お気に入りのボロミー写真を見つけたという話題だったとき
その顔をみたファラミアは、掛ける言葉を失った。
ボロミアの顔には、寂しさと、疲れが、浮かんでいた。
もつれた髪が、顔を覆うからではない。
緑の目は、何かを諦めていた。
この国の行く末か。
・・・それとも、自分の運命か。
眉は、ゆるく解かれていた。
たが、ボロミアは、恐い目をしていた。
胸が痛くなるような、色をしていた。
見るものの胸が抉られる、そんな目の色をしていたのだ。
ファラミアは、ボロミアの顔をじっと見た。
ボロミアの口も、開かれていた。
開いた口は、ファラミアが声をかけさえすれば、微笑みにかわっただろうが、今は、何も表現せず、ただ、開かれていた。
白皙は、変わらぬ、高貴さと気高さだ。
しかし・・・ボロミアは、あの力強い表情を脱ぎ捨てていた。
頼りないような顔だった。
ファラミアは腕を伸ばしかけた。
兄を抱きしめることが可能なような気がした。
兄の顔には、諦観があった。
「・・・兄上」
ファラミアの手が、癖についたボロミアの髪を触ろうとした。
ファラミアの表情に気付いたボロミアは笑った。
途端に、その顔は、手の届かないものになった。
ファラミアは、兄の髪を櫛づけながら、兄に向かって笑い返した。
「兄上、髪が、めちゃくちゃですよ」
言いたい言葉は、そんなものではなかった。
ファラミアにとって、触れる兄の髪だって、本当に触りたいものではなかった。
ボロミアは、照れくさそうに笑う。
「悪いな」
「本当に、不精なんですから・・・」
ファラミアは、先ほどのボロミアの顔に触れたかった。
あの顔を両手で挟み、自分だけを見つめさせ、胸のうちを吐き出させたかった。
だが、もう、ボロミアは、あの顔を見せない。
目は、悪戯に優しく笑う。
せめて、ファラミアは、髪を耳にかけ、ボロミアの顔を光に晒した。
END