喜劇王 3

 

カーテンで灼熱の太陽を遮ったトレーラーの中は、完全な密室だった。

ドアの鍵は勿論のこと、窓一つだって開いていなかった。

つけているテレビの音に、中の人間には外の音さえ聞こえない。

そんな閉塞された空間でも、カーテンの生地を通り抜ける太陽の光が、まだ、薄ぼんやりと部屋の中を映し出した。

その曖昧さが嫌で、ブラッドは、蛍光灯の人工的な光を煌々と付けた。

ぎらつく太陽は、これで、死滅したも同然。

ここにいるのはブラッドとあと一人のみ。

ブラッドはここへの立ち入りを誰にも許していなかった。

役作りのためもある。

本当に一人になりたかったということもある。

しかし、本当は、ブラッドがここに秘密を飼っていたからだ。

 

「こっちに」

ブラッドの足元に、Tシャツだけを身に付けたショーンが蹲った。

よく鍛えられた体が、毛足の短いカーペットに膝をつく。

ここでの約束は、撮影に差し支える真似はしないこと。

そして、セックスしないこと。

この基本ルールを守りさえすれば、あとは、ブラッドの、思うままだった。

ブラッドに脅されているショーンは決して逆らわない。

ショーンは、いい大人がする格好として、我慢できないに違いないだろうに、Tシャツ一枚だけを着て、ブラッドの足元まで、這ってきた。

下半身を隠す着衣は許されていない。

蛍光灯の白い光の中、ペニスと尻を晒して、ショーンが床を這う。

最初に、ブラッドが、ショーンに要求した、ブラッドの視線より高くならないことという条件を守るために、ショーンの移動は、殆ど二本足では行われない。

動物のように床を4本足で這う。

ここで行われることの、ほぼ、全てが、ショーンを辱めることが目的だから、ブラッドは着衣も、基本的には許さなかった。

ただ、裸にしてしまうよりも、上だけを着せておいた方が、よほどショーンが嫌がるのに気付いて、ブラッドは、この頃、全て脱ぐようには指示しなかった。

ブラッドは、ソファーにもたれかかったまま、足でショーンの腹を蹴った。

緩くだ。

壊してしまうには、ショーンは惜しく、ブラッドも、理性の残る限り、手加減を忘れることは無かった。

諦めを滲ませた目をして、ショーンはブラッドを見上げる。

「ショーン、昨日の夜はどこへ?」

ブラッドは、ショーンの体を点検するように、Tシャツを捲り上げ、自分の残した痣を確かめた。

こんな酷い身体をして、何ができるというわけでもないと思ったが、夕べはショーンと連絡が取れなかった。

それが、今日のブラッドを苛立たせていた。

その前の日に呼び出そうとしたときは、携帯の電話口で、陽気なピーター・オトゥールの声が聞こえた。

そのことに文句を言ったら、昨日からはショーンの携帯が通じなくなった。

ここへ、呼び出すために、今日は人をやった。

ショーンは、背中を這うブラッドの指先にじっと耐えながら、「飲みに行った後、ホテルの部屋に…」と答えた。

「誰と?」

不機嫌になったブラッドの声に、ショーンは、軽いため息をついた。

見上げる目が、ブラッドを軽蔑した。

「…誰とでも、関係ないだろう?」

ブラッドは、ショーンの広い背中に爪を立てた。

ショーンの背中にはそうして出来た痣が幾つも残っていた。

「もう一度、聞く。誰と行った?」

ブラッドは、ショーンに分かりやすいよう、ゆっくりと言葉を口にした。

ブラッドの爪が、ショーンの肉に埋もれ、その部分の皮膚が白くなった。

このまま抉りつづければ、また血が流れる。

ショーンは、唇を開いて、白状した。

「…エリックと」

投げやりな言い方だ。

まだ覚えない。

こんなみっともない格好をして、ブラッドの足元に蹲っているというのに、ショーンはわかっていない。

ブラッドは、もっと爪を食い込ませた。

ショーンがうめく。

「…痛い…どうして?昨日は何も約束などしていなかった。俺が、誰とどうしようと関係ないだろう!」

ショーンは、唸るように文句を言ったが、ソファーの生地を強く握り締め、ブラッドの暴力に耐えた。

額に深い皺を刻んでいた。

力を込めて目を閉じているものだから、顔が酷く歪んでいた。

最初、ブラッドがとても素敵だと思った顔がだ。

ブラッドは、爪で抉る行為を止めなかった。

ショーンは、決してブラッドの足に触ろうとせず、ソファーばかりを握り締めた。

2人の間に肉体的な接触はすくない。

あるのは、力による上下関係。

少なくともショーンは、喜んでブラッドの足元に蹲ってはいなかった。

そして、ブラッドも、ショーンがここにいることを喜びだけだとは受け取れなかった。

ブラッドは、ショーンのスタンダードな容姿を綺麗だと思った。

冷たく整った顔を、いきなり破顔して、輝くように笑う笑顔に好意を持った。

しかし、その好意を伝えた途端、馬鹿らしい理由による拒絶にあって、感情は、捩れて進化した。

ショーンが、歯を食いしばって暴力に耐える。

ブラッドは、皮膚に爪を突きたてた。

ショーンに深い傷を負わさないよう爪先は、短く切ってある。

感情の複雑さゆえに、ブラッドの行動には一貫性がない。

ショーンが、ここにいることに苛立ち、ここにいないことに激しく苛立つ。

ブラッドは、血が流れ出す前に、爪を立てるのをやめ、ショーンの背中を観察した。

背中に違和感を感じていた。

「…これは、どうした?」

肩甲骨のかさぶたの上に、薄い跡。

ブラッドは違和感の原因を突き止めた。

キスマークだ。

こんな身体にしておけば、誰にも触らせないだろうと思っていたブラッドは、ショーンのはすっぱさに呆れた。

「…ブラッドには、関係が無い」

ショーンは、次の暴力に耐えるように、身体に力を入れながら答えた。

ブラッドは、ショーンが嫌がるのを承知で、ショーンの顎を優しく撫で、顔を上へと上げさせた。

視線を合わせると、緑の目が、落ち着きなくさ迷った。

とてつもなく、腹が立った。

「…メス猫め!」

ブラッドは、ショーンの腹を蹴り、カーペットの上に転がした。

大きく足を開いて、ショーンが仰向けに倒れた。

染めた頭髪とは違う、金色のヘアーが丸見えだ。

ブラッドは、靴の先で、ショーンの股の間をすりあげた。

「ここが、淋しかったってわけだ。金髪じゃなきゃ、それでいいのか?」

ショーンが足を閉じようとした。

ブラッドは、Tシャツを捲り上げ、起き上がろうとするショーンの腹を晒して、靴をめり込ませた。

「ダメだろう?あんな愛妻家を、誘惑しちゃ」

踵がショーンの腹にめり込んでいく感触は、ブラッドを誘惑した。

このまま、思い切り蹴り入れたら、ショーンは泣いて、ブラッドに許しを請うだろうか。

ショーンは、息を止めて、腹に力を入れ、じっとブラッドを見上げた。

「どうしようが、俺の勝手だ。たまにはいい気持ちになりたくなっても不思議なことじゃない」

いつまでたっても、ショーンには、支配されるということの本質がわかっていなかった。

口の利き方をしらない。

ブラッドは、理性と戦っていた。

胸の中で数を数える。

「エリックは、楽しませてくれた?」

「あんたよりは、ずっと」

10まで数えて、自分を落ち着かせ、ブラッドは、ショーンに、ソファーへとうつ伏せになるよう命じた。

ショーンがのろのろと従う。

口の利き方はしらないが、こうした局面で力を持ったものに従うべきことは、彼の人生でも、学ぶような事態があったらしい。

Tシャツしか身に着けていない強面の俳優が、尻を晒して、ソファーの生地を固く掴む。

ブラッドは、柔らかく使い込んだ皮のベルトを手にとった。

 

ショーンのことをエリックに言ったのは、ピーター・オトゥールだった。

せっかく、近づいたショーンとの距離を、うまく繋げることが出来ずにいたエリックは、知らないうちに、撮影中のショーンを目で追うようになっていた。

ショーンは、とてもスマートに馬を駆っている。

振り返って、カメラに笑う。

しかし、甲冑に隠されたショーンの体には、痣が色づいているはずなのだ。

そのことを知っていながら、エリックは何もすることができないでいた。

エリック自身、ショーンにのめりこむことの怖さを感じていたせいもある。

あれほど上手く拒絶されたのに、まだ、おたおたとショーンにかまけようとする自分がみっともないと感じたこともある。

いや、完全に遊びだと、割り切っている相手にいつまでもそのことをちらつかせるのは、脅迫と変わりがない。

だが、何もできないでいた理由の一番は、ショーンがとても上手く立ち回って、エリックに隙を見せなかったせいだ。

ショーンは、少しだけ親しくなった友人の顔をして、エリックに笑いかける。

だが、それ以上は入り込ませない。

この切り替えのよさに、エリックはすこし、感心すらした。

ショーンの誘う笑顔は、こんな熟練さも含んでいたのだ。

確かに、こうでなければ、一晩限りの遊びで後を引く関係になってしまう。

だが、エリックには、ショーンの態度が納得できなかった。

甘えてみせたのは、エリックを気に入ったからではないのか。

笑って見せたのは、エリックに好意を持ったからではないのか。

ショーンは、何事もなかったかのように、馬上の仲間と笑いあっている。

 

「エリック、今、話をしてもいいかね?」

エリックが、習慣のように撮影の中に混じるショーンの姿を追っていると、ピーター・オトゥールが声をかけた。

彼から、話し掛けられて、断る奴がいるとは思えないのに、ピーターは、大抵そんな風に声をかけた。

決して押し付けがましくなく、けれども威厳をもって、幾つになろうとも魅力的な青い目をしばたかせる。

エリックは、慌てて椅子から腰を浮かした。

ピーターの手が、それを制する。

「ああ、いいんだ。直ぐ済む話だ。ちょっと聞いてみたかっただけなんだ」

エリックは、首を傾げてピーターを見上げた。

ピーターの白髪が、太陽にきらきらと光っていた。

ピーターは、白い顎髭を指先で撫でた。

「…エリック、あんたは、オデッセウス役のショーン・ビーンという英国人と親しいかね?」

ピーターが聞いた。

エリックは、とっさに、不躾なほどピーターを見てしまった。

ショーンから目を離せない自分の行動の不審さをエリックはよく知っていた。

だが、人から気付かれたくは無かった。

「…あまり…一度飲みに行きましたが…」

それ以上のこともあったが、エリックは、顔色にも出さなかった。

警戒心を捨てることが出来なかった。

2人で飲みに行ったというだけでも、愛妻家であるというエリックの評判をどう書き換えられるのかわからない。

噂という奴は、どこからでも立つ。

特に、悪い噂は。

ピーターが、エリックを見た。

ピーターは、頷いた。

青い目は優しかった。

「そうか。いや、いいんだ。私も彼と一度飲みに行ったんだが、なかなか楽しい奴だったから、ちょっと心配してね」

ピーターは、本当に優しくそう言った。

「エリックと親しくしていると聞いて、ちょっとショーンの話がしてみたくてね」

ピーターは穏やかに微笑んだ。

ピーターの青い目は、害意なくエリックに尋ねていた。

彼が好きかい?と。

エリックは、無駄に警戒した自分のことを恥じた。

ピーターの優しさは本物だった。

「私は、あなたと彼が飲みに行かれた翌日に、彼を誘いました。ショーンが、あなたからだと嬉しそうな顔でビールを配って歩いているのを見て、羨ましくなって。でも、何の心配なんですか?私にも聞かせてもらうことができますか?」

ピーターは、エリックを見下ろした。

「私も彼のことを気に入ってます。彼になにかあるのなら、私も一緒に心配したい」

エリックは、ぎりぎり友人の範疇で心配して見せたつもりだった。

ピーターが微笑む。

「やはり、彼は人気者のようだな。だが、ショーンは、私のことが一番好きだと言っていたぞ。悪いが、エリックは二番目が三番目だ」

「…いや、あの、俺は、多分、ベスト10にも入っていないと思うんですが、でも、私は彼を気に入ってます。もし、彼の力になれることがあるんだったら、力を惜しむつもりはない」

エリックは、ピーターに軽くいなされた振りで、口元に笑いを浮かべた。

どこまでを友情ととれるだろうかと、自分の口の利き方を検証していた。

ピーターは、頷くと、撮影現場の方へと指を差した。

「これは、どう取ったらいいのか、判断に苦しむ噂なのだがね。エリック。立ち入り禁止のブラッドのトレーラーに、ショーンが毎日のように押し掛けているという話があるんだ。役柄的に、彼だけは、アキレスの元に通ったところで何の問題もないようだが、まぁ…なんというか、やっかみもあって、ショーンは、あまり良く取られていない」

「…はぁ」

エリックの知らない話をピーターはした。

「それに、ここの所、ショーンの乗馬スタイルがおかしい。相変らずスマートには乗っているが、彼はもっと優雅に馬を駆っていたはずなのに、体の調子がよくないのかもしれない」

超大作映画に、舞い上がり気味のエリックは、残念ながら、飲みに行く前までのショーンの乗馬スタイルまで、記憶に無かった。

エリックの目に映るショーンは、とても楽々と馬を走らせ、スタイルはどことなくエレガンスだ。

「そして、これが、一番の私の心配なんだがね、私の古い友人が、ショーンがブラッドのトレーラーから出てきて、信じられないような罵詈を吐いていたのを聞いたそうだ。彼は、トラブルは、望むところではないと、言っている。かわいそうなことを言うようだが、ショーンくらいの俳優なら、まだ、変えが利く。友達なら、ショーンのトラブルを解決してやってくれないかね?」

ピーターは穏やかな目をして、エリックに笑った。

照りつける太陽の合間に、そよ風が吹きぬけたような慈悲深い微笑みだった。

エリックは、ピーターが何を言っているのか怖くなって、小さく呟いた。

それは、ショーンが隠しておきたい秘密にとても近いのではないか。

「…何を知ってらっしゃるんですか?」

「何も」

ピーターは、首を振った。

「俺は、力を惜しむつもりはありませんが、彼ともっと親しい者は他にもいます。なぜ、俺に…」

エリックは眉を顰めて、首を振った。

エリックという人間は、友人を助けるのに、力を惜しまないだろう。

だが、それ以上の感情で動く自分がいることを、エリックは人に知られたくなかった。

ショーンを目で追っているわけなど特に。

ピーターは、柔らかな表情を変えなかった。

「あんたを選んだのは、エリック、あんたが賢そうだからだよ。あんたは、いい方にも悪い方にも、バランスが良さそうだ。大事な友人を任せるなら、そういう人間の方が心配なさそうだろう?」

本当にショーンを心配するように、ピーターは、エリックに頼んだ。

ショーンの笑顔の威力だ。

あの笑顔が偉大な俳優をたらしこんだ。

たった、一度飲みに行っただけで、こうまで気に入られるのは、なかなかできるものではない。

ピーターは、見守るような目で、馬に乗るショーンを見つめていた。

柔らかなまなざしだ。

それ以上でも、それ以下でもない。

エリックを責めたりもしない。

ピーターは、前を向いたまま、エリックをからかった。

「エリック、あんたも、ショーンの笑顔のファンだろう?あの笑顔は、抗い難い魅力がある」

エリックは、頷いた。

笑顔の威力を信じてみることにした。

信じてみなかったところで、長く第一線で名を馳せてきたピーター・オトゥールの演技に適うわけがない。

そして、エリックにとって、ピーター・オトゥールに、大事な友人を任せるに足ると言われるのは、悪い気分ではなかった。

自然に口元が緩まり、ピーターと一緒になって馬上のショーンを眺めた。

エリックが見る限り、ショーンは、ひときわ優雅に馬を駆っている。

ショーンは、相変らず、魅力的に微笑んでいる。

 

ショーンは、ブラッドのトレーラーで、床に四つん這いになっていた。

足元には、ブラッドの鍛えられた足が見えていた。

ショーンは、自分が短気であることを後悔したことは、これまでだって、数え切れないほどあったが、今回の失敗は、どこまで遡って反省すればいいのか、もう、考えるのも嫌になっていた。

近いところでは、エリックとの関係を伏せたままにしなかったこと。

遠いところでは、遊び半分にショーンにこなをかけたブラッドに、金髪は嫌なんだと、本当に軽い気持ちで答えたこと。

あの時、どう答えればブラッドの気に触らなかったのか、もう、今更考えたところでどうなるものでもなかったが、こんな目に合うくらいなら、誘いに応じておけばよかったと、ショーンは考えていた。

浮気しないなんて誓いを立てたことは無い。

ただ、ちょっと、ブラッドの金髪に、面影を思い出しただけだ。

そのせいで、仕事を立てに主役に脅しを掛けられた。

「ショーン、俺に触られたくなかったら、自分で大きく尻を開いて」

ブラットの声が、冷たくショーンに命じた。

ショーンは、従う。

犯される心配はなかった。

今更、ショーンがセックスを提供すると言ったところで、ブラッドは承諾しないだろう。

最初はショーンだって、嫌がらせをするブラッドに決して許さない気持ちになっていた。

今は、もう、こんな目に合うくらいなら、どうにでもしてくれと思っている。

しかし、ブラッドは、もう、ショーンを許さない。

ショーンは、カーペットに胸を付き、後ろへと手を回して、ブラッドに向かって大きく尻を開いて見せた。

今日も、Tシャツだけは着せられたままだ。

こうされる方が、よほどばかばかしく、情けない思いを味合わされる。

「力を抜いて」

ブラットが、次々にショーンに命じる。

エリックとの火遊びを知ったブラッドは、ショーンに対する嫌がらせの方向性を一つに定めた。

それまでの暴力的行為はなりを顰め、性的嫌がらせが、殆どを占めた。

尻の穴に、ジェルの嘴が突っ込まれる。

中に押し込まれる冷たいジェルは、ないよりましだが、決して気持ちのいいのもではない。

これも、ブラッドに言わせれば、約束を守るための気遣いの内の一つだろう。

たしかになしで、バイブを突っ込まれては、馬に乗れない。

「ショーン、欲しいものを入れてやるから、入れたら、仰向けになれ。そして…分かるだろう?オナニーショウだ。盛大によがって見せてくれよ?俺も一発抜きたい気分なんだ」

「イエス」

ショーンは素早く返事を返した。

返事は、素早く。従順に。

この一週間でそれを学んだ。それが、一番被害が少なくてすんだ。

ショーンが自分で開く尻の間に、ブラッドがバイブを押し付けた。

嫌がらせのように、決してショーンの肌に触れない。

ブラッドは、ルールを遵守している。

撮影に影響を与えないこと。

セックスしないこと。

ショーンの尻を押し広げて入ってくるのは、バイブレーターで、ブラッドのペニスを扱くのは、彼の手だ。

確かにショーンは、一度だってレイプされたことはない。

いや、ブラッドのペニスに触ってすらいない。

抵抗する肉を割って奥までバイブを押し込んだブラッドは、ショーンから離れ、ソファーに腰掛けた。

文句を言われ、足で転がされるより先に、ショーンは、体に負担を掛けないよう、ゆっくりとあお向けに身体を返した。

足を開いて、自分のペニスを手で握る。

「ショーン、顔をこっちに向けて」

ブラッドが小憎らしく笑いさえ浮かべてショーンに命じた。

「ショーン、俺は、あんたの顔が好きだって言ってるだろう?」

不必要な甘い声だ。

ショーンは、ブラッドの投げて寄越したクッションを背中に積み重ね、ブラッドに向かって顔を上げた。

「綺麗な顔だね。俺は、そういう冷たく整った顔が好みなんだ」

ブラッドは、鍛え上げた体を見せびらかすように、大きく足を開いて、ソファーに座っていた。

ショーンの痴態を見つめながら、自分で、自分のペニスを扱く。

「好きに動かして、サービスしてみせろよ。黒髪のペニスは生憎用意がないんだ。でも、その位太かったら、それで、我慢できるだろう?」

ショーンは、言葉を返さず、命じられた通りに、自分でバイブを抜き差しし、ペニスを扱いて見せた。

内部を固いものが擦り上げていく。

小さな振動を与えるものは、ショーンのペニスを硬くたたせる。

こんなものでも、感じられるようにした、ここにいない金髪がにくらしかった。

ショーンの肉体は、どんなにブラッドに下げずまれ、罵られようと、内部からの刺激で、熱くなっていく。

オナペットとしての性能は十分で、ブラッドが精液を吐き出すのに困らないだけのはしたない姿を曝け出した。

最初は遠慮がちに突き上げていたが、馴染んだ頃合をみて、ショーンは、腰を浮かせて、自分で強く突き入れた。

喉から、声が漏れる。

「いい顔してくれるね。そんなに好き?」

ショーンがクッションに頬を押し付けるようにして、腰を浮かし、バイブを抜き差しすると、ブラッドが掠れた声を出した。

ショーンはもう、恥らって見せたり、嫌がって見せたり、しても効果のないことは、するのをやめた。

どうせ、気持ちがいいのは本当なのだ。

そんなことをしていても、ブラッドは許さない。

どんなことをしていようと、時間一杯まで、ショーンは、オモチャだ。

たかだか、「金髪とは、したくないな」なんて、言ったばかりに、ブラッドの気が済むまで。ブラッドが飽きるまで。

ショーンは、精々早くブラッドがいくよう、派手に腰を動かしてみせた。

バイブの振動に思い切りよがってみせる。

だが、本当に気持ちもいい。

優しい顔をして笑う金髪に、そういう身体に作りかえられた。

粘膜が擦られると、腰が熱く痺れる。

開いた足の踵が持ち上がり、ブリッジがきつくなる。

ペニスの先から、雫が伝う。

ブラッドの息が激しくなった。

ショーンの息も上がっている。

「…うっ…ああっ!」

中を抉るバイブは、ショーンを熱くした。

ショーンの体に射精の痙攣が走る。

「メス豚!」

そんなショーンを激しく罵って、ブラッドが更に興奮した。

「オモチャでも、なんでもいいんだろう?尻を弄って欲しくて仕方が無いんだろう?」

精液を吐き出しながら、ショーンは、頷く。

「恋人なんて、ただのペニスでしかないんだろう!」

止めることを許されないバイブの刺激に、身体を震わせながら、ショーンが頷く。

バイブの振動音に鼓膜を占領されているショーンの耳に、小さなうめき声が聞こえた。

何度も息を吐き出しながら、のろのろとショーンは、ブラッドを見上げた。

ブラッドは、ショーンの足の直ぐ側まで、精液を飛ばした。

 

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503ファンの方には、もう、平謝りするしか他になく…(べそべそ)

ごめんなさい。

でも、こういう役回りを引き受けてくれそうな人が、他に思い当たらず…。

すみません。許してください。