短い本文の前の長いまえがき。
このお話は、LAのメンバーは数年前に、マイアミ警察と合同捜査をしたことがあるらしいよ。から妄想が始まっています。
踏まえていただきたいのは、カレンちゃんは乗っかり受け。ホレスピはカップル。サムは、心配症。カレンちゃんに乗っかられたらホレイショおじさんの腰が心配だわ。サムとスピードルが寝るとしたら、人見知りしたり、遠慮し合ったり、譲り合ったりで5時間くらいもじもじしてるに違いない。
そんなこんなを突っ込んで、ありえないサムスピのカプを書いてみました。……ごめんなさい!
5時間もじもじHのあとの二人。
一度間違いを犯した相手と、同じベッドに座っているのは緊張するものだ。だが、いかにも現場の人間といった面持ちでいながら、サムの存在は、スピードルに脅威を与えなかった。
「……だから、」
頭は決して悪くないと自負しているが、口がうまくなくて、なかなかうまく話せないのを、苛立つこともせず、サムは悩みを聞いてくれている。恋人のことだと、打ち明ける時に、つい爪を噛んだら、右手はずっとサムに握られたままになった。近過ぎない距離で座る二人の間に、サムの大きな手で包まれた自分の手がある。
上司である恋人に付いていくのが、難しい。と、それだけを打ち明けるのに、長い、長い時間がかかった。
「俺に、助言できるような問題じゃなさそうだけどな、ひとつだけ言わせて貰えば、それでも、あんたにとって、大事なのは、一人だけ、なんだろ?」
ゆっくりサムは、話す。穏やかに笑う顔に、ドキリとする。
「……あのさ、俺に、出来る礼って、こんな、なんだけどさ、……下手なんだけど」
問題はなにも解決していなかったが、サムと話せたことは、スピードルにとって、助けになった。埒もない話に、長い間付き合わせた埋め合わせをしようとスピードルは、自分に出来そうなことをしようとした。つまり、せめて、口でと。ベッドから腰を上げ、床の上に膝を付いた男に、サムは、慌てた。
「ちょっ、待て……!」
彼は、サムのジーンズのボタンに手をかけようとしている。
「なんで? 前、やったじゃん。俺たち」
「待ってくれ!」
サムは、スピードルの腰を捕まえ、押しとどめた。
「……自分のこと下手だなんて、謙遜する奴と、やるのは久しぶり過ぎて、……焦る」
サムの顔が必死過ぎて、思わず、ぷはっと、スピードルは笑った。
「あはは、確かに、あんたの相棒は、自分のこと下手だなんて、絶対に言わなさそうだ」
「だろ? だから、そんな純情なこと言われたら、……惚れそうで、絶対にダメだ」
抱きとめられたままのスピードルが、大きな声で笑いだした。
「面白いな、あんたたち」
「あんたの上司も、十分面白いよ。……カレンが、毎日、にやついてて怖い」
サムとスピードルは目を合わせて、つい、笑った。お互い、面倒な恋人がいることに、同情し合って、今度、また、寝ようなんて約束までした。だが、今日、別れるまでにするのは、信頼のハグだけだ。
「気を付けて帰れよ」
「あんたもな」
だが、お互いを待ち受けている恋人たちは、
「お帰り、スピードル」
ホレイショは、とても優しい笑顔でスピードルを招き入れた。
「どこへ行ってた?」
カレンは機嫌が悪そうだった。
……夜は、まだ、長かった。合掌。
END