チョコレート
撮影が休憩に入り、オーランドが、椅子に腰掛けると、後ろから、チョコレートが差し出された。
驚いて振り返ると、ショーンが、嬉しそうな顔をして、笑っていた。
「どうして?」
「いつも、甘いものを分けてもらってるだろ?そのお礼」
一粒のキャンディや、掌に乗るビーンズに比べると、随分高価なお礼だった。
誰でも知っている有名店の包み紙。
確かに、ただの板チョコみたいだが、この辺りだと手に入らない。
「娘さんからの差し入れ?」
「違うよ。昨日、市街地のマーケットに行ったら、コーナーがあったんだ。珍しいから買ってきたんだ。ここのは、嫌いか?」
「とんでもない。ただ、ショーンが意味を知ってるのかなぁと思って」
にやにやと笑うオーランドをショーンは、不思議そうに見た。緑の目が無防備にオーランドを覗き込む。
「意味?」
「そう。マーケットってあそこだろ?あのあたりは、日本人の移住者が多いから、このチョコレートを今日渡すってのには、意味があるんだ」
「ダイスキって呪文か?」
ショーンは、言いにくそうに、発音した。
「は?」
「ダイスキ?ああ、もしかしたら、違うかもしれない。日本語は難しいよ」
ショーンは、照れくさそうにすると、持っていたビニール袋をくしゃくしゃと丸めた。
「どんな意味?なんて意味の言葉なの?」
オーランドは、ショーンの使った日本語を知らなかった。
「さぁ?さっき、リジィと、ヴィゴに会ったから、あいつらにもチョコを渡したら、感謝の気持ちがあって渡すんなら、そうやって言って、頬にキスしろと」
のんきそうなショーンの言葉に、オーランドは顔を顰めた。
「誰か?」
「え?リジィが」
ショーンは、オーランドの雰囲気が険悪になったことに困惑していた。
落ち着きなく、手の中の袋を弄び、それが、カシャカシャと音を立てた。
「オーリも、呪文を言って欲しいのか?」
呪文の言葉はわからなくても、オーランドは何となく意味するところを掴むことができた。
日本びいきのリジィがこの習慣を知っていて、それに合わせた言葉をショーンに言わせたとしか思えない。
「で、ショーンは、言われたとおりに、呪文を唱えて、頬にキスしてあげたの?」
「まぁ…そうだけど…」
「リジと、ヴィゴだけ?」
「いや、そのあと、ドムにもやったし、メイクスタッフにも…」
「ちょっと、こっち来なよ。あんた撮影開始まで、まだ時間があるんだろ?少し、俺とデートだ。チョコを配るもの中止。いいね」
「なんだ?何か怒ってるのか?」
突然椅子から立ち上がり、ショーンの腕を引いたオーランドに、ショーンは、驚いて目を見開いた。
「いいの。ちょっと散歩だよ。あっ、ちょっと、歩いてくるから。すぐ戻るけど、いいよね。15分くらい?」
オーランドは、大きな声で、撮影クルーに声をかけた。
及び腰になったショーンの腕を、逃げ出さないように強く掴む。
大人数で入り乱れ、セットの調整をしていたスタッフが、オーランドの声に、ぱらぱらと振り返った。しばらく打ち合わせた後、向こうから、オーケーと、ジェスチャーが返った。
オーランドも手を振り返し、
「近くだから。もし遅くなったら、大声で呼んでよ」
空調の音に負けないように、大きな声で叫び返した。
オーランドは、ショーンを機材のコードがうねる撮影現場から連れ出し、天気のいい屋外へと急ぎ足を向けた。
ショーンは、オーランドの不機嫌の理由がわからず、困惑していた。
チョコレートを配ることくらいで、こんな目にあうことの意味がよくわからない。
オーランドの足は止まらず、撮影所を取り囲む駐車場を抜け、公園へと進んでいる。
途中すれ違ったスタッフは、がっしりと腕を掴まれ、オーランドに連行されているショーンを見て、気の毒そうな顔をした。
また、どんな悪戯につきあわされているのか。というような目だ。
「なぁ、オーリ、何か気に障ったのか?」
「まぁ、そうかな。うん。そう」
「なにが?お前に一番にプレゼントしなかったからか?それとも、リジィと、ヴィゴにキスしたからか?」
「他にも、ドムや、スタッフにしたんだろ?」
「いや、キスまで要求されたのは、リジィと、ヴィゴだけだ。あとは、反対に、ハグしてくれたり、キスしてくれたよ」
ショーンは、オーランドの気持ちに気付かず、ギフトを喜んでくれたことを嬉しく思っている。
「…ほんとに…ショーンは…」
オーランドは、日差しを遮る木陰まで来て、足を止めると、じっとショーンの目を見詰めた。
「俺も、詳しくは知らないんだけどね、2月14日に、わざわざチョコレートを送るって習慣が日本にはあるらしくてね、それは、愛の告白なんだって」
「え?」
「多分、ショーンが言わされた呪文、なんだっけ?ダイ…何とかだっけ?それも、そういう類の言葉だよ」
「愛してるとか、そういう?」
「さぁ、わかんないけど、そうなんじゃない?キスしてとか、犯してってのじゃなきゃいいんだけどね」
ショーンは、ほとほと困った顔をした。
「どうりで、リジィがにやにやしてたはずだ…」
「ヴィゴも少し、日本語がわかるんだったよね。きっと、二人には、ものすごく楽しいイベントだったんじゃない?」
「…はぁ…」
ショーンは、手にもっていたビニール袋に視線を落してため息をついた。
「他所の国の習慣なんてわからないよ。ちょっと珍しいチョコレートが売ってたから、ただ、お礼のつもり…だったんだ」
「そうだろうね」
オーランドは、肩を竦めた。
呆れ顔のオーランドをショーンは、機嫌を伺うような目で見上げる。
「あの…な。オーリには、チョコだけじゃなくて、ちゃんとプレゼントが用意してあるぞ。今晩、お前の家に行ってもいいかどうか聞くために、顔を出したんだ……本当だぞ」
明らかに機嫌を取ろうとするショーンの態度に、オーランドはくすぐったい気持ちを味わった。
特別扱いだ。チョコくらいどうでもよくなるような恋人にふさわしいスペシャルなお誘いといえる。
唇を緩め、ショーンの腰を引き寄せた。
天気の良すぎる公園には、日差しを避けるためか、人影がない。
今日、この日のために、レストランをリザーブしてあることをショーンに言わなくてはいけない。
「本当に、用意してあるの?今から買いに行くんじゃなく?ちゃんと、今日、プレゼントを渡す意味、知ってる?」
ショーンは、慌てて、周りを見回した。この公園なんて、撮影現場と同じ敷地のようなものだ。
誰がいつ顔を出すか分からない。
辺りを見渡し、一安心した大人は、恋人の腕のなかで、首を竦めて照れくさい顔をした。
「今晩寄っていいか?」
「勿論。今日、車?もしよければ、現場まであんたを迎えにいってもいいけど」
「明日の朝も送ってくれるのか?」
「朝、めちゃくちゃ早くてもいいなら」
大人は、もう一度周りを見回し、年下の笑う頬にかすかに触れるキスをした。
撮影の上がりがショーンの方がはるかに早く、結局、家まで車を置きに帰ったショーンを迎えに行ったオーランドは、玄関を開けて、あんぐりと口を開いた。
しゃれたスーツを身に付けてオーランドとの食事に備えてくれたところまでは、喜んで受け入れられる範囲だったが、ショーンは、その腕に、バラの花束を抱えていた。
「プレゼント?」
「…だめか?」
「誰にあげるのさ」
「オーリにの、つもりだったんだが…」
ショーンは、花束を放り出し、自分の頭を抱えた。
「そうだな。おかしい。こんなのは、おかしい。冷静に考えれば、どう考えたって変だ」
「まぁ、まぁ」
オーランドは、ショーンに駆け寄り、逃げ出そうとする肩を抱き締めた。ふわりとバラの香りが鼻を掠める。
「落ち着きなって。いや、嬉しいよ。嬉しいけどさ、あんたの、過去が透けて見えてちょっと焼けるね」
オーランドは、顔を伏せたままのショーンのいい匂いのする金髪に唇を寄せた。
「ほんとだよ。この日に花をプレゼントしてくれるなんて、結構幸せだよ。ただ、ちょっと、恥かしいけどね」
「悪い…あんまり考えもせずに、注文しておいたんだ。他にもプレゼントは、用意してあるから…」
ショーンは、おずおずとオーランドの目を見つめた。
「あっ、今、結構、愛情を感じた。他にもプレゼントがあるの?」
「たいしたものじゃないけどな」
ごぞごぞとスーツのポケットを探り始めた。
オーランドは、ショーンの手を止めた。
「後で。後でちょうだい。プレゼントの素敵な渡し方は、ベッドの中で二人きりの時にってのが、最高じゃない?」
ショーンの目元が僅かに染まる。けれど、口を突き出すようにして拗ねている。まるきり子供の顔だ。
「お前、俺よりずっとスマートなやり方をするじゃないか」
「そうかな?」
オーランドは、唇の先っぽに音を立ててキスをした。
「俺ばっかり、空回りで恥かしいよ」
ショーンは、唇を曲げて顔を赤い顔を顰めた。
「そんなことない。俺、もっとずっと、ショーンのことで空回りしてるじゃん。今日だって、とりあえず、リジとヴィゴのモーターハウスのドアが開かないようにしてきてやったし?」
胸を張ったオーランドを、ショーンは、呆れた顔で見る。
大きなため息もついた。
「…なんてことを…」
「当然。でも、明日、俺のドアが開かなかったら、ショーンも一緒に開けてよね」
オーランドは、床に投げ出された花束を拾い上げて、ショーンを車へと促した。
食事は、充分満足のいくものだった。
ただ、狭い町のため、恋人同士のディナーに行き合わせて、くすりと笑われた。
『誘う相手が他になかったの?』
撮影スタッフの目がそう笑っていた。
おしゃれに決めた二人は、ウインクを決めて微笑み返し、恋人同士の邪魔をしないように、リザーブした席よりも遠い場所へとテーブルを移し、悪戯に成功したように笑うと、食事を愉しんだ。
少し酒によって目元を染めているショーンは、オーランドの家に着き、車から降りる際、どうしようかとが後部座席の花束に視線を投げた。
オーランドは、すかさず花束を取り上げ、助手席に回るとショーンのために、ドアを開ける。
「格好いいじゃないか」
スマートにエスコートされながら、ショーンがくすくすと笑う。
「まぁね。こんな日くらい」
ドアを開け、部屋の中にもつれ合うように入ると、どちらからということもなく、唇を重ねあう。
スーツのズボンを押し付け合い、ワイシャツの背中を掌がさ迷う。
「好き?」
オーランドは、熱に浮かされたように訪ねた。
いつも聞いてしまう。
「好きだよ」
ショーンは、いつも通りの答えを返す。
「俺も。俺も、ショーンのこと大好き」
ショーンは、ふわりと柔らかく笑った。
「あと、100回くらい言ってくれ」
「100回だけ?」
「いや、もっと」
ショーンは、とても正直だった。
オーランドの頬も緩む。
「最初のうちは、好きって言うなって、言ってたのにね」
オーランドは、笑うショーンの頬に何度もキスを繰り返した。
「そりゃ、そうだろ。いきなり告白されて信じられるもんか」
「告白は、突然って相場が決まってると思うけど」
楽しそうな表情をうかべる緑の瞳にキスをした。黒い瞳もキスを受ける。
「そう簡単に受け入れられるもんか」
ショーンも、オーランドの頬に何度もキスを繰り返した。
「たくさん悩んだ?」
「当たり前」
「俺が悩まない分?」
唇にもキスを繰り返す。
「そう、でも、俺もあんまり悩まない性質だけどな。好きなものは、好きだし、仕方ないよな」
「嫌いなものは、嫌いだから仕方ないって言われないように、努力するよ」
二人は、指を絡め合って、ベッドルームへと急ぎ足になった。
どこから見たってこれ以上ないくらいハンサムな二人なのに、オーランドのスーツが肩からずり落ち、ショーンのネクタイは曲がっている。
オーランドは、ベットルームのドアを開ける前に、もう一度ドアにショーンを押し付けて唇に噛み付いた。
ショーンの赤い舌が伸びる。
オーランドがドアのノブを回し、ショーンの背中がドアを開ける。
床が慌てる二人に踏み鳴らされる。
ベッドの中で、ショーンは、膝を折り曲げた姿勢でうつ伏せにされていた。
膝は隙間なく胸につき、足の間も開いていない。
何度も後ろから突き上げられると、ぐらぐらと身体が揺れた。
ショーンは、シーツに縋りつくように、きつく皺をよせて指を握り締めていた。
「…足を開かせてくれ」
「だめ」
「倒れそうなんだ…」
「ほんと?じゃ、もう少し、頭を下げて、シーツに掴まればいい」
オーランドに腰を持ち上げられて、身体に挟まれ苦しくなっていたペニスは楽になったが、ますますショーンの姿勢は不安定になった。
シーツに、きつくしがみついて、左右に振られる身体を押し留める。
「オーリ。無理…これは、無理だ」
「足が長すぎるせいかな?でも、結構いいでしょ?」
「いいけど…でも、無理」
ショーンは、揃えさせられた両足を、せめて肩幅に開こうとした。
突き上げられるたび、身体が揺れて、そのままベッドに倒れこみそうだった。
「えー。これ、結構いい感じなのに」
「お前…人の身体のことも考えろよ」
「考えてるじゃん。ちゃんとショーンも気持ちよくしてあげてるでしょ?」
ショーンは、伏せていた頭をすこし上げて、背後にいるオーランドを振り返ると睨んだ。
オーランドは、口元をいやらしく緩めて、ショーンを覗き込むと、赤くなった頬を舐め、潤んだ緑の目を舐める。
「すっげーセクシーポーズ。サービス?」
ショーンは、緑の目をきつくした。
「そんなわけあるか。ほら、足を開け。俺が足を開く分のスペースを開けろ」
ショーンは、じりじりと足を開き、オーランドの立ち位置を変えさせる。
「もう、ショーンってば自分勝手」
「…どっちが」
ショーンの文句をオーランドは、強く奥を抉ることで止めた。
そのまま、腰を掴んで、激しく揺さぶる。
ショーンの喉から、早い呼吸が漏れた。
潤滑剤でヌルつく穴のなかを、硬いペニスが擦りたてる。
ショーンは、頭を振って、声を上げた。
オーランドは、ショーンの背中に唇を寄せ、きつく吸い付きながら、腹を突き破るほどきつくペニスを突き入れる。
ショーンが高い声を上げた。押さえ込まれていた声が、ひっきりなしに、唇から漏れる。
今まで以上にきつく絞り込まれる。
オーランドは、歯を食いしばって、締め付けに耐えた。ペニスを引き抜こうとすると、肉が絡みついて容易には離してくれない。
捲れあがるピンクの粘膜が、オーランドの目を焼いた。
震える太腿の白さに負けず劣らず、そそる淫猥さをたたえている。
撮影のため肉をつけた尻に比べて、細い腰に指を食い込ませて、ぐいぐいとペニスを飲み込ませる。
ショーンの背中が小さく痙攣し始めた。
「痛い…かな?もしかして?」
僅かに見えるショーンの顔が歪んでいて、オーランドは、挿入を浅くすると、汗を滴らせる首筋に吸い付いた。
「…キスマーク…を…残すな」
ショーンが涙を浮かべた目で振り返る。
その顔が、あまりに色っぽくて、ショーンが苦しがるのを承知しながら唇に吸い付き、舌を絡めた。
「…ん」
案の定、ショーンは、顔を振ってキスを嫌がる。
呼吸が出来なくて苦しがっている。
わかっていながら、オーランドは、逃げる舌を追いかけまわした。
ショーンは、威嚇するように、オーランドの舌に歯を立てる。
軽く噛ませて、オーランドは、キスを止めた。
ショーンは、肩で息をしている。
「痛かった?」
ショーンの額に浮かぶ汗を拭い、オーランドは、頬にキスをした。
「…少し、でも嫌じゃない」
オーランドは、つながった部分を、上下に揺すった。
ショーンは、うっとりと目を閉じる。
「愉しんでくれてる?」
「オーリは?」
自分の心配までしてくれるショーンが嬉しくなって、オーランドは、嫌がられるのを承知で犬のようにショーンの顔を舐め回した。
「ショーンがパーフェクトじゃない時があった?」
舐め回しながら、腰を丸く動かす。
ショーンの唇から魅力的な声が漏れる。
気持ちのいい締め付けが、オーランドを奥へと誘い込む。
「じゃ、もっと楽しめよ」
ショーンは、頭を深く落し、腰をオーランドに差し出した。
「いいの?」
「ダイスキ…だったか?なんて意味なんだろうな。犯してくれか?」
喘ぐような息の合間に、ショーンが煽る。
オーランドは、揺れ動くショーンの腰を押さえつけ、何度も甘い悲鳴をあげさせると、掌の中に、ショーンの精液を搾り出した。
ショーンは、ぐったりとしてオーランドに揺すられていた。
足はオーランドの肩に担ぎ上げられ、仰向けにベッドに転がされている。
ショーンのペニスは、もう緩くしか硬くならなくなったというのに、オーランドのものは、最初と同じくらい硬いままショーンの中を擦っている。
中で感じる快感は、際限がなくて、オーランドに付き合っていると、最後には苦しくなってくる。
もう止めたいと思っているのに、身体は勝手にオーランドに合わせてひくつき、締め付け、ショーンを疲れさせる。
「そろそろ…やめてくれないか?」
ショーンは、掠れた声で、オーランドに頼んだ。
オーランドは、気持ちよさそうな顔をして、ショーンの頬をゆっくりと撫でた。
「なぁ、そろそろ、ダメか?」
オーランドの手の平に頬を摺り寄せ、お願いを繰り返す。
節操のない身体は、オーランドに揺すり上げられたら、何度でも高まっていってしまう。
翌朝、腰が立たないなんて真似は、もう、御免だった。
今晩のノルマは果たした。
二回分の精液が、自分の後ろから漏れ出していることをショーンは、自覚していた。
すべりの良くなったそこは、ペニスを貪欲に飲み込んでいて、ショーンの意思とは裏腹に、まだ快感を吸い上げている。
これ以上、強く刺激されると、また、のた打ち回ることになる。
もう、腹いっぱいだ。
この位で解放して欲しい。
「もうちょっと…ってのは、ダメ?」
オーランドは、うっとりとした顔で、ショーンの目をのぞきこんだ。
黒い目が、興奮に濡れて、きらきらと輝いている。
ショーンも、オーランドの目をのぞきこんだ。
「これで最後?」
「最後にするから」
ショーンは、どれ程自分がほだされてしまったのかと、内心ため息をつきながら、オーランドの腰に脚を絡みつかせて、頷いた。
ベッドから立てなくなったショーンは、オーランドに、プレゼントを取りに行かせた。
オーランドは、ショーンが用意した小さな包みのほかに、紙袋を抱えて、ベッドへと戻ってくる。
「俺に?」
「たいしたものじゃないけどね」
開けると、こじゃれたシャツが姿を見せた。
スタンダードを好むショーンの趣味とは、すこしばかり違ったが、ショーンは、オーランドの頬にキスをして感謝を伝えた。隣で、オーランドは、ショーンの包みをびりびりと引き裂いて開けている。
「カフス?」
「そう。使えそうか?」
「もちろん。…でも、高価そ」
「年上の面子を立てろ」
オーランドは、ショーンの首に縋り付いて、頬にキスを返した。
「ありがと。恋人同士にふさわしいバレンタインだったね」
「そう…かな?俺は、疲れたよ。甘いものが欲しい。なぁ、チョコ取ってくれよ。お前にやった分、持ってるだろ?」
オーランドは、チョコだ。チョコと繰り返す、年上のため、もう一度ベッドを抜け出し、チョコレートを手に、ベッドに戻った。
「ダイスキ?だっけ?はい。どうぞ」
「犯してくれって意味だったとしても、俺はもう出来ないぞ」
ショーンは笑って、包みを剥くと一口食べて、オーランドにも差し出した。
オーランドは、「キスしてかもよ」と、笑って、チョコではなく、ショーンに齧り付いた。
END
BACK
バレンタイン企画ものです。
企画ものということで、いろいろ目を瞑っていただきたい部分も…あちこちに。
許してください。
ちょっと、いちゃいちゃしてる二人が書いてみたかっただけなんです…。