シンデレラ
あるところに、ショーンという娘がいました。
大層、美しい娘でしたが、父親が再婚したため、毎日意地悪をされながら暮らしていました。
ほら、今日も、姉2人が、ショーンを呼んでいます。
「ショーン!早く、ここの掃除をしなさいって言ってるでしょう?」
「ショーン、お皿は洗ったの?お昼なんてとっくに済んだわ。もうすぐ、夜になってしまうわよ!」
ショーンの義理の姉である、イライジャと、オーランドがにやにやと笑いながら、ショーンに意地悪をします。
ショーンは、姉に呼ばれて、走りだしました。
短いスカートから、この頃、少し太目になったまっすぐな足が、零れています。
「ほら、ここを拭きなさい。あなたのお掃除は、いい加減だから、全然綺麗になってないわよ」
「ほんとに、あなたは、いい加減なんだから!」
ショーンの体のラインを楽しむために、薄っぺらな短いワンピースしか与えていない姉たちは、ショーンが床を拭くために、屈みこむのを目を皿のようにして、見つめています。
ショーンは、短いスカートの裾が、ほとんどかわいいお尻を隠す役割を果たしていないというのに、四つん這いになって、姉たちの前で、雑巾をかけます。
実際、大雑把なショーンの掃除の仕方は、四角い部屋を丸く掃除するというものでしたから、姉たちの言葉は嘘ではありませんでした。
そして、そんなショーンの家事のフォローをするのに忙しく、義理の母親であるジョン・リスは、姉たちが、セクハラな意地悪を、毎日、末娘にしているということに気付いていませんでした。
「お皿は洗ったの?ちゃんと、汚れを落すのよ。この前みたいに、皿の裏を洗わないなんて、そんな手抜きは許さないんだからね」
「そうよ。ちゃんと、コップもごしごし洗ってよ。中に、汚れが残ってるのは、もう嫌よ」
そんなに言うのなら、自分でやればいいのに…と、思っているショーンは、「はーい。お姉さま」と、返しながらも、姉たちの目が、ショーンの手先から離れると、すぐさま手を抜きます。
もともとの性格が大雑把なのです。
部屋が汚れていても、死にはしないと、思っていますし、皿は、次使う時に、使う分だけ洗えばいいと思っています。
オーランドは、ショーンが洗い終わったコップを取り上げ、落ちきっていない洗剤に眉を顰めました。
コップのなかには、1センチほど、泡が残っています。
「私たちが、死んじゃえばいいと思ってる?」
いくらなんでも、もう少し、丁寧にすすいで欲しいと思ったオーランドは、困ったような照れ笑いを浮かべる、かわらいらしい義妹を、じっとみました。
「そんな、お姉さま」
ショーンは、誤魔化すように、にこにこと笑いながら、オーランドから、コップを取り返そうとしました。
実に、実のない笑い方です。
でも、そんな笑顔でも、とっても、キュートなのです。
水に濡れたショーンの手がすべり、コップは、たらいに飛び込みました。
大袈裟に、水が飛跳ね、ショーンの薄いワンピースは水浸しです。
べったりと身体に張り付き、小さく膨らんでいる乳首も、ほんのすこし、せり出している丸いおなかも、臍の窪みもはっきりと見えました。
オーランドは、思わず、口笛を吹きます。
イライジャが、親指を立て、力強く頷きます。
ショーンは、水浸しになったワンピースが気持ち悪いのか、短い裾を、さらに持ち上げ、困った顔をしています。
パンツが見えそうです。
いえ…あのワンピースのラインの具合からすると、履いてないかもしれません…。
お姉さんたちは、いつまでも、ショーンと遊んでいたかったのですが、今日は、どうしても出かけなければいけませんでした。
近所づきあいという奴です。
お城の王子さまが、嫁を探すというので、国中の娘たちを舞踏会に招待したのです。
ショーンに夢中のふたりは、そんなものには、ちっとも興味はないのですが、義理堅い性質の母親の顔を立ててやるためには、出かけないわけにはいきませんでした。
そんなことをしたら、母親は、近所から、仲間はずれにされて泣いてしまいます。
母親のことも好きな2人は、仕方なく、ショーンに言いつけ、舞踏会に出かける準備をしていました。
勿論、ショーンには、行かせません。
もし、ショーンが、そんなところに行って、王子の目にでも留まってしまったら、困ってしまいます。
王子は、ヴィゴ・モーテンセンというたらしなのです。
かわいいショーンをそんな猛獣にくれてやるわけにはいきません。
そして、ちょっと、能天気なショーンは、王子に言い寄られれば、ぽうっと、なってすぐ、口説かれてしまうにちがいないのです。
そんなことになったら、あの手の早い王子のこと、すぐベッドまで持ち込まれてしまいます。
2人の姉は、ショーンの防波堤になる心意気で、舞踏会に出かけて行きました。
全く役に立たない手伝いをしていたショーンは、姉たちが出かけて行き、口うるさいのがいなくなると、すぐさま、居間のソファーに転がりました。
スポーツニュースを見るのです。
姉たちは、音楽だ、映画だと、ショーンとは、趣味が違うので、ショーンにじっくりとテレビを見させてくれないのです。
魔法使いのイアンおばあさんは、ものすごく短いスカートで、ソファーにだらしなく寝転がるショーンを見て、思わず眉を顰めました。
若い女の子のする格好ではありません。
その上、口まで開いて眠りこけているのです。
ここには、意地悪な姉たちに、こき使われている可愛そうで、真面目な娘がいると聞いてやって来たというのに、家の中は、めちゃくちゃ、テレビはつきっぱなし、テーブルの上には、酒瓶が転がっています。
「これ、ショーン」
魔法使いは、ショーンを杖の先でつつきました。
ビックリしたショーンが、飛び起きます。
まず、テレビの画面を見、スポーツニュースが終わっているのに、盛大に舌打ちします。
それから、やっと、側に立つ人影に気付いて、ぽかんと大きな魔法使いを見上げました。
「…あんた、誰?」
「口を閉じなさい。若い娘がみっともない」
美しい金の髪も、整った顔立ちも、短いスカートから見える白い足も、噂とおり、三国一の美しい娘には違いないのですが、魔法使いは、ちっとも不幸そうには見えないショーンのふっくらとした頬のラインに、思わず首を傾げました。
「これ、娘。お前がショーンか?」
「そうだけど…誰?」
ショーンは、とんでもなく短いスカートを履いているにも関わらず、大きく足を広げて、その間に手をついて魔法使いを見上げます。
無防備すぎるその姿は、すこし頭が足りないのかもしれないと、魔法使いに優しい心をわきあがらせます。
けれども、ショーンは、自分の姿にちっとも危機感を抱いていませんでした。
洋服なんて、なんでもいいと思っているショーンは、姉たちがどういう意図でこのワンピースをショーンに与えたのかなんて、ちっと考え様ともしないのです。
それよりも、姉たちの目を盗んで、サッカーの中継をみる方が重要です。
この服を着ているときは、いつもより姉たちがショーンを居間のソファーに座らせたがるので、結構ショーンは好きなのです。
魔法使いは、ショーンのスカートから零れる足に、目を反らしながら、声をかけました。
魔法使いも、本当のことを言えば、もう少し、恥じらいのある細身の若木のようなタイプの方が好みだったからです。
「私は、魔法使いだ。今日の舞踏会に行けない可愛そうな娘がいると聞いたから、わざわざやってきたのだよ」
「へぇー」
ショーンは、他人事のような口ぶりで答えました。
手は、テーブルに乗っている新聞を引き寄せています。
一人でテレビを占領できる今、見逃してしまったサッカーの試合結果を他の番組でみることは出来ないかと探しているのです。
「ショーン、舞踏会に行きたいのだろう?」
「いや、べつに?それより、今日の試合結果を知らないか?」
魔法使いの思惑など知らず、ショーンは、リモコンを手に、ザッピング中です。
「……ショーン、舞踏会に行きたいだろう?」
ここまで、出かけてきて、手ぶらで帰るのも馬鹿馬鹿しい魔法使いは、脅すような口調で、ショーンを追い詰めました。
ショーンは、ぷるぷると首を横に振りました。
ショーンは、ちっとも、舞踏会になど、興味がなかったのです。
それよりも、試合結果です。
今日の勝敗は、この上半期において、結構、重要なのです。
魔法使いは、負けません。
「ショーン、お城に行って、王子様の目にとまれば、テレビの中継どころではなく、ショーン杯と、名を打ったサッカーの大会を開く事だって出来るのだぞ」
ショーンの目が輝きます。
「それどころか、最高のサッカー場に、好きな選手を集めたチーム。なんでもお前の思うとおりだ。お前なら大丈夫。その少しぽっちゃりした体型。きつそうな目。きれいなブロンド。どれも、王子好みだ。王妃になって、思い通りに暮らしてみないか」
ショーンは、すぐさま頷きました。
魔法使いは、魔法をかけます。
ショーンの気が変わらないうちに、素早くです。
この魔法使い、現れるのは遅いですが、仕事は速いです。
けれど、なかなか、衣装が合いません。
今まで、魔法使いが用意してきた可愛らしい女の子向けのぴらぴらしたドレスが、どれもショーンに、似合わないのです。
「これなら、どうだ!」
自分好みの衣装がどれも似合わず、もう、やけくそになっていた魔法使いは、ぐっと背中のあいたセクシーなドレスをショーンに魔法で出しました。
背中のあき具合といったら、尻の割れ目が見えるほどです。
しかし、それが、一番ショーンに似合いました。
張り出した胸を僅かに隠す、ネックドレスは、ショーンの丸みのある肩がすんなりと見えて、前からみても、なかなかいけています。
「行って来い。城には、おいしい酒もたんまりあるからな」
ソファーの足元に隠すように置いてあった、空の酒瓶を見つけ、魔法使いは生温い笑顔で、ショーンを送り出しました。
お城についたショーンは、当初の目的を忘れ、テーブルの上にあった、ワインをがぶ飲みしていました。
その豪快なのみっぷりに、人目が集まり、とうとう王子の目に止まりました。
王子は、すかさず近寄ります。
するするするっと、近寄って、最初からショーンの腰に手をかけます。
早業過ぎて、ショーンの美貌にくらりと来ていて他の誰も声をかける隙がありません。
美貌が災いし、男たちに取り囲まれてしまっていた姉たちが止める隙もありません。
ヴィゴ王子は、甘い声で囁きます。
「美しい方。あなたは、どなたですか?」
すっかり上等のワインで酔っ払っているショーンは、頬を染めながら、振り返ります。
腰を抱かれているというのに、警戒心はゼロです。
「おいしいワインですね。あなたも、いかがですか」
人の話をちっとも聞いていないショーンは、王子に、自分が口をつけていたグラスワインを差し出します。
ヴィゴは、にいっと、口元を持ち上げると、ショーンの手の上から、ワイングラスを掴み、そのまま中身を飲み干しました。
「こんな美人に飲ませてもらうと、より一層ワインが美味い」
「そうだろう?このワインは、イケルんだよ」
すっかり幸せな酔っ払いのショーンは、にこにこ笑いながら、ヴィゴに頷きます。
ヴィゴの手が、腰から少しばかり下がり、酔いのため、うっすらと赤くなっている尻に触れているというのに、気付きもしません。
ヴィゴは、ショーンの盛り上がった尻の肉の感触に、すっかり満足していました。
けれども、それ以上に、楽しそうに笑う眩しい笑顔に気持ちが惹かれています。
「踊りませんか?美しい方」
ヴィゴは、王子として、最高級の礼儀をもって、ショーンを誘いました。
膝を尽き、頭を垂れ、ショーンの指先に口付けました。
「…踊るのは、嫌だ…飲んでいるほうがいいな」
ショーンは、全く礼儀知らずでした。
ヴィゴはそれでも、怒りません。
それどころか、立ち上がると、ショーンの腰を抱き込んで、耳元で囁きました。
「では、酒好きのお嬢さん。俺の部屋に来ませんか?もっと、おいしい酒をご馳走しよう。ここにあるのなんかより、もっと、もっと、美味い奴だ」
ショーンは、ぐいっとヴィゴに腰を押し付けられ、何か心に引っかかるものがありましたが、美味い酒の一言で、コロリと騙されてしまいました。
勿論、ショーンがご馳走になったのは、酒だけではすみません。
そこの部分、知りたいですか?
「ショーン。あなたは、本当に可愛い人だ。酔いで染まった、この桜色の耳。食べてしまいたい位だ」
本当に気前良く飛び切り上等の酒を振舞われたショーンは、上機嫌で、王子のふかふかのベッドでころりと横になっています。
王子が、ふざけるような軽い調子で、耳の口付けを与えても、くすくす笑っています。
「このドレス。とても、似合うね。綺麗な背中が丸見えだ。でも、足も見てみたいな。きっと、雪みたいに真っ白なんだろう?」
ショーンは、耳の中が痒くなりそうな王子の言葉に、げらげら自分から、ドレスの裾を捲って見せます。
普段、もっと、短いワンピースを着せられているショーンにとって、ロングドレスは、面倒なのです。
酔っ払って、暑くなっていることもあって、ケチることもなく、太腿まで捲ってしまいます。
「綺麗だ。ショーン…」
ヴィゴは、すかさず、ショーンの太腿を撫で始めました。
ショーンの太腿は、肉感的で、しっとりとヴィゴの手に張り付きます。
ヴィゴが慎重に、ショーンの表情を確かめながら、手を上へと動かしていきます。
けれど、そこまで、慎重になる必要は、なかったと思います。
ショーンは、すっかり酔っ払って、幸せになっているのです。
ヴィゴに触れられ、嬉しそうに、うっとりと目を閉じてしまっています。
「……ショーン!」
ヴィゴは、ドレスの形状から、そうではないかと、思っていたのですが、ショーンの脚の付け根まで手を進め、ショーンが下着をつけていないのに、感激して、思わず声を上げました。
魔法使いのイアンがわざとそうしたのではありません。
もとから、そうだったのです。
あの短いワンピースのときも、ショーンは、ノーパンだったのです。
だから、このドレスを着て、下着が見えるだのなんだの、魔法使いは気を使うのを忘れたのです。
まぁ、結果オーライです。
ヴィゴの目は、すっかり真剣になっています。
「素敵だ。ショーン」
ショーンの体中にキスの雨を降らせた王子は、暑がりの姫君から、すっかりドレスを脱がせてしまい、真っ白な身体を隅々まで堪能しました。
ショーンの丸みのある尻が特にお気に入りです。
その部分を掴んで、何度も、何度も、キスを繰り返します。
酔いが回って、うとうとしかけているショーンは、擽ったい感触に、ふわふわと幸せそうに笑いながら、身体を捩って、ヴィゴの頭を撫でたりしています。
ヴィゴは、ショーンをひっくり返し、大きく足を広げさせながら、抱きしめ、耳元で甘く囁きました。
「俺は、ショーンのことが好きになったよ。ショーンは?」
ショーンがすっかり酔っ払っているのは、誰の目にも明らかでした。
ヴィゴの言葉に嬉しそうに笑いながら、首を竦めて照れています。
「俺も、あんたのことが気に入ったよ。気前のいい奴は好きなんだ。おいしい酒を飲ませてくれる奴は大好きだ」
酒飲みは、概して、いい加減なことを言います。
ショーンもその一人です。
この状態で、セックスしたとして、果たしてそれが、合意の上の行為だったと言えるのかどうか、ヴィゴにも自信が持てませんでした。
しかし、薄く色づいたショーンは、とても、色っぽかったのです。
身体をなで回すと漏らす甘い声は、ヴィゴを誘惑して止まなかったのです。
ヴィゴは、とても優しく、ショーンに口付けながら、ショーンの腰を抱きなおしました。
「ショーン、この国中の酒を飲み干してくれて構わない。酒だけじゃなく、なんでもあんたに捧げよう。ショーン、あんたが、好きだ。俺のものになってくれ」
ヴィゴは、レイプだという証拠を残さぬよう、丁寧に、ショーンに押し入りました。
酒はすばらしいです。
すっかりリラックスしているショーンの体は、多少の無理なようではありますが、それでも、なんとかヴィゴを受け入れていきます。
ヴィゴが上手かったと、いうこともあります。
それでも、それだけの技術を習得するため、散々食い散らしてきたヴィゴを持ってしても、ショーンの体は、ヴィゴにため息を付かせました。
ちょうどよく、心地よく、ショーンは、ヴィゴを締め付けてきます。
尻の肉が、むっちりとついていて、触り心地も抜群です。
「パーフェクトだ」
ヴィゴは、ショーンの脚をがっちりと抱き込み、ショーンの無意識のサービスに応えようと、精々努力しました。
ショーンは、すっかりヴィゴに気持ちよくされて、いい感じに喘いでいます。
「今、何時だ!?」
すっかり、満足しあい、うっとりと、キスなどを繰り返していたヴィゴと、ショーンだったのですが、ショーンが、いきなり飛び起きました。
「え?もうすぐ12時…」
飛び起きた反動でうめいているショーンの腰を摩りながら、ヴィゴは目を多くして、ショーンに答えを返しました。
すると、ショーンがベッドから飛び降ります。
腰を曲げた情けない格好ですが、急いで、ドレスを身に纏います。
「ごめん。帰らないといけないんだ…悪い、急いでるから、これで…またな、ヴィゴ!」
ショーンは、上手くドレスが着れなくて、尻が半分見えていました。
ヴィゴが残したキスマークも丸見えです。
王子として、まさか、裸で飛び出すわけにも行かず、急いで、服を着たヴィゴは、どたどたと走るショーンの後を追いました。
ショーンは、服が脱げかけ、髪も乱れ、襲ってくれといわんばかりの色っぽさで、城の大階段を駆け下りています。
「ショーン!」
「悪い!今度な!また、今度!」
あまりに慌てているので、ショーンのガラスの靴が、片方脱げました。
しかし、ショーンには構っている暇はありません。
振り向きもせず、走り降ります。
なぜなら、ショーンは、12時からのスポーツの特集を見逃すわけにはいかなかったのです。
ヴィゴ王子は、ショーンの具合の良さ、いえ、美しさを忘れることができず、あの晩の娘を后に迎えたいと、国中を探し回ることにしました。
またな。と、言い残したにも関わらず、ショーンが姿を現さなかったからです。
ショーンといえば、あの晩はすっかり酔っ払っており、ところどこと、と、言えれば良かったのですが、殆ど、全ての記憶が抜け落ちておりました。
酒瓶をして、5本あければ、そういうこともあるでしょう。
しかし、上等な酒だったせいか、酷い二日酔いに悩まされることもなく、次の日も、短いワンピースで、2人の姉にセクハラをされていました。
腰が気持ちいい感じに重だるかったのですが、ショーンには思い当たる節もありません。
何日かして、ショーンの家にも、王子と、その一行がやってきました。
手には、ショーンの履いていた、大きなガラスの靴を持っています。
「これが足に合えば、お后になれるのですか?」
ヴィゴ王子の甘ったるい雰囲気を苦手とするイライジャは、全く自分に合いそうにない靴の大きさにほっとしていました。
「そんな人何人でもいるでしょう?」
もしかしたら、合ってしまうかもしれないオーランドは、眉を顰めています。
「ショーン!!本当に、ちゃんと皺を伸ばしてから、干してくれって、いつも言っているだろう?」
洗濯ジワを伸ばしもせず、干してしまうショーンに、裏庭から、ジョン・リスが大きな声を上げました。
ショーンは、台所で、つまみ食いをしていたのですが、母親の困りきった声に、おお慌てて飛び出して行きます。
「ショーン!!」
ガラスの靴なんて、ただのポーズで、あのキュートな身体をどんな格好であろうと見分けてみせると、自信のあった王子は、ワンピースの裾を翻すショーンに飛び付かんばかりに駆け出しました。
事実、ショーンの前に強引に割り込み、がばっと、抱きしめます。
「あ…えっと…ヴィゴ…だっけ?えっと…どこで会ったんだっけ?」
あの酔っ払い方をしておいて、ショーンは、上出来にもヴィゴの名前を思い出すことが出来たのですが、ヴィゴはそれを許しませんでした。
「スイート。俺を忘れたなんて、酷い。あんなに愛しあったじゃないか」
熱いキス。
「いいよ。君が忘れても、俺が覚えている」
また、キス。
「ああ、あの晩の君の可愛らしい声が忘れられない」
お尻にタッチ。
「君の素敵な身体が忘れられない」
腰を押し付け、甘く、耳に囁く。
ショーンは、ヴィゴの腕の中で、ヴィゴに対して、目を吊り上げている2人の姉を振り返りました。
「この人、誰?」
いい感じの記憶として、なんとなく、ヴィゴのことを覚えていたショーンでしたが、さっぱりヴィゴと、どこで会ったのかを思い出すことは出来ませんでした。
姉なら知っているかと思ったのです。
姉2人は、情報通です。
ショーンは、やたらとヴィゴが金の掛かっていそうな衣装を着ていたのが、不思議でした。
普段から、こんな服を着ている人は、この町にいません。
ヴィゴは、口を捻じ曲げました。
大きなため息を付きます。
でも、ショーンを抱きしめたまま、放しません。
「王子様です」
ヴィゴに付いてきた、大臣のバーナード・ヒルが、おかしそうに笑いながら、答えました。
「ショーン、俺と結婚して欲しい。君の望むものは何でも捧げるから」
ヴィゴは、ショーンの短いスカートの裾が見えてしまうくらい、深く膝をつき、ショーンを見上げました。
これほど、深く王子が頭を垂れることなど、ありません。
最高級の待遇です。
けれども、やはり、ショーンは、礼儀知らずでした。
「…サッカー場でも?」
この急展開を、姉2人が唖然と見守る中、ショーンは、ためらいがちでしたが、はっきりと主張しました。
おずおずとはしていますが、期待に目が輝いています。
「…はぁ?」
「サッカー場に、サッカーチーム。それから、年に2回の大会。これだけは、譲れないんだが、ヴィゴは、それを叶えてくれるか?」
ヴィゴは、驚きが隠せませんでした。
王子に望まれて、条件をつけてくる娘などいるはずもないと思っていたのでした。
そうでなくとも、自分に口説かれて、嫌がる娘がいることも信じられません。
しかし、目の前にある、ショーンの生足の誘惑は強烈でした。
「いいとも。君の望むままに。それで、君が得られるのなら、そんなもの、安いものだ」
ヴィゴは、自分の魅力をほんの少し疑いながら、それでも、自慢の笑顔を浮かべました。
ショーンが太陽のように笑います。
「ヴィゴ!大好きだ!!」
殆ど、ヴィゴのことは忘れてしまっているのですが、それでも、ヴィゴの顔をみると幸せな気持ちが湧いてくるショーンは、ヴィゴに抱きつき、宣言しました。
「大会は、ショーン杯と、名付けてくれ。そうしたら、あんたの嫁になる!」
こうして、ショーンと、ヴィゴは、末永く幸せにくらしました。
ヴィゴの国で、サッカーが国技に認定されたことは、言うまでもないでしょう。
END
Back
馬鹿だと、言ってください。(泣)
おねーちゃんをはべらせ、素敵にポーズを決めたらしい酒飲みショーンの話を噛み締めていたら、これが、生まれた。
書いてて、物凄く楽しかった。
出来たら、他の童話でも、やりたい。(笑)