心、蕩かす
今日は、まだ、服を着たままのパートリッジが、プレストンのマンションのリビングに腰掛けていた。
普段、子供達が、朝食のパンをかじり、父親であるプレストンに話しかけるであろうテーブルだ。
パートリッジは、黒の制服の肩に緊張感を漂わせながら、居心地悪く椅子に座っていた。
部屋の中は、清潔に管理され、調和を乱すものは何もない。
白を基調に、適度に照明が当てられ、そして、適度に温度も管理されている。
パートリッジにとって、床に膝をつけている方が、よほどましだった。
しかし、プレストンが、パートリッジの肩に手をかけ、ここへと掛けさせた。
パートリッジの瞳は、落ち着きなくさまよっていた。
机の上には、ほこり一つ落ちていなかった。
濃い色をした滑らかな机の表面だけが、パートリッジの視界をふさいでいた。
「感情的な目をしているな。パートリッジ」
パトロールの最中に、自宅へとパートリッジを招いたプレストンは、うっすらと口元に笑いを浮かべながら、自室から現れた。
ストイックなクラリックの制服を、この上なく清潔に着こなした男は、手に何かを持ったまま、パートリッジに近づこうとした。
パートリッジは、思わず席を立った。
そのまま、床に膝を付こうとするのを、プレストンがとめた。
「パートリッジ。おかしな習慣はつけないで欲しいものだ」
口元に浮かんでいた笑いを消したプレストンに、パートリッジは、ますます落ち着きをなくし、口元へと手を持っていった。
しきりと唇を触りながら、自分の足元を見下ろす。
「席に座れ。パートリッジ」
命令するプレストンの声に、パートリッジは、姿勢を正した。
背筋に一本針でも通したように、まっすぐに立った年嵩のきれいな男に、プレストンは、もう一度声をかけた。
「聞こえなかったか?パートナー。俺は席に座れと言った」
繰り返すプレストンの声に、やっとパートリッジが椅子に掛けた。
プレストンは、パートリッジの背後に回った。
客として遇されることなど、もう、ずっとなかったパートリッジは、自分が、着衣のまま、リビングで椅子に腰掛けているなどということが信じられぬと全身で、違和感を訴えかけていた。
プレストンは、パートリッジの肩に手を掛けた。
黒の、神父服を模した制服は、パートリッジのためだけに起こされた型があった。
パートリッジのものは、その滑らかな肩の丸みを誰のものよりも、美しく表現していた。
同じデザインから出来上がっているはずなのに、パートリッジのものは、秘められた色気があった。
プレストンは、滑らかな手触りの制服の肩に触れた。
パートリッジの肩が、強張る。
プレストンは、ゆっくりと肩を撫でた。
こわごわと、パートリッジが振り向こうとする瞬間に、プレストンは、机の上へと、何枚もの写真を投げ捨てた。
「ひっ!」
パートリッジの薄い唇が息を呑む。
「何も恐がるようなものじゃないだろう?」
プレストンは、立ち上がりかけたパートリッジの肩を強く押さえ、年上の男を立たせはしなかった。
「よく見てごらん。パートリッジ」
プレストンは、そむけているパートリッジの顔を正面に向けた。
金髪は、目を閉じてしまっていた。
プレストンは、強張ったパートリッジの頬を撫で、強く瞑ったために皺の寄った目じりを唇で触れながら、机の上の写真をかき混ぜた。
写真は、パートリッジを待たせたまま、プレストンが打ち出したものだった。
「見るんだ。プレストン。全部お前の写真だろう?」
写真の中のパートリッジは、全て、泣いていた。
泣きながら、顔を隠そうとし、体を懸命にひねって写真に写る面積を少しでも少なくしようとしていた。
パートリッジは、自分の体を嫌っている。
パートリッジの体は、戦闘用に鍛えられた美しいクラリックのものだった、加齢により、その猛々しさを失いつつあった。
しかし、そういった全身像ばかりではなく、局部のみの、アップもあった。
金色の陰毛に覆われた尻の穴が、電動のおもちゃを飲み込み、大きく口を開いていた。
一緒に映っている太ももに比べると、僅かに透明感を失った間接部特有のすこしくすんだ皮膚が、大きなバイブに引き伸ばされ、そこにあったはずの皺をなくしていた。
色は少し、赤みを含んでいる。
大きな白い尻は、重力に従い、肉を重く垂れ下がっていた。
若い男の手によって、バイブがずぶずぶと埋められていくところが、連続で数枚。
最後には、男が手に握っていた部分まで飲み込まされ、尻穴から、コードだけが垂れ下がった。
最初の一枚があるだけに、パートリッジが、どれほど長いものを腹の中に収めさせられたのか、はっきりとわかった。
そのほかにも、白い尻は小さな丸いローターを、いくつ飲み込むことが出来るのかと、調べられていた。
写されている尻は、次第に力を失っていき、そのたびに、尻の間から垂れ下がるコードの数が増えていた。
ふくらみのある下腹が、苦痛を訴えていた。
しかし、ペニスは、力なくではあったが、勃っていた。
間に混ざるパートリッジの顔を映した写真では、白い顔は、涙を浮かべ、色がなくなるほど、強く唇を噛んでいた。
しかし、目元が赤く火照っている。
完全に、女物だとわかる下着を履かされている写真もあった。
大きく盛り上がった尻の間に、繊細な刺繍を施された赤いラインが、一本食い込んでいる。
勿論、それは、男の股間を隠す役割など果たせるはずもなく、陰毛が、猥雑にはみ出した。
男の股の間で、揺れる二つの玉も、片方は、なんとか布地の中に押し込まれていたが、もう片方ははみ出している。
大きくなったペニスは、下着そのものを押し下げ、ぷるりと勃ち上がっていた。
はみ出した金の陰毛は、ペニスからこぼれ出たもので、濡れていた。
男の淫液で濡れた深みのある下着の赤は、優美な金糸刺繍のラインを光らせていた。
繊細な女物だけに、男の不恰好さが際立った。
プレストンは、全ての写真に目を通した。
顔には、優しげな笑いが張り付いていた。
実際、プレストンにとって、ここに映る全てのパートリッジは愛しいばかりだった。
写真を撮ろうとするプレストンの命令に従おうとしながらも、パートリッジは、少しでも、自分の体を隠したがり、辛そうに泣き続けていた。
プレストンが、上からベッドに転がるパートリッジを撮ろうとすると、腹のラインが隠したいのか、金髪は、少しでも身をよじろうとした。
大きな尻だけをアップで撮ろうとすると、逃げるように、前へといざった。
プレストンが、足を大きく開かせれば、震える尻の肉を恥じていた。
プレストンは、パートリッジに顔を寄せながら、机の上を、とんとんっと、指ではじいた。
「見ろ」
パートリッジの睫が震えた。
ここの傷がいつ付いたものなのかプレストンは知らないが、金髪のクラリックの顔に唯一のこる瞼の上の傷が、小さく振動し、パートリッジは、金色の睫を震わせた。
視線は、落ち着きなく机の上をさまよう。
「写真を見ろ。パートリッジ」
プレストンは、羞恥と恐慌に陥っている横顔を十分楽しんだ後、パートリッジに命じた。
パートリッジの視線が、ゆっくりと、プレストンの指先に集まる。
「これは、誰だ?」
「・・・私・・です」
パートリッジの唇が震えた。
赤い舌が、せわしなく薄い唇を舐めていく。
いやらしい癖だというのに、パートリッジは、少しでも心に落ち着きをなくすと、すぐこうやって唇を舐めた。
「何でもいうことを聞くはずなのに、高々写真を撮るだけで、ずいぶんとてこずらせてくれたな」
「・・・すみません・・・」
パートリッジの視線は、写真の上には定まらず、何度も逸つれていった。
そのたび、プレストンの指先が、机を叩いた。
「パートリッジ」
「・・・はい」
パートリッジは慌てたように写真へと視線を戻した。
今、一番上にある写真は、太ももへと赤い下着を巻きつけたまま、自分の尻を開いて見せているパートリッジが写っている。
「恥ずかしいか?パートリッジ」
「・・・・はい」
呼吸の早いパートリッジは、まるで尋問を受ける違反者のように、うつむき、肩をすくめていた。
「お前の場合、ここよりも、こっちの緩んだ腹を直視するのが嫌なんだろう?」
プレストンは、大きく開かれた尻の間を指差して、にっこりパートリッジに笑いかけると、机の上に散らばった写真の中から、一枚、たまたま身をよじった加減で余計に腹を突き出すようにして写るパートリッジの姿を抜き出した。
「すごいな」
プレストンは、必死に顔を背けようとするパートリッジの耳を噛むようにささやいた。
もう一枚抜き出した。
「こっちは、尻が、たぷたぷ揺れている。こんな風で、お前、走れるのか?」
プレストンは、強張っていくパートリッジの頬を見下ろした。
金色の髪に縁取られた精緻に整った冷たい顔の男は、顔の色を失っていた。
膝に置かれたパートリッジの長い指が震えていた。
プレストンは、パートリッジの頬に口付けた。
「許してやるよ。床に下りていい」
プレストンは、小さく震えるパートリッジの唇をじっと見つめながら、強い声を出した。
パートリッジは、転げるように、床へと体を落とした。
涙の浮かんだ顔を、プレストンの足にこすり付ける。
「・・・・見捨てないで・・・くれ」
パートリッジは、プレストンの足にすがりついた。
「・・・頼む・・・俺のことを、見捨てないでくれ・・」
パートリッジは、二人が置かれている立場、つまり、模範的な若手のクラリックと、それを導くべき経験豊かな優秀なクラリックという立場など、まるでないかのように、プレストンにすがりついた。
実際、パートリッジが、プレストンに見捨てられる可能性など、まるでない。
パートリッジは、感情違反者の検挙率が高い、優秀なクラリックだ。
「見捨てない。いつも言っているだろう?パートリッジは優秀なパートナーだと」
パートリッジは、顔をも上げず、プレストンの足元でうずくまった。
プレストンは、足元で体を丸めたかわいらしい年上の男の背中を撫でた。
「そこが、落ち着くか?」
「・・・はい」
パートリッジは、プレストンのつま先に口付けながら、命令を待っていた。
プレストンは、パートリッジの髪を撫でた。
その手つきは、とても優しく、愛しげだ。
「制服は、窮屈だろう」
プレストンの言葉に、パートリッジは、ゆっくりと顔を上げた。
涙に濡れた緑の目が、一生懸命プレストンの顔を探る。
「脱ぐんだ。パートリッジ」
パートリッジは、プレストンの口から、命令の言葉が出るたびに、この部屋になじんでいった。
もう、リビングの椅子に座り、プレストンを待っていたあの落ち着かない背中ではない。
パートリッジが、制服の首元を緩めた。
この制服をデザインした人間は、クラリックという職業につく人間を本当によく見抜いていたのかもしれない。
首元を緩めただけで、一気に正調を欠く制服は、強く管理され、規律と正しさを体現しているクラリックの堕落を、恐いほど美しく表現した。
一つ、また、一つと、前を外していくパートリッジの指が白かった。
プレストンは、床に膝を付く、パートナーの背後に回った。
背中に足を乗せ、パートリッジの頭を床につけさせた。
「パートリッジ、このままなら、俺の話が聞けるな」
パートリッジが、床に手を付き、小さくうなずく。
「あの写真の感想が言えるか?」
パートリッジが息を呑んだ。
だが、何度か呼吸を繰り返すと、口を開いた。
「・・・・醜かった・・・・」
パートリッジが、小さくつぶやく。
「それから?」
「・・・・私は・・・やはり、・・・・」
「やはり、何だ?」
プレストンは、上等な生地が使われている制服の背中を強く踏んだ。
「プレストンに差し出せるものなんて、何も・・・ないんだ・・・」
パートリッジの緑の目から、床へと涙がぽとりと落ちた。
写真に写るパートリッジは、プレストンの目には、とてもいやらしく、そして、艶かしく、見るものを惹きつけるのに十分な魅力を持って映っていた。
しかし、パートリッジには、それが見えないのだ。
パートリッジは、写真に写る自分の肌と、そこにバイブをねじ込むパートリッジの肌を見比べたに違いなかった。
二人は、年齢が違った。
だから、勿論、肌の状態だって、違っていて当然だった。
しかし、どんなにも優秀なクラリックであるパートリッジは、その一点のみで、自分を過小評価した。
プレストンは、パートリッジの背中を蹴りつけ、それから、転がったパートリッジの髪を鷲掴みにした。
「ずいぶん、感情的だな。パートリッジ」
プレストンは、涙の伝うパートリッジの顔を覗き込んだ。
「そんなことじゃ、いけないだろう?パートリッジがプロジアムを摂取していないことが上層部に知れたら、パートナーである俺は、厳重に処分される」
パートリッジは、息を呑んだ。
目が、プレストンの制服のポケットを探った。
プレストンは、いつも、そこにプロジアムを用意していた。
パートリッジが、自分の首すじを押さえ、許しを請うようにプレストンを見上げる。
プレストンは、パートリッジの視線の行方を把握して、何も入っていないポケットへと手を伸ばした。
パートリッジの唇が色をなくす。
「プレストン。許してくれ。後で・・・後でなら、・・・きちんと、プロジアムを摂取する。・・・今は・・・・お願いだ。・・・許して欲しい。プレストン・・・・」
パートリッジにとって、今が唯一の癒される時間だった。
プレストンは、口元に柔らかい笑いを浮かべた。
開きかけたパートリッジの制服の前を指で弾いた。
パートリッジは、慌てたように前をくつろげた。
プレストンに小さく頭を下げ、立ち上がると、背中を丸めたまま、ズボンも落とした。
下着をあわただしく脱ぎ捨てる。
そうして、また、床に這ったパートリッジの背中をプレストンは見下ろした。
「あっちに行くか?」
プレストンが顎をしゃくった先には、寝室があった。
いつもなら、すぐ従うパートリッジが、珍しくためらった。
視線の行く末に、テーブルに散らばる写真を見つけたプレストンは、パートリッジに緩く笑った。
「向こうでゆっくり見せてやろうな」
プレストンの言葉に、パートリッジは、身をすくませた。
「・・・嫌・・・だ」
「うん?なんだって、パートリッジ」
プレストンは、写真をかき集めた。
「ここに置いていって欲しいのか?うちの子供たちに見せるには、刺激的過ぎないか?」
「・・・プレストン」
パートリッジの頼りない声を聞きながら、プレストンは先に立ち、寝室のドアを開けた。
無機質な空間であることは、どの部屋でも変わらない。
同じような白を基調とした清潔な部屋が、ドアの隙間から見えていた。
隙間を開けたまま、プレストンは、パートリッジを待つ。
パートリッジは、四足のまま、ドアと壁の間を通り抜けた。
写真のことは気がかりな様子だったが、期待で頬がかすかに赤らんでいた。
プレストンは、部屋の中央で待つパートリッジを置いて、いつものように、クローゼットからパイプと縄を取り出した。
パートリッジは、大人しく待っていたが、プレストンが、パイプと縄を手に近づくと緑の瞳は一気に濡れていった。
秘密の儀式に使われる道具を見ただけで、パートリッジの呼吸が速くなった。
これから、パートリッジは、プレストンのパートナーとして不十分であることを罰せられるのだった。
緑の目が、期待と不安をない交ぜにして、せわしなく動く。
プレストンは、ゆっくりとパートリッジに近づいた。
床に付いた足を持ち上げ、パイプを膝裏にあてがいながら、形のいい耳にささやいた。
「今日も撮ってやろうか?」
パートリッジは、必死になって首を振った。
赤かった目元が、急に色を失った。
「・・・嫌だ。頼む。・・・やめてくれ・・・」
顔のパーツのなかでは、驚くほど小さな口が、震えていた。
「どうして、パートリッジ、とても素敵な体をしているのに」
プレストンは、鋼の筋肉を誇る年上のクラリックの体を拘束しながら、パートリッジのゆるく張り出している下腹に触れた。
パートリッジが、必死に力を込め、下腹をひっこめた。
プレストンの手は、それでも、まだ、柔らかさの残る腹の表面を撫でた。
薄く張った脂肪が、プレストンの指を柔らかく押し返した。
パートリッジの体は酷く緊張していた。
それでも、小さな興奮を隠せずにいるパートリッジのペニスを手の中に収めながら、プレストンは、丸い尻に唇をつけた。
「俺に打って欲しくて、恥ずかしげもなく尻を上げると、ここの肉が、揺れるから、写真に残されるのは恥ずかしいのか?」
パートリッジは返事を返さなかった。
しかし、プレストンは、それ以上は聞かず、パートリッジの膝裏に、パイプを固定する作業を続けた。
パートリッジは、安心したようなため息をついた。
拘束が強くなればなるほど、パートリッジは開放されていくようだった。
両足をパイプに固定され、動けなくされたパートリッジの目は、うっとりと濡れている。
次の縛られる腕を差し出し、パートリッジは、床に頬を押し付けた。
「・・・パートリッジ」
プレストンは、美しい背中を晒したまま、うつぶせる年上の男の尻を上げながら、つい、名前を呼んだ。
鍛えられた背中についた僅かな丸みが、なんとも美しかった。
パートリッジは、床についた胸で大きく息をしていた。
プレストンは、曲げられた腕に縄を巻きつけながら、そっと背中に唇を押し付けていった。
「パートリッジは美しいよ・・・」
「・・・嘘だ・・・私は・・・これでしか・・・プレストンの役に立たない・・・」
パートリッジの息が、冷えた床を暖めていた。
プレストンは、腕の骨が抜けぬように、幾重にもパートリッジの腕に縄をかけた。
身動きの取れなくなったパートリッジの体を抱き上げるようにして、プレストンは、ベッドへと運ぶ。
ベッドの上に乗ることは、どうしてもパートリッジが嫌がるので、プレストンは、金髪の頭だけをベッドの上に乗せた。
パートリッジが、小さな声で何かをつぶやく。
聞こえなくても、プレストンは、その言葉を知っていた。
「大丈夫。私は、耐えられる。大丈夫。私は、耐えられる」
こうやって、パートリッジの好む儀式を始めようとする前、金髪が、必ずつぶやく呪文だった。
この言葉をつぶやきながら、パートリッジは、瞳の色をとろけるような甘い色に変えていった。
自分が、プレストンの役に立つ道具に成り下がることを、パートリッジは、何よりも嬉しく感じていた。
そうやって、役に立つことが、パートリッジにとって何よりも幸福なのだ。
しかし、プレストンには、パートリッジをウサ晴らしの道具にしようなどと言う気はなかった。
プレストンは、プロジアムの摂取を、つい、うっかり怠ったパートリッジの瞳の色が好きだった。
だが、それだけだ。
何の罪もなく、罰する必要もないパートリッジを痛めつけ、泣き叫ばせてプレストンは満足しているわけではなかった。
しかし、それが、パートリッジの望みだった。
パートリッジは、ないはずの罪を作り出し、罰する必要もないことを罰して欲しがり、プレストンの暴力の対象となりたがった。
甘い瞳の色をして、早い鼓動で、プレストンの殴打を待つパートリッジを、年下のクラリックは見下ろした。
ベッドの脇には、指のない皮の手袋がある。
パートリッジを満足させるまで、殴打しようと思ったら、プレストンは、それを着用しなければならなかった。
期待して待つ金髪のため、プレストンは、手袋をとった。
手に嵌め、パートリッジの尻を撫でる。
尻は、表面を泡立たせた。
パートリッジが、体に力を入れる。
プレストンが、腕を大きく後ろに引く。
すばやい動きに風を切る音がした。
ぱしんっ!
肉の爆ぜる音が、ベッドルームに反響した。
唇を噛み締めたパートリッジが、しきりにシーツに顔をこすり付けている。
肉体が凶器となりうるクラリックの一撃だった。
緑の目に涙が盛り上がっていた。
声は、まだ、出さない。
プレストンは、もう一度、大きく手を振り上げた。
ぱんっ!
たっぷりとついた肉を打つ、衝撃は、プレストンの掌にも痛みを与えた。
張った瞬間、焼け付くような痛みが、プレストンの掌にも襲い掛かった。
パートリッジが、唇を噛み締める。
プレストンは、続けざまにパートリッジの尻を打った。
訓練により苦痛に対する耐性が積まれているだけに、簡単にはパートリッジは音を上げない。
プレストンは、赤くはれ上がるまで、パートリッジの尻を打った。
その頃には、プレストンの額にも汗が浮かぶ。
パートリッジの足を繋ぐ、パイプが床を打つようになった。
全身にじっとりと汗をかき、艶かしく蠢く男の体が、プレストンの掌の下で、唇からかすかな声を上げた。
プレストンは、殴打する力を緩めず、パートリッジを打った。
「ううっ・・・」
とうとう、声を上げ始めたパートリッジの足が、床を叩いた。
パイプが床に辺り、大きな音を立てる。
ぱんっ!
「あっ!」
プレストンが触れるパートリッジの肌が熱かった。
腫れあがり、真っ赤になったパートリッジの尻は、それでも、プレストンに差し出されていた。
殴打のたびに、パートリッジは全身で息をした。
パイプにつながれ、あわせることの出来ない太ももをすり合わせようとでもするかのように、足に力を入れ、身を揉むようにして、痛みに耐えた。
プレストンは、腕を振り上げる。
パンッ!
確実にヒットしていくプレストンの破壊力を持った手によって、パートリッジの感じている痛みは、最早、歯を食いしばる程度のことでは我慢が出来るものではなかった。
「んんっ!あっ!」
打擲の激しさに、パートリッジの唇から漏れる声が大きくなった。
プレストンは、パートリッジのために、手を振り上げ続けた。
汗に濡れたパートリッジの大きな尻を打つ。
ぱんっ!
「ああっっ!」
パートリッジが、大きな声で叫び始めた。
後ろ手にくくられた手を爪が食い込むほど強く握り締め、瞳から、大粒の涙を零し大きく口を開けて叫ぶ。
「ああっ!プレストン!プレストン!!」
パートリッジの髪が、ぱさぱさと、シーツを打った。
プレストンは、完全にパートリッジのペニスが立ち上がっているのを確認した。
大きくなったペニスは、先端をぬらぬらと濡らし、パートリッジが身をよじるのにあわせ揺れていた。
太もも、すっかり汗で濡れていた。
内腿に異様に力が入っていた。
尻はもう、どこもかしこも赤くなり、腫れていない部分を探すことが難しかった。
プレストンは、パートリッジの腰を打ち、腿を打った。
パートリッジが、大きな声でわめき散らした。
尻に比べれば肉の薄い腰や、腿は、打たれると即、骨が軋んだ。
パートリッジの体が、無意識に、前へと逃げた。
プレストンは、パートリッジの腕を掴み、引き戻すと、また、手を振り上げた。
涙に濡れたパートリッジの目が、うっとりと甘く、潤んでいた。
プレストンは、振り上げていた手を止めた。
胸で大きく息をするパートリッジは、しゃくりあげながら、ベッドに頭を乗せ、うつぶせていた。
髪が、額に張り付いていた。
プレストンは、熱を持った自分の掌を軽く振った。
空気の振動音に、パートリッジが、びくりと体に力を入れる。
しかし、訪れない痛みに、パートリッジは、ゆっくりと後ろを振り向いた。
「・・・・プレストン?」
もっと、自分が壊れてしまうまで打って欲しいパートリッジは、プレストンの表情を怯えた目をして確かめていった。
肩で息をするプレストンが、自分の額にかかった髪をかきあげるのに、パートリッジは、薄く唇を開いた。
「・・・・私は、D−24区画の書類を・・・」
パートリッジは、おずおずと小さな声を出した。
プレストンは、冷たく切り捨てた。
「知っている。パートリッジが処分した書類は、俺が作成しなおした」
パートリッジは、プレストンの怒りを誘うため、わざとミスを犯していた。
プレストンは、できるだけ、小さなミスで、パートリッジを罰するよう努力をしていた。
そうでないと、この緑の目の美しいクラリックは、人の命までミスの対象としようとした。
その辺りが、プレストンよりも、ずっと長くクラリックを続けてきたパートリッジの本当に壊れている部分だ。
プレストンは、激しい打擲を望む、パートリッジの瞳を見つめ、その目が、しっかりと自分を見ているのを確かめると、火照った掌で、パートリッジの頬を撫でた。
「・・・・写真を見る約束だろう?」
パートリッジの目が大きく開き、嫌だと、首が横に振られた。
「どうして?」
プレストンは、パートリッジを無視し、写真を取り出し、ベッドの上に並べた。
パートリッジは、シーツに顔をうずめるようにして、写真から目をそらした。
新しくプレストンが並べられた写真は、二人が繋がっているものばかりだ。
大きく開いたパートリッジの足の間に、引き締まったプレストンの腹が挟まれ、その結合部分までもがはっきりと写っていた。
ペニスを引き抜こうとしているプレストンの写真では、パートリッジの尻穴が盛り上がり、抜け落ちようとしているペニスに絡みついている。
全ての写真で、パートリッジは顔を背けようとしていたが、プレストンは、あえて顔まで入るよう写していた。
「どうして、嫌なんだ?」
プレストンは、答えのわかっている質問をした。
ただ、写真を撮るというだけでも、パートリッジは嫌がった。
その上、プレストンと一緒に映るとなると、パートリッジは泣き喚いた。
「パートリッジ、お前が醜いから?」
プレストンは優しく聞いた。
パートリッジの目からは、涙がぽとぽとと零れ落ちた。
赤い尻を腫らしたまま、パートリッジは、うなずいた。
プレストンは、パートリッジの頭を撫でた。
パートリッジが醜いということは決してなかった。
顔立ちの精緻さは、多分、クラリック1だ。
「写真を見るのは辛い?」
目を開けたパートリッジが、プレストンを見上げた。
頬へと添えられたプレストンの掌に頬を摺り寄せた。
プレストンは、写真をそのままに、パートリッジの背後に回った。
もう一度、打たれるものだとばかり思っているパートリッジは、体に力を入れて待った。
プレストンは、パートリッジの縄が打たれた腕を引き、逃げられないようにすると、ごそごぞと自分の前を緩めた。
パートリッジが、何度も睫を振るわせた。
「・・あ・・・プレストン?」
赤くはれ上がったパートリッジの尻を掻き分けたプレストンは、男の窄まった穴にペニスの先端を押し付けた。
「プレストン!」
パートリッジは、大きな声でプレストンの名を呼んだ。
まだ、儀式は終わっていないはずだった。
パートリッジは、自分を見失ってしまうまで、尻を打たれると、精液の混じった尿をペニスから零した。
そして、その恥ずかしい瞬間こそが、パートリッジにとって、完全に開放された瞬間だった。
パートリッジの尻穴に、ペニスを押し付け、粘液を塗り広げていたプレストンは、先端を押し込もうとし、強固に拒まれた。
プレストンは、仕方なく、パートリッジから離れた。
ベッドボートの中を探る。
「・・・プレストン。・・・あっ・・・まだ、・・・私は・・・」
パートリッジは、顔を上げ、プレストンの姿を追った。
言いよどみながらも、パートリッジは、自分の欲求を訴える。
「もっと、打って欲しいんだろう?」
プレストンは、ジェルを取り出しながら、パートリッジを振り返った。
パートリッジが頭を垂れる。
「だが、パートリッジが写真を見なかったから、今日はしまいだ」
プレストンは、ジェルを指へと搾り出すと、固定されたパートリッジの背後に回った。
熱のある尻を押し広げ、指をねじ込む。
中は、腫れあがった外側の皮膚以上に熱かった。
きゅうっと、パートリッジの肉が、プレストンを締め付ける。
年上の男の秘肉は、体内に押し込まれたパートナーの指の太さを味わうかのように、ぎゅっとプレストンの指を締めた。
プレストンは、指で中を探りながら、軽くパートリッジの尻を張った。
「あっ!」
大きくパートリッジの尻が揺れた。
物欲しげな尻は、そこから続く足を固定しているパイプで、何度も床を鳴らした。
プレストンは、指で中を探りながら、軽く何度かパートリッジの尻を張った。
赤くなった尻が音を立てるたび、蠢く柔らかな肉は、プレストンの指を強く締め付ける。
プレストンは、濡れた肉を掻き分け、膨らんでいるパートリッジの前立腺を緩く押した。
きゅうっと、パートリッジの尻がプレストンの指を締め付けた。
「パートリッジ。どっちがいい?」
「・・・あぁっ・・・どっち・・・も・・・」
そこを十分に開発されているパートリッジの体は、ペニスをぴくんと震わせた。
プレストンが、力を加減しながら、なぞるように腸壁を下腹に向かって押してやると、パートリッジは、赤い舌を覗かせ、大きく口を開けた。
「・・ぁあ・・・・・はぁあんっ・・・」
パートリッジの尻が、ひとりでに揺れる。
プレストンは、膨らんだ前立腺の周りを指先で丸く撫でながら、腫れあがった尻を掴んだ。
指を飲み込んでいる皺は盛り上がっており、プレストンの指の動きで引きつれた。
写真に写っていたのと同じ、うす赤くすこしくすんだ皮膚が、プレストンの指に食いついている。
尻を強く掴まれる痛みに、パートリッジが顔を顰めた。
叩かれる一瞬の痛みではなく、痛む肉を強く挟まれた。
熱を持って赤く腫れた尻は、動かされることで、パートリッジを呻かせた。
「まだ、尻を叩いて欲しいか?」
プレストンは、パートリッジに聞いた。
パートリッジは、迷うような目をしてプレストンを振り返った。
唇が小さく震える。
プレストンは、パートリッジの答えを待たずに、指を引き抜いた。
自分のペニスをあてがい、下から突き上げるように、滑る肉を割り裂いていく。
「ぁんあっ・・・・んんっ・・・・・・」
ずぶずぶと押し開かれる感覚に、パートリッジの背中が震えた。
プレストンは、盛り上がった尻を掴んで、ぐいっと奥までペニスを押し込んだ。
「・・・あぁあっ!・・・・」
パートリッジが、悲鳴に近い声を張り上げた。
儀式は、終了近くまでいっていた。
パートリッジの尻は、強く腹をぶつけられるだけでも、相当痛んだ。
プレストンは、むしろそれ目当てで、パートリッジに深い挿入を繰り返した。
赤くなった尻を、ぴたんと、プレストンの引き締まった下腹が叩く。
はぁはぁと、せわしなくパートリッジの腹が、呼吸を繰り返した。
重く水分を湛えた下腹部が小さく震えていた。
「パートリッジ。俺まで汚す気か?」
多分、そうなることを予想しながら、プレストンは、パートリッジが揺さぶった。
カン!カン!と、パートリッジを固定しているパイプが床にあたって音を立てる。
「・・・・ぁん・・・はぁあ・・ん・・・プレス・・・トン!」
前立腺をえぐるように、押し付けられるプレストンのペニスに、パートリッジは、顔を赤くし、しきりに爪で自分の掌をえぐっていた。
色の薄い唇から、赤い舌が見えていた。
プレストンは、限界まで大きくなっているパートリッジのペニスにふれた。
もう、僅かな刺激だけでいくだろうそれの先端を指先で、なぞった。
「あぁ・・・んっ・・・ぁあ・・・」
パートリッジが、必死に頭を振った。
床に当たるパイプの音がうるさい。
プレストンは、涙ですっかり濡れているシーツから、パートリッジの頭を起こさせ、小さく膨れている乳首を摘んだ。
「・・・ぅ・・・はぁ・・・プレストン・・・・ぁあ・・・そこ・・・じゃ・・なく・・・」
緊張し、震えている下腹部の存在を、パートリッジは、一生懸命プレストンに伝えようとした。
内側からも刺激を受け、このきれいな顔の男は、もう、たまらなく出したくなっていた。
後ろ手に縛られ、自分ではどうすることも出来ないので、パートリッジは、プレストンに助けを求めていた。
普段のように、放尿するところを眺められているのとは違う。
今、漏らせば、プレストンのことも汚した。
それは、パートリッジにとって、許されないことだった。
プレストンは、金髪の懇願を無視し、乳首を強く指先で挟んだまま、腰を打ちつけた。
痛みと、快感と、パートリッジの声が、めまぐるしく感情を伝える。
緊張したパートリッジの尻は、痛いほど、プレストンを締め付けた。
プレストンは、きつい肉の輪から強引にペニスを引き出し、また、それをずぶずぶと埋める。
くちゅりと音を立て、パートリッジの尻は、また、根本までプレストンのペニスを飲み込む。
こすり付けられる固い腹に、痛む真っ赤な尻をパートリッジがよじった。
プレストンは、乳首から手を離し、尻を掴むと、パートリッジを激しく揺さぶった。
パートリッジが、傷を残すほど強く唇を噛んでいた。
プレストンは、パートリッジの下腹に触れた。
「いつも、始末してやっているのは、誰だと思っているんだ?」
限界まで叩かれ、充足感と満足感、そして、性感で我を失っているパートリッジは、全ての後始末をプレストンに任せていた。
うっとりとしたまま、汚れた下肢を投げ出しているパートリッジを乱暴に拭っていくのは、プレストンの手だ。
「・・・ぁあ・・・」
歯をかちかちと鳴らし、必死にこみ上げる排泄感を堪えているパートリッジは、瞳から涙を零した。
身悶えるパートリッジを両手でしっかりと抱きこみ、プレストンは、浅い呼吸を繰り返す柔らかな腹を触った。
「・・・触る・・・な!」
パートリッジが、低い声でうなった。
限界を超えた射精感と、排泄感に、強く奥歯を噛み締めている。
痛みと、快感に、瞳は、感情を選ぶことが出来ずにいるようだった。
プレストンは、パートリッジの下腹を緩く撫でた。
「パートリッジ、出すなら、今日は、このままだ」
プレストンは、無慈悲にささやきながら、排尿する様がはっきりと見えるよう、パートリッジの体を抱き込み、引き起こした。
「いつもみたいに、出せばいい」
パートリッジが、首を振る。
大きく胸を喘がせているのに、プレストンは、繋がったペニスでずりずりとパートリッジの肉壁を擦り、内側からも誘惑した。
「ぁあ・・・・ぁん・・はぁ・・・・」
「いつも、していることだろう?」
プレストンは、丸みのある腹を撫でた。
緩やかに、何度も、何度もさすってやり、いきなり、拳を突き入れた。
緊張に固くなっていたパートリッジの腹だったが、拳は思い切り打ち付けられた。
その威力は、推して知るべしだった。
プレストンは戦闘要員であるクラリックなのだ。
「ひいっっつ!!!」
本物の悲鳴が、パートリッジの口から飛び出し、床は、薄く白濁した尿で、濡れていった。
ベッドの足までも濡らす大きな放物線を描いた液体は、次第に出方が緩くなる。
びたびたと床を打つ音に、パートリッジの嗚咽が重なった。
涙の滴るパートリッジの体は、それでも恍惚感で、弛緩していた。
プレストンは、頬を伝う涙を唇で受け止めた。
「誰も、我慢しろなんて言ってない」
「・・・・んぁ・・・ん・・・プレ・・・ストン・・」
ゆっくりと動き始めたプレストンのペニスに、パートリッジの体が自然と動いた。
痛みしか感じないはずの尻の皮膚を、懸命にプレストンに押し付けた。
「ぁ・・・はぁ・・・ぁああ・・・んんっ!」
じゅくじゅくと卑猥な音を立てて大きな尻を揺すりたてるパートリッジは、見ている方が恐くなるほど急速に上り詰めていった。
パートリッジは、満たされた顔をしていた。
プレストンは、そのために、ここにいた。
END
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甘々ダーリン プレ×わがままパティちゃん。