愛の名の下に

 

*指名手配

 

ショーンが後で食べようと取っておいたサンドイッチがなくなった。

盗み食いするその犯人を追おうとしたショーンは、それが、撮影スタッフの誰かの悪戯などではなかった。と、言い張った。

「ああ、わかった。ダーリン。犯人を捕まえてやりたいけど、顔が分からないんじゃ、どうしょうもないよ。たいした被害でもないし、まぁ、善しとしようじゃないか」

ショーンは、納得しなかった。

ヴィゴの愛が足りないとなじった。

仕方なく、ヴィゴはショーンが書いた犯人の似顔絵を手に、捜索を始めた。

捜査は大変だった。

しかし、ヴィゴの努力の結果、ショーンの前には、犯人が並んでいる。

たまたま撮影の表敬訪問に訪れていたこの州の副知事。イライジャのファンであるというアメリカ人の女学生。そして、念には念をいれて、ヴィゴは、カンガルーをショーンの前に引っ張ってきていた。

 

 

*本気で言ってるのなら、殴ってやる

 

ショーンが、チャリティーのスタッフに巻き込まれていた。

「ヴィゴ。明日のチャリティーに出してもらう品のことなんだが……」

200ドルの値でどうだろうか?と、ヴィゴが出した品も含め、ショーンとスタッフたちは、値段をつけたのだが、それでも目標金額には、あと100ドル足りないというのだ。

ヴィゴは、困り顔のショーンを引き寄せ、じっと目を見つめた。

「ショーン。ベイビー。じゃぁ、俺の絵は、300ドルで出品することにしよう」

 

 

*うぬぼれや

 

「ショーン、一目惚れって信じるか?」

「うん? ヴィゴ。急に何を?」

ショーンは、ベッドの上ヴィゴに抱きしめられている最中だった。

ヴィゴの手はショーンの手を捕まえ、自分のペニスへと導いた。

「俺は、信じてる。だって、ショーン、あんた、俺を見たとき、俺のこと大好きになっちまったんだろう?」

 

 

*過ちも悪くない。

 

ショーンは、すっかり絵の具で汚れていたヴィゴのアトリエのソファーを買い換えるという名案を思いついた。

「……その、親しい人へのプレゼントなんだ。とびっきりセンスがよくて、優しい。それに、とてもいいハンサムな奴なんだが、絵を描くんですぐ汚れて……」

不自然にならないようにと努力すればするほど、ショーンの態度は不審だった。だが、家具屋の店員は、すばらしい見かけの金髪がしどもどと話すことを、にこにこと聞いていた。

「なるほど、大事なお友達に、素敵なものをプレゼントしたいというわけですね」

「肘掛け椅子と、長椅子で迷ってる。どっちがいいだろう」

店員は即座に請け合った。

「お客さん、私のお薦めは、こっちの肘掛け椅子の方です。こっちにしとけば間違いがありません」

ショーンは、肘掛け椅子と長椅子にも目をやり、何故か赤くなると、あわてたように口元を押さえた。

「じゃぁ、長椅子の方がいい。……そっちをくれ」

 

 

*どうぞ。どうぞ。

 

「なぁ、ショーン、試しに聞くだけなんだが」

ヴィゴは、ベッドに入ろうとしているショーンの背中に尋ねた。

「あんたと話をいろいろしたつもりだが、まぁ、アレのことについてなんだが、その、ノーマルなことばかりしか聞いたことがない。そういう……、すこしばかり変わった趣味なんかには、興味がないのか?」

ヴィゴの顔は心配そうだった。

ショーンは、ヴィゴを安心させるために照れくさそうに口を開いた。

「……、あー、全くやったことがない。とは言わない。ただ、あの時は、かなり酒を飲んでいた。大丈夫だよ。あの時みたいに大酒でも飲まない限り、ヴィゴにそんなこと要求するつもりはない」

ヴィゴは、ショーンの手を引きベッドから立ち上がらせた。

「ショーン、酒は台所だ。たくさんあるぜ」