足りないもの
ホテルのドアを閉めたところで、オーランドは、ヴィゴへと飛び付いた。
荷物を床へと放り出し、両腕で、しっかりとヴィゴを抱きしめる。
「ヴィゴ」
オーランドは、顔中に口付けながら、ヴィゴの名を呼んだ。
「ヴィゴ、ヴィゴ」
オーランドは、ヴィゴの目尻に口付け、鼻にキスをし、強く頭を抱きしめて、耳に唇を押し付けた。
ヴィゴは、ゆっくりと、オーランドを抱きしめた。
ヴィゴの腕が、オーランドの腰を抱く。
オーランドは、自分が抱きしめられたことに、ほっと息を漏らした。
ヴィゴの力が強くなると、嬉しそうに肩へと顔を擦りつけた。
「ヴィゴ。…会いたかった。ヴィゴ…」
オーランドの手が、ヴィゴの髪をかき混ぜ、首に縋りついた。
それは、足らなくて、背中を撫で回し、盛り上がったヴィゴの尻を撫でた。
「やっと、会えた。会いたかった。ずっと、ずっと会いたかった」
オーランドは、切実に、自分の気持ちを訴えながら、ヴィゴをきつく抱きしめた。
余りに、オーランドが体を押し付けるせいで、ヴィゴは、後ろへと一歩下がったくらいだ。
ヴィゴの足が、オーランドの放り出したナイロンバックに触った。
ヴィゴは、小さな笑いを漏らした。
「…オーリ。顔を見るのは、一月ぶりくらいだろ?」
ヴィゴの顔で、オーランドにキスされなかった場所は無かった。
あまりに取り繕うところの無いオーランドの態度に、ヴィゴは愛しげな笑いを目元に浮かべた。
オーランドは、ヴィゴの青い目を見つめ、その目尻にできた皺にキスをしながら、愛情深くヴィゴの顔を唇で辿った。
「顔を見るのはね」
オーランドの唇は忙しく、ヴィゴの顔を辿った。
「でも、こうやって、キスできるような場所で会えるのは、半年振りだ」
言葉を綴る時間も惜しいと、オーランドはキスの雨を降らせた。
ヴィゴは、オーランドの好きにさせていた。
緩くオーランドを抱きしめ、背中の壁へともたれかかった。
「この間会った時だって、お前は、無理やりキスしただろう?」
「だって、ヴィゴ。あんたが触れるくらい側にいて、どうして、何もせずにいられるって言うんだ」
オーランドは、自分の言葉に興奮したように、ヴィゴを更に壁へと追い詰め、強く顔を押し付けた。
笑っている形のヴィゴの唇が、オーランドによってふさがれた。
ヴィゴの髪がめちゃくちゃに乱され、口の中を、オーランドの舌が我が物顔に占領した。
オーランドは、応えないヴィゴの舌を噛みさえした。
ヴィゴは、オーランドを満足させるため、恋人の舌をからかうように舐めた。
オーランドは、うっとりと目を閉じた。
ヴィゴへと体を預け、ヴィゴの舌が、オーランドへと挨拶するのを、喜んで受け入れた。
ヴィゴは、オーランドの髪を強くひっぱり、引き剥がさなければならなかった。
いつまでも、オーランドが離れないのだ。
ヴィゴは、唇に苦笑を浮かべた。
「オーリ。まずは、座って、お互いの話をしようじゃないか」
ヴィゴは、まだ、体を撫でようとするオーランドを押し退け、小さく肩を竦めた。
「これから、二日は、俺たち一緒に居られるって、お互いに確認済みだよな。夕食の店を決めたり、荷物を解いたり、まず、そういうことを済ませてしまわないか?」
オーランドは、ヴィゴの手を掴んで、強く自分へと引き寄せた。
「ヴィゴ。話なら、電話でいつだって出来る。夕食は、食い損ねたって、どうってことない。荷物なんて必要なものをその時取り出せばいいんだ。2日しかないのに、こうやって、ヴィゴを抱きしめることが出来るチャンスが、やっと、巡って来たってのに、どうして、そんな悠長なことをしていられるんだ」
オーランドは、部屋に向かって進もうとしていたヴィゴを背後から抱きしめた。
「ねぇ、ヴィゴ。どうして、そんなに冷静なのさ。俺のこと、抱きたくならない?俺は、あんたに会えるんだと思っただけで、すごく期待して、ずっと興奮してるのに」
オーランドは、ヴィゴの尻へと自分のペニスを擦り付けた。
盛り上がったジーンズの生地が、ヴィゴの尻を何度も擦った。
ヴィゴは、強く腹を締め付けるオーランドの腕を優しく撫でた。
「…オーリ。わかった。わかったから。ちょっと、落ち着け。せめて、こんな廊下から先に進もう」
ヴィゴの唇は、背中に巻き毛を押し付ける恋人を愛しいと、笑っていた。
背中に張り付いたままのオーランドを引きずるように、ヴィゴは部屋の中へと進んだ。
余力が無かったこともあり、オーランドの荷物は、玄関近くの廊下に落ちたままだった。
背中に張り付いた重い荷物に引きずりながら、ヴィゴは、一歩、一歩と廊下を進んだ。
オーランドは、額を擦りつけるようにヴィゴにぴったりとくっついていた。
ヴィゴは、オーランドの腕を撫でながら、背中に張り付く荷物へと文句を言った。
「オーリ、自分で歩け」
「嫌だ。ヴィゴと離れたくない」
しかし、オーランドは、ベッドが視界に入った途端、反対にヴィゴを引きずるようにして、ずかずかと部屋を横切っていった。
ヴィゴは、強引に手を引かれ、面白そうに笑った。
オーランドは、ベッドにヴィゴを座らせると、その間にすとんと座り込んだ。
「ヴィゴ。ねぇ、口でしたげよっか?」
ヴィゴの背中で散々顔を擦りつけていたせいで、オーランドの前髪は乱れ、額もすこし赤くなっていた。
ヴィゴは、オーランドの髪を掻き上げた。
つるりとしたオーランドの額に柔らかなキスをした。
「なぁ、オーリ。まず、セックスしないと、オーリは、俺に何も話をしてくれないつもりか?」
「…そういうわけじゃないけど…でも、ねぇ、まず、しようよ」
オーランドは、唇をキスの形へときゅっと寄せた。
そのまま、キスを待つわけでなく、伸び上がり、ヴィゴへと唇を寄せた。
薄く唇を開き、ヴィゴの唇を何度も甘く挟み込む。
「この感触は、電話じゃ味わえないんだよ。俺の口の中の感じをヴィゴは、味わいたくないの?」
オーランドは、舌を伸ばして、ヴィゴの唇を舐めた。
「いつもしてるテレフォンセックスじゃ、俺の体温も、歯の感触も、全部想像の中のものでしかない。ねぇ、俺の唾液が温かいこと、ちゃんとヴィゴは、まだ、憶えてくれてる?あんたに言われて憶えたやり方をしたら、俺の唇が、どのくらい気持ちよくあんたのペニスを締め付けることができるか、確認したくならない?」
オーランドは、ヴィゴの膝を跨ぐように、ベッドへと乗り上げた。
ヴィゴは、膝立ちのオーランドの体を指先で、なぞった。
「オーリ。何枚、着てる?せめて、この厚手のパーカーを脱がないか?」
余裕のヴィゴの唇を噛み、オーランドは、紺色のパーカーを脱ぎ捨てた。
ヴィゴは、Tシャツの下で、尖っているオーランドの乳首を指先で、弾いた。
「かわいらしい限りだな」
ヴィゴは、にやにやと笑う。
オーランドは、ヴィゴを色気のあるきつい目で睨んだ。
「触ってくれるなら、こっちのほうがいい」
オーランドは、ヴィゴの手を取り、自分の股間へと引き寄せた。
ヴィゴの掌にペニスを擦り付け、強く目を閉じ、顎をそらす。
すっきりとしたオーランドの顎のラインが、ヴィゴの目を焼いた。
ヴィゴは、自分の意志で、オーランドのペニスを撫でてやった。
「電話じゃ、満足してるようなことを言ってたのに」
まだ、ジーンズ越しの刺激だというのに、派手に腰を揺らすオーランドをヴィゴはからかった。
「満足できないって言って、どうなるってのさ。言っても仕方のないことは言わないよ。あんたの声を聞きながら自分でするのも悪くない。でも、直接抱き合えるんなら、絶対にそっちの方がいい」
オーランドは、ヴィゴの唇を求めて、眉の間に皺を寄せながら、切なくキスを繰り返した。
「オーリ。Tシャツも脱ごうか」
唇に吸い付くオーランドは、んーっと、返事を返していたが、ヴィゴに甘えた声を出した。
「ねぇ、脱がせてよ」
ヴィゴは、笑って、オーランドの髪を撫でた。
指先に絡まる巻き毛をくしゃくしゃにし、オーランドのTシャツの裾を持ち上げた。
オーランドは、子供のように、万歳と手を上げた。
開けっぴろげなその態度に、ヴィゴは、Tシャツを脱がせながら、オーランドの脇を唇で擽った。
「くすぐったい!」
「違うだろう?オーリ。こういうセクシーな姿を晒している時は、黙ってないと」
ヴィゴは、唇で、オーランドの脇の毛を挟んだ。
「すごく、興奮してるな。たしかに、俺も、こんな風に見せ付けられちゃ、やりたくなる」
オーランドは、ヴィゴの強い目に、ごくりと唾を飲み込んだ。
胸がドキドキと音を立てた。
とても、乳首を吸って欲しくなり、無意識に胸を突き出すように前へと出した。
しかし、ヴィゴは、キスをしない。
ヴィゴは、オーランドを膝の上から退かすと、いきなり自分のバックをかき回しだした。
「でも、その前に」
ヴィゴは、青い色のものを取り出し、にこりとオーランドに向かって笑った。
「オーリ。手を出して」
ヴィゴは、片手に青いものを持ったまま、オーランドに向かって、掌を差し出した。
オーランドは、素直に掌の上へと手を乗せた。
ヴィゴが、オーランドの腕を掴み、青いものに、手をくぐらせる。
オーランドの腕に嵌められたのは、汗拭き用のリストバンドだった。
「これ、お揃い?」
トレーニングするヴィゴの写真で、同じものをオーランドは見たことがあった。
「そう。オーリにあげるよ。お前も、走り込んだりするだろう?」
「…でも、何で、今?」
オーランドが不思議そうな目をして、ヴィゴを見た。
ヴィゴは、嬉しそうな顔をして、にっこりとわらった。
「なんか、今日のお前餓えてて、恐いから、こうさせてもらおうと思ってね」
ヴィゴは、バックから、銀色のものを取り出した。
リストバンドの上から、オーランドの腕へと当てた。
ガチャリ。と、音を立て、手錠がオーランドの腕へと嵌った。
オーランドは唖然とした。
リストバンドをしているせいで、手錠は、まったくの緩みなく、オーランドの腕を拘束した。
「俳優の商品に傷を付けるわけにいかないだろう?だから、今、プレゼントさせて貰うよ」
「ヴィゴ!?」
オーランドは、手錠で繋がれた手を持ち上げ、大きく目を見開いた。
ヴィゴの顔と、手錠との間をオーランドの視線が行ったり来たりする。
「恐いって、何?これ、何?」
「本当は、もっとゆっくり出す気だったんだけどな。お前、すごくがっついてて恐いから、予定とは違う方向だが、今、使うことにした」
オーランドは、茫然とヴィゴを見つめた。
「えっと、…俺…」
「最後の電話で、そういう話をしただろう?お前、手錠くらいだったらされてみたいって、言ってたよな。あの時、随分興奮してたみたいだったから、一応、用意してきてみたんだが」
ヴィゴの目は、オーランドの腕に嵌った手錠の具合を確認していた。
リストバンドからずれ、オーランドの肌を傷付ける心配がないかを、丹念にチェックした。
「…たしかに…言った。言ったけどさぁ…」
オーランドが腕を動かすと、鎖が、チャリンと音を立てた。
「拘束されて犯されるオーリってシュチュエーションに、お前、普段より早くイったよな」
ヴィゴは、にやりと笑うと、大人しくなったオーランドの唇へとキスをした。
「…でも、なんか、想定していたプレイと随分違わない?」
「だって、オーリ。今日のお前、すごく恐いぞ。何かの保険がないと、俺は、腰が立たなくなるまで、腹の上に乗っかられるか、もしくは、お前に犯されそうな気がしてるね」
ヴィゴは、オーランドの背中へと腕を回して、そっとベッドの上へと転がした。
オーランドの額に寄った皺へと、ヴィゴは、何度もキスを繰り返した。
「オーリ。電話じゃ、何度も、下さいってお願いするプレイをしただろう?あれを実地でやろうじゃないか」
ヴィゴは、オーランドのジーンズのボタンを外した。
「そういうのも、結構好きだろう?」
長い遠距離恋愛は、2人のテレフォンセックスのバリエーションばかりを増やしていた。
じれったくなるような柔らかなキスで、体をなぞられ、オーランドは、悔しさに唇を噛み締めていた。
ヴィゴは、目を細め、オーランドに笑いかけながら、唇だけで何度もオーランドの肌にキスを落としていった。
キスをする際、ヴィゴの体が、オーランドのペニスを擦るが、それ以上の刺激は与えられない。
オーランドは、自分から、腰を上げ、ヴィゴへとペニスを押し付けた。
「オーリ、そんな不機嫌そうな顔をするなよ。俺は、こうやってお前のことを可愛がりたくて、ずっと楽しみにしてたんだぞ」
ヴィゴは、滑らかなオーランドの腹に、また、キスをした。
腕をついてわざと体を起し、オーランドとの間に空間を作った。
これで、オーランドのペニスは、ヴィゴの体に触れなくなった。
オーランドは、手錠の腕で、ヴィゴの頭を抱いて傷付けるわけにもいかず、額に腕を重ね合わせておいたまま、ヴィゴのことを睨みつけた。
「俺だってねぇ、すっごく楽しみにしてた!ヴィゴのペニスをフェラしてあげようと思ってたし、あんたの体を一杯抱きしめて、嫌って程触りまくって、一緒にペニスを握って、ぐちゅぐちゅ擦り付けあったりしたら、絶対に気持ちいいと思って、もう、すごく、期待してた!」
巻き毛から除く、オーランドの黒目は、機嫌悪かった。
オーランドは、自由になる足で、ヴィゴの体を挟み込んだ。
曲げられた足は遠慮なく開かれ、腿は、ヴィゴの体を強く挟んだ。
「…お前さ、そういうこと言ってて恥かしくない?」
ヴィゴの胸には、オーランドの硬いペニスが押し付けられた。
眉を寄せているオーランドは、冷たい目をして、ヴィゴをにらんだ。
「…電話で、いつも、もっと恥かしいこと言ってる人に言われたくない」
「それは、お前のことを満足させてやろうと思って」
「じゃぁ、今、満足させてよ。そういうじれったいのは、後からにしよ!」
ヴィゴは、オーランドから体を起し、前髪を掻き上げた。
オーランドは、逃げようとするヴィゴの体を腿に力を入れ、力の限り、拘束した。
「…足も縛った方がいいか?」
痛むほど胸を強く挟まれ、ヴィゴは呆れた目をして、オーランドに聞いた。
「ねぇ、ヴィゴ!あんたのお好みは、2回目に取っとこう。あんただって、俺に興奮してるじゃん。いろいろごちゃごちゃ言うのは、止めにして、さっさとやろう。頂戴。ねぇ、頂戴ってば。あんたの大きなペニスで、俺の中をぐちゃぐちゃにしてよ。ねっ、お願い。さっさと、やろ」
「……お前、言う事さえ言っとけば、いいと思って、適当に喋ってるだろ」
ヴィゴの青い目は、あきれた様にオーランドを見た。
オーランドは、足を、ヴィゴの背中へと回した。
しかし、ヴィゴは、逃げてしまう。
オーランドは、体を起して、ヴィゴに向かって擦り寄っていった。
「いいじゃん。お約束のセリフは言ったよ。あんた、これが言わせたかったんだろ?」
オーランドは、ヴィゴの首筋にキスをした。
そのまま、シャツの襟元へと顔を押し付けながら、キスを繰り返した。
オーランドの唇の感触は柔らかい。
「そのセリフを演技じゃなく、マジで言わせたかった俺の気持ちは、分かってくれないのかな?」
ヴィゴは、オーランドの首根っこを押さえ、ベッドの上へとうつぶせに押し付けた。
すんなりとしたオーランドの背中が無防備にヴィゴへと向けられた。
ヴィゴは、後ろから、覆い被さり、硬く盛り上がったオーランドの尻へと、まだ、ジーンズを履いたままの自分の股間を擦りつけた。
「これ、欲しいんだろう?オーリ」
ヴィゴは、思わせぶりに、腰を振りながら、オーランドの体を揺すった。
オーランドが、シーツをきつく握り締めた。
「…欲しいって、言ってる」
しかし、ヴィゴは、オーランドの尻を揉むようにいやらしく撫で回しながら、まだ、擦りつける動きを繰り返した。
ヌードの尻は、ジーンズの固い生地で擦られた。
オーランドの股の間を覆っている黒い縮れ毛が、何本か抜けて、ヴィゴのジーンズの表面に付着した。
「もっと、真剣に欲しがっても、いいんじゃないか?オーリ」
「どこが、どう、真剣じゃないってのさ!」
「そうやって、牙が向けるってことは、余裕があるってことだろう?」
ヴィゴは、オーランドの体を押さえつけたまま、項から順に舌で辿り始めた。
性的な興奮だけでなく、怒りでも興奮しているオーランドの背中は、赤く色付いていた。
そこをヴィゴは、舐め上げる。
丸まったオーランドの背中の背骨に柔らかく歯を立てる。
ヴィゴは、決して急がない。
いくつもの甘噛みを残して、ヴィゴが腰の辺りにたどり着く頃には、オーランドの太腿が小さく震えていた。
「…イきそう」
小さく漏らされる短いうめきとともに、オーランドが訴えた。
オーランドは、はぁはぁと、犬のように短い息を繰り返していた。
ヴィゴの唇が、やっとオーランドの尻にたどり着いた。
「触ってないんだ。もっと我慢しろ」
ヴィゴは、オーランドの太腿を撫で、足の付け根の柔らかい肉を触ることまではしたが、濡れているペニスには、指一本触れなかった。
オーランドの腰が、ヴィゴの手を求めて、ふらふらと動いた。
「…いいじゃん。俺、今日、何回でもできそう」
「……せっかちなのは、性格なのか?それとも、ただ、単にこらえ性がないせい?」
「…ヴィ…ゴ。ねぇ。舐めて。よく、電話で言ってくれたじゃん。俺の舐めたいって言ってたじゃん」
喘ぎの間に懇願するオーランドの声は、酷く甘ったるかった。
振り返った目は、しっとりと濡れていた。
額には、汗で髪が張り付いていた。
「悪魔のささやきだな」
ヴィゴは、オーランドの体の下へと潜り込んだ。
すっかり硬くなり、先端を濡らしているペニスを舌先で舐めた。
オーランドが腰を震わす。
「ああっ!……ヴィゴ」
オーランドは、腰から力が抜けたように、ヴィゴの顔の上へとへたり込んだ。
ヴィゴは、オーランドを持ち上げながら、ペニスを吸い上げた。
片手で、力の抜けたオーランドの腿を支え、もう片手は、垂れ下がる二つの玉を緩く握った。
「ヴィゴ………あんっ……ヴィゴ」
オーランドは無意識に腰を動かし、ヴィゴの口を犯そうとした。
ヴィゴは、その動きに合わせながら、唇を窄め、オーランドのペニスを舐め上げた。
弛んでいる皮膚を舐め、剥き出しになっている粘膜を殊更舌の先で、刺激する。
「いきそ…もう、ダメ…ヴィゴ…」
オーランドが、苦しそうに言った。
ヴィゴは、オーランドもペニスを吸い上げながら、意地悪く言った。
「噛んでやろうか?そうしたら、もっと長く我慢できるぞ」
「…どうして、そんな意地悪ばっかり…」
ヴィゴは、腿を支えていた手を離し、射精を我慢し、硬く緊張している尻を掴んだ。
「噛みはしないけどな。でも、オーリ、ちょっと待ってろ。せっかくなんだ。今のうちに、こっちの準備をしよう」
恨みがましい目をしたオーランドを残し、ヴィゴは、ベッドから、降りると、鞄の中から、ゼリーとゴムを取り出した。
オーランドの背後に膝立ちしたヴィゴは、尻を掴んで、大きく開かせた。
ヴィゴの前に晒された、オーランドの肛門は、赤く色付き、ぎゅっと窄まっていた。
ヴィゴは、ゼリーを塗りつけた指先で、中心に向かって集まっている皺をゆっくりと撫でた。
ゼリーがオーランドの尻を汚す。
「オーリ。お前さ、電話の時って、半分くらい、サービス?」
「…違う。ねぇ、ヴィゴ。お願い。もっとちゃんと触って。俺の中まで指を入れて」
オーランドは、目を瞑って、ヴィゴの指の感触をじっと追った。
「でも、俺に気を使って、声を出してる時もあるだろう?」
「それは、お互い様。…あんただって、全くその気のない時でも、俺が発情してたら、いろいろやらしいこと言ってくれるじゃん…」
爪の先が、穴の上を引っかくのに、オーランドは腰を捩った。
オーランドの腕を繋いでいる手錠が、シーツに皺を作った。
鎖が擦れ合う音がする。
「いれて。お願い。ヴィゴの指で俺の中を触って。ずっと、触って欲しかったんだ。俺の指じゃダメなんだよ。幾ら、あんたが、誘導してくれても、俺、自分の指じゃなくて、ずっとあんたの指で触って欲しかったんだ」
オーランドの声は、上ずっていた。
すっかり上がった体温が、オーランドに汗をかかせていた。
ヴィゴは、固く締まった穴の中へとゼリーに濡れた指を埋め込んだ。
噛み付くように、オーランドの肉が、ヴィゴを締め上げる。
「…ヴィゴ!…ヴィゴ!」
オーランドは激しく腰を動かした。
その動きのせいで、指が勝手に、オーランドの中を擦り上げた。
オーランドが鼻から、甘い声を出す。
ヴィゴは、オーランドの腰を抱きこみ、盛り上がった尻にキスをすると、ゆっくりと指を抜き差しした。
指を引くと、同時に捲れ上がる粘膜を舌先で舐め上げた。
「ヴィゴ!あんっ!…ヴィゴ」
どれ程今日のデートを期待していたのかしらないが、オーランドの穴は、それほど時間をかけなくとも、2本目の指を飲み込んだ。
ヴィゴは、記憶にあるオーランドのいい部分を意識して、触った。
途端に、短い悲鳴を、オーランドが上げた。
体を固くして、痙攣するオーランドは、声も上げられないような緊張感のまま、ヴィゴの指を締め上げ、射精した。
「気持ちがいい?」
ヴィゴは、優しくオーランドの尻を撫でながら、すこし緩まった穴の中で、指をゆっくりと動かした。
オーランドは、うっとりとした声を出した。
「…すごく…気持ちいい」
もう、力を入れることもできないのか、オーランドは、上半身をシーツへと落としてしまった。
ヴィゴは、ゆっくりとした速度で、オーランドの中を擦り上げ続けた。
「でも、まだ、欲しいんだよな」
「…うん。欲しい。ヴィゴのペニスを俺の中に入れて欲しい」
ヴィゴは、オーランドの背中へとキスをした。
「なぁ、オーリ、こっちを向いて言ってくれないか?」
オーランドは、体を捻った。
興奮に顔は赤く火照っていた。
開いた口は、欲望も露に、言葉をつむぐ。
「ヴィゴ。…俺にペニスを入れて。俺の中を一杯にして。ヴィゴとセックスしたくて、俺、気が狂いそうだった」
「俺もだよ。オーリ。俺もオーリとセックスしたかった」
ヴィゴは、オーランドを抱きしめ、強く唇を合わせた。
慌ただしくジッパーを下げ、オーランドの尻へとペニスを擦り付けた。
「オーリ。かわいい、オーリ」
ヴィゴは、生のままのペニスをオーランドの股に挟んで、何度か擦り付けた。
オーランドのペニスは、すっかり濡れているにも関わらず、緩やかに回復していった。
ヴィゴは、ゴムをつけるために、体を離した。
口で切ったパッケージから、ゴムを取り出す。
オーランドが、体の向きをかえて、ヴィゴの太腿に手錠で繋がれた両手を置いた。
「ねぇ、ヴィゴ。ゴムをつけちゃう前に、少しだけ、舐めさせて」
オーランドは、ヴィゴの返事も待たず、大きく勃起したヴィゴのペニスを口に含んだ。
挨拶のキスもなく、いきなり大きく口を開けて、頬張るオーランドに、ヴィゴは、髪をくしゃくしゃと撫でた。
「食っちまうんじゃないぞ」
「そうしたいくらい」
口の端から、唾液を零し、オーランドは、顔中を汚しながら、ヴィゴのペニスを舐め回した。
口内で味わう感覚を深く探ろうとするように、オーランドは、瞼を閉じてしまっていた。
睫が、顔に、色気のある表情を作っていた。
ヴィゴは、愛しげな目をして、オーランドの頬を撫でた。
「尻を向けていいぞ、オーリ」
懸命に舐めるオーランドの頬は、ヴィゴのペニスにすばらしい感覚を与えるため、何度もへこんだ。
オーランドが好きな口内の場所を刺激するためにも、ヴィゴのペニスは、使われた。
「口より、もっと欲しいところがあるんだろう?」
両手を拘束されているため、フェラチオは、ぎこちない動きだった。
ヴィゴは、オーランドにペニスを吐き出させ、ベッドに伏せさせた。
汗の浮かんだオーランドの背中は、呼吸の度、動いた。
「オーリ。俺のこと愛しているか?」
ヴィゴは、オーランドの背中に聞いた。
「愛してるに決まってるじゃん。そうじゃなきゃ、誰が、半年も、自分の指や、バイブで我慢して禁欲生活を送るってのさ!」
オーランドが手錠の音をさせ、ベッドを強く叩いた。
ヴィゴは、待ちわびている尻へとペニスの先を埋めた。
「…オーリ。恐いね。お前、本当に」
「……ヴィ…ゴ」
半年のブランクは、さすがにオーランドの眉を顰めさせた。
指の太さでは、ヴィゴのペニスを飲み込むことはできない。
「苦しそうだな。オーリ」
「…ごめん。…ヴィゴもきついよね…」
何度も、息を吐き出し、オーランドは、柔らかくヴィゴを受け入れようとした。
ヴィゴは、膨らんだりへこんだりする腹を撫でた。
「こんなんでも、お前は、俺と、セックスするのが好き?」
「…好き。もっと、中にいれて。すこしだけ…少しだけ待ってくれれば、絶対に、俺も気持ちよくなれるから」
まるでオーランドは、自分に言い聞かせているようだった。
ヴィゴは、オーランドの背中に覆い被さった。
彼の鼓動が落ち着くのを待った。
「バイブより、俺のほうがいい?」
「…当たり前のことを聞かないでよ」
「でも、オーリ。お前、大概いい声を出してるぞ」
「サービス。ヴィゴのこと気持ちよくしてあげるために、サービスで、過剰に声を出してるだけ」
ヴィゴは、オーランドの耳を噛んだ。
「じゃぁ、今からは、サービスしなくて、いいからな」
ヴィゴは、オーランドの腰を持ち上げ、ゆっくりと中を擦り上げ始めた。
半年のブランクを感じさせず、ヴィゴは、的確にオーランドを熱くさせていった。
オーランドは、声がかれるほど、大きな声で喚き散らした。
バスルームから戻ったヴィゴにオーランドは手を突き出した。
「一人でさっさと、綺麗になりやがって。ヴィゴ。さっさと、俺の手錠を外せよ」
ヴィゴは、にやりと口元に笑いを浮かべた。
「なんだ。目が覚めたのか。そりゃ、なにより。自分だけイったら、いきなりお休みになるから、俺は、随分びっくりしたぞ」
「…寝不足だったんだ」
「ふーん。俺に会いたくて?」
ヴィゴは、鞄の中を探り、手錠の鍵を取り出した。
しかし、小さな鍵を手の中に、ヴィゴは思案顔をした。
「なぁ、お前、満足したか?オーリ」
「なんだよ。あんた、もしかして、イってないとか、言わないよな?」
「いや、それは、ないが。違う。今日のお前、真面目に、餓えてて恐いから。俺、自分の身の安全のために、お前が満足していないってのなら、このまま、手錠をかけといたほうがいいかなぁと、思って」
オーランドは、きつい目をして、ヴィゴを睨んだ。
「俺は、恋人を抱きしめる権利もないって訳?」
ヴィゴは、小さく笑って、オーランドにキスをした。
手錠が音を立てて外れた。
オーランドは、きつくヴィゴを抱きしめ、ヴィゴのキスに情熱的に応じると、にやりと笑った。
「ヴィゴ。残念だけど、俺、満足はしてない。一回体を洗ってくるけど、でも、ヴィゴはその間に、洋服を着るんじゃないぞ」
ヴィゴは、バスルームへと駆け出す若い体に苦笑を漏らした。
「…オーリ。とりあえず、飯だけ食いに行こう」
ドアを閉める寸前に振り返ったオーランドは、大きく舌を出した。
END
BACK
半年振りで、がつがつした花。(ほぼ、原文のままのリクエスト 笑)
久しぶりに、VOを書きました。花は、素直でいいねぇ(笑)