指輪のDVDが話題だったとき。

 

目深に被ったフードを脱いだエルロンドは、じっとアラゴルンを見た。
エルロンドの目は、力強い。
けれども、アラゴルンを戸惑わせるほど、優しかった。
アラゴルンは、目を細めながら、こんな場所で会うことになるとは思いもしなかった懐かしい顔に安堵の表情を見せた。
アラゴルンが目を細めたのには、別のわけもあった。
エルロンドのデコの光が健在だった。
まぶしくて目が開けていられない。
まぶしさのあまり、少し目を伏せがちにしたアラゴルンを優しい目で見つめるエルロンドは、一歩アラゴルンに近づいた。
エルロンドは、裂け谷でごろごろしている娘にパシリにされていた。
そして、目の前には、将来自分と同じ立場に甘んじるに違いない男が立っていた。
つい、エルロンドの瞳は優しくなる。

エルロンドは、幼い頃から面倒を見、そろそろ自分に恩返しを始めてもいい男のために、口を開いた。
「愛する者のために来た」
エルロンドは、西に追いやったにも関わらず戻ってきてしまった、アルウェンの面倒を見てくれ。と、あてこするためにも、はっきりと口にした。
アラゴルンの瞳が揺れた。
アラゴルンは、誤解した。
結構、どこででも人気者の男は、さっきまでアルウェンの夢を見ていたにも関わらず、義父の愛するものが自分だと思い込み、エルロンドの情熱に困惑の表情を見せた。
アラゴルンは,心の中で、「困ります。お義父さん・・・」と、つぶやいていた。
勿論、エルロンドは、アラゴルンが、アルウェンを思い、言葉を失っていると思っている。
全く、二人の気持ちは通じ合っていない。
エルロンドは、懐から剣を取り出すと、アラゴルンに渡した。
「これを・・・」
「これは・・・」
剣が、エルロンドのデコの光を弾いた。
アラゴルンは、その光のあまりのまぶしさに、また、言葉を失った。
「こんな贈り物されても・・・困ります。お義父さん・・・」
結果として、この言葉が飲み込まれ、アラゴルンは、アルウェンとの結婚へと無事たどり着いた。

 

END