花豆か豆花かどっちかわかりません。
ショーンは、ソファーの上で寝転がっていた。
手には雑誌を持っていた。
ショーンは、ずっとそうして時間をすごしていた。
ソファーの上から、ラグの上に移動するか、雑誌から、テレビに代わるか、そのくらいの違いしかない。
オーランドは、ショーンの側を何度も通りかかった。
通りかかるたびに、ショーンに声をかけた。
「ねぇ、散歩に行こうか?」
「ドライブのほうがいい?」
「いい舞台なにか、やってなかったかなぁ?」
「それとも、おいしいものでも、食べに行こうか?」
久しぶりに会った恋人に、オーランドは、せかせかといろいろなイベントを用意しようとした。
そのたび、ショーンは、あいまいな顔で笑った。
ソファーの脇に立つ、オーランドの腕をそっと触り、また、雑誌に視線を戻した。
ショーンが、オーランドの家についてから、半日も過ぎた頃、オーランドは苛立ちを隠さなくなった。
「ショーン!テレビを消して!!」
「メシは、家で食べるってことでいいんだよね!食べに行くつもりだったから、ろくなものないからね!」
オーランドは、苛立ちながらも、ショーンのために食事の用意をした。
しかし、レンジが、出来上がりを知らせる音を立てた時、オーランドは、ショーンに近づき、雑誌を取り上げ、床にたたきつけた。
「ショーン!あんた、一体何しに来たんだ!!」
オーランドの目には涙が浮かんでいた。
ショーンは、穏やかな笑いを浮かべた。
「オーリ、悪かった」
「全然、悪いなんて思ってない!」
オーランドは、きつい視線で、ショーンを睨んだ。
ショーンは、手を伸ばして、オーランドの腕を捕まえた。
「オーリ。ちょっとだけ、俺の話を聞いてくれるか?」
「なに?言い訳?」
オーランドの声は尖っていた。
しかし、ショーンは、声のトーンだって変えなかった。
「言い訳だ。でも、出来れば聞いて欲しい。
・・・オーリ、お前、俺の側に、どれだけの時間いた?」
「・・・俺が悪いって言いたい訳?」
オーランドは、ショーンの手を振りほどこうとした。
ショーンは、両手を伸ばして、オーランドを抱きしめた。
「なぁ、オーリ、そんなに不安がるなよ。俺は、お前が何かしてくれなくても、側にいてくれるだけで、満足している。何か特別なことなんて、してくれなくて、全然いいんだ。お前は、サービス精神が豊かだから、嫌なのかもしれないが、ただいるだけの自分ってのの価値を認めてもいいと思う。
俺は、どこに行くよりも、ここで、何もせず、お前と二人でいたいよ」
ショーンは、腕の中に抱き込んだオーランドの頬にキスをした。
腕は、甘くオーランドを拘束し続けた。
「オーリ、たまには俺の言うことも利けよ。ここにいろ。荷物の整理も、風呂の準備も、何かも、どうでもいい。
俺の側に一緒にいてくれ」
ショーンは、キスを繰り返した。
オーランドの頬も緩んできた。
しかし、ショーンは、つぶやいた。
「・・・でも、腹は減ったな。オーリ、メシって・・・」
音を立ててたショーンの腹に、オーランドは吹き出した。
End