SV劇場 −5

 

その日、ショーンの家のドアを開けたヴィゴの様子は、昨日までと明らかに違った。

ヴィゴは、ドアの内側に立ち、にやりと笑う。

「よう。ショーン、遅くなって悪かったな」

白い顔をしたヴィゴは、飲んでいるわけではなさそうだったが、嫌味なほど楽しげにショーンに笑いかけ、中へとずかずか足を進めた。

ショーンは、ソファーから腰を浮かそうとしてヴィゴに止められる。

「シャワーなら、別に浴びてきてくれなくてもいいぜ?」

かき上げた長い前髪の中から覗くヴィゴの目は、昨日までとまるで違った。

荒んだ表情はちらちら見せるその目は、強く輝いていた。

しいて言うならば、身体の関係が出来上がった当初、ヴィゴはこんな目をしてショーンに笑いかけていた。

だが、ショーンは、近頃のヴィゴの脅えたようなもの言いたげな目に大層満足していたのだ。

ショーンは、ヴィゴの様子を訝しむより先に、苛立ちを覚える。

「ショーン、いつもどおり、寝室にいけばいいのか?」

ヴィゴはショーンの思いとは裏腹に、挑発的に笑いかけると、先に立って歩き出した。

三日前のドアから寝室までの短い道のりで、ぐずぐずとショーンに何かを訴えかけようと隙を狙っていたはずのヴィゴはそこにいなかった。

くるりとヴィゴが振り返る。

「それとも、ここでするか?」

ショーンはむっつりと噤んだままだった口を開いた。

「さっさと行け」

 

 

遅れて寝室のドアを開いたショーンをちらりと見たヴィゴは自分の服を脱ぎ出した。

その身体を見咎め、ショーンはぴくりと眉を動かす。

ヴィゴの身体には、ショーンのつけた覚えのないキスの跡が薄く残っていた。

「ショーン。すぐできるぞ」

紙のように白い顔色をしているくせに、身体からはむせ返るような色気を発しているヴィゴは、壮絶な雰囲気を身にまとっていた。

ヴィゴは、ジーンズを蹴るように脱ぎ捨てると、ためらいなくベッドによじ登り、そこで四つん這いになる。

わざわざ自分から股の間に手を潜らせ、大きく尻を開いてみせる。

「すぐ突っ込めるぜ?」

「帰れ」

高く尻を掲げてみせる恥知らずに、ショーンは冷たい目を当てた。

ヴィゴは、明らかに、誰かとセックスをした後の身体だった。

太ももには、いくつかの赤い跡を残し、硬く窄んでいるはずの尻の穴は、中からあふれ出る透明な液体で濡れていた。

そんな身体をして自分の前に現れたヴィゴにショーンは強い怒りを覚える。

ヴィゴは、怒りに似た光を目に浮かべて、ショーンへと振り返った。

「なんでだ? ほぐれてて、すごく具合が良いぞ」

ヴィゴは、自分の指を穴の中へと突っ込んだ。

濡れたそこで出し入れを繰り返した指がぬとりと濡れると、すぐさま、次の指を増やす。

わざとらしく鼻に抜ける甘い息を吐き出しながら、ヴィゴはショーンに視線を当てた。

「ほら、こんなだ」

二本に増えた指を大きく開き、尻の穴を広げてみせたヴィゴは、唇のカーブをきつくした。

「ショーン、あんた、締まりすぎるのは嫌なんだろう?」

真っ白な顔色のくせに、ヴィゴは、くちゃくちゃと音を立てる指を動かしたまま、ショーンを挑発した。

「ここに来る前に、あんたの仕込んだオーリと寝てきたんだ。だが、まだ、全然足らないんだよ。なぁ、ショーン。さっさと俺に乗れよ」

 

無言のまま背中を見せようとしたショーンの足元へと飛びついてきたヴィゴは、無理やりショーンのペニスを引っ張りだし、それを口に含んだ。

ヴィゴは、ショーンの勃起を口に含み、いやらし音を立てて、嘗め回す

色をなくしたヴィゴの顔の中で、目は、怖いほどきらめいていた。

ヴィゴは、急きたてるようにショーンのペニスに吸い付いている。

「ショーン。あんた、あのガキにすっげぇ優しいんだな。オーリのセックスときたら、とんでもなくお上品だっだぞ。ぞっとするほどだった」

ヴィゴの舌は、ショーンのペニスに絡みついていた。

ペニスについた唾液で鼻も、頬もべったりと濡らしたヴィゴが、ショーンを上目遣いに見る。

ヴィゴの手が、ショーンのペニスを握っている。

「あんた、あいつの乳首に吸い付くのが好きなのか?あいつ、俺の乳首に吸い付いて、チュウチュウ、チュウチュウ。知ってるか?あいつの誘い文句は、ねぇ、確かにさ、ショーンより下手だと思うけど、でも、何回もしたしさ、ちゃんと同じに出来ると思うからお願いやらせて。だったんだせ?」

ヴィゴは、普段より膨らんでいる自分の乳首を引っ張って伸ばしてみせると、ショーンの太ももへと自分の股間を押し付け、ねっとりと舌を這わせた。

「何だ、アレ? オーリってそんなに具合がいいのか? それとも俺はまるっきりあんたのタイプじゃない? 冷たいね。ショーン。俺にもサービスしてくれよ」

ヴィゴは、また、ショーンのペニスを口に含んで吸い上げ、その上、自分の尻へと指を伸ばした。

ショーンのペニスを吸い上げながら、ヴィゴは、自分の尻を弄る。

「まっ、おれは、あんたの乱暴なセックス好きだけどな。でも……」

 

ペニスに舌を這わせながらも、際限なくしゃべりつづけるヴィゴが疎ましく、ショーンは、眼下の黒髪を掴んだ。

ヴィゴは顔を顰める。

「痛いよ。ショーン。口で言ってくれ。俺は、なんでもあんたの言うとおりにするだろう?」

ヴィゴが舌を伸ばして、立ち上がっているショーンのペニスにまだ触れようとする。

「だったら、まずその口を閉じろ」

ショーンは、苛立ちのままに、ヴィゴに命じると、その身体をベッドへと突き飛ばした。

ヴィゴは、顔からベッドへと転がり込み、そのまま顔も起こさず、尻だけを高く上げた。

その態度に、更に怒りを煽られたショーンは、こわばりの残る背中にのしかかり、ヴィゴのフェラで勃起したペニスを遠慮なく、濡れた穴に突き刺す。

「……っぁああっ!」

今日、二度目のセックスだというヴィゴの穴は、確かにいつもより緩んでいた。

スムーズな突き上げができることに、満足と、イラつきを同時に感じたショーンは、強くヴィゴの尻を掴んで、最初から激しい突き上げを開始する。

「……っぁあ!……っはぁ……あぁぁ! んっ!」

強くシーツを掴むヴィゴは、衝撃の強さのあまり、ショーンが動くたびに身体をがくがくと震わせていた。

それでも、ショーンは、ヴィゴを気遣うこともせず、ずぶりと、奥までペニスを突きいれる。

そして、引き抜く。

また、突き入れる。

ヴィゴは、背中に冷たい汗を浮かべて、ショーンに向かって大きく尻を開いていた。

激しいものの、単調な出し入れが続く。

ショーンの腹が、ヴィゴの尻を打つ。

あまりに奥深くまで突き入れられ、痛みに近い感覚をヴィゴは味わう。

大抵、ショーンはこうだ。

ただ、自分が良くなるためにだけ、ヴィゴの尻を使っている。

ヴィゴは、オーランドがショーンとするのと同じだと言った、あんな優しいセックスなど味わったこともない。

どうしてもそれが味わってみたくなって、オーランドの誘いに乗ったというのに、それを味わっている最中、ヴィゴは悲しみで心が冷え切り、涙も湧いてこなかった。

オーランドは、呆れるほど優しくヴィゴを扱った。

キスは、降るほどだ。

ヴィゴはどうにかショーンの動きに合わせ、腰が振れるようになると、くるりとショーンを振り返った。

「……なぁ……ショー……ン。……俺、……オーランドがしたような……セックス……しらないんだが……な?」

ほとんどショーンのキスを知らないヴィゴは、にやにやといやらしく笑うと、ショーンにからかいの言葉を投げかけた。

ショーンの大きな手が、ヴィゴの顔をシーツへと押し付ける。

ペニスでヴィゴを串刺しにしているというのに、ショーンは冷たく言い放つ。

「オーリがいいなら、あっちに行け」

ヴィゴは、シーツの中で笑った。

「オーリがいい、なんて言ってないだろう? ……あんたとやるの、悪くない」

ヴィゴは、ことさら、大きく尻を揺すった。

「ショーンだって、良いだろう?……オーリの奴、俺の口と、尻と、二度も出したんぜ? あんただって、俺の身体がいいってのは認めてるんだろう? だよな。じゃなきゃ、こう何度もやらないさ」

ヴィゴはまだくすくすと笑っていた。その笑いはどこかヒステリックだ。

するりと、手を伸ばしたヴィゴは、後ろからの刺激で立ち上がった自分の勃起を扱き出す。

ペニスが受ける刺激に、尻穴は、きゅっとショーンを締め付けた。

「乗ってやろうか? ショーン」

暗い笑いを浮かべているヴィゴは、必要以上にショーンの身体に触れずに、ショーンの身体の上に乗り上げた。

ショーンを見下ろすヴィゴは、ペニスの上へと勢いよく腰を落とすと、喉をそらして、声を上げる。

「……っぁあ!……いいっ!いいっ!」

 

白かったヴィゴの顔色は、すっかり色を取り戻し、汗に濡れ、激しい快感を訴えていた。

ショーンは、自分とのセックスで喜ぶヴィゴが憎かった。

だが、ショーンは、ヴィゴとの関係を切れない。

ショーンは、ヴィゴを傷つけたいのだ。ショーンは、ヴィゴの傷つく顔がみたい。

大きな声を上げて吠えるヴィゴをショーンは下から突き上げた。

ヴィゴの顔が苦しげに歪む。

だが、声は高い。

「……っぁあ!……っい!」

ショーンが特別にヴィゴへと差し出していた気持ちを、こんな薄っぺらな快感のために、ヴィゴは踏みにじった。

ヴィゴは、罰せられるべきなのだ。

 

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