うそつき
ショーンは、オーランドの手を掴んで、車から引きずり出した。
夜の住宅地は、大変静かだった。
こんな時間、善良な人間は、大抵眠りについている。
そのなかで、ショーンだけが大きな音を立てていた。
まず、思い切りスピードを出して駐車場に滑り込んだ。
ドアを荒々しく開け閉めした。
腕をつかまれたオーランドが文句を言った。
ショーンがオーランドを怒鳴りつけ、そのままドアを叩きつけるよう閉めた。
2人は言い争った。
家のドアを開けた。
ショーンが無理やりオーランドを連れ込んで、ドアを蹴り飛ばして閉めた。
近所の住人が、優しい人たちでなければ、見逃してはくれなかっただろう騒音だった。
大掛かりな映画製作の関係者だということも、優しく見守られた一因だっただろう。
「なんなんだよ!あ?ショーン?」
いい加減疲れる撮影終了後、不機嫌な顔をしたショーンに、いきなり車に連れ込まれたオーランドは、もはやけんか腰になっていた。眼の下には、クマがくっきり浮き上がっていた。
「何の説明もなにし、なに?その態度?俺、家に帰って、まだ、覚えなくちゃならないセリフがあるんだけど?」
オーランドは、ショーンから、黙れや、強く名前を呼ばれる以外の言葉を聞いていなかった。
家に帰り着くなり、ショーンは、オーランドをキッチンの椅子へ突き飛ばした。
それ以来、ショーンは、口も開かず、いらいらと歩き回っていた。
勿論、ビールの一缶も提供されない。
優しい笑顔もない。
柔らかなベッドに行かせてくれない。
車の中で雰囲気を和らげようとオーランドが抱きしめたら、思い切り突き飛ばされた。
「何の用なのさ。言わないとわからないだろ?クマみたいにうろうろされても、迷惑。そんなことしてるんだったら、さっさと寝ようよ。なに?なんか、サービスして欲しいの?」
オーランドは、自分の髪を掻き毟った。イライラのあまりテーブルに頭を叩きつけたくなっていた。
大半は、寝不足や、疲れによる衝動的な感情だ。だが、不可解で、腹立たしいショーンの行動に、何かのきっかけさえあれば、恋人を殴り飛ばしてしまいそうな苛立ちが、腹の中に渦巻いていた。
ショーンの立てる足音さえも、気に障る。
オーランドは、疲れていた。ここのところろくな休みをもらっていない。
そんなことくらい、同じようなスケジュールで動いているショーンだって知っているはずだった。
「あー、もう!さっさと、言いたいことがあるんなら、言いなよ!疲れる。ごめん。もう、今、面倒くさいのダメ。このまま不機嫌な面してるんだったら、頼むから、ベッドルームに行って。俺は、ここで寝る」
オーランドは、動き回るショーンに指を突きつけて、ベッドルームを指し示した。
ショーンは、オーランドを見たが、苛立たしげに歩き回る足を止めなかった。
ぐるぐると同じ所を回っていた。
それが、異常にオーランドの気に障った。
寝不足だ。休息が十分じゃないと、いくら気力が充実していても、感情は安定しない。
「…そうしたくないなら、今すぐ、怒ってる理由を言え!じゃないと、俺、何するか、自分でも自信ない!」
オーランドは、テーブルを両手で叩いた。
大きな音がした。
ショーンが、立ち止まった。
眉間に皺を寄せ、オーランドを睨みつけた。
「なに?なにさ。その顔。言いたいことがあるなら、はっきり言えば?無理やり車から引きずり出したり、ドアを蹴り飛ばしたり、そんなジェスチャーばかり繰り返してるより、ずっと建設的だと思うけど?」
疲れのピークが限界を超えているオーランドは、強気で剣呑な緑の目を睨み返した。
ショーンは、苛立たしげにオーランドを見下ろしていた。
だが、口を開こうとしなかった。
「なにさ。言えない理由なわけ?あー、ここんとこ、エッチができないとかそういう理由なら、今晩、頑張って努力させてもらうけど?」
オーランドは、苛立ちにまかせて、馬鹿にするようにショーンを見上げて口元を引き上げた。
ショーンは、突発的に、テーブルに積みあがった雑誌を取り上げると、オーランドに向かって投げた。
本は、オーランドが上げた腕に当たった。
結構な衝撃だった。
「なにするんだよ!口で言えよ!口で!危ないだろうが!」
オーランドは、椅子から立ち上がると、テーブルの上に乗る様々な書類を全て払い落した。
どさどさと、床に書類が落ちていった。
両手が、本の角に当たって痛かった。
「オーリ!お前!!」
乱暴なオーランドの行動に、ショーンが尖がった声を上げた。
「なんなのさ、一体!まず、理由を言えよ。ショーン、あんた口がついてんだろうが!」
オーランドは、負けずに言い返した。
ショーンは、オーランドに近付いた。胸の中に溜め込んだ怒りを吐き出すことを堪えるように、何度か息を吸い込んだ。
ショーンは、オーランドのシャツを掴んで、胸倉を引き寄せた。
「自覚は、ないのか」
ショーンは、押し殺すような声で、オーランドに囁いた。
緑の目が、威嚇を含んで、じっとオーランドを睨みつけた。
オーランドは、ショーンに引き寄せられるまま顔を寄せて、思い切り睨み返した。
「何?なんの自覚?こんな夜中にケンカしなくちゃならない理由があるんなら、ぜひ、説明して欲しいね」
オーランドは、ショーンの胸に手をついて、身体を離すと、ショーンの怒っている顔を引き寄せ、唇にチュッと音を立ててキスをした。
その馬鹿にした態度に、ショーンは、思わずオーランドに向かって手を振り上げた。
バシッ!
オーランドは、とっさに顔を庇った。
ショーンの手が、オーランドの腕と、顔の一部を叩いた。
オーランドは、思い切り顔を顰めた。
「何?なんなわけ?俺、こんな風に叩かれる理由がわかんないんだけど?」
オーランドは、下から見上げるようにショーンを見上げ、黒目勝ちな眼を眇めてショーンを睨みつけた。
「あんたさ、俺の顔なんだと思ってる?前にも言ったことがあると思うけど、顔はやめろよ。あんたの大きな手で殴られて、明日使い物にならなくなったら、どうやって責任取るつもりなんだよ」
「…オーリ」
ショーンは、痛みを堪えるような恐い顔でオーランドを見つめ、いきなり背中をみせた。
オーランドは、腹立ちのあまり、床に崩れ落ちている雑誌を拾い上げ、大きな背中に向かって、投げつけた。
「一体なんだって言うんだよ!」
「お前こそ、俺のことをなんだと思っているんだ!」
ショーンは、振り返ると大きな声で怒鳴った。
しかし、それ以上、説明しようとしない。
オーランドは、理屈の通らない緑の目に、キレて両手に雑誌を取り上げた。
そのまま、ショーンに投げつける。
二冊、三冊と、本が身体にぶつけられ、ショーンも、手近にあったクッションを取り上げた。
ワンアクションでオーランドに命中させると、飛んでくる雑誌を避けながら、怒鳴った。
「俺を馬鹿にするな!」
ショーンは、クッションを投げつけ、オーランドが投げた本も投げ返し、それでも足りなくて、自分の履いていた靴をオーランドに投げつけた。
靴が、オーランドの屈んだ後頭部に直撃した。
「もう、頭にきた!」
オーランドは、立ち上がった時には、もう、完全に怒り狂っていた。
「覚悟はいいんだろうね?」
オーランドは、中指をショーンに向かって突き立てると、ショーンに体当たりした。
ショーンは、ふらつかず、オーランドを受け止めた。
それだけでなく、オーランドのシャツの背中を掴んでうめかせ、オーランドを仰け反らせた。
「痛って!このあばずれが!」
「誰がだ!オーリ、お前、この頃調子に乗りすぎだ!」
オーランドは、ショーンのわき腹を抓り、ショーンは、オーランドの髪を引っ張った。
「禿にする気か!このおっさん!」
「お前こそ、爪で抉るな!卑怯者!」
しばらく、2人は、攻撃の手を緩めなかった。
オーランドの髪の毛は、ショーンの指の間に何本か抜けたし、多分、ショーンのわき腹には、あざがついた。
「…痛ってぇ…」
限界まで背中を反るように仰け反らされているオーランドのほうが、先に弱音を吐いた。
げほっと息を吐き出して、オーランドは、身体のバランスを取り直そうとした。
そのついでに、オーランドは、ショーンの足を引っ掛け、転ばせようとした。
だが、さすがに、ショーンの方が上手だった。
ショーンは、ひょいっとオーランドの足を避け、反対に、オーランドの膝裏を蹴って、オーランドを蹲らせた。
そんなに強い力で蹴られたわけではないのに、馬鹿みたいにオーランドの足から力が抜けた。
「馬鹿が!」
ショーンは、蹲ったオーランドの頭を押さえ込み、床に頭をつけようとした。
オーランドの目の前には靴を脱いでしまったショーンの足が見えた。
オーランドは、その足になら、キスしてやってもよかったが、床には絶対そんなことをしたくなかった。
オーランドは、腕をのばして、ショーンの足を抱え込んだ。
ショーンがバランスを崩して後ろへと倒れ込む。
まず、尻餅をついた。それから、ショーンは、勢いを殺せず、上半身を床に叩きつけた。
ショーンがとっさに頭を抱え込んで、激突するのを防ぐ。
倒れ込むショーンの上にオーランドは乗り上げた。
オーランドも慌てて、ショーンの首の下に腕を入れ込んだ。
「痛てっ!」
オーランドの腕が間に合い、ショーンの金髪が床に叩きつけられることはなかった。かわりに、オーランドの腕がゴンっと鈍い音を立てた。
じんじんと痛みを伝える腕で、ショーンの頭を抱きこんで、オーランドは、ショーンの顔を覗き込んだ。
「ショーン、あんた、何、怒ってるわけ?」
緑の目は、不機嫌そうだ。
ショーンは、ぷいっと顔を背けた。
素直でないショーンの態度に、オーランドの眉が寄った。
「ここは、ありがとうじゃないの?ショーン?」
勿論、ショーンは、礼など言わない。
頑なに、オーランドから顔を背けている。
「ショーン?ここで俺に、どういう態度をとって欲しい?」
視線を合わせようとしないショーンに、怒りが込み上げ、オーランドは、静かにいくつかの提案をした。
「まず、1、このまま俺があんたのことをレイプする。まぁ、サービスしてやるけどさ。2、ケンカしたまま、俺が家に帰る。この場合は冷戦が続くな。3、あんたの話をじっくりと聞く。最後、4、ケンカの続きを気が済むまで続ける。仕事に影響がでない程度ぎりぎりまでだ。どれにする?あんたに選ばせてやるよ」
ショーンが返事をしないので、オーランドは、ショーンの高い鼻を掴んだ。
頑なに目を反らす顔を覗き込み、唇を耳に近づけて囁いた。
「ケンカすると、どうしてだか、セックスしたくなるよね。どう?久し振りじゃん。このままできるよ?ここでする?俺、それで全然かまわないけど」
疲れと、興奮で、オーランドのペニスは、固くなっていた。固くなったものをショーンの足に擦り付け、オーランドは、ショーンを挑発した。
「一番にしとく?」
オーランドは、ショーンの態度が頭にきていたが、このまま、セックスでなし崩しでもいいと、思っていた。
そういうのは、面倒じゃなくていい。
ショーンとするのは、久し振りだったし、そういう接触が足りなくて、どうでもいいことでいらいらするということもある。してしまえば、結構、幸せな気分になれたりする。
ショーンの体は、相変らず、とてもいい感触だし、怒りに興奮したショーンの汗の匂いは、オーランドを誘惑していた。
「答えないなら、強引に、一番にさせてもらうけど?」
オーランドは、乗り上げている身体を両足でしっかりと挟み、ショーンの腕を掴むと、床に張り付ける様に押し付けた。
「したかったって、ことでいい?」
悔しそうなショーンの顔に、オーランドが更に挑発を仕掛けると、ショーンは、膝でオーランドの背中を蹴り上げた。
突然の衝撃に、オーランドは目を見開いた。
「お前、何が久し振りだ!いつだ?いつ、俺とお前はセックスした?」
「えっと…10日前くらい?」
あまりに強く蹴られた背中が痛くて、前屈みになりながら、オーランドはショーンの迫力に呑まれて、素直に返事を返していた。
ショーンは、怒りに燃えた目でオーランドを睨み、怒鳴りつける口は、オーランドに噛み付きそうだった。
「10日?はぁ?それじゃぁ、俺は、日にちの計算を間違ってたのか?半月だよ。半月。それだけ、俺と、お前はセックスしてない!」
ショーンは、下からオーランドの胸倉を掴んだ。
「で、じゃぁ、問題だ。10日前にしたお前のセックスの相手は誰だ?すくなくとも、俺じゃない。それは、はっきり断言できる!」
「ショ、ショーン?」
「10日と、いうのは、正確じゃないな。はっきり言ってやるよ。一週間前だ。どうだ。誰といた?それも、俺に言って欲しい?」
「…ショーン?」
今まであれほど頑なに目を反らそうとしていたショーンは、オーランドの目を睨んで視線を離そうとはしなかった。
反対にオーランドの目が泳いだ。
「言うか?言ってやろうか?オーリ、お前、俺にばかり、浮気をするなとか、うるさく言うけどな。それは、俺限定なのか?お前の浮気は、フリーなのか?」
ショーンの声は大きくなかったが、十分な脅しを含んでオーランドの耳に届いた。
「えっと…あの…どうして、それを…」
オーランドはしどろもどろになった。
「オーリ、事実を認めるな?そういう態度の奴が、どうして、俺とセックスしたいって?俺とする気になれないから、浮気するんだろ?さっさと俺の上からどけ!」
ショーンは、オーランドを突き飛ばした。
オーランドは、転がるようにソファーの足にぶつかった。
激しい音がした。
オーランドは、痛みに耐えて顔を上げた。
「あの…えっと、どうして、ショーンがそれを?」
ショーンの目は怒りに燃え上がっていた。
「お前、自分の立場がわかってないのか?パーティーに来ているエキストラなんかに手を出してみろ。翌日からもう、彼女たちの自慢話のネタにならないと思っている方が、どうかしている!」
ショーンは、立ち上がると、ソファーの足にもたれかかるように座り込んでいるオーランドの足を蹴った。
蹴られた太腿はかなり痛かった。
「…家に逃げ帰るか?オーリ?これが、怒ってる理由だよ。俺は、かわいい女の子と両天秤にかけられるくらいなら、お前のことを蹴り殺す」
ショーンは、顎を突き出すようにして、オーランドを見下ろした。
威嚇するように、足を振り上げた。
「…怖ぇー…」
オーランドが上げた小さな声に、眼を細めて怒りを露にしたショーンは、オーランドの腹を蹴った。
めり込むような本気の蹴りだった。
オーランドは、腹を抱えこんで蹲った。
しばらく声が出なかった。
「…マジ…痛いんですけど…」
「当たり前だ。俺を馬鹿にする奴に、手加減するか」
ショーンは、オーランドの目の前で仁王立ちになっていた。
取り付く島がないというのは、こういう状況のことをいうのかもしれない。
つんと反らした顎は、ショーンのプライドの高さを語ってあまりある角度だった。
それでも、粘り強く、ずうずうしいオーランドは、ショーンのズボンの裾をぎゅっと掴んだ。
ここで、口を開かないまま、尻尾を巻いて逃げ出したら、冷戦が長引くことは目に見えていた。
もう一発くらい蹴られても、今、解決しておかないと、もっと面倒くさくなる。
ショーンとケンかをしたままなんていうのは、願い下げな状況だ。
「あのさぁ…ショーン、あんた、何で、今日まで言い出さなかったの?」
オーランドは、足を振ってオーランドの手を払いのけようとしたショーンを離さなかった。
「なんか、俺が浮気したの、さっき知ったっていうような雰囲気じゃないと思ったんだけど、俺の勘違い?」
ショーンは、オーランドの言葉に一瞬怯んだ。
オーランドは、この状況から、抜けだす一本の道筋をみつけた。
ショーンは、あまり嘘が上手くない。
オーランドは、ぐっとショーンに身体を近づけた。
「ずっと我慢してた?俺があんたを誘うの待ってた?ごめんなさいって、言って欲しかった?」
ショーンが、顔を背けた。
怒った顔をしていたが、少しだけ、頬が赤くなっていた。
「そうだよね。じゃなきゃ、俺をここまで、連れてこないよね?」
ずうずうしい言い分をまくし立てた。
「でもね、めちゃくちゃ疲れてて、それで、させてくれるっていう女の子がすぐ側にいてさ。しかも、してって言うわけなんだよ。…わかるだろ?つい、ふらふら行っちゃうの」
オーランドは、屈み込んで、ショーンのつま先にキスをした。
ショーンは、驚いたように一歩足を引いた。
「あんただって、絶対、寝ちゃうと思うよ?浮気心がおきるのってそういう一瞬でしょ?ねぇ、そう思わない?」
オーランドは、両足を腕で抱きこんで、ショーンの膝小僧にキスをした。
洋服越しでも、ショーンの足に触れるのは、なんだか、久し振りでドキドキした。
「本当に、出来心だったんだよ。許してくれないかなぁ…?…ダメ?」
「…オーリ」
ショーンは、やっとオーランドを見た。
「ショーンのことが、一番好き。誓っていいます。浮気は、下半身に唆されたアクシデントです。ショーンと上手く休みが合わないしさ、なんかね。…・ごめん。…ねっ、許して?」
見上げるオーランドの黒い目をショーンは睨み、一つ、思い切り、オーランドの頭を叩いた。
ものすごく、いい音がした。
オーランドは一瞬目の前が、真っ白になった。
「簡単に謝るな!」
それから、ショーンは、オーランドの腕を掴んで引きづりあげると、手を引っ張って、寝室に向かって歩き出した。
オーランドに文句をいう暇を与えなかった。
オーランドは、寝室にたどり着いてからの、急展開に驚きのあまり固まっていた。
ベッドに突き飛ばされ、身体を起こそうとしたら、ショーンが襲い掛かってきた。
顔じゅうにキスされて、やっとオーランドが応えられるだけの余裕が出来た頃、ショーンは、すでに、オーランドの体の上を移動していた。
ジーンズのジッパーを下げられ、下着ごと腰までずり下ろされると、いきなりショーンが顔を寄せた。
何かをいう暇も与えられず、オーランドのペニスはショーンに咥えられていた。
オーランドのペニスは、ショーンとケンかをしていた時から、多少固くなっていたが、ショーンの温かな口内に迎え入れられ、一気に大きくなった。
ショーンとするのは、本当に久し振りなのだ。
やっと、ショーンだって、多少は楽しめるようになって、ラブラブな時間が過ごせるかと思っていたら、撮影のスケジュールがきつくなった。
撮影所で顔を合わせることができても、プライベートな時間がなかなか取れない。
いっそ、トイレにでも連れ込んで、犯してやろうかとオーランドは、真剣に考えた位だ。
最初は、撮影の合間にショーンからキスだけでももらって、気を紛らわせていたが、そのうち、それだけじゃ、全く我慢できなくて、キスする事だって止めた。
そういえば、ショーンに、キスを止めた理由を話していない。
オーランドは、熱心に黒いヘアーに鼻を埋める金髪の中に指を差し入れた。
「どうしたの?すっごく嬉しいけど、ショーンらしくないことない?」
「うるさい!」
一瞬だけ、ペニスを口から吐き出したショーンは、文句を言い、また、深くまでペニスを含んだ。
口のなかに入れたまま、舌をのばして、ペニスの根元に触れようとする。
届かない。
だが、そのもどかしい接触が、なぜだか、オーランドをとても煽る。
「ねぇ、全部に、キスしてって言ったらしてくれる?」
ショーンは、両手で、ペニスを握り締めて、先端から順にキスを始めた。
ぐるりと一周、薄い粘膜の部分を唇で触れ、顔を傾けるようにして、余った皮膚を唇で啄ばむように柔らかく触れてくる。
注文の通り、余すところなく全部だ。
ヘアーが密集する部分までたどり着いて、そこにまでキスをすると、ショーンは、オーランドを見上げながら、口を開いて、そっと袋を舌で舐めた。
オーランドの喉がごくりと唾を飲み込んだ。
ショーンの舌が、ゆっくりと表面を舐める。
ショーンは、もっと顔を寄せ、口の中へと袋を含んだ。
全く痛みを与えない愛撫が、オーランドを包み込む。
「どうして?…えっと、いいんだけど、あ?なんで?」
オーランドは、ショーンの髪を撫でながら、時折、ちらちらとオーランドの表情を確かめる緑の目の色にすっかり気持ちを攫われていた。
犯したい。このまま、ショーンをベッドに押し倒して、足を掴んで大また開きにさせて、ひいひい言うまで犯してやりたい。
ズボンも、下着も脱げかけで構わない。
尻だけ出させて、ペニスをねじ込んで、腰をがっちり掴んで、激しく揺すってやりたい。
へっこんだ腹を突き破るくらい激しく抜き差しして、嫌だって言わせて、オーリって、叫ばせて。
ショーンは、存分に、口の中で柔らかな玉の感触を楽しむと、愛しげにキスをくり返し、もう一度、ペニスを口に含んだ。
舌が絡みつくように、表面に張り付いている。
「脱げよ。ショーン」
オーランドは、伸ばしている足で、ショーンの下半身を蹴った。
ショーンは、ペニスを口に含んだまま、自分のズボンのボタンを外した。
折り曲げている膝のせいで、太腿で引っかかったズボンは、ショーンの尻が白いのを強調した。
見えている尻は、膝を立てようとするショーンの動きに、右に左に振られている。
オーランドは、ショーンの背中に覆い被さり、尻の肉をなでまわした。
「めちゃくちゃ、色っぽい。…もう、どうして、こう…」
オーランドは、両手で肉を掴んで、撫で、開き、ショーンの尻を捏ね回した。
「この尻さぁ…誰かに見せたら、もう、絶対、ショーンのこと、殺すね」
オーランドは伸び上がって、ショーンの尻にキスをした。
オーランドのペニスを含んでいるショーンは、それでペニスを離さず、顔を動かし吸いつづけた。
「すごく、入れたい」
オーランドは、ショーンの穴の周りを指でなぞった。
「オーリ…」
やっと、ショーンが顔を上げた。
オーランドは、いやらしく濡れて光ったショーンの目の色に、にやりと笑うと、ショーンの腰を抱えて、尻にすっかり顔を埋めた。
産毛の生えた柔らかな皮膚に息を吹きかけ、ショーンのことを震えさせると、それから、ゆっくり舌で舐めた。
ショーンの皮膚は、オーランドのことを待っていた。
舌でなぞるたび、嬉しそうに腰が震えた。
オーランドは、せっかちになりがちな自分を押さえて、ゆっくりと中心に近付いた。
ショーンの方が、待ちきれないようだった。
オーランドがショーンの前に回した手は、一度も触っていないのに、大きくなったペニスを捕らえた。
ペニスは、濡れてつるつるしていた。
ショーンが、湿った息を吐き出している。
熱いように、大きく口を開けている。
「なか、触っていい?」
オーランドが聞くと、ショーンは、首を振って嫌だと、示した。
「じゃ、どうするの?」
ショーンは、自分で、ベッドボードからゴムを取り出し、指に嵌めると穴の中へ指を入れた。
長い指が、ゴムのジェルに助けられ、ずぶずぶと中へと入っていく。
それを、足を大きく開いてオーランドに見せつけるように行うのだ。
オーランドは、思わず、ショーンの足の間に手をついて、顔をぐっと近づけた。
「どうして?ねぇ、ショーン、どうして?」
ショーンは、指を二本に増やすと、自分で広げる真似までして、何度も指を出し入れした。
急ぎすぎの感がないわけではないが、それよりも、もっとそそられる気持ちで、オーランドは、ショーンの動きに目が奪われてしまった。
ショーンは、オーランドの名を呼びながら、指の挿入を繰り返した。
前から回す指が、浅い挿入しか出来ないので、ショーンは、腰を浮かせた。
指が穴に飲み込まれていく。
嘘みたいな光景だった。
揺れて光るペニス。
自分の指を付け根まで頬張るショーンの尻。
緊張している太腿。
金色のヘアー。
オーランドは、ショーンの膝小僧にキスすると、指を抜かせて、めくれているピンク色にキスをした。
「ゴムをつけたら、入れていい?」
今度のショーンは、頷いて、ゴムのパッケージを投げて寄越した。
オーランドは、すぐさま付けると、ショーンの足を大きく開いた。
膝裏を持ち上げ、先端を入り口に擦り付ける。
ショーンが、腰を捩った。
とろりと、粘液が、ショーンのペニスを伝った。
まだ、全然固い入り口を強引に抉じ開けて内に入ると、ショーンがうめくような声を上げた。
「痛い?」
ショーンが腕を伸ばして、オーランドの首に縋りついた。
頬にキスをして、それから、ベッドに肘を突いて身体を起こした。
「なに?」
ショーンは、うめく声を小さくもらしながら、オーランドの身体をベッドに押し付けていき、自分がその上に乗りあがった。
「ショ、ショーン?」
ショーンに跨られたオーランドは、見上げる光景に驚きのあまり声がひっくりかえった。
ショーンは、緊張しているのか、鳥肌が立っている。
乳首もつんと突き出ていた。
「大丈夫なの?痛くない?平気?」
ショーンは、オーランドのペニスを根本まで飲み込み、矢継ぎ早に質問を投げかけるオーランドの口を片手で塞いだ。
「黙れ。俺だって、お前のこと気持ちよくしてやること位できるんだ。…畜生。この俺に、浮気されるなんて最悪な気分を味あわせやがって!」
怒った顔をしたまま、ショーンは、口を塞いでいないほうの手を、オーランドの腹に付き、腰を上下し始めた。
リズミカルとは言い難かったが、狭い内壁が、オーランドのペニスを擦りたてていく。
サービスたっぷりに、先端から、根元まで何度も締め付けられる。
「うっそ?嫉妬?あんた、焼きもち焼いてんの?」
オーランドは、ショーンの指の隙間から、驚いた声を上げた。
ショーンが強く手で口を押さえる。
オーランドは、指を舌でべろべろと舐めた。
「嬉し。…ショーンに、焼きもち焼かれちゃうなんて、俺、浮気してよかった」
ショーンが、オーランドの頬を叩いた。
自分でも手加減しているというのが悔しいのか、身体を前に倒すと、オーランドの肩に噛み付いた。
結構痛かった。
歯型が、ついた。
「もう、なんでも、してよ。ごめん。ごめんね。そんなに、ショーンが俺のこと好きでいてくれるなんて、最高!」
ショーンは、薄く歯形のついたオーランドの肩を舌で舐めた。
オーランドは、ショーンの頭を抱き締めて、金の髪を何度も撫でた。
ショーンの舌先が、ずきずき痛む傷跡を擽る。
「好き?そんなに、俺のこと、好き?」
オーランドは、浮かれた声でショーンに質問しまくった。
「お前が、浮気しないならな」
ショーンは、オーランドの顔を脇に手をついて、腰を動かし始めた。
感動的な光景に、オーランドは、ショーンの腰を手で掴んで、その動きの手助けをした。
「浮気しない。もう、しないから。本当に出来心だったんだって、事故ってやつ?ショーンのことが一番好き」
ショーンは、オーランドの言葉に、眉を顰めた。
「どこかで、聞いたよ。と、いうか、俺が何回も使ったセリフだ。まさか、聞かされる羽目になるとは思わなかった」
ショーンは、腰を動かし続けた。
「俺も、ばれると思わなかった」
オーランドは、ぺろりと本音を漏らした。
ショーンは、オーランドの頬にかみついた。
「せめてばれないようにやれ。あんまり頭の悪い真似をするな」
「こんなサービスが受けられるんなら、俺は、ばれても構わない」
ショーンは、呆れた顔をして、オーランドの頭を叩いた。
「今回のことは、俺自身、どうしてこんな気になってるのか、わからないんだ。次は、半殺しの目に合うと思ったほうがいい」
「もう、可愛い。俺が、誰かに取られちゃうんじゃないかと、こんなに必死になっちゃって」
オーランドは、ショーンの腰を掴むと、下から何度も突き上げた。
ショーンが、目を瞑って、掠れた声を上げた。
ペニスがぎゅっと締め付けられる。
「ほら、動いて?それとも、もう、俺にして欲しい?」
ショーンが、赤くなった顔を伏せたまま動こうとしないので、オーランドは遠慮せずに、ショーンを揺すり上げた。
「こういうの、いいね?ショーンが、バスルームに行かせろとかなんとか、ごちゃごちゃいうのもなしに、セックスなんて、初めてじゃない?そんなに俺が欲しかった?」
「…うるさい」
「もう、本当に、かわいいんだから」
身体の中を擦られて、腰をもじもじとさせているショーンのペニスを、オーランドは掴んだ。
ぴんっと、立ち上がっているものの先端から零れ出ているものを全体に塗り込み、すこしばかり扱き上げた。
ショーンが、腰を振る。
ダイレクトに、オーランドのペニスに伝わる。
「ショーン。もしよければ、もう少しサービスして?俺、あんたの内を擦ってあげるから、あんた、自分でこれ、擦ってよ」
オーランドは、ショーンの手を取り、ペニスを握らせた。
ショーンは、赤い目元でオーランドを睨み、けれども、ちゃんと言葉に従った。
赤い顔をしたショーンが恨みがましい目をしてオーランドを見下ろしている。
けれども、次第にその顔が快感に歪んでいく。
腰を突き上げると、目を閉じて、喉を反らす。
「すげー。ショーン、大好き。あんた最高に色っぽいよ」
オーランドは、ショーンの尻を突き上げて、ショーンに掠れた悲鳴を上げさせた。
悲鳴の途中で、オーランドの腹は、生暖かな粘液でべっとりと濡れた。
「オーリ、オーリ」
がくがくと震えるショーンの身体を両手で掴んで、オーランドは更に、ショーンの奥を抉った。
「好きなだけ、味わって。ごめんね。浮気しちゃって。でも、ショーン以上の相手なんていないから」
伸ばされた舌に、舌を絡めて、オーランドは、ショーンの耳に愛していると囁いた。
ショーンの腰が小さく跳ねた。
「…オーリ……お…れも」
オーランドの腹がすっかり汚れてしまうまで、2人は、ベッドで絡み合った。
オーランドは、ショーンに身体を絡められて、嬉しいような、困ったような気持ちでベッドに横になっていた。
信じられないことだが、撮影に出かける時間まで、後、1時間、オーランドに与えられた仕事は、ショーンを抱きしめ、腕枕を続けることだった。
ショーンは、オーランドに抱き付いて、時々、思い出したように胸や、肩にキスを落している。
「もう、浮気しないか?」
「しない。約束する。ショーンがこんなに嫉妬ぶかいとは思わなかった」
「…俺も、思わなかったよ。悪かったな」
ショーンは、また、オーランドの肩に吸い付いた。
きっと、いくつかは、キスマークになっている。
「…しかし、わかってるんだよな。こうやって、簡単に浮気しないという奴に限って、また、繰り返すんだ。お前のセリフは全く真実味がない」
ショーンは、オーランドの足に足を絡ませながら、ため息を付いた。
「ショーン、それは、あんたの経験。俺の誠意を疑わないの」
オーランドは、ショーンの腰を引き寄せて、額と、額を重ね合わせた。
ショーンは、嫌がって、顔を遠ざける。
「それこそ、絶対信じられんな。今度お前が浮気したら、俺もするから、そのつもりでいろ」
ショーンは、オーランドの唇に軽く歯を立てた。
「嘘つき野郎」と毒づくショーンのセリフに、オーランドがにやりと笑う。
「じゃ、ショーンは、その時、殺される覚悟しといてね。俺、自分でいうのもなんだけど、結構衝動的な人間だから、浮気なんかされたら、きっと、あんたのこと許さない」
しっかりと舌を絡ませたオーランドの言葉に、ショーンは、大きなため息をついた。
でも、ため息のあと、自分からオーランドの唇にキスをした。
END
嫉妬する豆。
どうしてか、めちゃくちゃ書いてみたくなった。
でも、書いていて気付いてしまいましたよ。私、暴力沙汰を書くのがどうにも好きなようです。
今更気づいたんかい!って、突込みを受けそうですが、そうかなぁ…とは、ちゃんと思ってたんですよ。(笑)
最初のいちゃいちゃしてる感じのケンカ、ものすごく、書いてて楽しかった。(笑)