コンサルタントの出勤簿 7

 

*過ちを正す?

 

情報を持っているという強盗犯への接見の席に、ジェーンは着いていた。

「ありがとう。君のくれた情報は、現在の君の境遇を助けることになると思うよ」

背中を丸めた男に、礼を言って、看守に戸の鍵を開けてもらったジェーンは、ここでの生活のおかげで、君も色々考えて、過去の過ちを正す気持ちになったんだねだとか、ありきたりのことを言いながら、そこから立ち去ろうとしていたのだが、ふと、笑顔になって振り向いた。

「あ、手袋。ちゃんと反省したなら、気付いていると思うけど、今度は絶対に忘れちゃだめだよ」

 

 

*あ、なんだか、精神的プレッシャー……

 

ジェーンが、かなりの間逡巡し、かなりの覚悟を決めてした告白を、チョウは、いつも通りの無表情で受け止めたのだ。

「そうか」の一言で片づけられたことに、ジェーンのプライドは大きく軋んだ。

「僕みたいな男のよさが、チョウ、君は、まるでわかってないんだ」

きつく皮肉ったが、チョウは動じない。

「僕みたいな男?」

チョウは、黒い目でジェーンを、じっと見つめる。

「じゃぁ、お前のことではないんだな?」

 

 

*ジェーン=胡散臭い

 

ジェーンが、CBIのコンサルタントとして契約し、初出勤を果たした日だ。

華やかかつ、にこやかな笑顔で現れたブロンドに、リズボンは、つかつかと近づいた。

「よろしく、Mr.ジェーン。まず、初めに、あなたに、お話しておきたいことがあるの。それは、我々の仕事は、犯罪者を捕まえ、しかるべき裁判の後、刑務所で服役してもらうことであって、間違っても、その逆は、ダメだと言うこと。わかる? あなたは、自分が刑務所に入ることにならないよう、ちゃんと注意して頂戴」

 

 

*芸術の秋

 

美術館のキュレイターに話を聞く必要があった。

何度も足をとめて、作品に見入るジェーンと違い、展示物の中を歩くチョウは、難解なばかりの芸術品の展示を、肌に合わないと足早だ。だが、途中、一点だけ、わかりやすいものがあった。

裸婦だ。

一枚の葉だけが、豊かな髪を波打たせた女の大事なところを隠す。

「チョウ、いつまでかかりそう?」

ほっとして、思わず足を止めたチョウを、ジェーンが笑う。

「なんなら、秋まで待つかい?」

 

 

*どうやら、戦況は一方的になりつつあるようです! ああ! 襟を掴まれた! コンサルタント、危ない!

 

CBIのメンバーは、事件への協力依頼で、出張中だった。

明日の打ち合わせのために、リグスビーの部屋のドアを叩いたヴァンペルトは、戸口での立ち話をしていたのだ。

「なんだか、上、うるさくないですか?」

部屋の中へと、ヴァンペルトを誘いたいリグスビーは、上の空だ。

「チョウが、服でも引き摺るってるんだろう」

「は? 服を引き摺ってこんな音がしますか?」

「きっと、また、ジェーンが余計なことを言ってチョウを怒らせたんだ。プロレスだよ。中身ごと服を引き摺れば、こんな音もするだろ」