスをしながら、ぐっと腰を押し付けた。べろりと舌を伸ばしたヴィゴが白い首を舐めればショーンは項をぎゅっとすくめる。力の入った肩がかわいらしい。ひくつく尻の熱い奥を抉るように、そこでごりごりと立ち上がっているベニスを押し付ける。ショーンの薄い陰毛をジーンズ表面が擦っている。
ヴィゴは、押し付けるだけでなく、そこで腰を上下に揺すって、ショーンの股の間を刺激した。
中からのローターの刺激と、ヴィゴが下品に煽る外からの刺激で、ショーンは眦を吊り上げていたが頬を赤く染めていた。
吐き出される息が熱く湿っぽいものに変わっている。
「ショーン、こんなに簡単に気持ちよくなったりしてちゃ、だめだろう?」
ヴィゴは、ふっくらと、少し開いてしまった尻の穴へと指を入れた。
中は、湿って暖かい。
ヴィゴは、ローターの位置を奥へと調節する。感じている尻肉が、きゅっとローターを噛んでいて、なかなかそれは奥へと進まない。
「どれだけ強面に作ってあっても、こんなやらしい体してたんじゃ、すぐ犯されちまうぞ。ショーン」
ヴィゴは、勃起してしまっているショーンのペニスを掴み扱いた。
ペニスの先に触れれば、ヴィゴの指がとろりと濡れる。
掴んで扱くと、それは、くちゅくちゅと音を立てて、ますます硬くなっていく。
ローターは、ずいぶん奥へと押し込まれたのだ。
もう、前立腺そのものを刺激されなくとも、ショーンは、腸壁全てで快感を拾っている。
「……ヴィゴ……」
ショーンの声が切なくヴィゴを呼んだ。
ショーンは、悪役にしか見えない顔をしながら、振り向いた目を、潤ませていた。
唇が濡れて、頬が火照っている。
「ヴィゴ、頼む、頼むから、手錠を外してくれ……こんなのは嫌だ」
ヴィゴは、ショーンの頭をなでた。
「床が固くて痛いか? ショーン。後だったらベッドの上でもゆっくりかわいがってやるから、今は我慢しろ」
ショーンが何を嫌がっているかわかっていながら、ヴィゴは、恋人の言葉をするりと交わした。
そして、恋人思いのヴィゴはショーンが痛い思いをする時間を減らすため、急いで自分のジッパーを下ろす。
床に放ったままだったジェルを引き寄せ、猛ったペニスに塗りたくる。
「……ヴィゴ……お前っ!」
ショーンは、目を見開いた。
しかし、ヴィゴは、ショーンが最後まで文句を言いきる前に、ローターの入ったショーンをずぶりと犯した。
ショーンの両手は銀の手錠でベッドへと繋がれている。
ショーンの格好は、ブルゾンも脱がず、ジーンズは膝に絡まったままで、……これではまるでレイプだ。
「どう? 犯されてるみたいで、燃えるか? ショーン」
ヴィゴは、呻くショーンの尻だけを持ち上げ、がつんがつんと奥を犯した。
ローターで蕩けている尻肉は、しっとりとヴィゴのペニスに絡みつく。
「燃えるだろ。あんた、ローターまで入れたまんまで、俺に犯されてるんだぜ? どうだよ。こんな風にされるのは? 泣いてもいいぞ。いくらでも涙は舐め取ってやる」
ヴィゴが、興奮のままに、ショーンを突き上げ続けた。
ショーンの尻がきつくヴィゴを締め付ける。
それでもヴィゴが腰の動きを止めなかった。
「やめろっ!……やめろ、ヴィゴ!!」
ショーンが白い尻を捩る。
「やめない。……手錠でベッドに繋がれてるあんたはセクシーだ」
ヴィゴは、落ち着かない尻を大きな手で掴んで離さない。ずぶり、ずぶり、と腰を大きく突き入れる。
「んっ、……やめっ!」
「ほらほら、無理やりやられるの、本当は、気持ちがいいんだろう? 素直になっていいんだぜ? ショーン」
ヴィゴが言葉と共に、大きく腰を動かすと、ショーンのペニスから、いきなりびゅっ、と、精液が飛び出し、床を汚した。
「あっ、ふっ……んんっ、……ん!」
ショーンは、床にペニスを擦り付けるように腰を動かす。
きつく指を握り締め、丸まった肩にはとても力が入っている。
「あっ、……あ」
大きく口を開いたショーンの舌が見えた。
瞑られた目じりには、快感に耐えているのか相当皺が寄っている。
ヴィゴは、額を撫でるように自分の髪をかき上げながら、ショーンを見下ろした。
ショーンの尻はまだ、きつくヴィゴのペニスを噛んでいる。震えているような腰。そして、本当にショーンを中から揺さぶるローターの振動。
「ずいぶん早かったな。ショーン……」
ヴィゴは、口元にいやらしい笑いを浮かべるとショーンが飛ばした床の精液を指先でなぞった。
「俺にレイプされたの、そんなに感じたか?」
にやりと笑ったヴィゴは、指先についた精液をべろりと舐める。
「ヴィゴ……」
ショーンは、無理をしてごろりと体を返した。
怒っているかのように顔を顰めたショーンがヴィゴに手を伸ばす。
しかし、ショーンは、胸をあえがしている。
顔どころか、喉の辺りまで赤い。
「ショーン、平気か?」
繋がった下半身は、一度入れなおさなければ、両方ともがきついはずだ。
ヴィゴは、ショーンの太ももを持ち上げた。
繋がったまま、体位を変えてやろうと、ショーンの足を胸へと押し付ける。
「んっ、あ!」
「うん?どうした?ショーン。もっとやって欲しいのか?」
いやらしく笑ったヴィゴは、自分の軽口が、場の雰囲気にそぐわないことに気付いた。
ショーンが熱っぽくヴィゴを見つめている。
無理やり体位を変えられた時には酷く顔を顰めたものの、汗で額を濡らしているショーンは、ヴィゴに差し出している手を引っ込めなかった。
抱え込んだ足の上に覆いかぶさるようにしてショーンに抱かれたヴィゴにショーンが、甘く耳元にささやいた。
ヴィゴは、息が止まりそうになった。
「ヴィゴ。あんたとするセックスで、レイプなんてありえない」
ショーンは、レイプを認めない。
こんなやり方でセックスを迫ったヴィゴをまだ、恋人として扱っている。
「気が済んだか? ヴィゴ」
ショーンは、あまりに腹が立ちすぎて、最早ヴィゴに呆れてしまったのだ。射精後の満足感も手伝って、ショーンは多少の復讐でヴィゴを許す気になってしまった。
多分、今日のヴィゴにとって、それは望みではないとわかっているから、ショーンは、ヴィゴを優しく抱く。
「なぁ、ヴィゴ。愛してるよ。あんたが、俺に最大限の関心を抱いていてくれて嬉しい」
「くそっ! 負けた。なんだよ、畜生! いきなり愛してるなんて言うな! スタイルだけじゃなくて、性格まで性悪にリニューアルかよ! わかった。俺の負けだよ。俺の負け!」
ヴィゴは、ばたり。と、ショーンの上に崩れ落ちた。
悲しいことに、ショーンからの愛の言葉で、堪えきれず、ペニスは少しもらしてしまっていた。
ヴィゴの精液でショーンの中のすべりがいい。ヴィゴは、ショーンへとべったりと抱きつきながら、腰を動かす。
ローターとヴィゴのペニスにかき回されているショーンの中は、熱くうねっている。
「……っなぁ、……ヴィゴ。手錠外せよ……っ」
ショーンが甘くヴィゴにささやく。さっきのが、ヴィゴにダメージを与えたと知って、ショーンはカードを切ることにためらいがなかった。
「なぁ……ぁっ……ヴィゴ……あんたのことが抱きしめられない」
きゅっとヴィゴを締め付けるショーンがヴィゴのために尻を高く上げる。
「んっ……ぁ……」
「ショーン……」
ヴィゴは、ショーンを疑った。
ヴィゴの恋人は、それほど優しくはないはすなのだ。
手錠がなければ、一発殴るくらいのことは、必ずする。
ショーンのあまりに協力的な態度に、ヴィゴは、それが作為的に行われているのだと気付いた。
一度目はやられたが、そうとわかれば、ヴィゴは、ショーンを見下ろしながらにやりと笑うことだって出来る。
ヴィゴはショーンが小ざかしい真似をしてくれて助かったとすら思った。
「やっぱ、悪いショーンには、それなりの扱いだよな」
ヴィゴは、がばりと体を起こすと、ショーンの尻を掴むとローターを更に奥へと追いやる勢いでがつがつとショーンを犯した。
「やっ!……んんっ!……やめろっ!……っん……ヴィゴ!!」
「やだね。その手錠、あんたにすごく似合ってるんだ。そのままやられてろ」
ヴィゴの息は弾んでいた。
「んっ……はっ……んん」
ショーンの声が部屋に響いた。
ショーンは、足をぎりぎりまで胸につけなければならない苦しいポーズで、両手をベッドにつながれている。
その形で、腰を捩っている。
ヴィゴはしてやりたかった通りに、ショーンを愛した。
「すごくセクシーだ。ショーン。あんた、新しい髪形、すごくいいぜ」
ヴィゴは、ショーンの顎を掴み、悪人面にお似合いの強引なキスで口をふさいだ。
END
豆さんの短いヘアスタイル(坊主ともいうかもしれん)すごく素敵〜〜wきゃ〜w