プー豆話に絵を頂いた時に書いた小話
ショーンは、パタンと本を閉じた。
口元は、不機嫌にゆがめられていた。
「で、どこが、面白いんだ?」
「そりぁ、ウサギのオーランドが活躍するところに決まってるじゃないか!」
オーランドは、ショーンの膝の上の本をもう一度開いて、ウサギの活躍するシーンを指で追った。
「ほら、ここ、半日も、掘ったころでしょうか?オーランドに光が差し込みました。雨の粒も振ってきます。「やった!外に出た!!」ウサギってば、ショーンを助けるために一生懸命になってて、かわいいじゃん」
「・・・ただの、せっかちだろう?」
ショーンは、眉の間に皺を寄せた。
オーランドも、同じだけ深い皺を眉の間に寄せた。
「ショーン、あんたね・・・あんたもプーと同じこというつもりなわけ?」
「だってな。ヴィゴ」
ショーンは、睨みつけてくるオーランドから目をそらし、隣で雑誌をめくっていたヴィゴに声をかけた。
「別に、プーは、あそこで、楽しく暮らしてたんだ。別段、助けてくれって言ったわけじゃなし、ウサギが勝手に、盛り上がってるだけだよな」
「・・・まぁ・・・そうかもな。俺も、別に、毎日プーの側でスケッチしたって構わない」
「・・・あんた達ね。プーは、ウサギの家に不法侵入して、その上、ビールで膨れ上がった腹で、たった一つの出入り口をふさいでるんだよ。もう少し、何とかしようって態度をとってもいいと思わない?」
「ウサギのドアの設計が悪かったんだから仕方ない」
ショーンは、テーブルの上のビールを飲みながら言った。
「たかが、ビールくらいで、通り抜けできなくなるドアを作ったウサギが悪い」
「ひとんちのビールを勝手に飲んだ挙句、動けなくなって、助けてもらって、その上、出っ張った腹で、家、壊すような奴がそんなこと言う!?」
オーランドは、ショーンからビールを取り上げた。
ごくりと一口、口をつける。
ショーンが、オーランドを睨む。
「・・・ショーン。それに、オーランドも、いい加減にしとけ」
ヴィゴは、やれやれとショーンの膝から、本を取り上げた。
「ほら、ここに書いてあるだろう?ヴィゴと、ショーンと、そして、オーランドの3人は、森の中のショーンの家へと向かいました。ヴィゴの持ってきた傘に、3人は仲良く入っています。・・・ショーン。プーは、ウサギのことも、大好きなんだって、ちゃんと告白してやれよ」
ヴィゴは、オーランドから、ビールを奪い、自分で飲んだ。
「・・・まぁ、クリストファー・ロビンは、プーのことだけが好きだと思うがね」
ヴィゴは、ちらりとショーンを見た。
ショーンは、にやりと笑い、ヴィゴがテーブルに戻したビールを飲み干した。
オーランドは、ヴィゴの足を思い切り踏んだ。
END