コンサルタントの出勤簿 2

 

*そんな気がしたんだけど……?

 

その犯行から、今回の犯人が、他州でも、罪を犯していたとほぼ確信できたが、CBIには、証拠となるような資料がなかった。

「……確かに、あんたはすごいよ」

リズボンは、頭を抱え、チョウは、呆れている。

「だって、犯罪を捜査する機関って、外部からの挑発にはがっちりスクラムを組んじゃってすごく連携力強いのに、なぜか、同業者からの挑発には、ものすごく反応するだろう?」

にこやかな笑顔で電話を切るジェーンは、FBIの捜査官をカンカンに怒らせた直後だ。向こうが持っている捜査資料を見せて欲しいとヴァンペルトが依頼すると、即座に断られた。そこで、その会話を聞いていたジェーンが電話を取り上げたのだが、FBIは、資料は貸してやるが代わりに、お前が頭を下げて取りに来いと、怒鳴ったのだ。

「面白い人だったね」

ジェーンは、笑っている。

 

「暇だね……チョウ」

コンサルタントという立場のジェーンでは、捜査資料の閲覧に不適切であるという理由から、チョウも空の旅に同行だ。

「静かにしてろ」

しばらくの間、隣のジェーンは静かにしていたが、

「ピンポンパンポン。本日は、弊社のフライトをご利用いただき、誠にありがとうございます。緊急時の本機での、非難方法についてお知らせさせていただいます。緊急時には、皆さまの御足もとにあります、救命胴衣をご利用いただくこととなります。各座席に一つ、必ず用意されておりますので、決してお慌てにならないよう、お願いいたします。さて、本機は、まもなく、緊急着陸を余儀なくされております。左手に見えます島、ご覧になれますでしょうか? あちらまで、皆さまが無事辿りつけますよう、職員一同、心よりお祈り申し上げております。本日は、ご搭乗、誠にありがとうございました。またのご搭乗をお待ちしております」

「……」

「チョウってさ、飛行機、苦手だよね?」

 

 

*続、資料を借りに行くところです。

 

それでも、無事に飛行機は空港に着いたのだ。

ほっとしたチョウは、さっさと用事を済ませようと、空港の中を足早に歩いていた。

だが、金髪のコンサルタントは、ふらふらとして、なかなか前に足を勧めようとしない。

何が気になるのか、きょろきょろと視線を動かし、とうとう、前を歩いていた人にぶつかってしまった。

「すみません」

相手は、ひどくむっとしている。

「ああ、すみません。帽子が落ちてしまった。申し訳なかったです」

その怒りは、必要以上のものに思われた。相手は、旅客機の機長のようだ。制服が重々しい。

「これから、私は、フライトなんだ」

「ええ、それは、申し訳ない。……ん? 僕が落ちたって言ったのが気に入らないんですか?」

ジェーンは、床に膝をつき、帽子を拾うと、埃を払った。

「じゃぁ」

にっこりと、ジェーンは笑って、傲慢な機長の頭に帽子をしっかりと乗せる。

「ぶつかって、申し訳なかったです。これでもう、あなたのは、二度と『無事着陸』することはありませんよ。よい、フライトを」

チョウの胃は、きりきりとしてしょうがなかった。

 

 

*カリフォルニア州を救った男

 

月曜日、CBIに新しいコンサルタントとしてジェーン・パトリックという男がやってきた。

火曜日、殺人事件が起こり、捜査が開始される。

水曜日、チョウ、カリフォルニアを犯罪者の悪から守りたければ僕と寝ようとジェーンに口説かれる。

木曜日、金髪のコンサルタントが、被害者に失礼な口をきき、捜査が一時混乱に陥る。

金曜日、ジェーン、もう一度、チョウを口説く。

土曜日、無事、事件解決。と、同時に、FBIより、連続殺人犯がカリフォルニアに逃亡したとの連絡あり。

日曜日、チョウ、カリフォルニアを救う。

 

 

*ジェーンは、ブロンドです。

 

「チョウ、どうしよう。どこも、ここも、痛いんだ」

「ふーん」

「本当なんだよ。ほら、ここも、ここも」

ジェーンは額を指差し、今度は、足を指で示す。

「腹も?」

「ん?どうかな、うん。やっぱり、お腹もみたいだ」

指を押し当てた腹も痛くて、ジェーンは、困ったように眉を寄せて、じっとチョウを見つめる。

チョウは、あきれ顔でジェーンを眺めた。

席を立ったチョウは、薬箱を手に戻って来る。

「わかっちゃった?」

「指の捻挫だろう? 何をしたんだ? シップを貼ってやるから、ブロンドジョークは今度にしろ」

 

 

*条件反射

 

にやにやと、二人の会話をリグスビーが聞いていたのだ。

「ジェーンが手榴弾を投げつけてきた。どうする、チョウ?」

「ピンを抜いて投げ返す」

「酷いな、チョウ!」