プレゼント
その部屋に入って、イライジャは少し驚いた。
だが、あまり驚いた顔を見せては、失礼になるだろうと、見開いてしまいそうだった目をすかさずコントロールした。
ベッドの上に、ショーンが座っている。
上半身は、裸だ。
下半身も…多分。
イライジャは、自分の驚きを押さえこんで、なだらかな筋肉に覆われているショーンの体をまじまじと観察した。
綺麗な肉のつき方をしていた。
いままで、こんなに真剣に観察したことはなかったが、必要以上に鍛えられていないし、わざわざ見せつけるような作りこんだ感じもしない。
肩の辺りが、まるみを帯びていて、すこし、ナイーブな感じだ。
こういう感じが、女性はすきだろうな。と、思う。
一体どうして、ショーンがこんな格好にされているのか、イライジャにはわからなかった。
そして、多分、後ろに立っている、ヴィゴは、今、聞いても、にやにや笑うだけで教えてくれないだろう。
イライジャは、自然な感じでショーンに近付きながら、手がかりがないかと、もっと、観察を続けた。
ショーンの下半身は、シーツに覆われている。
でも、半分見えている尻は、柔らかそうで触り心地を期待させる。
ショーンは、顔を伏せ気味にしているが、こちらを見ずにいられないようで、ちらちらと視線を上げる。
頼りない目をしている。
ベッドが壁際に沿って置いてあるから、その壁に凭れかかるようにしているが、不自然なあの手は、きっと、縛られている。
なんでなのかは、やはり、全くわからない。
そこまで観察して、2人の楽しみ方はマニアックだという結論を出すと、イライジャは、ショーンの座るベッドの上に飛び乗った。
突然の行動に、ショーンが驚いている。
「ショーン。こんにちは。今日はお招きありがとうって、言っていいんだよね?」
ベッドの上に投げ出しているショーンの足を枕にして、イライジャは、ショーンの顔を見上げた。
見上げるイライジャの目は、ブルーに清んで美しく、どうやって作ったのだろうかと思わせるほど、作り物めいていた。
ショーンは、その目と視線を合わせるのが嫌だとでもいうように落ち着きなく視線をさ迷わせていたが、やがて諦めたようにイライジャを見た。
頬のラインが酷く緊張していたが、なんとか笑顔を作ろうとしていた。
「リジ。今日は、予定はなかったのか?無理して来なくて、よかったんだぞ?」
頭を乗せた感触からして、下半身もやはり裸のくせに、ショーンは、イライジャに平常心を保とうとしていた。
肩は、緊張でがちがちに固まっているくせに、深く息が出来なくて、胸で落ち着きなく呼吸を繰り返しているくせに平気そうな顔を作っている。
イライジャは、思わずくすりと笑った。
「だって、今日は、ショーンの誕生日でしょ?秘密で誘われちゃったらさ、やっぱり来ずにはいられないよ」
イライジャは、ショーンに甘えかかるように、太腿に頭を擦り付けながら、つまらない牽制をしようとしたショーンに唇を尖らせてみせた。
「ハッピー・バースディ、ショーン。プレゼントは、俺だって、ヴィゴに言われちゃったんだけど、ほんとにそんなんでいいの?」
ショーンは、直接イライジャに答えようとせず、イライジャから目を反らし、ベッドの脇で立っているヴィゴを見上げた。
ヴィゴは、すこし首を傾げて、「欲しかったんだよな」と、言った。
髭に覆われた口元を撫で、にやにやとしていた。
「ここ何日か、ショーンは、リジのこと、かわいいなぁって、ため息が出るほど眺めて暮らしてたんだよ」
「じゃぁ、バースディ・プレゼントらしく、髪にリボンくらい結んでくればよかったかな」
ショーンの顔色を見ていれば、ヴィゴの言い分が、半ば言い掛かりであることはわかったが、イライジャは、気付かない振りでにこにこと笑って見せた。
「ところで、2人は、恋人同士ってことでいいのかな?」
イライジャは、根本的な質問をした。
イライジャの頬は、ショーンを覆うシーツにぺったりとくっつけられていた。
甘えかかるように、ショーンに膝枕をしてもらっている。
いくら、ヴィゴが冗談好きだとは言え、イライジャとしても、ショーンを裸にして、後ろ手で拘束し、ベッドの上に置いておけるヴィゴとショーンの関係が、それ以外だとは思えなかった。
一応、確認のための質問だった。
「俺は、そのつもりだ」
真っ白なシーツで下半身だけを隠しているショーンが、即答した。
ヴィゴは、口元を引き上げるようにして、にやにやと笑っているばかりだ。
「俺が、割り込んでいいの?」
イライジャは、ショーンの太腿の上を移動して、ショーンの腰を抱くと、へこんでいる臍にチュッと音を立ててキスをした。
ショーンのうっすらと脂肪のついた腹にぎゅっと力が入った。
縛られている手も、握り込んで力を入れていた。
「ショーンが、かわいい、かわいいって繰り返すメンバーのなかじゃ、お前が一番後腐れがなさそうだったからな」
ヴィゴが、ショーンの頭を撫でた。
「誕生日のプレゼントに誰かを選ぶとしたら、お前が一番マシだった」
ショーンがヴィゴを見上げて手に自分から頭を擦り付けるようにした。
とても、愛らしい態度だった。
ヴィゴが何を怒っているのか知らないが、ショーンを許してやればいいのに、と、イライジャは思った。
ショーンは、ヴィゴに従順な態度を示している。
おまけに、今日はバースディだ。
何をしたのかは知らないが、こんな日に、恋人に意地悪されるのなんて、堪らない気分だろう。
だが、ショーンがかわいそうだからと、遠慮するだけの慎み深さを、イライジャは持ち合わせていなかった。
ショーンは、おいしそうな裸を晒して、イライジャを誘惑している。
ヴィゴは、なにを考え入るのか、こんな素敵な恋人を貸し出そうとしている。
イライジャは、自分にショーンの注目をひくため、顔を太腿へと擦りつけた。
ショーンは、とても魅力的だ。
ここで、しり込みをしてしまうほど、イライジャは、禁欲的でも、意気地なしでもなかった。
「ヴィゴってばさ、そっと俺に近付いて、『年上って、好きだろう?』って、手を握りながら言うんだよ?おまけにそれをそっと、持ち上げて、チュウして、上目遣いで俺のこと見るの。俺、自分が狙われてるのかと思って、鳥肌がたっちゃった」
イライジャは、ショーンのシーツを捲り上げて、ショーンの体を検分しながら、ぺらぺらとまくし立てた。
ショーンの下半身は、やはりヌードだった。
真っ直ぐな足を揃えるようにして、投げ出していた。
イライジャの目に晒されるのに抵抗があるのか、僅かに足を捩ろうとした。
「あの目だよ?掬い上げるようなねっとりとした…あっ、ごめん。女の子たちが、濡れちゃうような目をして、じっと俺を見ながら、『好きだろう?』って甘く囁くわけさ。昨日の撮影の合間だったんだけどさぁ、俺、指輪を握り締めてぷるぷる震える準備をしながら、自分がヴィゴとセックスできるのか、速攻、考えちゃったよ。そりゃ、ヴィゴはセクシーだけどさ、なんていうか、好みと違うっていうか。そういう自発的お色気タイプより、俺、もっと、自分で管理できるタイプの大人し気な年上が好きなんだよね。美人っていう基準は外せないから、ちょっと位ふらふらしてても、周りからちょっかい掛け捲られてても構わないんだけど、いつでも、俺が鼻面を捕まえておけるような従順なタイプが好き」
ショーンの下生えは、しっとりとした金色で、そのなかに埋もれるようにペニスが隠れていた。
「だからさ、ちょっと、ショーンは、タイプかも。知らなかったよ。こんなにヴィゴにメロメロなんて。こんな風に隷属的なのは、結構好みのタイプだな。しっかりしてて、俺のことちゃんと見ててくれてるのに、俺の言うことに逆らえないなんて、そういうの、かなり好きなんだ」
イライジャは、項垂れているショーンのペニスにキスをした。
「同じ年上でも、ショーンなら、全然、問題なくセックスできるよ。顔立ちだってすきだしね。あと、身体の大きいのって、自分が小さいからかな。かなりそそるんだ」
ショーンのペニスは、キスを繰り返しても、なかなか大きくはならなかった。
だが、こういう慎みぶかい感じも、好きだ。
イライジャは、繰り返しキスをした。
「で、本当に、いいんだよね。俺も、混ざっちゃってさ」
体中を固くして、イライジャの視線や、行為に耐えているショーンの足を抱きしめながら、イライジャは、振り返ってヴィゴを見た。
青い、あまりに美しいせいで、作り物のような目が、じっとヴィゴを見上げて脅しをかけた。
ヴィゴは、イライジャの視線の強さに、飲まれそうになりながら、誘いをかけた意地を見せて、顎を引いて頷いた。
イライジャの目の色をみて、心の中で、少しばかり、後悔していた。
誰かを自分たちのセックスの中に混ぜることは、今までしたことがあったわけではなかったが、ヴィゴにとって、それ程、抵抗はなかった。
これまでの人生で、お互いに数え切れないほど沢山の他人とセックスを繰り返してきたわけだし、誰かの手に触れるということだけなら、腹は立つが、やり過ごせないわけではない。
ただ、一番、後を引きそうでないと思って選んだつもりだったイライジャが、こうもショーンに興味を示すとは思わなかった。
イライジャは、緊張するショーンを宥めすかすように、太腿にキスを繰り返している。
くるくると表情を変える大きな目できょろりと、愛嬌を振りまきながら、ショーンを見上げて笑っている。
ショーンの警戒心を解こうと、あの手この手を繰り出しながら、徐々にショーンを陥落させようとしている。
好みのタイプだ。というのは、本当のようだ。
ショーンの頬を撫で、自分を見るように強要し、ショーンがその言葉に従うと嬉しそうな顔で笑う。
優しく頬にキスを与える。
ショーンは、基本的に恋人に従うことに対して、拒絶を持っていない。
イライジャが言う、鼻面を掴まれて引き摺りまわされてしまいたいと思っているタイプだ。
ショーンは、気が短く、軽薄なくせに、どこかウエットな部分を持ち合わせており、そんなところが、ヴィゴだって気に入っている。
イライジャが気に入ったからといって、譲ってやるつもりはない。
そのために、一番分別のあるイライジャを選んだつもりだったのだ。
遊びを遊びとわけられる。そう、イライジャのことをヴィゴは認識していた。
しかし、うかうかしていると、そのイライジャにショーンを乗りこなされてしまいそうだった。
イライジャは、そうとう、乗換えを繰り返してきたようだ。
強引に相手の手綱を掴む方法を心得ている。
ヴィゴは、余裕を持って構えていることが出来なくなって、自分もベッドの上に膝を進めた。
「ショーン、口を開いて」
イライジャに、くちゅくちゅとペニスを吸い上げられているショーンは、感じていく自分を恥じるように、イライジャの黒髪から、目を反らしていた。
その顎を持ち上げて、ヴィゴは、唇を重ねた。
ショーンがほっとしたように舌を預けてくる。
下から、イライジャが覗き上げる。
「ねぇ、ヴィゴ。ショーンの手を縛るのって、趣味?」
ヴィゴが見下ろした先のショーンのペニスは、イライジャの唾液で濡れて光っていた。
ゆらゆらと持ち上がっている大きさは、最高値ではないものの、この状況をショーンが楽しんでいることを示していた。
イライジャが、その顔でするなと、言いたくなるくらいまったく可愛気なくにやにやと笑う。
「そういうのって、どっちの趣味?ヴィゴ?ショーン?ショーンだったら、可愛くて、もう、大好きになっちゃうんだけど」
ヴィゴは、ショーンの口の中に指を差し込み、口内を撫でてやりながら、イライジャを見下ろした。
絡んでくるショーンの舌を愛撫しながら、返事を返す。
「いつもって、わけじゃない。今回は、お前を連れてくるまで、大人しく待っている約束の印だ。約束が守れた子にだけプレゼントを上げる約束でね」
さり気なく、ショーンの趣味ではないと主張したつもりだった。
イライジャが、小さく口笛を吹いて、何度も顔を横に振った。
「そういうのにも、従っちゃうの?ねぇ、ショーンって、そんな人なの?もう、すごくタイプ。いいなぁ。こんなの。ヴィゴ。俺に頂戴」
イライジャは、ショーンの腰に頬ずりした。
髪が、腰骨の上を擦るからだろう。
ショーンは、ヴィゴの指を包み込むようにしながら、小さな声を漏らした。
ヴィゴの言葉に、イライジャは、反対に喜んでしまった。
ヴィゴの失敗だった。ヴィゴは仕方なく、予定通りことだけを終わらせることにした。
さっさと、イライジャに、やらせて、お帰りいだだくつもりだった。
実は、ショーンとやらせることも、惜しく感じ始めていた。
苛立ち紛れだったとはいえ、こんな企画を用意しなければよかった。
ヴィゴは後悔し始めていた。
「お前が、ショーンの誕生日プレゼントだろ?甘えてないで、さっさと、ショーンを楽しませてやれ。ああ、リジ、そうだ。その前に、手を出すんだ。そう。両手」
それでも、ここまできてしまった以上、ヴィゴだってひくにひけない。
怪訝そうな顔をしたイライジャの手に、ヴィゴは目に近づけた。
点検するように、熱心に指先を見ていく。
まるで何かの職人のようだ。
出来栄えを確かめるように、じっと、イライジャの爪を見つめる。
イライジャの爪は、噛み爪をするため、相当短い。
治らない癖だ。
いらいらするとどうしょうもない。
じっとヴィゴにでこぼこの爪を見つめられて、イライジャは、居心地の悪い思いをした。
ヴィゴは、目で十分点検を終えると、唇で、そっとイライジャの指先を挟んだ。
今度は舌が爪の先を撫でていく。
確かめるようにゆっくり、優しく。
だが、驚いたイライジャが手を引こうとしたのに抵抗できないほどに強く手の甲を握っていた。
「リジ。爪にヤスリをかけていい?」
急に言い出されたヴィゴの言葉に、イライジャは驚いて、眉の間に皺を寄せた。
「爪が、相当がたがたしている。ショーンに痛い思いをさせたくないから、綺麗に角を取っておきたいんだ」
ショーンは、わずかにだが、頬を赤くしている。
ペニスは立ち上がっている。
抵抗は最初から放棄して、これからのセックスを受け入れようとしている。
そのショーンを前に、悠長に爪にヤスリをかける?
ヴィゴの気持ちがわからずに、イライジャは、青い目でヴィゴを睨みつけるような真似をした。
ヴィゴは、構わずやすりを取るために、ベッドから立ち上がっていった。
最初から用意してあったとしか思えない近さから、手に持ち帰ると、イライジャの指を取り上げ、一本、一本丁寧に爪を磨き上げていく。
イライジャは、爪先を丸く削られながら、心のどこかで、ああ、こんど噛むときに歯を立てにくくなったと、思った。
爪を噛む癖を持続したいわけではないのだが、綺麗に爪先を削られると、歯で引っ掛けにくくなって、噛み爪がしにくい。
「ヴィゴ…あんたの優しさの基準がよくわからないんだけど」
どこか苛立たしい気持ちでヴィゴの行為を眺めながら、イライジャは、ヴィゴに文句を言った。
ショーンは、後ろ手で縛られ、おまけに誕生日のセックスだというのに、他人を受け入れさせられている。
これは、ちっとも、やさしくないだろう。
それなのに、ヴィゴは、ショーンに触れるイライジャの爪が、尖っていると丁寧にヤスリをかけているのだ。
もしかして、これは、優しいと判断してもいいのかもしれない。
解放された左手で、イライジャは、じっと待っているショーンの体に触れた。
ショーンは、どこか労わるような目でイライジャを見つめた。
「ねぇ、ショーン。ショーンだって、そう、思わない?ほんとは、ショーンだって、俺をプレゼントに貰うなんて、嫌なんだろ?こんな変な労わり方されるより、ヴィゴとだけセックスしたいんじゃないの?」
ヴィゴは、丁寧に小指の爪までヤスリをかけた。
最後の一本を削り終えると、ショーンを抱きしめて、頬にキスをした。
「そんなことないよな。ショーン。リジ、これで、ショーンは、随分と色好みなんだ。お前を欲しがっていたのも本当だし、貞淑な顔をしてみせてるけど、実際は、これからを期待して、ドキドキしてるんだ」
ヴィゴは、ショーンの意外な一面を暴露して見せた。
しかし、そんなショーンすら愛しいんだと、優しく、ショーンの顔にキスをして回った。
ショーンは、それを従順に受け入れていた。
文句一つ言うわけでなく、ヴィゴにキスされて、じっとしていた。
「ほんと?ねぇ、ほんとなの?ショーン」
ベッドの上に膝立ちになったイライジャは、ヴィゴを押しのけ、ショーンの顔を掴むと、上からショーンの顔を見下ろした。
ショーンは、すこし困った顔をしたが、柔らかく笑った。
「ごめん。リジ、本当なんだ。ヴィゴにお前のこと、ねだったのは、俺だよ。誕生日に何でもくれるって言ったから、新しい恋人が欲しいって言ったんだ」
「…恋人?」
イライジャは、思いがけない言葉を聞いて、思わず首を傾げた。
「ああ、別にリジに俺の恋人になってくれって言ってるわけじゃない。そういう意味じゃなくて、ヴィゴと喧嘩したんだ。その拍子に……ついね。あんた一人じゃ満足なんかできない。もう一人くらい、恋人が欲しいって」
「欲しいって…」
イライジャの疑問をヴィゴが攫った。
「だったら、プレゼントしてやるって言ったんだ。気に入るかどうか試してみればいいって。まぁ、そういうわけで、上手く行かなくても、後を引きそうにないお前がプレゼントに選ばれたんだけどな」
イライジャは、ヴィゴよりも、ショーンに詰め寄って、続きを尋ねた。
「ねぇ、ショーン。ショーンは、どういう恋人が欲しいと思ってるの?」
「…俺のこと、大事にしてくれる恋人」
「もっと、具体的に」
イライジャの青い目が、ショーンの間近まで、寄せられた。
ショーンは、その目で見つめられることが居たたまれないように、すこし金の睫を伏せ、小さく呟くように言った。
「俺の誕生日に、一日時間を空けてくれるような恋人。俺が、誕生日に予定を詰めようとしたら、強引にやめさせてくれるような恋人」
イライジャには、喧嘩の原因がわかった気がした。
「それだけじゃないだろ?ショーン。ちゃんと言わないと。俺をセックスで満足させてくる恋人って」
ヴィゴは、ショーンの奔放さをアピールしてみせ、イライジャの気をそらそうとしていた。
ヴィゴは、ショーンを壁から引き剥がし、背後から、胸の中に抱きこんだ。
肩にキスを落としながら、胸を揉みこむようにした。
指の先に乳首を摘んで、揉みしだいた。
ショーンは、気持ちの良さそうな顔をした。
薄く唇を開けて、満足そうなため息を漏らした。
ショーンは、縛られた手を動かして、ヴィゴに触れようとしていた。
固いジーンズの生地が、ショーンの目的を阻んでいた。
ヴィゴは上手いことショーンの身体を自分へと引き寄せようとしていた。
イライジャは、とても気楽に自分たちのセックスにイライジャを混ぜるようなことを言いながら、しきりに所有権を主張するヴィゴに負けないよう、ショーンに近付いた。
「ショーンがそんなにセックスが好きなら、俺、全然遠慮しなくて、いいね。爪も、ヴィゴの合格点を貰ったようだし、俺、洋服を脱がしてもらっていいかな?」
イライジャは、大雑把に服を脱ぎ捨てると、ショーンの膝の上に乗っかって、ショーンの唇にキスをした。
ショーンは、頭の上から、ヴィゴに肩を押さえつけられ、逆さまのキスを受け入れながら、大きく足を開いていた。
足の間には、イライジャが座り込んでいた。
ヴィゴに削ってもらったおかげで、どこにも引っかかりのない指先で、ショーンの穴の中を探っていた。
ショーンは、しきりに、腰を捩っていた。
気持ちはいいようだったが、焦れたように、足が、イライジャの腕を挟みこもうとしていた。
その度、ヴィゴが、腕を伸ばして、ショーンの太腿を軽く叩いた。
イライジャは、皮膚の部分から、粘膜になる部分まで、隈なく丁寧に触っていった。
指を増やし、強く、弱く、ショーンの快感を探して、揃えた指を抜き差しした。
入り口付近で、まず、ショーンは、反応した。
抉じ開けるようにすると、それだけで、あまい声を上げた。
そこから先は、どこも、いい感じではあるようだったが、もっと、いい部分を隠しているのは、ショーンの反応をみていれば、わかった。
もどかしそうに、自分から足を開き、イライジャの指に尻を押し付けようとしていた。
動く白い尻が、だんだんとずり下がってきていた。
ヴィゴが、顔を上げた。
じっと、ショーンの動きを見ていて、口元を引き上げると、意地悪な顔をして、イライジャに笑いかけた。
「そうか、リジは、指が短いんだな」
自分の指をイライジャに見せつける。
確かに長い。比べて、イライジャの指は短い。
ショーンのいい部分に届かないといいたいわけだ。
イライジャは、指の付け根一杯まで、ショーンの中に押し込んだ。
ショーンが、喉を反らして、ああっと、叫んだ。
イライジャは、意地になったように、ぐりぐりと指を押し込みつづけた。
邪魔している小指がなければ、手の甲だって、ショーンの中に飲み込まれたかもしれない。
指を揃えて、強く押し付けてやると、ショーンの体が細かく震えた。
「なるほど、そうすると、ちょうどなのか」
ヴィゴが唇を尖らせた。
ヴィゴの指では、長すぎるのだろう。
イライジャの短い指で、思い切り内を抉ると、ぎりぎりショーンの奥深いいい部分に触れることができ、そして、入り口の敏感な部分も強く刺激してやることができた。
ショーンは、イライジャを求め、腕を両腿ではさみこみ、しきりに、甘くうめいていた。
ヴィゴが、ショーンの顔を覗き込み、気持ちがいい?と、聞いても、恥かしげもなく、何度も頷いた。
「…あっ…リジ。そこ…そこをもっと…触って。…すごく、気持ちいい…んだ」
ショーンは、イライジャの指をズッポリと飲み込んで、食い千切りそうに締め付けていた。
「…もっと、一杯触って…ああ…いい」
ヴィゴは、ショーンに求められるイライジャを、少しばかりうらやましそうな顔でながめて、自分の作業に戻っていった。
ヴィゴは、ショーンの首筋にキスし、乳首を吸い上げ、そのままショーンの上に覆い被さり、濡れてしまっているペニスを口に含む。
ショーンは、ペニスを吸い上げられると、痛いくらいにイライジャの指を締め付けた。
ヴィゴは、ショーンの両足を持ち上げ、イライジャに向かって、高く上げさせる。
ショーンは、誰に言われたわけでもないのに、ヴィゴのペニスを口に含んで、吸い上げながら、しきりに甘く鳴いて見せた。
イライジャは、ショーンの前で、あぐらをかいて座っていた。
ショーンは、イライジャの腰に縋りつくように腕を回し、しきりに顔を擦り付けながら、イライジャのペニスをキャンディバーを舐めるように舐めていた。
最初は、口に含んで、吸い上げたり、扱いたりしていたのだが、後ろから突き上げてくるヴィゴの動きが激しくなって、そこまでの奉仕が出来なくなっていた。
腰を持ち上げられ、尻を掴まれて、振り回されているショーンは、ああ、とか、んんうっとか、うめきながら、ヴィゴに思う存分揺り動かされていた。
ヴィゴが突き上げるたびに、ショーンの頭が動く。
鼻先が、ペニスを撫でていき、あつい息を漏らす口が、ペニスにキスをする。
思い出したように、舌が、ペニスを舐める。
イライジャは、額に汗を浮かべて、しつこいほどショーンの内部を掘り広げるヴィゴの情熱に、感心していた。
ショーンは、もう、一度イかされている。
体中を丸め込むようにして、息を詰めた頂点の姿は、表情のなまめかしさもあって、なかなかの見ものだった。
殆ど奉仕は出来なくなっていたが、それでも、イライジャのペニスを含んでいた口からペニスを放り出し、いく。いくと、叫ぶ声も、聞き応えがあった。
無心になって、尻に神経を集中させて、快感を追いかけている身体は、なんとも言えず色っぽかった。
捩る腰のラインは、絶品だ。
「ヴィゴ、まだ、イかないの?」
ショーンはすっかりヴィゴのペニスに夢中になっていて、イライジャの腰に掴まったまま、揺さぶられていた。
もう、口で奉仕することなんて忘れ果てている。
口は、ただひたすら、いい声を聞かせるためだけに使われていた。
まるで、掴まるための道具になってしまったイライジャは、つまらなくなっていた。
「ねぇ。そろそろ、交代してよ。ショーン、こっち、全然サービスしてくれないんだ」
イライジャは、ヴィゴに不満顔を隠さなかった。
ヴィゴばかりがいい思いをしている。
「口を開けさせて、リジが動かせばいいだろう?ショーンは、自分からはしてみせないけど、かなり喉の奥まで飲み込むぞ。こっちと、代わらず、気持ちがいい」
ヴィゴは、腰の動きを止めずに、イライジャに返事をした。
ショーンの肉付きのいい尻に、ぴたんぴたんと、腰骨をぶつけるような勢いで、ねじ込んでいっている。
「そっちは、俺に使わせない気なの?試してみてもいいんでしょ?」
ヴィゴは、ショーンに腰を押し付けるようにして、深い部分で小さく小刻みに動き出した。
ショーンの体が震えている。
泣き出してしまったのか、イライジャの腹が濡れる。
しきりにヴィゴの名を呼びながら、イライジャに縋りつく。
「ショーン…ヴィゴのこと呼びながら、腹にキスするの止めてほしいなぁ。それに、俺、臍の辺とか、くすぐったいから、本とは、キスされるのも、御免こうむりたい」
イライジャは、掬い上げるように、ショーンの顔を持ち上げ、涙に濡れた目に向かって顔を顰めた。
もう、訳がわからなくなっているのか、ショーンは、ただ、頭を振っていた。
不満たらたらのイライジャを、ヴィゴはくすりと余裕で笑った。
「口でしてもらいたいって、言ったのは、リジだろう?」
「だって、ショーンのそこ。すごく良さそうなんだもん。交代して。交代」
イライジャは、ヴィゴが音を上げるまで交代しろと要求した。
ヴィゴは、ショーンの腰を抱かえなおすと、我侭なお子様の意見を受け入れた。
ショーンの足は、イライジャが肩に担ぎ上げるには、すこしばかり長すぎた。
だが、好みをいえば、この位扱いにくいほうが、イライジャは、好きだった。
大きな身体を好きにしていると思うと、征服欲が満足される。
そういう点で言えば、多少肉付きのいいのもイライジャは好きだった。
ショーンの体は、全くもって、イライジャ好みだと言っていい。
「こっちは、短いなんて言わせないからね」
イライジャは、ショーンの口のなかで、すっかり大きくなっていたものを、白い尻に押し付け、ずぶずぶと中へ埋めていった。
指で弄りまわしていたときより、余程、穴は緩くなっていた。
つまり、ヴィゴのサイズに合わせて。
悲しいことに、指ほどの差はないのだが、こちらの長さも、ヴィゴには負けているようだった。
だが、柔軟なショーンの体は、直ぐにイライジャにぴったりの締め付けを与えてくれるようになった。
ペニス全体を温かな肉が締め付ける。
「どう?ショーン。これでも満足してくれる?」
予想通り、飛び切り気持ちのいい場所に満足しながら、イライジャは、ショーンの顔を覗き込んだ。
身体を前に倒して、尻を掌で掬い上げる。
気持ちのいい尻が、イライジャにむかって大きく開かれる。
ショーンの脚が、イライジャの首の後ろできつく組まれる。
ショーンは、両手で頭上のシーツを握り締めている。
眉間に皺をよせて、時々強く歯を食いしばる。
イライジャのペニスを噛んで離さない。
側で、ヴィゴがじっとショーンの表情を観察していた。
涙が零れるショーンの頬を優しく撫でていく。
ショーンは、薄く目を開け、ヴィゴと視線が合うと、逃げるように顔を反らした。
だが、声を止められない。
しがみつく脚も離せない。
イライジャは、腰を打ち付ける。
腰の奥が痺れたように感じてしまって、ショーンには、そのことだけしか考えられない。
もっと、してほしくて、腰を振ってしまう。
「あっ…リジ…いい」
ヴィゴの視線から逃れるように、ショーンは、縋るような目でイライジャを見上げた。
「もっと、俺の名前を呼んで。呼んだ数だけ、ここを、可愛がってあげるから」
意地の悪いイライジャの言葉も真に受けて、ショーンは、壊れたように、イライジャの名前を連呼した。
「リジ…リジ…して…リジ」
途中でヴィゴがショーンの口をキスで塞ぐ。
イライジャは、すこし笑って、ショーンの要求に応えた。
汗で濡れた皮膚が、手の中で滑る。
少し重いショーンの尻が、手の中から落ちそうになる。
腰骨を掴むようにして、手の位置を変えると、イライジャは、ショーンのいいように、激しくペニスを動かした。
結局、ヴィゴに2回。イライジャに1回イかされたショーンは、ぐったりと、ベッドに横になっていた。
随分最初に解かれた手首の縄が、ちょうど頭の上に落ちていた。
その満足気ながら、疲れきった顔を下に見下ろして、ヴィゴと、イライジャは、お互いの要求を交渉しあっていた。
「時々貸して。ね。時々で、いいから」
「だめだね。俺もいるときに、ごくたまになら、いいが」
「なんで?ショーンは、新しい恋人が欲しいんでしょ?いいじゃん。俺、なったげるし」
最初は、譲れから始まった交渉も、すっかりイライジャの分が悪くなっていた。
爪を噛む癖が止められないようではダメだとか、そんな手では、ショーンが満足させられないだとか、果ては、肉体的サイズの違いまで持ち出して、ヴィゴは、イライジャに交渉権を放棄させようとしていた。
しかし、人に揉まれることに、へっちゃらなイライジャも負けてはない。
「ショーン、俺に、恋人になって欲しがってたよね」
「だめだ。ショーンに恋人はいらない」
ヴィゴの声は、断定的だった。
その声でできた空間に、掠れたショーンの声が割り込む。
「リジは俺のプレゼントだ。俺が貰う。俺が決める。ヴィゴが決めることじゃない」
気だるそうな声の割に、内容は辛らつだった。
バースディ前の喧嘩を避けたほうがいいという見本のように尖がっていた。
「大体ヴィゴが言ったんだ。試してみればいいって。試してみて気に入ったら、恋人にしてもいいってことだろう?いいじゃないか。リジは俺の恋人になってくれると言っている」
「ショーン…」
いままで聞いたなかで、一番情けない声をヴィゴが出した。
取りすがるように、ショーンの肩に手をかけた。
その上、ヴィゴは、思わず笑いたくなるような泣き言をいいだした。
「リジはあんたが思っているほど、優しくも、かわいくもないぞ?こいつは、羊の皮をかぶった狼だ。あんたのことを徹底的に支配して、管理して、あんたに自由なんてちっともないぞ?」
どんな深刻な喧嘩をしたのか、ショーンの態度は強固だった。
こんなセックスに同意させられ、それが楽しめてしまえた自分にも腹が立っているのかもしれない。
ショーンは、好みのタイプと言い切るには、理想よりも倫理観は薄いようだが、随分と素敵だった身体を考え、イライジャはこの状況を嬉しく思った。
「管理。支配。いいとも。誕生日も自由に遊びに行けばいいと、いう薄情な恋人と、二つ足して、割ったらちょうどいい感じじゃないか」
ショーンは、肯定的にイライジャの性格を捉えていた。
痴話喧嘩が始まって、イライジャは、多少呆れながら、仲のいい2人を眺めていた。
2人は、じゃれあうように、文句を言い合っていた。
しかし、ここで引いてしまわないのが、イライジャだ。
「じゃ、ショーンの承諾も得たし、俺もショーンの恋人の一人ってことで。それでさ、一つこっちにも条件があるんだけど、俺、ヴィゴと一緒にってのは、やなんだよね。気が散るし、ヴィゴ、すぐ、ショーンの気を引こうとするし。だからさ、ショーン。俺とやる時は、俺とだけにしてね。ちゃんと、満足させたげるから、2人っきりで、今度からセックスしようね」
イライジャが全部を言い終わる前から、ヴィゴは、イライジャを睨んでいた。
静かな闘志は、なかなかのものだった。
しかし、イライジャは笑って返した。
透明なブルーの目で、にこりとする。
「いいじゃん。俺、ヴィゴがショーンに上げたプレゼントだよ」
「そうだ。リジは、俺が貰ったプレゼントだ」
ショーンは、ヴィゴに背中を向けたまま、イライジャの言葉に頷いていた。
END
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ハッピー・バースディ。豆さん。
大好きなあなたが、この世に生まれてくれた日に感謝します。
いままで生きてきてくれたことに幸せを感じます。
豆さんの誕生日なので、新しい恋人をプレゼントv(笑)
朝帰りを書いている最中に思いつき、どうしても、どうしても上げたくなってしまいました。
このカプは、やはり、マイナーでしょうねぇ(笑)
でも、主導権を木に握られて引き摺り回されてる豆って、なんか、萌えるんですけど(笑)