コップの花

 

ソファーに腰掛け、オーランド・ブルームがスナック菓子の袋の口を開けていた。

いっぺんに何袋か口を開け、そのどれもを口に運んでいる。

特に特徴のないホテルの部屋の中に、オーランドが菓子を噛み砕く音だけが響いている。

「どう?食べない?」

テーブルへと散らかされた袋の上をオーランドの手がさまよい、カラフルなビーンズの袋からひとつ取り出し、ショーンへと勧める。

「甘いの、好き?」

差し出されるままに、つい、受け取ってしまったショーンに、オーランドは、自分も袋の中へと手を突っ込んで、豪快に取り出すと、口へと放り込む。

「クッキーもあるけど?」

ショーンがビーンズをすぐに口に放り込まないのを見て、持ち込んだストアーのビニール袋の中へと、ごそごそと手を伸ばす。

「いや、いいよ。そんなに腹もすいてないし。それに、話があるんだろ?」

ショーンは取り敢えず、ビーンズを口の中へ入れた。

久しぶりに食べる赤のビーンズは、甘ったるくすらある。

「うん、まぁ、そうなんだけど」

「なに?」

DVD用の追加撮影のため、ショーンは久しぶりに、ニュージーランドの中つ国へと足を踏み入れていた。ここは、現代を超越した神聖な風景が、優秀なスタッフにより作られ、まるで地中から掘り起こされたように堂々と存在し、同時に、さまざまな何に使うかもわからないような撮影道具が満ち溢れ、才能ある人間達が、不思議とそれらと一体化していた。張り詰めた緊張感と、活気が依然と同じテンションであたりに満ち、自分だけがここから離れていたことがおかしくさえ感じる。

「どうした?長くなる話なのか?」

ショーンは、いつになく、言いよどむ風のオーランドの様子に、少しおかしな予感を覚えていた。この若者は、いかにも若いと感じさせる焦りと、甘えが混在した、悪く表現すれば単純で直接的な物言いが多い、愛すべき存在なのである。その彼が、

「うーん。と、いうかね」

追加撮影をするショーンのため、取られたホテルの一室、菓子からは手を離し、困ったような顔でショーンをみつめていた。撮影は順調なようだし、彼の仕事だって着実にキャリアを重ねているようだし、なにより、久しぶりに顔を合わせた時、見せた笑顔には何の曇りもなかったはずなのに。

言いよどむ黒い瞳には、彼が、親しい仲間を、何かに誘う時、飲みに行こうだとか、冒険をしようだとか、そんな時よく見せた、俺の気持ちわかってくれないかなぁ。という、甘えがちらついていた。

その瞳を、彼が未だに自分へと見せることに、少しばかり自尊心をくすぐられ、ショーンは、彼の話をゆっくり聞くつもりになっていた。その位のことは、たやすいと感じさせるほど、この映画のキャスト仲間に、ショーンは強い愛情を感じていた。

「えっと、言いにくいっちゃ、言いにくい話なんだけど、」

オーランドは、しばらくためらう様子をみせる。

ショーンは待った。何か深刻な相談事なら、まだ若い彼の助けになるかもしれないと思い、彼が口を開くのを待った。

そして、待ったことを後悔した。

オーランドが言い出したことは、ショーンの想像を遥かに超えていたのだ。

「えっと、ま、いいや。告白。俺、あんたのことがどうやら好きになっちゃったみたいだから、セックスしてみたいんだけど?」

思いつくことさえしなかった内容に、ショーンは、とぼけた冗談なのかとオーランドをまじまじと見た。彼の目が黒いことや、鼻筋が通っていること、随分ハードな撮影スケジュールをこなしているらしいわりに、肌が荒れていないことなど、まるで必要のないことを十分認識できる時間長く。

「どう?」

ショーンは、不躾なほど長い時間、彼の顔を見ていたが、オーランドの黒い瞳がひるむことはなかった。ショーンは、彼の目が見ていられず、思わずホテルの落ち着いた色合いの壁紙へと視線を泳がせた。

「どう?っと言われても」

「そう?そういう行為は考えたこともない?」

「考えたことがないわけじゃないが、」

「そう、よかった。考えたことがあるなら、今度はその相手を俺にして考えてみてよ」

オーランドは、ショーンの返答に、いかにも助かったというように笑って、また菓子の袋へと、手を伸ばした。ショーンは、この問題を真面目に取り扱うべきなのかどうか、まだ迷っていた。

「その、これは急いで考えなければならない問題なのか?」

ショーンは、あまりに気楽そうなオーランドの態度に、まだ、事態の重さが信じ切れずに、彼の瞳を時折盗み見る。

いま、この瞬間、彼が真剣に取り合った自分のことを大笑いするのではないかと、そんな期待だって、捨てきれない。

「うーん。できれば、早く。だってあんたの撮影分って、そんなに長くないから、この国に居られるのなんて、ほんのちょっとだろ?」

「まぁ、そうなんだが」

オーランドは、甘えを含んだ上目遣いにショーンをうかがう。

「ほら、今回はあんただけ、トレーラーハウスじゃなく、こんなホテルだし、やっぱ焦ってるってのはあるんだけど?」

「焦ってるって言われてもなぁ……」

「まぁ、いきなりすぎて悪いなぁとは思っているんだけど…ね」

当然のように愛情をねだるオーランドの言葉に、ショーンは返答に困り果て、口をつぐんでしまった。

しばらく沈黙が続く。

オーランドはじっとショーンを見つめていた。

しかし、ショーンは未だ、この事態にどう対処していいのかわからない。

実のところ、オーランドの言葉さえ疑っているのだ。

 

突然、オーランドは、菓子の袋を机の上へと放り出した。

「うーっ。くそっ!」

叫ぶように言うと、勢いよく、背もたれへとのけぞり、低い唸り声をあげる。

そのまま天井を向いて、しゃべりだした。

「なんていうかね、あんたはさっさと撮影を抜けたわけじゃん。それまでに結構、俺たち親密になってたでしょ?それが、ぽっかり抜けちゃって、まぁ、撮影もハードだったし、この映画が終わった後も、結構、仕事が忙しかったりで、何となくこれですんでいくんだなぁって思ってたのに、ここで、また顔を合わせて、そしたら全然やっぱ気になっちゃうじゃんとかあって、やべ、これラブじゃんとか、まぁ、そういうのがぐるんぐるん頭ん中まわっちゃったりして」

「でね、こうなったら、とりあえず直接ってのが、一番かなぁとか。だって、一人で考えても変なことばっか考えちゃって、全然わかんないし、なんか、あんた見るたびに、キちゃうものあるし、俺、へん?とか、もうわけわかんなくて」

「……俺にもよくわからないんだが」

「平気。俺もよくわかんないから。今の俺の混乱、あんたにわかったら、あんたはエスパーに決定だよ」

「そうか。わからなくていいのなら、いいんだが……」

ショーンは、どうして自分が頷いているのかもわからないままに、何度か頷いていた。わからないまでも、彼が自分をからかっている訳ではないことは理解できた。それどころか、彼なりの言葉で、恋心を告白しているのだ。ショーンは落ち着こうと焦っていた。口の中には、何か言わなければならない言葉が詰まっている気がするのだが、それは、明確な言葉とならない。

いっそ、オーランドが視線を合わせないままでいてくれることが、ありがたかった。

ソファーにもたれたまま、何もない天井を見上げるオーランドと、自分の組んだ手に視線を落とすショーンが黙り込んでいた。双方ともに、言う言葉に詰まってしまったということもあったが、相手の出方を窺って緊張している。

また、部屋を沈黙が支配した。

「っで、どう?俺をお試ししてみようって気、ある?」

若い分、オーランドの方が、先に忍耐力の限界がきた。

ソファーに預けていた身を勢いよく起こすと、ショーンへと身を乗り出し、返答を迫った。

「おためしねぇ」

ショーンは、焦らすつもりはなかったが、返答はさけ、散らかった菓子の袋へと目をさまよわせる。

「だめかなぁ。俺ってけっこう楽しめる相手だと思うんだけど」

「……というより、倫理観の問題」

楽しめる、じゃぁ恋愛しよう。とでもいうような、とても単純なオーランドの理論に、ショーンは一応大人の態度で渋ってみせた。

しかし、オーランドが、あまりにあけすけに落胆した表情をみせるので、作って見せた渋い表情は、思わず笑いに変わってしまった。

オーランドの方は、急に笑い出したショーンに、怪訝そうな顔を見せる。

ショーンは、彼のその若い表情に、肩の力が抜ける思いだった。

「お前って、すっごく女の子にモテるだろ」

ショーンが言うのに、

「まぁ、そうかな」

オーランドは悪びれもせず、答える。

「そうだろうとも。その堂々たる甘えっぷり、筋金入りってくらい女の子の気持ちを知り尽くしてる」

「そう?俺、女の人ばかりの中で育ったしね」

返答をさけ、おかしな事を言い出したショーンに、オーランドはますます怪訝そうな顔になる。観察していると、オーランドは、机の上で手の指を組み、それを何度か組みなおすことをした。

焦らされる答えに、こらえ性のなさが、見え隠れする。

ショーンはすこしだけ聞いたことのあるオーランドの遍歴と照らし合わせて、彼の忍耐力のなさにも、頷ける思いがした。

オーリィ、お前は、女の中で気持ちよく包まれることばかり覚えてきたってわけだ。つまり、身も心も。

ショーンは、自分の思いつきに、思わず心の中で笑った。

彼が、誘いを断られるという経験に乏しく、自分の返答に多大な期待を寄せていることも、何となくわかった。

「で、やっぱり、ちょっと変わったものが食べてみたくなったというわけか?」

「んーそうなのかなぁ。でも、好奇心ばっかってわけじゃないんだけど」

オーランドは、ばつが悪そうに自分の顔を撫でた。

正直なオーランドの言いように、ショーンは、あいかわらず隠し事をしない奴だと感心すらした。この物の言いようをしても、嫌われるどころか、人を惹きつけて止まないのだから、どうしようもない魅力に溢れている。

ショーンは、しばらくオーランドの顔を眺めていた。

オーランドは、すこし照れたような笑い顔で、ショーンのことを見つめている。

 

多分、オーランドは、ほんのちょっとした気まぐれを起こしたのだ。

ショーンは思った。

ことさら難しく考える必要はない。体を触りあって、いつもよりすこし深いキスをして。

多分、それで気の済む話だ。

ショーンは、自分の人生経験を振り返って、軽い気持ちで結論を出した。

見ている限り、オーランドの好意は、好奇心に唆されて、友情の枠組みをはみ出した程度で、思いつめたりはしていない。

自分だって、ここで彼を突き放さなければならないほど、すれていないわけではない。

「まぁ、いいよ。お試しくらいはしてもいい。多分、お前が思っているほどおもしろいことでもないし、嫌だってわかったら、途中で止めればすむことだ」

「まじ?」

「ああ、ただし、コインが表を向いたらな。その位の偶然性はあってもいいだろ。俺は、いつもこんなことはしないんだ。何もなしには受け入れ難い」

オーランドはとろけるような笑顔を見せた。

「いいよ。いいよ。俺、神様に愛されてるからね」

そんなの絶対コインは表さ。

まるで何でもないことのように、オーランドはポケットのコインを投げ上げ、そして出た目は、まさしく表だった。

 

オーランドの指が、ショーンのジッパーへとかかった。

「うわ。なんか緊張する」

「バカ、緊張するってんなら俺だろ」

そう?と、オーランドはショーンを上目遣いに見た。

その目に、ちらりと、獲物を前に油断させようとしているオスの策略を感じて、ショーンは油断ならないオーランドの実力を噛み締めた。

ショーンは本当に緊張していた。

今更のようだが、止めたおけばよかったという後悔が、眼球の奥をちくちくと刺激する。

自然と息が浅くなっていた。だから、彼のジッパーにかける手が、仕事しやすいよう、まるで腹に力を入れて待っているような状態だった。

「やっていい?」

「やめていいってんなら、今すぐやめてくれ。本当に心臓がドキドキいってる」

「えー。やるやる。今すぐやるから、やめるのはなし」

オーランドは大慌てでジッパーを下げた。ショーンのズボンの下から、灰色のボクサーショーツが顔を出す。

ふーむと、オーランドは感想にもならない声をだした。

時間としては、十秒ちょっとか。ショーンは、じろじろと見られることに困惑を覚えたが、それでも抵抗はしなかった。

もしかしたら、ここでもう、オーランドがやめると言い出すかもしれないと思ったのだ。やはり、同性の体に欲情できないと。

「触っていい?」

「好きにしてくれ」

「じゃ、落ち着いてするために、べットに腰掛けない?」

「なんでも言うとおりで結構」

「なんか、めっちゃやる気だよ。俺」

オーランドは、ベットへとショーンを移動させると、まるでいたずら坊主のような笑顔をみせた。ショーンは内心の焦りもあって、ベットのスプリングにすら眩暈を覚えるような気がする。

その位、オーランドの視線は、ショーンにプレッシャーを与えるものだった。

「へへへ。なんか、ちょっとドキドキ」

「黙ってやって欲しいね」

「そう?おしゃべりは嫌い?」

オーランドはおかしな程の余裕を見せている。その態度から、かなりの場数を踏んでいるらしいと推測される。

そんなオーランドには分かってしまっているのかもしれないが、ショーンは、内心の動揺を抑えて、精々落ち着いて見えるよういい小さく頷いた。

ショーンだって、この場でオーランドからイニシアチブを取れほどには、場数を踏んできている。数だけで言えば、当然オーランドを上回っている自信だってある。

今回こんなにも緊張を強いられるのは、オーランドが気分よく仕事ができた共演者であり、かつ、同性だからだ。それを同時に行ったことがないから、こんなにも動揺しているが、別々になら、魅力的な女性の共演者とベットを共にしたことだって、同性とふざけてベットに入ったことだってある。

ショーンは、もう一度自分の経験値の高さを確認しなおした。

だから、どうということもなく、オーランドの好奇心を満足させ、もとの関係へと立ち返らせてやることができると思っていたのだが。

ショーンは、動揺していた。

甘えた若造に、こんなにも精神的優位に立たれるとは思ってもいなかった。

オーランドに性的な意味合いで触れられることが、これほど、自分の精神を揺さぶることになるとは全く予想していなかった。

オーランドは、ズボンの前を大きく開かせると、ショーツの上から、ショーンのものを撫でた。

「うわっ。結構でか」

「黙れっていってるだろうが」

えー、誉めてるのに。オーランドは口を尖らしながら、ショーツの中へと手を入れた。その素早さに、ショーンの方が身を固くする。

「おっ、なかなか…そうでした。感想は控えるんだったね。でも、無言でこんなことするの変じゃない?」

「お前、手が冷たい」

「ごめん。ショーンはあったかいね」

オーランドの手が、一旦遠慮するように、ペニスから手を引き、ヘアーを撫でていく。年から言えば、半分ほどの若い男に、こんなに気を遣われて、そう、オーランドは本気での性急さは、欠片ほどもちらつかせないのだ。ショーンは、身を固くしようとするばかりの自分を、少し恥じる気持ちが湧いた。

オーランドの行動からは、緊張するショーンに対して、優しくしようという心遣いが、十分感じられる。まるで、ティーンエンジャーのような告白をした彼に、こうまでされては、さすがに腹をくくろうという気も起きる。

ショーンは、天井を仰いで、大きなため息をついた。

「ほら、お前も脱げよ。どうせ俺もお触わりしなくちゃだめなんだろ」

ほら、はやくしろ。と、オーランドを急き立て、自分もさっさとズボンと下着を太腿までおろした。ぐずぐずしていては、また、いらぬ緊張に負けそうになる。

「サービスいい!!」

「口笛なんか吹くな。俺はお前のガールフレンドか。ったく。なんでほんとにこんなことを……」

「触ってくれるんでしょ?」

オーランドは、ことさらショーンへと身を寄せて、膝を触れ合わせた。伝わりあう体温が、体の境目を曖昧にし、相手のガードを解くのに、役に立つことをオーランドは知っている。

ベットの隣同士へと腰掛け、お互いに相手のものへと手を伸ばす。

「ショーン、上手」

「そうかい」

「気持ちいい?」

「まぁ、それなりにな」

オーランドの手の中の脈動は、次第に力を持ち得てきてた。鼓動の早さに合わせ、徐々に育ちゆくそれは、ショーンの素っ気ない返答よりは、はるかに確かな返事を返している。

オーランドも、男の手に握られるという、現実のこの状況を受け入れることが可能だったようで、ショーンの掌を難なく熱くしていた。

しかし、部屋の中には、まだ、くつろぎきらない緊張感が残っている。

緊張を解きほぐそうと、オーランドは、努力を繰り返し、ショーンにあれこれと話し掛けようとした。

しかし、ショーンの返答はあまりにも短い。

目をそらすようにするショーンに、オーランドもしまいにはあきらめ、二人は手を動かすことだけに集中した。

お互いの腕が邪魔しあい、思うように動かせないことも、集中する原因になった。

「思ってたより、難しい」

「やめるか?」

オーランドの言葉に、ショーンはほっとした。

これなら、遊びとして済ませられる、十分範囲内だ。

「うー、やめたくない。だって、これ、結構おもしろいじゃん」

返答は、ショーンの期待を簡単に裏切った。

「おもしろくない?」

「はぁ?」

ショーンは、オーランドから手を離すのも忘れ、顔をまじまじと見た。

ペニスへとサービスを続行しながらの、真顔での質問に、ショーンは返答できない。

「俺さぁ、絶対女の子より上手にできるだろうって自信があったんだよね。やっぱ、同じ男だし、いいとこなんてそんなに変わんないだろうから、ショーンなんてものの3分で天国。とか、思ってたんだけど、結構上手くいかないじゃん。そうなると、チャレンジ精神が湧くっていうか」

「もう、想像の中じゃ、ショーンから、してくれって腰をすり寄せてくるっていうか、俺ってテクニシャン?って感じだったから、調子くるっちゃって」

オーランドの手は、話しながらも動きを止めることがなかった。自分にとってそこがいいのか、先端の部分をなで回す動きを繰り返している。

「少し、質問していい?ショーンは休んでいてくれていいから。質問に答えながら、俺の動きに集中して。あっ、嫌なことは答えなくてもいいから」

ショーンは、オーランドの勢いに促されるまま、硬くなったものから手を離した。オーランドのペニスは、ショーンのサービスに熱が入っていなかったせいもあるが、熱くはなっていても、全然終わりを見せる様子はない。

「で、質問って?」

オーランドは、穏やかに微笑むと、その魅力的な口を開く。

「ショーンは、どうやって触られるのが好き?」

「普通だよ。全体に触ってくれれば気持ちいい」

「こう?こうやって全体を扱く感じ?」

「もう少し、力を弱く。そう、その位」

「特別に感じるところは?」

「特別って。…ああ、何言ってるんだ、俺」

「いいじゃん。こういうことはお互いに協力して、初めて気持ちよくなれるんだからさ。この、先っぽのとこ、触られるのとかは?」

「嫌いじゃないが、そこばかりは」

「オッケー。ねぇ、玉なんかは触っても平気?」

オーランドは、片手で棹を扱いて、もう一方の手でそっと玉を持ち上げた。

「……」

嫌がる様子を見せないショーンに、オーランドは柔らかく、手の中でそれを転がす。

「ねぇ、こうやって早くするのと、ゆっくりではどっちがいい?」

「この付けの根のトコ触られると気持ちよくない?」

「濡れてくると、先んトコくりくりされるのっていいよね」

「この縫い目のトコ、結構好き?」

辱めにも似た数々の質問に、ショーンは自分が嬲られているのではないかと、疑問が浮かんだ。

オーランドは、ショーンが質問に答えを返さなくなっても、全く気を悪くする様子がない。

ショーンの反応をうかがいながら、どんどん的確な方法を学んでいく。

「あっ、ここの裏のとこが、いい?ふーん、じゃ、こういうのは?」

このよく動く口を、多くの女の子たちは魅力に参って、キスで塞ぎたいと思うのだろうが、ショーンは、ハレンチなおしゃべりを止めさせるために、手で塞いでしまいたかった。

「ショーンのって、このカリんとこ張り出してるよね。ここ、やっぱ、気持ちいい?」

「ショーンは、ヘアの形いいよね。ここ触られるのってさ、くすぐったいけど、ちょっと良くない?」

「黙ってやれ!」

ショーンが黙り込むと、それをいいことにオーランドの質問は、その形式を借りた、ショーンのヘアやらペニスの形についての感想になり。

確かに睦言ならば、許される言葉の数々ではあったけれど。

あまりに恥知らずで、オープンなオーランドの言葉に、ショーンはとうとう中止を求めた。

「どうしよう。俺、ちょっとフェラチオにチャレンジしたくなった」

しかし、真剣な顔をして、じっとショーンのペニスをみつめながら、オーランドは爆弾を投下した。

もう、ショーンには、オーランドの好奇心の暴走を止める方法が分からなかった。ショーンにとっては低すぎると思う沸点で、オーランドは、欲望に火をつけ、いや、ショーンにとっては、彼が欲望に突き動かされて行為を行っているのかすら、もう、わからなくなっていたが、ショーンには高すぎるハードルを軽々と飛び越えようとしている。

「どうしてそういう発想になるんだ。なにも、そこまでチャレンジしなくてもいいだろうが。俺は絶対にやらないぞ。絶対、絶対、やらないからな」

そのままの勢いで、かぶりついてきそうなオーランドを、取りあえず抱きとめ、ショーンは、彼を思いとどまらせようとした。もう、言葉を選んで、彼を上手くいなす等と、粋がっている余裕もない。

「えー。いいじゃん。このまま手でするより、気持ちいいよ」

オーランドは、おいしいお菓子をお預けにされた子供みたいに、口を尖らせブーイングした。取りあえず、抱きとめられているが、口を開けて、今にもかぶりついてきそうだ。そう、大きく口を開け、キャンディでも口にするように。いや、キャンディなら、まだましで、ソーセージでも食べるように口にされたら。

ベットの上でしばらく、もみ合う。二人は、子供が争うように、お互いの事情を優先させようとしているだけで、いやらしくもなんともないのに、ベットはサービスのように、ぎしぎし大きな音を立てる。

「噛むな。絶対に噛むなよ」

あまりにオーランドが要求を取り下げようとしないので、もはや、投げやりな気持ちで、ショーンはオーランドへと許可を与えた。

これほど恐い思いをしてフェラチオされるのなど、いつぶりだろう。大人の女は、大抵優しい口内を持っていて、ショーンに快感を与えても、恐怖を与えることなどない。

「オーケイ。いただきます」

ショーンが全く乗り気でなく許可を与えていることを承知しているオーランドは、油断なく、ショーンの太腿に手をかけ、逃げられないようにした。

嬉々としたオーランドの声を聞きつつ、ショーンは途方に暮れていた。

オーランドが躊躇いもなく、ペニスへと顔を寄せていく。

ショーンは、来るかもしれない痛みと、多分、これは同じだろう、あたたかく湿った感触を待って息を詰めた。

すると、いきなりオーランドは頭を起こす。

やはり、間近で見たペニスに怖気づいたのだろうと、ショーンが肩の力を抜くと、オーランドはショーンを羽交い絞めにするような勢いで、抱きしめ、唇を重ねてきた。

「うっ…」

ベットに押し倒されながら、唇を何度も舌で辿られ、歯の表面をなぞられる。

背中に回した手が、肩甲骨を辿り、頭を抱きしめ、唇が離れることを許さない。

あきらめて薄く口を開くと、舌が遠慮なく口内を蹂躙していった。

何度か軽く息継ぎをし、ベットの中を転がり回る。

久しぶりに貪られるキスというのを味わった。

オーランドの舌が、応えないショーンに苛立ったように、舌を絡め取る動きをみせる。ショーンも、彼の気の済むよう、最低の礼儀程度に舌を絡めた。

オーランドは、唾液がショーンの咽喉に落ちようと、キスをやめない。とうとう、口蓋のショーンが気持ちよく感じるところまで発見して、彼に、甘い息を付かせた。

「ショーン、気持ちいいの?」

「…お前の遊びっぷりがよくわかったよ」

キャリアでは、全然上だと思っていたオーランドにいいようにされて、ショーンは、悪態をつくしか自分のプライドを守る方法がなかった。

オーランドは自分の唇を舐め、まだ、物足りなさそうにショーンの唇を狙っている。

「も、一回。キスはやっぱイケるじゃん。俺のやり方でも、あんたのこと、楽しませてあげられるんだから、もう一回」

ショーンの承諾を得る前に、若者はショーンの上へと覆い被さり、気の済むまで口内を舐め尽くした。

その後、やっぱキスはフェラの前じゃなきゃ、させてくんないだろうなぁと思って。なんて笑ったオーランドは、ショーンがキスに反応したのに気を良くして、全く躊躇なくショーンのペニスを口に含んだ。

お互いのものを手で刺激しあって、それで出すものを出したら、オーランドの気もすむだろうと、高をくくっていたショーンは、オーランドの行動力に唖然とした。

彼の頭が、自分の腰で上下する様を、呆然と見入っている。

オーランドは、熱心にショーンのグロテスクな肉棒へと舌を這わせた。

ヘアーの絡まる根本から、先端まで舐め上げ、舌先で、小さく窄まる口をつつく。

張り出したカリの下の余った皮をあまく唇ではさみ、そこに舌を這わせる。

時に喉の奥まで開いてショーンの全体を包む。

勿論、歯を立てるなどという無様なことは一度としてなく。

本当にこれがはじめてなのかと、罵りたくなるほど、オーランドは上手くショーンを煽りたてた。

「…っ」

「いい?」

オーランドは行為の合間に、ショーンを見上げ、その見られているという感覚が、またショーンを煽りたてる。行為には全くぎこちなさがなく、ショーンは歯を強く噛みしめ、声を押し殺さなければならなかった。

それを、オーランドは冷静に観察し、すぐに反映させてくる。

そして、観察の結果、銜え、舐めるだけでなく、喉を開き、そこでショーンを愛撫すると、反応が良いということを、オーランドは習得した。

仕事柄、声を出す訓練を受けているから、喉を開くという行為自体は、体得していても、なんの不思議もなかったが、それをこの場で、こういう行為において、気持ちのいいことだろうと、すぐさま実行に移せるところが、オーランドの色事に対する天性のカンの良さだろう。多分、円熟した女が、彼にいろいろな楽しみを教え、そうした行為の中に、これだって含まれていたのだろうが、されるのと、するのでは天と地ほどの開きがある。それを。

あまつさえ、オーランドはその喉を締めて、ショーンに快感を与えることを短時間の間に覚えてしまっている。

「お前…」

ショーンは呆れて、オーランドの頭を気怠く撫でた。それに気を良くしたオーランドが、ショーンを喉の奥で締め上げる。

「…っ」

「どう?気持ちいいだろ?ちょっと才能あるみたいだね、俺」

ショーンのものが、オーランドのフェラチオに、十分な反応を見せているのに満足したオーランドは、ペニスから顔を上げ、ショーンに微笑む。

「こんなことの才能があって嬉しいか?」

うーん、どうかなぁ。もごもごと口の中で返答をしながら、オーランドはまたペニスを口に含んだ。

柔らかい粘膜がショーンを包み込み、締め上げる。

オーランドは、口だけでなく、手だって十分に活用した。先端を舌で舐め上げ、ざらざらした感触を味合わせながら残った部分を調度いい力加減で扱き上げてくる。

ショーンは、しばし、この行為の罪深さについて忘れてしまっていた。その位、オーランドは才能豊かで、ショーンに快感を味合わせた。撫でていた黒髪を、知らぬ間に、強く握り締めてしまい、慌てて手の力を抜く必要さえあった。

「そこだ。そこをもっと舐めてくれ」

恥知らずにも、オーランドに要求すら突きつけている。

オーランドは、笑顔でその要求を受け入れた。ただし、その笑顔は、ショーンに見つからないのをいいことに、先ほどまでと、すこし種類が違ってきていた。ショーンの強張りを溶かすのに有効だった、子供のようにもみえる笑いをやめ、口の端をかすかに歪めるような、自分の獲物の状態に満足してるオスの笑みをしていた。

オーランドの奉仕に心を奪われているショーンは、その違いに気づかない。

ねぇ、この服が邪魔なんだけど。

オーランドがそう言って、ショーンのズボンを脱がしてしまい、足の間へと体を入れ込んできたときにも、ショーンはうっとりと提案を受け入れていた。

 

「ねぇ、もう一段階チャレンジしてみない?」

オーランドは、とうとう焦らすという行為まで習得してしまい、自然に揺れるショーンの腰を、両手で押さえつけると、あとすこし、というところまで追い詰めることを繰り返していた。

自分の体が焦れて、汗さえ浮かべていることもわかっていたが、ショーンは、オーランドの頭を押さえつけ、彼の口へと腰を叩き付けたい欲望と戦わなければならなかった。彼が、この行為を楽しんでいて、わざと長引かせていることは明白だったので、なんとしても意地をみせなければならない立場に追い込まれていた。

オーランドは、ショーンがこの行為の続行を望み、そのためなら、少しくらいの妥協を許してもいいと思った、絶妙のタイミングを逃さず、リクエストを口にした。

ショーンは妥協せざるを得ない。

「なんだ?何が望みなんだ?」

ショーンは焦りそうになる体を抑え、オーランドの望みを聞いた。

知らない間に、オーランドに押さえつけられ、身動きのとれなくなっている自分にも、そのとき初めて気づいた。

「ここを、触らせてほしいんだ」

そう言って、オーランドが指で触れた部分は、ショーンに嫌な気分を味合わせるのに十分な場所だった。それでも、体はこの位の妥協を受け入れるよう、ショーンをそそのかす。

「したことあるでしょ?」

オーランドは、割り込ませた体で、ショーンが足を閉じようとすることを許さず、勿論、足の付け根のもっと深い部分を指先で触ることも止めない。

「時々いるよね。ここをサービスしてくれる女の子」

焦れる体をもてあますショーンは、オーランドと顔を合わせたくなくて、ベットの上で乱れたシーツの皺を見ていた。

「ここを中からマッサージして、ショーンにとってもいい気持ちになって欲しいんだ」

「本当にそれだけか?そのまま突っ込むとかいう話だったら、殴られたって嫌だからな」

オーランドの爪がその部分をこじ開けて入ってきそうで、力を込めながら、ショーンはオーランドに質問した。

オーランドは、あっさりと頷く。いや、顔だって、ショーンの信頼を得ようというかのように、いやに生真面目だ。

「ああ、畜生。必ずゴムをつけろよ。それから、絶対!無理するな」

「約束する」

ショーンが快感に白旗を揚げると、オーランドは気持ちよいほどの返事を返した。

「じゃぁ、ベイビー。俺を解放して、しばらくベットで大人しく待っていてくれ。いくら俺だって、そこまで恥知らずじゃないから、ちょっと準備してきたいんだ。お前だって、汚いことは嫌だろう?」

ショーンはわざとらしく、大袈裟な言い回しをつかった。これは、自分自身を勇気づけるためにも、必要なことだった。彼のために、仕方なく!ショーンはばかげた準備をしなくてはならないのだ。

そう思わなければ、ベットから立ち上がれない。

ショーンの言いたいことが分かったのか、オーランドはショーンを押さえつけていた手を離し、ショーンが立ち上がるのに手を貸した。

ショーンは、中途半端に脱がされている自分の格好に苦笑し、威勢良くシャツを脱ぐと、そのまま作り付けのクローゼットまで移動した。

バスローブを取り出し、羽織ると、バスルームへと歩いていく。

そして、ばたんと音を立てて、ドアを閉じた。

 

「ショーン?」

一人でバスルームへと閉じこもったまま出てこないショーンに、オーランドはしびれを切らして、何度かドアをノックした。

「大丈夫?どうかしたの?」

シャワーを使う音が聞こえるわけでもないから、気持ちが落ち着かないせいで、出てこれなくなっているのだろうと見当を付けたオーランドは、できるだけ刺激しないように、ショーンへと声をかける。

「ねぇ、気分でも悪くなった?無理しなくていいよ。大丈夫だから、ここを開けて」

本当を言えば、ショーンがトイレへと立った後すぐ、ジーンズのなかに隠してあったゴムの存在を確認し、服を脱ぎ捨て、でも、裸ではショーンが嫌がるかもしないとバスローブだけ羽織った。

ショーンに無理をしてしまいたい気持ちが、下半身には渦巻いている。

それでも、声だけは優しく、ノックも紳士的に勤めている。

「ねぇ、大丈夫?」

「わるい、大丈夫だ」

ショーンは、ドアをのろのろと開け、オーランドの隣を顔も見ず、すり抜けようとした。

「どうしたの?ショーン」

オーランドが腕を掴んで引き止めようとすると、ショーンは、身を捩って逃げようとする。

「ねぇ?」

「あ…あのな、オーリィ。悪いんだが」

言いよどむショーンに、オーランドは行為の中止も覚悟した。ショーンは、目を伏せ、とても言い出しにくそうで、足の先まで緊張に包まれている。

オーランドの喉がごくりと鳴った。

ショーンがおずおずと目を上げる。

しかし、事態は全く悪くなかった。

「そこにある乳液を持ってきてくれ。自分でやろうとは思ったんだが、どうしても、その、やりづらくて…」

オーランドは、視線の泳ぐショーンの瞳を捕らえるのを我慢した。いや、いっそ、体ごと抱きしめて捕らえてしまいたかったが、その気持ちも抑える。

スキップしたくなるほどの気分の良さも伝わらないよう努力して、ベットへと急ぎたがるショーンを逃がしてやった。

そして、オーランドは、そっと、ショーンが自分の為に努力してくれたバスルームへと忍び込んで、ショーンの言っていた乳液の瓶を手に取る。

念のため、少量を掌に出してみて、十分なとろみを確認すると、その手をティッシュで拭う。

ゴミを捨てようとして、いくつも転がる同じようなティッシュを見つけた。

ショーンの努力の跡だ。ためらいが嫌というほど伝わってくる。

オーランドは、鏡に映る自分へとにやりと笑うと、ショーンにキスするため、うがいをした。

 

オーランドが乳液の瓶を忍ばせながら、ベットへ戻ると、ショーンは魂をさまよわせたような顔で、ベットへと横たわっていた。

あまりに精神的負荷がかかるようなら、ここで自分から引いておくべきだろうか。

オーランドが柄にもないことを考えてしまうほど、緊張しているのが伝わってくる。

オーランドは取りあえず、彼の横へと身を寄せて座り、ショーンの短い髪へと指を入れた。

「大丈夫だ。オーリィ。そんなに心配しなくていい」

眉間に皺を寄せ、髪を梳かれるのを嫌がるショーンは、どう見たって心配な感じなのに、自分から膝を立て、足を開く。

「ほら、するんだろ?」

「…」

オーランドは、気になる足の間には動かず、髪を撫で、強張る顔を辿り、嫌がらないことを確認すると、額に何度かキスを繰り返した。

「いいんだぞ。大丈夫だから、ほら」

ショーンは、軽く腰を持ち上げる。

オーランドは、今すぐにでも、そこに指を突っ込んでみたい。

そして、ショーンをのたうちまわらせてみたい。

しかし、焦ることはやめていた。

ここまで譲歩を示してくれたショーンは、もう逃げ出したりはしないだろう。だから、もう少しだけ、分かってもらう必要があった。

このままなし崩しに、事だけを進めるのは簡単だった。

だが、それだけでは、オーランドの望みは半分も達成されたことにならない。

ショーンに、気持ちよくなって欲しくなる自分の気持ちのメカニズムをわかってもらえなければ、この行為はただの皮膚の接触に終わってしまう。もう少し、体の内側だけでなく、心の内側にも触れなければ、そこに、気持ちのいい感触が残せないのなら、せめて、引っかき傷でも作らなければ、オーランドは、ショーンに本当に触れたことにはならない。

いまは、混乱のままに、それでも年長者の意地だとか、気遣いだかとかで、この行為を許しているショーンが、後で冷静になったとき、せめてオーランドの気持ちにほだされて、特別な行為を許したのだと思って欲しかった。

オーランド・ブルームの好意を記憶に留めて欲しかった。

「ショーン、焦らないで」

オーランドは、急かすショーンを抱きしめて、押しとどめた。

「もう少し、キスして、ムードを取り戻してからにしようよ」

ショーンは、怪訝そうな、落ち着かない顔をした。

「大丈夫、歯磨きまでしてないけど、ちゃんと、うがいしてきたからね」

わざとのようにおどけていったオーランドに、ショーンはかすかな苦笑いを漏らすと、自分から唇を重ねてきた。

「…んっ」

深く舌を絡めることで、ショーンの鼻からかすかな声が漏れる。

バスローブは、オーランドの掌がショーンの体をはい回るのを邪魔しない。

オーランドは、ショーンが感じる上顎の奥を舐めながら、手をバスローブのあわせから中へと忍ばせた。

「んっ」

恥ずかしいのか嫌がって逃げようとするのを、逃がしてやりながらも、指で後を追い、胸の筋肉や、その中心にある、柔らかい乳首にも触れてみる。

「やめろよ。お前の目的は、そこじゃないだろ?」

ショーンは、キスからも逃れ、オーランドに文句をつけた。

「だって、触りたいじゃん」

「いいよ。そんなとこはあまり感じたりしないんだ。それより、ほら、さっさとやれよ」

流されようとしないショーンに、オーランドは、少し淋しい気持ちになる。

「ショーン、俺がショーンのこと好きだと言ったの覚えてる?」

「ん?」

行為を完結させることだけに、心を砕いていたショーンは、オーランドの控えめな声に、大きな戸惑いを覚えた。

オーランドの指が乳首を捕らえようとするのを止めさせ、捕まえ、そのまま自分の足の間へと連れて行こうとしていたのが、恥ずかしくなる。

「ねぇ、ショーン。たしかに俺はあんたの中を弄くりたいんだけど、でも、それだけじゃなくて、ん…なんて言えばわかってもらえるかな。あんたに気持ちよくなって欲しいって思ってて、…あんたが好きだってことなんだけど。だから、えっと、キスしようよ。もうちょっとキスして、それで、あんたがいい気持ちになってくれたら、そしたら、もっと気持ちよくなるようにしようよ」

ショーンは、オーランドの真摯な瞳に、あまりにも恥知らずな自分の手を離した。そんなつもりは、さらさらなかったが、これではまるで、ショーンの方がして欲しがっているようで、オーランドが戸惑っているようではないか。

「ねぇ、ショーン、俺とキスするのは嫌?」

「…嫌じゃないが」

ショーンの返事に、オーランドは、唇へと触れるだけのキスを落としてくる。

「ねぇ、体に触られるのは?」

「それは…あまりしたくない。一方的にされるのなんて恥ずかしいじゃないか」

「そう、じゃぁ、せめて抱き合いながらキスをしよう。背中を触られるのは平気?」

オーランドはショーンの上へと覆い被さりながら、何度か角度を変え、キスをくり返す。

「んっ」

バスローブの上から、オーランドの手がはい回る。

口の中は、勿論、唇も、顎さえも、オーランドの舌が舐めてゆく。

「ねぇ、ショーン、ここ好きでしょ?そんな顔してる」

「なぁ、オーリィ、お前そういうのが癖なのか?その何でも聞きたがるの、けっこう恥ずかしくて嫌なんだが」

「そう?そんなに質問してる?」

オーランドは、質問を繰り返している自分を自覚しながら、とぼけてみせた。

戸惑うショーンの顔が可愛らしくてやめられないのだ。

やりすぎるとショーンが冷めてしまうこともわかっていたが、もっと追い詰めて困らせてみたい気持ちが抑えきれず、引く瀬戸際を見極めるのが難しい。

ショーンの嫌がるエッチくさいボディータッチをさけ、あくまで、リラックスさせることを目的に、穏やかに背中を撫でていると、目に見えて、ショーンの緊張が解けてきた。

呼吸が穏やかになり、本人は自覚していないのだろうが、ゆるく体を押し付けてきている。

ずっと、高ぶったままなのだから、気持ちのいい体温が側にあれば、そうしたくなっても仕方ない。

オーランドはショーンを驚かせない程度に、自分もショーンへと体を押し付けた。

お互いの硬くなったものを、ゆるく擦り付けあう。

「ねぇ、ショーン」

「もう、質問はなしだ」

今度は、ショーンの方が舌を差し出してキスをした。

いままで、散々、オーランドにいい様されたことを仕返しするように、彼の舌を絡め取り、きれいな歯並びを歯で辿る。オーランドは喜んでそれに応え、ショーンの舌を受け入れた。

お互いの頭を抱き込むようにして、キスを続ける。

腰も、お互いのバスローブ越しではあるが、ぴったりと重ねる。

オーランドの手は、ゆっくりとショーンのバスローブをたぐり上げる。

「いい?」

「また、質問だ」

オーランドは、緊張を解いたショーンの尻の間へと指を近づけた。

「いいって、さっき言ったろ。ちゃんとゴムをつけろよ」

ショーンは、こめかみの辺りに、ちりりと困惑のようなものが通り過ぎるのを感じだが、あえて無視して、キスへと気持ちを集中させた。

オーランドは、ショーンが気がすむまで、口の中を自由にさせ、バスローブのポケットへと、移動させていたゴムを取り出すと、指へと嵌めた。

そして、掌に乳液をこぼすと、それをゴムへと絡め、しっかりと濡らす。

それだけの行動を、ショーンが体を固くして緊張してしまう前に、素早く行った。

そして、ショーンの体の間に腰を下ろし、膝を立てさせると、ゆっくりと指を中へと潜らせていく。

「オーリィ」

久しぶりの異様な感覚に、ショーンは戸惑い、オーランドの名を呼んだ。

じりじりと肉体を割られるのは、酷い感覚だった。まだ、耐えられるが、ずっと耐えてはいられないだろう異物感だ。

内部に他人の肉体が入り込むのは、吐き戻したくなるほど、気持ちが悪い。

「ごめんね。すこし、がまんしてね」

気持ちを落ち着けるためか、オーランドは、立てた膝小僧へとキスをする。

その気遣いも効果がなかった。

「オーリィ…悪い、だめかもしれない」

昔味わった快感を思い出そうとしても、今はただ、気持ちが悪いだけで、ショーンは、このままオーランドの指が体に馴染むのを待つことができそうになかった。

「もう少し待って、すこし動かすから。きっとショーンを気持ちよくしてあげるから。信じて、絶対酷いことにはならない」

オーランドは、眉を寄せて不快感に耐えるショーンを見下ろし、指を拒む肉の堅さに驚いていた。自分の経験に照らし合わせても、こんなに激しく拒絶されたのは初めてで、オーランドもすこし動揺している。

相手が男だから?それとも、年齢が違うせい?

自分がされたときだって、オーランドは、彼女が酷く困難な思いをしているとは感じなかった。

それとも、あの子がすごく上手だったとか。

心の中では焦りながら、しかし、ちらりとも、それを顔に出さず、オーランドはショーンの中を探る。

「オーリィ」

ショーンが行為の中止を望んでいるのが分かる。

ショーンは我慢強いから、ここで強引に行為を打ち切るような真似をしないが、本当は、オーランドを押しのけ、ベットから降りてしまいたいだろう。

立ち上がっていたものも、力無く萎えてきている。

「ショーン、どうしても駄目そう?」

堅くあたたかい肉に阻まれて、上手く動かせない指に焦れながら、オーランドはあくまで甘くショーンに声をかけた。

「もう少しだけ、我慢してくれるとうれしいんだけど。ダメ?ねぇ、お願い」

だんだんと力が入り、閉じようとしてきている膝の片方を抱きしめ、さする。

「痛い?」

「痛くは…ない」

「じゃ、気持ち悪いんだ」

「ああ、気持ち悪い」

ショーンは、目を閉じてしまって耐えているので、オーランドは彼の瞳を見つめながら微笑むことができない。

自分の笑う顔が、ショーンにわずかでも安心感を与えることができるのではないかと思っているオーランドは、仕方なく自分の為に笑った。

ここは、撤退することも考えないといけないかな?

しかし、オーランドは諦め悪く、内部で指を動かし続けた。

「あっ…」

 

ぴくんと、ショーンの体が強張り、項垂れていたものが、いきなり質量を増した。

「あっ…あっ…あっ…まて。まってくれ。あっ…ちょ」

ショーンの体が熱い熱を発し、その急激さについていけないショーンは、戸惑った声をあげ、視線をさまよわせる。

「みつけた…かな?」

ショーンの体が魚のように跳ねるのに、オーランドは安心して、繰り返しそこを刺激した。

「オーリィ。オーリィ!」

さっきとは違った意味で切羽詰って、ショーンは何度もオーランドの名を呼んだ。

体内に感じる違和感はそのままなのに、刺激されると、つよい快感がそこから湧きあがり、体が熱くなるのを止めることができない。

「ショーン、もう少し弱く?」

「弱く。…いや、やめてくれ。きついんだ。たのむ。止めてくれ」

ショーンの止めて欲しい理由が生理的な嫌悪感でなくなったいま、オーランドが彼の頼みを聞き入れることはなかった。ただ、このまますぐにイかれてしまっても困るので、一部ショーンの願いを聞き入れ、そっと刺激するだけに留める。

「…オーリィ」

ショーンは、熱に浮かされたような目で、オーランドを見た。オーランドは大分馴染んだ指で、ショーンの弱い部分だけでなく、周りをぐるりとかき回す。

刺激になれてくると、ここは、全部が気持ちよく感じられる場所へと変わる。

女の子を感じさせてやるのと、そう大差ない。

多分。

少なくとも、自分はあの子の指でそういう目にあった。

ショーンの反応を細かく見逃さず、オーランドは内部を探検する。

「…ん…」

ショーンの体が、オーランドの腕に縋りつくように丸められる。

「そんなに気持ちいいの?」

ショーンは答えないが、挟み込んだオーランドの体を、膝が引き寄せるような動きをし、何度か意味も無く首が振られる。

「ああ、気持ちいいんだ。ここかな?ここ、いじられるの、たまんない?」

オーランドは、ショーンの一番感じるとことは分かっていたが、わざと、少しずらして触ってみた。

どのくらい、ショーンがこの行為を気に入ってくれたかを計ってみたい。

ショーンは、気持ちよくはあっても、一番ではない感覚に、残念なような、安堵したような複雑な顔をみせた。

「ああ、ごめん。こっちだよね。ここが気持ちいいんだよね?」

今度は、焦らしたりせず、一番いいところを強く刺激した。ショーンは、オーランドの腕に縋りつくと、きつく目を閉じ、歯を食いしばる。

「ねっ、指を増やすからね」

オーランドは、宣言すると、彼の反応に満足して、乳液を少し足した指を、もう一度、ショーンの中に深く埋めた。

 

「ねぇ、ここ、どの位、ひらくかなぁ」

すでに、ショーンの後ろは乳液が落ちるほど何度も塗り込められ、指も3本が入り込んでいた。

この状態になるまで、何度も焦らされ、焦らされ、それこそのたうち回って、オーランドに中止を訴えていたショーンは、過ぎる快感に対する体の火照りと、疲れに、意識を失いそうになっていた。

いっそ、気を失った方が楽かもしれない。

荒い息をつきながら、ショーンはぼんやりと考えていた。

もう、オーランドに悪態をつくのにも疲れた。

許しを請うのにも抵抗がなくなった。

せがむことだって、出来るようになった。

「ねぇ、ショーン、ここにコップ入れたら、中の色がよく見えるかなぁ」

「…何を考えている…」

明日、腰がたつのだろうかと、不安がそろりと心に忍び寄っていたところに、オーランドがもっと恐ろしい不安を投げかける。

全くオーランドの思いつくことは、とんでもなく、信じられない。

「え?だって、コップ入れると、中、すごく見えるじゃん。やったことない?」

ぐっと指の付け根まで入れ、オーランドが中を抉る。

すっかり慣らされたそこは、指をくわえ込み、心地よさを味わう。もっと何度も出し入れして欲しいような気持ちにすらなる。

だが、オーランドの要求は受け入れられない。

「…絶対、ダメだ。…したら絶交する」

情けないほど上がった息の合間に、ショーンは、今日、何度目か分からない拒否の言葉を突きつけた。

こればかりは、どう考えても無理だ。

オーランドは笑うばかりで、ショーンを指で嬲ることはやめず、どのくらい言葉が届いたのかわからない。

また、不安がよぎる。

オーランドは、最高のおもちゃ箱のように、何が飛び出すかわからない。そこが好ましくもあり、恐ろしい。

「大丈夫。ただ、どの位、ひらくのかぁって思っただけじゃん。心配しないで、俺だってショーンに絶交されたくない」

オーランドは、むずむずと太腿で尻の間を行き来する腕をはさみながらも、拒否を忘れないショーンに苦笑した。

ゆっくり内部で指を回す。

オーランドだって、ショーンにそんなことをするのが無理なことなど、十分に承知している。ただ、また困らせてみたくなっただけなのだ。

この快感に大分慣れて、他事を考える余裕が出来てきたらしいショーンに、もう一度注目してもらいたかっただけだ。

ショーンとしては、もう終わりにしたいだろうが、オーランドのもくろみでは、もう少し付き合ってもらわなければならなかったから、ショーンに余所見をしていて欲しくない。オーランドは、もう少し深く、ショーンを感じたい。

「ねぇ、ショーン。じゃぁ、コップより、もう少し小さいものなら平気?」

「絶対、無理」

ショーンは、笑いを含んだオーランドの提案に、即座に否定を返した。この質問をある程度予想していた。

オーランドが、必要以上に中を嬲りつづけるうちに、なんとなく彼の欲望を察することは出来ていた。だが、それと受け入れることは、違う。

「これも、絶交?」

そういって、オーランドは、コップよりは、たしかに、少し直径が短いのかもしれないが、その分、長さのあるものを、ショーンへと擦りつけた。

ここまで長いこと、ある意味紳士的に振舞ってきたオーランドとしては、この提案を取り下げる気はないだろう。

ショーンの顔が引きつる。

勿論、オーランドは、このお願いをショーンに受け入れてもらうつもりだった。そのための準備だって、十分に行った。

今までの、人生の中で一番熱心にしたと胸を張ってもいい。

まぁ、とても楽しいことだったから、夢中になっていたら、そうなっていたということもあるけれども。

これだけ努力を惜しまなかったのだから、ショーンにも譲歩の姿勢をみせて欲しかった。

はっきり言えば、突っ込ませてほしい。

今までの女の子たちのように、して欲しいなんて言ってくれなんていわない。

もう、自分からお願いしてでもなんでもいい。

ショーンの言うことを、なんでもきくから、中に入れてほしい。

ベットの上を、ショーンがずり上ろうとする。

勿論、オーランドは逃がさない。

「ショーン、もう大丈夫だと思わない?」

「思わない。全然、全く思わない」

「そうかな?きっと気持ちいいと思うけど」

「俺は、全く思わない!」

ショーンは、強くオーランドを拒否した。

ショーンは、自分の体が、オーランドを受け容れることが、可能だということは分かっていた。彼の指を3本くわえ込んでよがっていたのは、自分だ。

だが、もう、これ以上何もかも許してしまっては、ショーンの中で取り返しがつかない。

ショーンは、オーランドの気持ちだって、まだ納得して受け入れたわけではないのだ。

それなのに、こんななし崩しにセックスしてしまったら!

自分の中の折り合いをつけることが出来ずに、狡いのを承知でショーンは逃げをうった。

 

身を捩り、体を遠ざけようとするショーンを、オーランドは、押さえつけたり、そういった行為で留めようとはしなかった。

ただ、ねだるような目で、ショーンをみつめた。

「どうしてもだめなのかなぁ?」

悲しそうなため息をつき、

「絶交する?」

ショーンはベットの端まで逃げ、そこで身を起こすと、激しく頭をかきむしった。

オーランドのねだる目が、ショーンを責める。

ショーンにだってわかる。ここまで奉仕させた女が本番をいやがったら、ショーンだってきれる。

若い頃ならなおさらだ。

オーランドはよく我慢している。

「うー」

唸るショーンの側までにじりより、足の先から次第に上へと撫で上げながら、オーランドは礼儀正しくショーンにお願いする。

「だめ?」

「…」

ここまで蕩かす努力をしたくせに、言葉でねだるだけで、腕力に訴えたり、そういう暴力行為にでないオーランドに、ショーンは、正直、頭が下がる。

ショーンは、しばらく、しかし腕力よりなにより最強の武器だろう、オーランドの甘えた瞳を睨んだあと、

「これで許してくれ」

言い捨て、身をかがめると、オーランドのバスローブに顔を突っ込んだ。

かなり勇気の要る行動だった。

過去にしたことすらない行為だ。

ショーンにとって最大限の譲歩だった。

 

いきなり、熱く湿った感触が、オーランドを包み込む。ショーンは、オーランドのものを口の奥深くに、くわえ込んだ。

しかし、残念なことに、ショーンには、オーランドほどの才能がなかった。オーランドは、何度も神様に祈りたくなるような恐い目にあわされた。

幾度も、オーランドの口から、ストップを求める声がでる。

しかし、ゆっくりとだが、ショーンもこつを掴んできて、オーランドが痛みのあまり、慌てて止める必要がなくなった。それをいいことに、こっそりオーランドは、ショーンの後ろへと手を伸ばす。

「いてっ」

手が届いて、ほんの少し中へ入れると、驚いたショーンが、オーランドのものに歯をたてた。わざとではなかったらしく、オーランドが痛みに声を上げると、謝罪するように、何度も歯のあたった部分を舐める。

ショーンの舌は、心の優しい部分と同じように、心地いい感触だ。

「ショーン、ありがとう」

自分の安全の為、伸ばしていた手を引き、オーランドは、十分な誠意と努力をみせるショーンに、感謝を伝えた。

ショーンの態度のほとんど全てを、オーランドは満足して受け入れていた。

ショーンの体の奥深い部分を、鍛錬された自分のもので、気持ちよくしてやることが、できなかったのは残念だったが、ショーンがこの行為を、愛情深く行っていることは理解している。

無茶な要求をした、まぁ、オーランドにとっては、正直に愛情を告白したにすぎないが、それを受け止め、ここまでの譲歩を見せてくれたショーンには、いくら感謝しても足りない。オーランドは、誰にもきかせたことがないような甘い声で、感謝をのべ、努力を続ける頭を撫ぜた。

髪をなで、優しい声を出すオーランドに、ショーンは、ほっとした。自分の技術があまりにもぎこちなく、オーランドに満足を与えるのに程遠いことを自覚していたので、イきそうにないオーランドに、軽いパニック状態に陥っていたのだ。自分のやり方でよかったのだと、自信を持ったショーンは、だるくなる顎と戦いながらであったが、上目遣いに、オーランドを見て、くしゃりと照れたような笑顔を見せた。

オーランドのものを口に含んだまま笑ったのだ。

残念なことに、オーランドは、ショーンのその顔にとんでもなくキてしまった。

まったく、残念なことだが、ショーンの誠意はすっかり裏切られることになってしまった。

「ちょっ…なん?おい、オーリィ」

オーランドは、強引にショーンの口から自分のものを抜きだして、そのままショーンの足を掴んでひっくり返すと、自分の腰の脇へ抱かえ込んだ。

「おまえっ、おい、オーリィ!」

本当に、本当に残念なことだが、オーランドは、ショーンのHな顔にすっかりやられていて、ショーンの言葉など全く耳に届かなかった。

ショーンも忘れてしまっていたが、どれ程、性技に長けていようが、オーランドは若かったのだ。これまでよく我慢したと誉めてやってもいいほど、若い年齢だったのだ。がっついていて当然で、ゆっくり、じっくりなんていうのは、彼の倍ほども生きたショーンにだけ通用する言葉だ。

あまりの早業に、抵抗することも適わなかったショーンは、呆然とホールドされた体勢のままオーランドを見上げる。

オーランドは、すこし眉を寄せて、困ったような顔をしながら、ショーンの中へねじ込もうした。

きつい入り口は、オーランドの侵入を阻む。

そのきつく熱い感触は、オーランドに最高の気分を味あわせる。

保たなかった。付近へとふちまけることで、終わりを迎えてしまった。

勿論、この間は、とても短く、ショーンが抗議を申し立てる間もありはしなかった。

「…はぁ」

何でこんな失敗を!という声が、心の中でオーランド自身を責め立てはしたが、恐ろしく気持ちの良い終わりを迎えたのも事実で、オーランドは、おおむね満足のため息を漏らした。

早い鼓動を恥ともせず、抱きしめてくるオーランドの体の下で、ショーンは呆れた思いで、彼がため息を付くのを聞いていた。

「ごめん。我慢できなかった」

オーランドがすこし恥ずかしそうにいうのを、

「何に対してごめんなんだ!」

抱かえ込まれた足を動かし、オーランドに蹴りを入れる。

「そんな、怒らないでよ。ねっ、ショーン」

オーランドは、ショーンの怒りに取り合わず、ショーンを汚した自分の精液を指につけると、そのまま、ショーンの中へと塗り込んでいく。

「ばっか、お前っ、指、ゴム」

とっくにゴムなんか外れてしまっているオーランドのナマの指が、ショーンの中へと注ぎ込めなかったものを押し込んでいく。そして、深くまで、それを含ませるために、指で何度も往復する。

「…んっ。…オーリィ。オーリィ、」

中で快感を味わうことを覚えたショーンは、遠慮の無いオーランドの指使いに、すぐさま頂点へと押し上げられる。

「…ばっ…か…野…郎」

ショーンは、悪態をつきながら、頂点を極めた。

 

息が収まる頃、ショーンは、本当に居心地の悪い思いで、ベットに横たわっていた。

ショーンは、シャワーを浴びることを口実に、姿をくらまそうとしていたのだが、オーランドが、親切めかして、ベットから出さなかったのだ。

オーランドは、鼻歌まじりに機嫌よく、二人分の精液をティッシュで拭っていく。

「ねぇ、すっごい量だと思わない?ショーンも良かったんだ」

ショーンは、答えない。

「ショーンったら、腰つき出しちゃってさ、後ろいじられんの病みつきになっちゃった?」

ショーンの眉間が寄せられる。

「ねぇ、指なんかより、ずっといいの味わいたくなったでしょ?」

「味わいたくとも保たないんじゃ、どうしようもないだろ」

ショーンの意地の悪い言い草に、今度はオーランドの眉間に皺が寄った。

「やっぱり、ショーンは俺の大きいので突き刺して欲しかったの?」

「…」

「ごめんね。指なんかじゃ、物足りなかったんだ。もっと太いのでかき回して欲しかった?」

「その質問癖は、即刻直せ!そうじゃなきゃ、今後、二度とお前と話なんかしない」

ショーンは、自分がベットから立ち去るのではなく、オーランドをベットから蹴り落とした。ビックリしたように尻餅をついて見上げる顔を笑ってやりたかったが、急激に動いたことによって襲ってきた、腰の重苦しさにうめきが漏れる。

「…ふう」

ショーンは、甘ったれた黒い瞳をみつめながら、ため息をついた。

手を伸ばして、オーランドのくしゃくしゃになった髪を撫でると、軽くひとつ叩く。

「本当に、俺が好きなのか?」

オーランドは、躊躇いもせず頷く。

ショーンは苦笑した。

「じゃぁ、こっちは環境の変化に弱い、年寄りなんだ。すこしは加減して、ゆっくり近づいてくれ」

オーランドは、驚いたような顔をしていたが、次第にとろけるような笑顔をみせた。

「わかってるのか、ゆっくりだぞ。オーケー?」

「わかってる。でも、きっとすぐだと思うけど」

自信あり気なオーランドのいいように、ショーンは、もう一つ柔らかい髪の頭を叩いてやった。

 

                                                              END

 

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