やわらかくなる、こころ
「あ、の、チョウ、ちょっと……ごめん」
チョウに、股の間を弄られながら、ベッドに横たわっていたジェーンは、チョウの手を申し訳なさそうに押しやると、上目使いで謝った。
「どうした?」
「どうしたって、チョウ、気付いてるよね? 実は、チョウって、すごく気が長い? 僕のが勃たないのを変だって思ってるよね?」
確かにジェーンのそこは、二人で服を脱いでベッドに横になった20分も前から、ずっと互いの身体を弄りあっているというのに勃起していなかった。いくら手で触り、扱いてやっても、柔らかいまま芯を持たず、チョウも、怪訝には思っていたのだ。
「あのさ、この間は、上手くいったんだけど、……実はさ、僕、すごくしたくても、勃たないことが、時々あって」
けれども、腰を掴んで抱き寄せようと、ジェーンは、キスだって嫌がらなかったし、ジェーンからもチョウのペニスへと手は伸びていた。だから、くにゃりとかわいらしい状態のそれを、手の中で遊ばせていても、チョウは、ただ、今日は、なかなか硬くならないなと思っていたのだ。
アレは勃っていないものの、キスや、愛撫に、それなりに、ジェーンは興奮を示している。派手な柄のシーツに身体を押しつけるようにして、小さく勃った乳首を吸ってやれば、卑猥にジェーンは胸を突き出してきたし、股の間を弄ればチョウの腕を腿で挟んで、ふらふらと腰は揺れる。自分が殆ど声を出さないせいで、チョウには少し驚きだったが、ジェーンは、あ、あっと、喉元で、高めの軽い音をさせて喘ぐ。
恥じるように腰を引こうとしているジェーンの下腹に手を伸ばし、なんの気なしに、チョウは金色の下生の中で、頭を垂れたままのものを手で掴もうとした。ジェーンの腕がチョウの首に回され、きゅっとしがみついて、その動きを阻む。
「その、……こういうことになったのは、事件があってから、なんだ、けど……」
愛する妻と子を殺されたジェーンが心に深い傷を負っていることは、職場では周知のことであり、トラウマのせいで勃起不全に陥っているなんてことを、どんな顔をしてジェーンが告白をしているのか、チョウは胸苦しくなり、肩口にしがみついているジェーンの顔を確かめようとした。しかし、ジェーンは、ぎゅっと腕を巻きつけたまま頑なに離れようとはしない。
「僕から誘ったことなのに、騙したようで悪いとは思ってるんだけど、僕は、本当にチョウとセックスしたかったんだよ。この間もしたかったし、今も、すごくチョウとしたくて」
ぎゅっとしがみつき、たくましい肩へと顎を乗せたまま、そんな事情だというのに、ジェーンは、許しを請うように、チョウの耳へと小さくキスする。
うっすらと汗をかく合わさった胸は、ジェーンの方がずっと音が大きかった。
「大丈夫か、ジェーン? ……無理する必要はないんだぞ?」
チョウは、困惑し、なめらかなジェーンの背中を抱きしめた。
「なぁ、ジェーン。俺たちは、まだ、二度目だ。お前は、緊張しているのかもしれないし、疲れているのかもしれないだろ?」
抱きしめたまま、耳元で囁かれる不器用なチョウの慰めが、かすかにジェーンを微笑ませる。
捲きつけた腕が、きっとチョウにとって息苦しいはずだったと気付ける程度には、ジェーンの身体から、緊張が抜けた。前回、お試しでしたチョウとのセックスは、かなり良くて、まさか、もう2回目から、自分がこんな無様な様を晒す破目になるとは、ジェーンも予想していなかったのだ。
「この間も思ったけど、びっくりするくらい、セックス中のチョウって、寛容だね。君のは、もう、とっくに勃ってて、こんなに硬いのに、僕のペースに合わせてくれるし、……僕に不満があるとすれば、前回も、今回も、セックスする場所がモーテルだってことくらいだよ。君が、まだ、僕との関係をいつでも清算できるように、君のテリトリーに踏み込ませないでいることくらいしか、君には不満なんてないよ」
まだ、チョウの目は見られなかったが、ジェーンはなんとか笑って見せた。
「俺の部屋の方がよかったのか? 落ち着かないのか、ジェーン?」
それが理由で勃たないのかもしれないと、チョウは言ってくれる。だが、ジェーンは首を振って否定した。覚悟を決めて、さっきまで軽い興奮で赤くなっていた目元で、チョウを見つめる。
「僕は卑怯だから、君と寝たくて、言わなかったんだけど、実は、自分でしても、半分位は勃たないんだ。いわゆるEDって奴で、君とこうして、抱きあって、君に身体を触ってもらって、すごく気持ちがいいのに、情けないよ。君の気分が萎えるようなことになっちゃって申し訳なくてね」
自嘲気味に笑うと、ジェーンは、許しを請うように、チョウの肩に口付けた。
「ジェーン……」
どんな顔をしていいのかわからなくて、チョウは、白々しいモーテルの照明の下、合わせた肌の温かみを感じながら、ジェーンを見下ろしていることしかできなかった。遠くの部屋で、甲高く喘ぐ女の声がしている。ジェーンは、緩く笑って、軽く頭を上げると唇を尖らす。それが、キスを求めているのだと気付いて、チョウは、慌てて薄い唇に唇を重ねた。舌を絡らませるキスをしていると、途中で、ゆっくりとジェーンが話しだす。
「チョウ、実は、かなりずうずうしいお願いだとわかってるんだけど、僕は、こんなんだけどさ、まだ、このままセックスしていたいっていったら、チョウは許してくれるかな?」
「それで、お前は、楽しめるのか?」
ジェーンは自分の下腹に手を伸ばすと、白くて柔らかいペニスを手の中に掬いあげる。
「……あのさ、勃たないし、時間もかかるんだけど、僕のもの出すことはできるんだ。出るっていうより、柔らかいものから、じわじわ漏らしちゃうって感じなんだけど。……チョウのは、勿論、僕が手でするし」
「無理しなくていいんだぞ?」
「無理なんてしてないよ」
心配したチョウが、何度かジェーンの真意を質しはしたが、結局、もっと身体を触っていて欲しいと言うジェーンの願いを、チョウは叶え、シーツの上の年上をすっぽりと抱きしめ直した。だが、チョウも、勃起しないとはっきり言っている相手に、どうしたらいいのかわからず、とりあえず、成功した前回のセックスをなぞり、互いの身体を触り合い、足を絡めたり、ジェーンの柔らかいものと、チョウのものを押しつけ合ったりを続ける。
そんなところは、あまり攻められたことがなくて、ジェーンは落ち着かなかったが、チョウは、ジェーンの平らな胸の乳首も口に含んでしつこく舐め回した。
それに、ジェーンは、自分でも驚いたが、声を止めることができない。
「っ、ねぇっ、っぁ、もう、それっ、やめ……っん、っ、チョウっ、っぁ」
「なんでだ? あんた、感じてるだろ」
けれども、ペニスが勃起する兆しはなくて、チョウも、前回程には、ジェーンがこのセックスを楽しめていないとわかっていた。
「なぁ、ジェーン」
唇を合わせ、身体を離す。体温が離れていったことに、不安そうにした、シーツの上の青い目を、チョウは髪を撫でながら覗き込んだ。
ジェーンは、とうとう、チョウは、もうこの行為に飽きてしまったのだと、胸に寒さを覚えた。
「ごめん。やっぱり、チョウにとっては、楽しくないよね。こんなの」
ジェーンは、少し顔を歪ませ、目を伏せていたが、チョウが、思うその問いかけの答えは違った。楽しくないかどうかと聞かれれば、普段は飄々として正体を掴ませないこの男が、今日は、勃たないという引け目がある分、何をしても酷く従順で、これはこれでいいものだと内心楽しんでいた。今も、くしゃくしゃのシーツの上にあるジェーンのうっすらと脂肪を付けた太腿は、間に挟み込んでいたチョウのペニスから漏れた先走りで、内腿が汚れているのに、それを、嫌だとは言い出さない。
殊勝な様子のジェーンを相手にでは、これから、言おうとしていることが、少し言い出しにくくて、チョウは、細い首筋に舌をべろりと這わして、シーツの上で居心地悪そうに身を竦ませているジェーンをぶるりと震えさせた。
「えっ? うわっ」
「なぁ、ジェーン、勃たせたいか?」
「……だから、勃たないんだって」
ジェーンは、ぎこちなく苦笑する。
「尻の穴から攻める手もある」
ずばりとチョウが提案すると、ぱちりと音がしそうなほど、勢いよく睫毛を跳ね上げ、ジェーンは大きく目を見開いた。青い目がまじまじとチョウを見つめる。
「……ほんと、驚かされるよね、チョウには」
チョウは、感心したように見上げてくる金髪の頬と目元に唇を押し当てた。
「やったことあるか?」
「……僕の方が、チョウより、人生経験が長いはずなんだけど、残念ながら、それほどバラエティに富んだ性生活は送ってなくて」
軽口を叩いているが、ジェーンの目の中には不安があって、チョウは、怖がらせたいわけじゃないとジェーンの髪に不器用に触れた。
「やりたくなきゃ、やめておこう。俺も別に、そんなに詳しいわけじゃない。ただ、軍隊なんかで、男ばっかりで暮らしてると、そういう下世話な噂話なら、腐るほどあったってだけだ」
「噂話なのかい? その、戦地帰りで、やりたいばっかりなのに、精神的なアレコレで、勃起できなくなった夫を、奥さんが……その」
「まぁ、そういうたぐいの話だな。他には、もう出しつくした後でも、彼女に尻を弄られて、もう一発、絞り取られただとか」
ジェーンの目に笑みが浮かんだ。
「なんか、凄そうな話だね。……あのさ、一応、興味はあるんだけど……」
腰の下に枕を差し込まれたまま、さっきからジェーンは、天井の染みを数えている。
「チョウって、……っ、実は、すごい、よねっ」
ジェーンの足は、腿を掴まれ、股ぐらをチョウに晒している。そして、尻の合わせでは、たっぷりとゼリーで濡れたチョウの指が、さっきから、くちゅくちゅと肉と水の混ざる濡れた卑猥な音を立てている。せめて、軽口でも叩いていなければ、ジェーンはやっていられない。
チョウは、不安そうに落ち着かない呼吸を繰り返しているジェーンの下腹の辺りをじっと注視していた。
「どこが?」
「我慢強いって、いうか、さ、」
指を飲み込み、広がった部分は、さっきから、何度も咥え込んだ指を締めつけるように、口を窄めたり、緩めたりして、溢れだしたゼリーでねっとりと濡れている。
「痛くないか、ジェーン?」
「……うん、平気、っていうかさ、」
最初、処女地の肉の中を穿たれるのは、本当に不安で、ジェーンは、みっともなくチョウの身体にしがみついてしまったというのに、今、感じているのは、落ち着かなさだけだ。体内に男の太い指を受け入れ、そこを弄られている異様さも、時間がたてば馴染んでしまい、いままで感じたことのない部分が、熱くて腰がもじもじと落ち着かない。だから、染みを数えている。
「っ、ぁ」
チョウの手にペニスを握られ、思わずジェーンは声を上げていた。
チョウは、ゆるゆると、ペニスを扱きだす。思わず、ジェーンは腰を捩った。
「少しつづ、勃ってきてるの、自分で気付いてたか?」
「……っうん。だって、気持ちいい、んだ」
前をゆるゆると扱きながら、体内の奥深くで、チョウの指が、慎重すぎるくらい慎重に動いていた。
そこがいいとわかってくると、実のところ、肉壁を探る指の動きが、優し過ぎて、ジェーンは、ちょっともどかしい気にさえさせられている。
まるで初めての女の子にするような気遣いは、ジェーンは自分にふさわしくないと思ったし、チョウにだって、そんな優しさは似合わない。
「ねぇ、っ、チョウ、」
やっと勃ったペニスの剥き出しの先の部分を撫でられると、たまらなく良かったし、チョウの指が、じわじわと肉の中へと侵入してくると、そうしたくないのに、ジェーンの腰は跳ねた。さっき、触れられてとてもよかったところの側まできているのを感じて、欲しがる腰は勝手に捩れ、そのあさましさに、ジェーンは、自分でも苦笑したくなる。しかし、確かに、飢えたような衝動があった。
「あのさ、もし、チョウから見て、僕のそこが、性器の役割を果たしても壊れなさそうだと思うんなら、……っ、僕の中にいれない?」
思わず、チョウは、ジェーンの濡れた肉の中で動かしていた指を止めた。
「おい? ジェーン、お前、本気か? 何を考えている?」
尻に指を咥え込んだまま、シーツを掴むジェーンは、反らした胸を軽く喘がせながら、誘惑するように潤んだ目でチョウを見つめている。
「実は、あんまり、何も考えてないんだけど、……指で、これだけ、気持ちがいいんだったら、チョウのアレでしてもらったら、かなりいいんじゃないかなって」
反り返るようにして寝そべりながら、ジェーンが、片手を伸ばし、腹を付く程、勃起したまま、ずっとお預けをくらっているチョウのものへと手を伸ばしてきた。重く性感を溜めているそこを、柔らかい手でやわやわと触られれば、ずっと耐えている射精にはやる気持ちが煽られた。だが、チョウは、自分を押しとどめる。
「ジェーン」
ジェーンには、嘘がある。
「怖い顔をしないでよ、チョウ」
勃ったペニスを掴んでも、チョウの表情が変わらない。
「……あのさ、こんなこと言うと、もう充分、僕に引いてる君を、もっと引かせることになっちゃうと思うんだけど、正直に言って、今、僕は、ちょっと壊れかけてて、……君にとって迷惑だろうとは思うんだけど、実はさ、誰かのオンナのコになって、しがみついていたいだとか、ただ、ただ、気持ちよくなりたいだと、そういう欲求がさ」
自嘲気味に、ジェーンは打ち明ける。だが、未練はたっぷりあって、ジェーンの手は、チョウのものを握ったままだ。
チョウの眉が難しく寄っていた。
「……そう、簡単なことじゃないぞ」
しばらく、間を置いて、詰めていた息を吐き出すように、チョウが言った。
「それで、いい」
まだ、嵌められたままの指に少し顔をしかめながら、身を起こし、ジェーンは、チョウの胸に抱きついた。
「っ、あ、……っは、……くっ、ぅ、ん、っ」
願いは聞き遂げられたものの、やはりそれは、チョウの言葉通り、困難なことだった。
今も、狭い部分を拡げながら入ってくるものが太過ぎて、押し広げられる尻の穴は、ぎちぎちと苦痛を訴えている。四つん這いになれと言ったチョウに嫌だと首を振り、最初、正常位で、ジェーンは繋がろうとしたが、それは、痛すぎて無理だった。シーツを手の中にきつく掴んで、ジェーンは、犬のように四つん這いで這い、チョウのものを尻に受け入れている。腹の中が一杯で、息が出来ないような気がしていて、ジェーンは、口も閉じることが出来ず、はぁはぁと、懸命に喘いでいる。チョウが丹念に濡らし、拡げてくれたおかげで、柔らかくなっているそこは、今のところ、切れたりたようなぴりりとした痛みを感じずに済んでいるが、硬く太いものを埋められて、重苦しい。
「あっ」
ずるりとまた、入り込んできたものに、ジェーンの下半身は痺れだし、とうとう腰から下が、自分のものでないような感覚だ。
一杯に広がった肉の壁をぎしぎしと軋ませながら、まだ、硬く重いものが、ジェーンの中に埋めようとしていく。体内を埋めるペニスが大きすぎて、その衝撃に耐えるだけでも必死で、もう、自分が、今、どんな状態なのか、わからなくなっていたが、思わず、あっ、と、声が出た時、ジェーンは自分が信じられず、自失した。下腹部が濡れていた。太腿を温かいものが伝っていた。
「チョウ! チョウ!」
自分が失禁したんだと、どれだけ止めようと焦っても、感覚のおかしくなっている下半身では、意思の力でなどどうにもならず、ペニスからは、ちょろちょろと尿が伝い落ちていく。
「どうしよう、チョウ!」
部屋に広がる湿った匂いと、少し緊張を緩めたジェーンの身体に、チョウは、何が起きたのか、想像はついた。こんな失態をしでかした年上の男の焦りも、理解できた。
とりあえず、チョウは、被害の範囲を狭めようと、ジェーンの腰の下へと、掛け布団を引き寄せる。
それから、恥ずかしさのあまり、半勃ちペニスを自分で掴んで、身体を丸めこんだジェーンの背中を撫で、チョウは、ゆっくりと手を伸ばして、金の髪にも触れた。
「大丈夫だ。気にするな、ジェーン」
顔を触られて、自分が泣いていることにジェーンは気付いた。
でも、涙は止められなかった。
チョウの手が、なだめるように、優しく背中を撫でるのを感じたが、ジェーンは、恥に苦しんだ。手の中のものは、勢いはないものの、あいかわらず失禁し続け、生温かい液体が、足を伝っている。部屋の中には、自分の尿の匂いが広がり、尿意さえ、わけもわからなくなるほど、深い部分まで埋めつけられたままのペニスのせいで、まだ、尻の穴は、大きく開いたままだ。
なのに、チョウが、この失態のせいで、抜いてしまったら、どうしようというのが、一番のジェーンの心配だった。
「泣かなくていい、ジェーン。落ち着いて、息を吐いて。そう。ここの寝具を汚したことなら、余分に金を置いていくだけだ」
「チョウ……チョウ……」
縋るように名を呼べば、チョウは、額を合わせ、優しくキスをくれた。
「大丈夫、ジェーン。心配しなくていい。よくあることだ」
悔しそうに泣く男をなだめてはいたが、チョウは、嗚咽を堪えようと、はぁはぁと、大きく息をするジェーンの潤んだ目に、かなりの努力で自分を自制していた。無理矢理抜いて、その刺激でもっとジェーンを失禁させてはかわいそうだと、まだ、刺したままのものは、金髪の年上の激しい息に合わせて、濡れた熱い肉壁を動かし、きゅっ、きゅっとチョウのペニスを締めつけてくる。
「ねぇ、チョウ……」
「……無理はやめるか」
「チョウ!」
子供にするように髪を撫でられ、ジェーンは、思い切り頭を振った。
「チョウ、嫌だ。やめないでくれ!」
「ジェーン?」
出すだけなら、自分でするからいいと言おうとしたチョウには、縋りついてくるような、切羽詰まったジェーンの様子は、目の毒だった。人を魅了する甘い目が、涙で潤んでチョウを見つめていた。
ジェーンが失禁したことも、興が覚めるというよりは、そんな姿を晒し震えたジェーンに、チョウは、健全とは言い難い欲望を感じてしまっていたのだ。
ただでさえ、勃起してからの長時間の我慢に、理性の糸は切れかかっていた。
ジェーンとは、昼間、一緒に仕事をする仲間だという意識があったから、強姦するような真似だけはしないと決めていたが、もう、それも、プリーズと、涙目で訴えられれば、忍耐など持ちはしない。
濡れた布団の上ではするのだけは、ジェーンが酷く嫌がるせいで、尿をしみ込ませた上布団だけ、ベッドから剥いでしまうと、すぐチョウは、ジェーンの足を大きく割った。
「……チョウ……」
圧し掛かれば、あんな風に頼んだくせに、目を見開いたジェーンは息を飲んで、チョウを見上げている。
ジェーンが最初に望んだ通り、抱き合った形で、濡れて緩んだ場所にペニスの先をあてがったチョウは、興奮に荒い息を押さえ込もうと、奥歯をぎりぎりと噛みしめながら、ぶすりと無慈悲に太いものを埋め込んでいった。
「っ、は、んんっーー! ぅく、あ」
苦しがって、ジェーンが腹を反らし、のけ反る。
だが、腰を掴んで離さないチョウは、ジェーンの処女地が、自分のペニスを最奥へと飲み込むまで、どれだけ暴れても離さなかった。
「んーーー! んんっつ! んっ!」
熱い肉の狭間は、硬く太いもので、ギチギチに埋め尽くされ、ずいぶんと時間がかかってからやっと尻の谷間を、チョウの陰毛が擦る。
ぎゅっと瞑った目尻に涙をいっぱいに溜めて、ジェーンは左右に頭を打ち振るいながら、腰を掴むチョウの腕に爪を立てている。
本気で立てられた爪は、さすがに痛かった。
誰が見ても、一目瞭然の5本指の爪跡は、しばらくチョウに腕まくりを許しそうにない。
最奥で更に、すんっと腰を奥へと突き出したチョウに、ジェーンがのけ反りを酷くする。
「んっ! はぁっ、ああ、っ、っあ!」
「んぁー! っ!!」
膝の上に抱くように、ジェーンの尻を抱え直して、チョウは、ゆっくりと腰を遣い始めた。
「あ、っあ、あ!」
中からの刺激だけでは、到底いけるはずもないジェーンのペニスを、手の中に握って、腰の動きに合わせ、上下に扱く。
「……ジェーンっ……」
初めてだというジェーンの中は、勿論、破瓜者であるチョウを、拒むように動きこそすれ、何の技巧も持たなかったが、巨大な侵入物に対する生理的な反応として、濡れた肉壁を何度も蠢かし、予期せぬタイミングでぎりぎりと締め上げ、チョウの興奮を煽ってくる。
「ジェーン、っ、我慢できるか……?」
チョウの声は、自分でも恥ずかしい程、しわがれた。
「……た、ぶんっ……」
ジェーンは、犯されるということが、どういうことなのか、身をもって思い知った。
揺さぶられているのは、自分の身体なのに、今、この瞬間、身体はチョウの支配下にある。
尻の中を出入りするものは、あまりに自分勝手で、ジェーンの目からは、涙があふれ続け、喉は、突き上げられる度、悲鳴だか、嬌声だか付かない、高い音を上げ続けた。
「っ、あっ、あ!」
尻の穴を太いものでずぶずぶと穿たれ、中を擦られるのは、全くいいとは感じられないというのに、チョウの手の中で扱かれているものは、徐々に硬くなっていっており、下腹部を熱くさせる重苦し甘さも、集まってきている。
排尿感のような、せつなく、ちりちりするような、焦燥感が下腹にはあって、ジェーンは、チョウにきつく掴まれている腰を捩るようにして振っていた。
「あっ、んっ……っぁ」
一度、その感覚を快感だと認識すると、声が止まらなかった。
「あっ、……んっ、ん、んんっ!」
「っ、ぁは、……はっ、……あ、んっ!」
腰は、何度でも捩じれ、チョウが腿を抱え直す始末だ。
尻に刺さっているものが、太すぎて、苦しく、何度か、意識的にジェーンは締めつけた。だが、締めつければ、締めつけるほど、それは太くて苦しくなる。
「……っ、ジェーン、あんたな……」
息を詰まらせたようなチョウの声がし、引き寄せられた腰の中を焼き尽くすように、灼熱の太棒が引っ掻いていく。
あまりに早い抽挿に、たまらず、ジェーンは震えながら、チョウにしがみついた。
自分が壊れると、思った。
しかし、震える尻肉を容赦なく、ぱんぱんと、チョウの腹が打っていく。
だが、ジェーン・パトリックという人間が、内側からばらばらにされ、壊れてしまう前に、チョウが息を詰めた。ひときわ大きくジェーンを突きあげた腰が止まり、ぶるぶると震える。
はぁっと、大きく息を吐きだすと、チョウの身体がジェーンの上へと覆いかぶさって来た。
「……くそっ、……すげぇ、よかった……」
照れながら、少し悔しそうにするチョウに、見つめられ、わけもなく、ジェーンは、また、泣いていた。
「ほら、ジェーン、今度はお前の番だ。いかせてやる」
ジェーンのものを握ったチョウは、汗の噴き出ているジェーンの身体の至るところにキスをしながら、上下に扱き、中を穿たれている最中にもいきそうになっていたジェーンは、何度も身をくねらせながら、ほどなく、チョウの手の平の中に、白濁を噴き出していた。
ベッドの上へと多めに金を置いた金髪のコンサルタントが、汚した上掛けを絶対に持って帰ると言い張るせいで、チョウは、車のトランクへと濡れた布団を詰め込んでいる。
夜だと言うのに、サングラスをして赤く腫れた目元を隠すジェーンは、服を整えて立っていれば、さっきまであんな淫らなことをしていたなんて伺わせない。
だが、用意ができたと、チョウが声をかけ、ドアの方へと歩き出そうとすると、顔を顰め、足を止めてしまった。
「はいはい。お姫様、抱っこでお連れしましょうか?」
初体験のアナルセックスは、やはり、ジェーンにも多大な影響を及ぼしていて、この男も、上手く歩けないでいるのだ。からかうようにチョウが言うと、むっと、ジェーンは口元に皺を寄せた。
「嘘だよ。そこまで車を寄せるから、待ってろ」
「僕さぁ、……チョウとの、付き合い方、少し考えるよ」
気弱なコンサルタントの発言に、珍しくチョウは深く笑った。
END