夏樹の甘い性格という題名に擽られた
瞬きすら忘れて、テレビに見入っているショーンを足の間に挟んだオーランドは、パンと、オレンジジュースを交互に、ショーンの口へと運んでいた。
「ねぇ、ショーン、あんた、あと、10分後には出なきゃいけないこと覚えてる?」
ショーンは、唇に物が当たると、自動的に口を開いた。
緑の目は、くるくると動く画面の選手をじっと追っている。
何を噛み、飲み込んでいるのかはわかっていないに違いない。
オーランドは、せっかく着替えさせた服に、オレンジジュースがこぼれないように慎重にコップを傾けた。
ショーンの喉仏が、ごくりと動く。
「おいしい?」
オーランドの問いかけに、あいまいにうなづいたショーンは、次の瞬間、手を振り上げた。
大きくパスが決まっていた。
選手がいっせいに走り出す。
「おい!見たか!すごい!すごいぞ!!」
目をきらきらとさせ、大きく口を開いた笑い顔のショーンに、オーランドは苦笑した。
ボールは、ゴール前ではじかれた。
しかし、ショーンは、嬉しそうな顔で、オーランドにリプレイされている画面を指差した。
「なぁ、オーリ、ほら、すごい!」
ショーンの髭に、こぼれたパン屑がついていた。
オーランドは、ショーンの唇にキスするついでに、パン屑を舐めとった。
ショーンは、画面が見えないとばかりに、オーランドを押しのけた。
オーランドは、ビデオを止めた。
「消すなよ!いいところだろう!」
とたんに、ショーンが怒鳴った。
「ショーン。帰ってきたら、一緒に見よう。もう、出かけないと」
「お前だけ、先に行け!」
ショーンは、ビデオのリモコンを握り締めた。
オーランドは、パンの乗っていた皿にコップを重ねながら、肩をすくめた。
「あんたさ。ショーン、仕事にだけは、厳しかったんじゃないの?」
オーランドは、ショーンの頬にキスをして立ち上がった。
ショーンのために、コップを片付けにキッチンに向かった。
「ショーン、靴。出てるからね」
ショーンは、苦い顔をして、いかにも不満そうにビデオを止めた。
End