愛でなる病 11
ヴィゴは、ショーンの首筋へとキスを落とした。
ショーンはそれを嫌がってヴィゴを押しのけようとした。
「ヴィゴ。なんでこうなるんだ!」
「何でだって? 当然の結論じゃないか」
「どうして当然なんだ。それに、もう勃つはずがない! こんなことしても無駄だ」
キスを求めてくるヴィゴをショーンは押しのけた。
ヴィゴは、随分と興奮した顔をしていた。
「ショーン。それは、確かにそうかもしれない。でも、そんなに計算高く生きる必要はないだろう? 俺がショーンに触りたいと思っている。ショーンだって、俺に触って欲しいと思っている。なら、いいじゃないか。こういうのが楽しいセックスって奴だ。そう。あんたがしたがってるね」
ヴィゴの流し目は強烈だった。
「どうして、そうなるんだ! 俺はそんなこと言ってない!」
だが、ショーンはヴィゴの胸に手を付いて抱き寄せようとする腕を拒んだ。
あまりに強い力でヴィゴが引き寄せよとするものだから、ショーンはヴィゴの顔を引っかいた。
「痛っ! ショーン。あんた、本当に臆病になってるんだな」
ヴィゴは、引っかかれた頬をなでながら、ショーンのバスローブを踏んだ。
これでショーンは逃げられない。
「どうして俺が臆病なんだ! 離せ。ヴィゴ!」
「ショーン。治りたいんだろう? だったら、なによりショーンに必要なのは、自分が望んで、そして返される深い愛情だ。あんた、俺がオーリに冗談でしたキスにまで焼かなくちゃならないほど、俺を惹き付けておかないと気がすまないんだろう? だったら、はっきり言えばいいんだ。俺はヴィゴのことが好きになった。ずっと自分のことを好きでいて欲しいって。それを言われたからって、俺が拒むなんて思っちゃいないだろう?」
「だからって!」
ショーンは、ヴィゴから逃れようともがいた。
しかし、ヴィゴはショーンのバスローブを踏みつけ、離さない。
「少し大人しくしてろ。ショーン。泣くほどあんたが悩んでいたのには流石に驚いたんだ。だから、はったりをかましたつもりだったのに、それが本当だったなんて、俺はとてもハッピーだ。愛してるよ。ショーン。これ一回であんたのことが治せるなんて俺も思ってないさ。でも、今までで最高に感じさせてやる。あんたが、俺のこと好きになって良かったと思えるほど、すっかり気持ちよくしてやるよ」
ヴィゴは、まくし立てた。
ショーンは、まだ、逃げようともがいていた。
ヴィゴは、ショーンを抱きこみ、唇で肌を辿った。
ヴィゴを振り払おうと動く肩に口付けを落とした。
ヴィゴは暴れるショーンの耳元へと囁いた。
「ショーン。愛している。あんたが満足するまで、何万回でも繰り返してやる」
甘く囁く声は本気だった。
ショーンは、口の中で唸り、ヴィゴを睨んだ。
「畜生……どうしてもやる気だな」
口調はきつかったが、ショーンの声には諦めが含まれていた。
ヴィゴが本気になって耳元で囁く声の威力は、相当のものだ。
「ショーン、愛しているよ。やめる必要がどこにあると言うんだ。俺たちは愛し合ってるんだぜ? 気持ちいいことをしようじゃないか」
それを知っているヴィゴは、ショーンの耳を舐めるようにして甘く囁き続けた。
指先は、ショーンの体をそっとなぞっている。
「愛しているんだ。ショーン。ずっと好きだった。あんたが俺のことを好きになってくれたなんて、信じられないくらい嬉しいよ」
ヴィゴの足が、ショーンの足に絡んだ。
「ショーン。世界中で一番、あんたのことが好きだ。俺のことを好きになったこと、後悔させないだけ、かわいがってやる」
ショーンの足を広げるようにして、ヴィゴが体を絡ませた。
ショーンの喉がごくりと鳴った。
「……もう一回、治療をするのか?」
「治療? ああ、治療ね。あんたにとってそう思った方が受け入れやすいってのなら、そう思えばいい。ショーンが、俺のことを好きなんだってわかったんだ。手加減なしに治療してやる。あんたが大好きだったセックスってのを思い出させてやるよ」
ヴィゴは、まだ、何かを言おうとしたショーンの唇を塞いだ。
繰り返される口づけに、ショーンは、照れたような、困ったような、嬉しそうな、しかし、すこし恐がっているような複雑な顔になった。
ヴィゴは、その顔を満足そうに眺めながら、もっと沢山の口付けを降らせた。
舌が絡み、二人の間で、何度も甘いため息が落ちた。
「ショーン……」
ヴィゴは、温かい舌でショーンの肌を辿りながら、幾つもの薄い刻印を刻んでいった。
それは、足の指にまで及んだ。
「なぁ、ヴィゴ。これって、ずっと前にあんたが言ってた……」
ヴィゴの舌が、ショーンの体中を這い回っていた。
ショーンは、ヴィゴの目的が前に聞いたことのあるファンタジーの実現であることに、少し馬鹿にしたような笑いを浮かべた。
「ショーン。しっ、黙って」
ヴィゴは、ショーンの足の指を口に含み、一本一本丁寧に嘗め回した。
「くすぐったい」
だが、ショーンは足を引いてしまった。
唾液に濡れたつま先が、ヴィゴの顔を蹴りかねない位置で狙っていた。
「……やっぱり、妄想どおりってわけにはいかないな」
「なんだ? やっぱり、あんたが一番最初に言ってた奴の実践なのか?」
「そうだよ。アレは、ショーン相手に考えてたことなんだ。あんたの体を嘗め回して、とろとろに蕩けさせてやりたくてしかたなかった」
ヴィゴは、ショーンの足首を捕まえ、踝に唇を寄せた。
ショーンは、目を細めた。
「ヴィゴ。あんた俺で、してたのか?」
「されてないとでも思ってたのか? あんな姿みせつけといて、それも禁止だって言われたら、俺は発狂してたね」
「……あんたはずるいな」
ショーンは、忌々しそうにヴィゴを睨んだ。
ヴィゴは、悪びれもせず、ショーンのふくらはぎへと舌を這わせていった。
ショーンが口の中で舌を遊ばせた。
快感だと受け取るには曖昧な表情を見守りながら、ヴィゴは、ショーンの膝裏に向かって口付けを続けた。
ショーンは、ヴィゴから足を取り戻そうと隙をうかがっていた。
「……ヴィゴ!」
膝裏の柔らかい肉を、ヴィゴが噛むと、ショーンはびくりと体を引いた。
ヴィゴは、足を掴み、続けて何度か噛んだ。
「ヴィゴ! そこは!」
「うん? 気持良いだろ? 足の指は予想が外れたが、こっちは当たった」
ヴィゴは、必死になって足を取り戻そうとするショーンを押さえつけ、柔らかな肉に、歯を立て、そこを舐め上げた。
ショーンが体をすくませた。
大きく開いた足の間から、赤くなった顔が見えた。
ヴィゴは、噛んでいない方の足も押さえつけ、太腿を撫でた。
ショーンの肌があわ立った。
「ショーンは、感じやすい方だよな。まぁ、俺の妄想ん中だともっとすごいんだけどさ」
ヴィゴは、舐める舌を太腿の付け根へと近づけていた。
ショーンは、きつく足を閉じ、ヴィゴを容易に進入させない。
「俺のショーンは……」
ヴィゴは、柔らかな太腿の肉が震えるほどの力で挟み込まれながら、ショーンの体に両手を這わせた。
「こうやって触ってやると、唇を開くんだ。そこから、小さな声を漏らして……赤い舌を見せてくれる。好きモノだからね。自分から腰を押し付けてくるよ。よくあんたがするようにさ、ペニスを俺に押し付けて、舐めてくれとか、触ってくれとか」
「ヴィゴ!」
ショーンがますます顔を赤くして、太腿にかける力を強くした。
ヴィゴは、ショーンに挟まれ、身動きが出来なくなった。
力の入ったショーンの太腿をヴィゴはゆっくりと、なで続けた。
「あんたの中の俺は、どういう風? ショーン、あんた、俺に舐められた晩、何も考えてなかったなんてことはないんだろう? それともあんたのベッドには俺は立ち入り禁止だったか?」
「おかげさまでね。ぐっすり眠ってたから、ヴィゴの出る幕はなかった」
「そんなに満足してたのか?」
くすりと笑ったヴィゴを叩こうと手を伸ばしたショーンの膝が緩んだ。
勿論ヴィゴは、その隙を外さなかった。
ショーンの手は、ヴィゴの胸を叩いたが、ヴィゴは、ショーンの腿を抱え上げた。
「ヴィゴ!!」
「いつもやってることだろう?」
「いつもなんて、そんなことしてない!」
ショーンから望んで始める治療の途中で、とってきたポーズのことを考えれば、ショーンの声は小さくなりがちだった。
ヴィゴは、正直なショーンを楽しそうに笑った。
膝へとキスをしながら、ちらりとショーンを流し見た。
「こんなポーズなんて、俺のベッドじゃ毎晩なんだけどね」
「知るか! それは、ヴィゴの妄想だ!」
「そう。妄想。でも、これから、ショーンの妄想をかなえてあげよう。あんたは、ただ俺に全てを任せてのんびりしててくれればいい。何もかも良くしてやるよ。そういうの、ショーンは好きなんだろう?」
ヴィゴはぱちりとウインクした。
ショーンは、口を曲げた。
憮然とした顔で、何か文句を言いかけた。
ヴィゴは、抱え込んだ足をそのままに、ショーンのペニスへと顔を近づけた。
ぺろりとショーンのペニスを舐めた。
「俺のショーンはさ、好きモノのくせに、照れ屋なんだよ。だから、すぐ体を隠そうとするんだ。ショーンみたいに、ここを出しっぱなしにしといてくれる方が先に進みやすくていいな」
ヴィゴは、柔らかいショーンのペニスを口の中に誘い込んで、くちゅくちゅと弄り出した。
ショーンは、今更のように、バスローブの前を合わせようとした。
勿論、ヴィゴが入り込んでいて上手くいかない。
「俺のヴィゴは、人の嫌がることなんかしない。どこまでも優しいんだ」
ショーンは、ペニスを咥えられているせいで、ヴィゴから逃げ出すことも出来なかった。
ヴィゴはにやりと笑った。
「へぇ……。でも、そんな腑抜けじゃ、ショーンのこと満足させてやったりできないだろ? ……しかし、ショーン。とうとう告白したな。やっぱりあんただって、俺のこと使って楽しんでたんじゃないか」
ヴィゴは先ほど漏らした精液の味が残るショーンのペニスを吸い上げた。
ショーンの表情を伺いながら、力加減を調節した。
本当なら、薬を使っていた時のように、深く飲み込んでやりたいくらいなのだが、普段のショーンにはその刺激は強すぎた。
やはり、いつものように優しい愛撫でかわいがってやらなければならない。
それだけでは、ショーンを蕩かしてやることができないと、ヴィゴは、ショーンの尻へと手を伸ばした。
「ショーン、こっちも触らせてくれよ」
ヴィゴは、ショーンの柔らかい尻を掻き分けた。
途端に、尻には力が入った。
「やめろ。ヴィゴ」
ショーンの目がきつくヴィゴを睨んだ。
「やめない。実は、ショーンがここを触られるのが好きだってのを、俺は知ってる。俺は、あんたの中の俺みたいに腑抜けじゃないからな。その程度の脅しには負けない」
ヴィゴはきつく閉じられた皺の上を指の腹でなぞった。
ショーンは、ヴィゴを睨み続けた。
「嫌だって言ってる」
「ショーンは、嫌じゃない。じゃなきゃ、いつもここまで綺麗にしてくるわけがないんだ」
ヴィゴは、強引にショーンの足を抱かえ上げ、ショーンの腰をベッドから浮かせた。
「何をするんだ!」
ショーンの足が、ヴィゴの背中を打った。
行儀の悪い足に連打されながらも、ヴィゴは、ショーンの尻へと舌を這わせた。
ざらりとした陰毛に周りを縁取られた穴を舐めた。
流石に初めてヴィゴの舌が穴へと触れた瞬間、ショーンの足が止まった。
息を飲んだような音が聞こえ、また、激しくショーンが暴れ出した。
ヴィゴは、ショーンに手を焼き、両足を一つにまとめると、顔に付くほど思い切り曲げさせた。
苦しそうに、ぐうっと、ショーンが息を飲んだ。
ヴィゴは、のしかかるようにして、ショーンを押さえ込み、白い尻の間へと舌を這わせた。
「クリームを取らせてくれないショーンが悪い」
「ちょっ……ちょっと、待て! クリームなら、取ればいい。使ってくれるんだったら、ぜひ、そうしてくれ!」
ひしゃげたような声で、ショーンが叫んだ。
「もう、遅いよ」
ヴィゴは、自分がしたかったままに、ショーンの穴へと舌をねじ込んだ。
びくびくとショーンの足が動いた。
大きく尻を振って逃げようともがくショーンを押さえつけたまま、ヴィゴはショーンの穴を舐った。
いつの間にか開いてしまっていたショーンの腿の間から手を入れ、前のペニスも優しく触る。
ヴィゴは、濡れた穴の中へ指を一本入れようとした。
唾液のぬめりでは、穴の中の抵抗がきつい。
繰り返し、ここでペニスを勃たせてきたとは言え、ショーンはまだ慣れているとは言いがたかった。
ヴィゴは、すぐに諦め指を抜いた。
ショーンがほっとしたようなため息を漏らした。
ヴィゴは、名残惜しいように、ショーンの尻へと唇を押し付けた。
吸い付き、唇で噛むように挟み、舌でそこにある毛全てを濡らしていく。
ヴィゴの口から漏れた唾液は、ショーンの股を濡らし、それはとうとう前で握られているペニスまで濡らすほどになった。
ショーンのペニスはまだ柔らかなままだ。
だが、ショーンの呼吸は浅くなっていた。
せわしない息をして、ペニスをヴィゴの手に擦り付けるような動きをしていた。
「このまま突っ込まれたくなかったら、ショーン、大人しくしてろよ」
そんな気などかけらもないくせに、ヴィゴはショーンを脅しつけた。
ショーンもヴィゴがそんなことなどするはずがない、と、知っていながら、恐がった振りで動かなかった。
ヴィゴはショーンに目でクリームの在り処を尋ね、ショーンの緑は、ベッドボードへと視線を流した。
片手でショーンの足を押えているヴィゴは、口でキャップを外した。
出てきたクリームをヴィゴは指へとたっぷり搾り出した。
ショーンは、ヴィゴが手を放した隙に足を下ろしてしまった。
ショーンが大きな呼吸をした。
苦しい体勢であったことは間違いがなく、ヴィゴは、ショーンの腰を抱き上げ、ショーンをうつぶせにさせた。
「ショーン。あんたのことを愛してるよ」
ヴィゴは、ショーンの背中に口付けを落とし、穴へと指を近づけた。
唾液よりも粘度の高いクリームの助けを借りて、ショーンの穴の周りをマッサージした。
「これが気持ちいいのは、あんただって良く知ってるんだ。ショーン。良くしてやるから、力を抜いてろよ」
ヴィゴの指は、ショーンの中へと潜り込んでいった。
いつもの通り、緩やかに中を探り、膨らんだ一点を目指す。
その周辺を優しく撫でたヴィゴの指を、ショーンの尻は強く締め付けた。
ヴィゴは、ショーンの緊張がほぐれるのを待ち、また、そっとそこへと触れる。
「あっ! ヴィゴ!」
ショーンが強くシーツを掴み、体を丸め込むようにした。
ヴィゴは、ショーンの腰を掴んで、逃げを打つ体を引き戻した。
「ショーン、あんた本当にここが弱いな」
にやにやと笑ったヴィゴは、抱いたショーンの腰に異変を発見した。
「おい、ショーン。すごいぞ。今日、二度目だ。しかも、勃ってる」
ヴィゴは、腰を抱いた手でショーンのペニスを掴んで、その硬さに驚いた。
完全とはいえないまでも、ショーンのペニスは十分勃起していた。
「こんなに期待してるんじゃ、こりゃ、かわいがってやらないとだな」
「……ヴィゴ」
顔を上げ、振り返ったショーンの目は熱っぽく潤んでいた。
ショーンは自分で手を伸ばし、ヴィゴの手に握られたものの硬さを確かめた。
「嘘みたいだ……」
「何がそんなにあんたを興奮させたんだ? ショーン?」
ヴィゴは薄く開いたままのショーンの唇に期待した。
しかし、その唇はキスを望むように舌を覗かせおり、ヴィゴは言葉を待つことなど出来なかった。
ショーンの中に入れた指もそのままに、ヴィゴはショーンの舌へと吸い付いた。
ショーンの舌が、積極的にヴィゴへと絡みついた。
指を飲み込んだままの尻が息継ぎにあわせ、きゅっ、きゅっと、ヴィゴを締め付ける。
ヴィゴは、ショーンの中の指を動かした。
そろそろと抜き差しをし、動きがスムーズになったところで、もう一本添えた。
キスを続けたままのショーンが焦ったような声を鼻から漏らした。
「大丈夫だ。力を抜いて」
ヴィゴは、ゆっくりとショーンの中で指を動かした。
一本の指になら何度も中を弄られたことある内部は、ゆっくりとではあったが、次第にヴィゴの指を受け入れていった。
ヴィゴは、ショーンをいかせてしまわないよう気をつけながら、内側からショーンを溶かしていった。
ショーンの背中に汗が浮かんでいた。
ヴィゴの舌は、それを舐めとる。
もっと直接的な刺激を望むように白い尻が振られた。
ヴィゴは、唇を緩めながら、焦れたように蠢くショーンの背中へとキスを繰り返した。
「ショーン、愛してるよ。あんたが好きだよ」
汗の浮いた背中へと一つキスをするたびに、ヴィゴは愛の言葉をショーンへと囁く。
「あんたが、どんな風だろうが、俺はあんたのことを愛してる」
我慢の利かないショーンのペニスは、もうぽたぽたと精液を零し始めていた。
ショーンの内部は、ぎゅう、ぎゅうと、繰り返しヴィゴを締め付けた。
うっすらとピンクに染まった背中と腰が、せつなく振られる。
ヴィゴは、とうとう、三本目の指をショーンの中へと進入させた。
尻の穴は伸びきって、ヴィゴの指を飲み込んでいる。
ショーンも苦しそうな息をした。
それでも、ヴィゴが指を動かすと、ショーンの尻が左右に揺れた。
「すごい眺めだ」
ヴィゴは、自分の指をすっかりとくわえ込んだ白い尻の姿に感嘆のため息を落とした。
ぎゅっと寄っていたはずの皺がまるで残っていなかった。
反対に皮膚が薄いピンクを晒して伸びきっていた。
「想像していたより、ずっとくる」
ショーンは、浅い息の合間に、小さな声で呻いた。
「……畜生……こっちは思ってたのより……ずっと苦しいってのに……」
確かに、苦しくないということはないだろう。
だが、しきりと尻を振ってヴィゴを困らせているのは、ショーンの方だ。
「何だって? ショーン?」
ヴィゴはわざと聞き返した。
「……思ってたより、ずっといい! ……って、言ったんだ!」
ヴィゴは、負けん気の強いショーンに苦笑した。
「いいだろ。ショーン。もっといい気持にさせてやるから、もう少しだけ、リラックスしてくれ。あんた背中が強張ってるぞ。こんなんじゃ、明日になったら、筋肉痛になっちまう」
ヴィゴは、ショーンの中に指をなじませながら、唇を使って、ショーンの体を蕩かしていった。
伸び上がるようにして項に口付け、ショーンの肩へと唇を滑らした。
金の髪の毛先も噛んだ。
強張っている腕にもキスをしたし、背骨の一本一本、そして、腰の窪み、丸い尻の天辺にもキスをした。
力の入っている太腿も舐めた。
だが、ショーンのペニスはあえて避けた。
三本の指を受け入れ、皺が伸びきるほど苦しんでいるくせに、ショーンのペニスは、いつもよりずっと立派に勃起していた。
そして、いつもにくらべれば、格段の持続力だ。
しかし、ずっと精液がとろとろと零れ落ちていた。
もし、ヴィゴが口に含みでもしたら、もう、射精してしまうことは間違いなかった。
「……ヴィゴ」
ヴィゴが指を抜き差しするリズムで、腰を揺らし始めていたショーンが、小さな声でヴィゴを呼んだ。
ショーンの体は、ヴィゴのキスにずいぶんと蕩け陥落させられていた。
「どうした? ショーン。苦しいか?」
「……ヴィゴ、……、ヴィゴあの……」
「なんだい、ショーン?」
「……これから、どうする気なんだ……」
ショーンの目は、落ち着きなくベッドの上へとさ迷った。
ヴィゴはそれをもう受け入れる気でいるショーンのために、優しいキスをした。
「できたら、あんたがまだ、保ってる間に、あんたの中に入りたい」
「……どうしても?」
ショーンが唇を舐めた。
「ああ、どうしても」
ヴィゴは力強く返事を返した。
こんなことは始めてのショーンにとって、強くヴィゴに求められ、許すという行為が必要なようだった。
ヴィゴはいっそやめてしまうことの出来るほどショーンのことを愛している顔を隠して、ショーンの目をじっと見つめた。
ショーンは、努力してその要求を受け入れているかのように、何度か頷きを繰り返した。
目を伏せ、諦めたという表情を作った。
ヴィゴは、ショーンの中から指を引き抜き、背後へと回った。
ショーンは、肩を落とし、ベッドへと伏せた。
その尻をヴィゴは持ち上げた。
尻から続く美しい背中のカーブは、ヴィゴ一人のためにある。
「ショーン、愛してるよ」
ヴィゴは、自分のペニスをやっとジーンズの中から出してやり、丸い尻へと擦りつけた。
ショーンの尻から溢れ出しているクリームをもう濡れているペニスの先端に塗りつけ、柔らかくなっている窪みへと押し付けた。
「……うっっ……」
「ショーン、落ち着け。息を吐いて」
散々指で慣らしたとはいえ、そこは辛そうだった。
それでも、ショーンは努力をし、ヴィゴの先端をなんとか飲み込んだ。
ヴィゴは、ゆっくりとショーンに進入していきながら、ショーンの腰を撫で続けた。
「……ヴィゴ……ヴィゴ」
「ああ、ショーン、愛してるよ。よく耐えてる。ありがとうショーン」
ショーンの手は緊張のあまり白くなったまま、シーツをきつく掴んでいた。
飲み込むものの大きさよりも、他人のペニスを体内へと受け入れているという事実が、酷くショーンを動揺させていた。
できるものならば、ショーンは、ヴィゴを振り払ってしまいたかった。
だが、それが、ショーンには出来なかった。
ショーンは、ヴィゴの帰った後のベッドで、一人夢想してきたのだ。
ヴィゴのものを受け入れる自分を。
彼に愛され、安心して息をする自分を。
「……ヴィゴ……」
「ああ、ショーン。もう、大丈夫だ。あんたは全部飲み込んだ。平気だったろう? ちっとも恐くなんかない」
ヴィゴは、ショーンの頬が強く強張っているのに、半分ほどしか埋まっていないペニスの進入を止めた。
そこで、ゆっくりと動かす。
ショーンを感じさせるためだけならば、これだけ挿してあれば十分だった。
「……きついか? ショーン?」
緩い抜き差しをヴィゴは始めた。
ショーンの感じる部分に意識して触れた。
ペニス先を押し当てるようにして、ヴィゴは腰を動かす。
「……っうう……ぁぁあ……う……」
ショーンは腰をねじるようにして、耐えながらヴィゴの進入を受け入れた。
突き出すように出された尻に、ヴィゴのペニスが刺さっている。
「ショーン。あんたの触るぞ」
ヴィゴは、ショーンのペニスに手を伸ばした。
力なくなっていたペニスが、中からと外からの刺激に次第に体積を増した。
普段では考えられないことだった。
「本当に、今日はどうなってるんだ?」
ヴィゴは、半分ほど硬くなったペニスを注意深く扱きながら、そっとショーンの背中を抱いた。
そして、まだ、まだショーンに絡み付いていたバスローブを邪魔にして抜き取り、自分も着ていたTシャツを無理やり頭から引き抜いた。
直接肌を重ね合わせる。
ヴィゴは、ショーンの背中の滑らかさに、ため息が漏れた。
「ショーン、愛してる」
ヴィゴは、背中を抱き、唇を落としながら、ショーンの中でゆっくりと動いた。
ペニスは、半分ほどしかショーンの中に埋まっていなかった。
ショーンが、眉の間を寄せ、何度も息を吐き出しながら、振り返ってヴィゴを睨んだ。
「ヴィゴ……、本当は、まだ、……全部入ってないんだろう?」
「無理言うな。俺の目的は、あんたに気持ちのいいセックスをしてもらうことなんだ。これ以上は無理だよ。そんな目をしてもだめだ」
ヴィゴは、苦しくないはずがないのに、また、ショーンが強がりを言い出した。と、思った。
しかし、ショーンは生真面目な顔で、苦しそうな息の中、ヴィゴに求めた。
「ヴィゴ……俺が望んでもダメか? なぁ、痛くても、苦しくてもなんでもいい。……全部が欲しい……んだ。……俺にヴィゴをくれ。ヴィゴの全部で愛されてるんだって実感したい……」
「……ショーン!」
ヴィゴの声は悲鳴に近かった。
「ヴィゴ。俺のこと、好きでいてくれるんだよな? 俺も、ヴィゴのことを好きになっていいんだよな? ……なぁ、ヴィゴ。俺のこと愛してくれるんだよな?」
ショーンは何かを言いよどんだ。
ヴィゴは焦った顔のまま、ショーンの顔を覗き込んだ。
「……愛してください。と、お願いしたら、ヴィゴは全部俺にくれるか?」
「やるとも! 何もかもショーンにやる! 愛してる。ショーン!」
ヴィゴは、ショーンの届くところ全てにキスの雨を降らせた。
「畜生! こんな時に言うなんて、卑怯だ。ショーン! あんたに手加減できなくなっちまう!」
ヴィゴは、ショーンの腰を掴み、激しく打ち付けたくなる自分を自制するのに必死だった。
「ダメだ……そんなことしたら、あんたが壊れちまう!」
ヴィゴは強く自分に冷静さを求めた。
「……手加減なんてしないでくれ。ヴィゴ。……俺は、ヴィゴと対等でいたい……」
「だから、ショーン! なんでセックスっていうとあんたはそう奉仕したがるんだ! そういう無理が積もり積もって……」
「うるさい。ヴィゴ!」
大きな声をだしたショーンは、苦しそうに呻いた。
それでも、気丈にヴィゴを睨みつけ、口を開いた。
「俺がいいって言ってるんだ」
「ショーン……」
ヴィゴは緑の目の決意に、もう我慢など出来なかった。
ずぶり、と突き刺したヴィゴに、ショーンは体を強張らせた。
もう、目には涙が浮かんだ。
叫び出したいほどだろうに、ショーンは唇を噛んだ。
「泣いてるぞ、ショーン」
ヴィゴは、ぺろりと唇を舐めると強くショーンの腰骨を掴み、激しく揺さぶった。
「……っぁひっ! ……ぅぅぅううぁあ!!」
ショーンの口から漏れ出たのは、確かに悲鳴だった。
しかし、その合間に、甲高く甘い転調が起こるのだ。
ヴィゴは、ショーンが壊れてしまわないようにだけ、気を遣い、望むだけショーンに与えた。
「ショーン! 愛してる! 愛してる!」
「……ヴィゴっ……ぁっあっ!」
ショーンのペニスから精液が吹き出した。
体の苦痛を精神が超越した瞬間だった。
「ショーン、愛してる! 愛してる! 愛してる!!」
ヴィゴは、狭く、熱いショーンの尻の中に精液をぶちまけた。
ヴィゴは、動けないショーンの体をかいがいしく拭っていた。
ショーンは白い顔をして目を閉じていた。
「ショーン、今度はこっちの足を拭くぞ。いいか、持ち上げるぞ?」
重いショーンの足を持ち上げながら、ヴィゴは、丁寧にショーンを清めた。
色を失ったショーンの唇が開いた。
「……なぁ、ヴィゴ、俺、治ったと思うか?」
確かに、今日のショーンは、いつもに比べればずっと状態が良かった。
少なくとも、ヴィゴとの治療が始まってから、二度も射精したのは初めてのことだった。
ヴィゴは、ショーンの足を拭いながら、ちらりとショーンのペニスへと視線を流した。
「どうだろう? そんなに簡単に治るものならいいが、別に俺は構わない。たとえ一生あんたがそのままだとしても、嫁に貰ってやるって言っただろう?」
ショーンは不意に目を開けた。
「……ヴィゴとセックスするのは、気持ちいい」
「本当か? 今日なんて、ただ、痛かっただけだろ?」
ヴィゴは、ショーンの足の指、一本一本を丁寧に拭いながら、ショーンに微笑みかけた。
ショーンは返答に詰まった。
しかし、すぐさま、意地の悪い笑いを浮かべた。
「あんな程度で、それほど自信過剰になられてもな」
「ショーン」
ヴィゴは、苦笑を浮かべた。
「悪かった。ショーン。あんたを満足させないサイズだったか?」
ヴィゴは、綺麗になった足の指に小さなキスを贈った。
ショーンが擽ったそうな顔をした。
「……嘘だよ。ヴィゴ。あんたに抱かれてると安心する。あんたが、俺のこと本当に好きでいてくれるんだって、ほっとするんだ」
「なるほど、ショーンは、すっかり俺に惚れてるんじゃないか。じゃぁ、これからは、薬を使った治療も出来るってわけだ。ショーン、あんた薬を使うと余計に殺伐とした気持になるから、嫌だったんだろう? 自分がセックスマシーンにでもなったみたいで、ちっとも安心できなくて、だから、嫌だったんだよな。…… アレを使われると、俺の方が壊れそうだけどね。様子を見ながら、ゆっくり治していこうか? 俺とするのなら、ショーンはあの薬だって、安心して使えるだろう?」
ショーンが少し迷う顔をした。
「……ヴィゴがそうしたいって言うんだったら」
ショーンの戸惑いに敏感に気付いたヴィゴは、タオルを放りだすと、小さなショーンのペニスにキスをした。
小さなキスを何度も繰り返し、ヴィゴはちらりとショーンを見上げた。
「それに俺は別に、こいつが、小さいままでもいいんだぜ? そうすりゃ、ショーンも浮気できない」
ヴィゴを蹴飛ばしたショーンは、その動きで歯を食いしばりながらうめき声を上げることになった。
ヴィゴは食いしばったままのショーンの口にキスをした。
「愛してるよ。ショーン」
「くそっ! 俺もだ。ヴィゴ」
ショーンの唇がキスの形に動いた。
数時間後、ショーンの家のドアベルがなった。
立ち上がることのできないショーンの代わりに、ヴィゴがドアを開けると、そこには酔っ払ったオーランドを担ぐ、ドミニク、ビリーそして、数多くの若いスタッフがいた。
「ヴィゴ、お届けもの」
「なんで、俺になんだ?」
ヴィゴは、自分で立っていることも叶わないオーランドを押し付けようとするドミニクに目を丸くした。
オーランドはヴィゴの服を掴んだ。
「聞いてよ〜、ヴィゴ! リジが、女の子全部持って帰っちゃってさぁ!」
ろれつの回っていないオーランドの言葉は聞きにくかった。
ヴィゴは、ビリーの顔を見た。
「オーリの奴、やめときゃいいのに、俺たち呼び出した後に、リジにまで連絡いれてさ。あいつが出てきちゃ、オーリだって勝ち目なんかないっての。リジが着いた途端、それまで、オーリと仲良くしてた子まで目の色変えちゃってさ」
「オーリの無敵神話も、今晩で終わったってわけ。なんか、オーリ、ヴィゴあんたに習ったとかいうキスのことをやたらに自慢してたけど、リジがにっこり笑ったら、一瞬で負けが決まってた。まぁ、あんたが言うなら説得力があるけど、オーリにすごいキスができるなんて言われてもね……」
「なるほど」
ヴィゴは酔ったオーランドの頬を撫でた。
騒がしい玄関の様子に、ショーンが痛む体を引きずるようにして、寝室のドアを開けた。
その時、沢山の友人に囲まれて幸せに酔っ払っているオーランドは、ヴィゴの抱きつきながら泣き出した。
「ヴィゴ。俺のこと好き? ねぇ、俺のこと好きだよね?」
ドミニクは肩をすくめた。
「酔っ払ってから、ずっとそればっか。俺、今日だけで、百回もオーリのこと好きだって言わされた」
ヴィゴは、オーランドの髪を撫で、頭に小さなキスをしてやった。
「好きだよ。オーリ。でも、言っただろう? 世界中の女の子が全部お前を好きになるとは限らない」
酔っ払いはぐずぐずと泣き続けた。
ヴィゴは、オーランドの髪を撫でた。
ドアのところで立ち止まったままのショーンに気付いたビリーがショーンに挨拶した。
「あっ、ショーン、ごめんね。寝てた? 煩くしてごめん。オーリ置いたら、すぐ帰るから」
ショーンは、返事も返さず、大きな音をたてドアを閉めた。
にべもなかった。
「ショーン?」
珍しい態度に驚き顔のビリーへとオーランドを押し付け、ヴィゴは、寝室のドアまで駆け出した。
ガチャガチャとノブを回したが、ドアは開かない。
「おい! ショーン! カギを掛けるな! おい! ショーン!!」
「なに? ヴィゴ、ショーンの機嫌、まだ、直らないの?」
オーランドは、ビリーの腕の中で嬉しそうに笑った。
「大変だね。ヴィゴ」
「誰のせいだと思ってる! 人迷惑な甘え方をするな! おい! ショーン! ショーン!」
肩をすくめたビリーと、ドミニクは、浮かれて笑い出したオーランドを引きずるようにして車へと戻り出した。
周りを囲む年若いスタッフ達は、珍しく慌てた様子のヴィゴに心配そうな目をしていた。
ヴィゴはまだドアを叩いていた。
「ショーン! ショーン!」
「おじさんたちのレクレーションだから、放っておいてやろう」
オーランドを引きずっているドミニクとビリーが、足で、玄関のドアを閉めた。
END