ついーとのCJ 3

 

隣に並んで座る必要もないから、自然と離れてベンチにかけていたのだ。背中同士を向き合わせる形になったのは、たまたま、その時向いていた方向のせいだった。

チョウは、少女が大きく漕いでいるブランコが気になっていたし、ジェーンは、ブランコとは反対側の公園の池に泳ぐアヒルについてしゃべっていた。

だが、声は聞えるのだし、顔を向き合わせさえすれば、視線は合って、特に支障はない。

もともと、ヴァンペルトを待つだけの短い間の休憩だ。しかし、そのヴァンペルトが思っていたよりも、遅かった。

ジェーンもアヒルについて語るのに飽きてきていたし、チョウも、少女に、大きくブランコを漕いで落ちないだけの実力があるのを、もう認めていた。

ジェーンがベンチに座ったまま大きくのけ反る。

「ねぇ、チョウ」

「なんだ?」

一瞬、チョウは、ジェーンへと顔を向けるが、特に用事もなさそうなのに呼びかけただけだとわかるジェーンの表情に、すぐ目を反らす。

「ねぇ、チョウ、こっち向いて」

金髪は、上を向いたまま、空が青いねぇと、言う。チョウは、地面を歩くありを見ながら、そうだなと返事をする。

「ねぇ、チョウってば、無視せずに、こっち向いてってば、恥ずかしいの?」

だが、チョウは、相変わらず、公園の中を見渡しながら視線を合わせず、仕方なく、ジェーンは、しょうがないなぁ。じゃぁ、僕から近付こうかと、間の開いていたチョウまでの距離を詰め、肩が触れ合う位置にまで腰をずらす。

「ね、これだけ近いと、もしかして、照れ臭くて、もじもじしてる?」

ジェーンは、チョウの目を覗き込むようにして、振り返って、チョウの顔を覗き込んだ。

途端に、チョウの目は呆れ、肩が大きく竦められる。その上、チョウは、身体の向きまで変えて、そっぽを向いた。

「おやおや、チョウってば、男の子なのに、デート中にそんな恥ずかしがり屋な態度は、問題ありだよ」

ジェーンは、笑っている。

「今更、寝たふりもダメだよ」

先手を取って、釘を刺し、ジェーンは、ゆっくりとチョウへと手を伸ばす。

「手を繋いであげようか? それとも、素敵な天気だし、キスでもしようか?」

ここは、母親に手を引かれる小さな子供たちが駆け回るような、公園だ。通報されたくないチョウは、眉を寄せ、憮然と眉間に皺を寄せながら、懸命に公園の入り口に目を凝らす。

「……ヴァンペルト、早く来い!」

だが、チョウにも油断はあった。まさか、ジェーンも本気ではないと思ったのだ。

「お前っ、馬鹿っ!」

しかし、ベンチに置かれたチョウの手は、急に素早く動いたコンサルタントの手に、一瞬かすめ取られ握られた。

 

END

 

ねぇ、ムーミン、こっち向いての歌でCJでしたー。