コンサルタントの出勤簿12 (リグじぇん風味)

 

*食いしん坊二人組

 

「ねぇ、あの人達のこと、僕、怒らせたかな?」

「だろうな……」

聞き込みに行った先の農園の老人は、今すぐにでも猟銃を取り出してきそうな顔つきで、ジェーンを玄関まで見送りに出ていた。親切心からじゃない。二度と戻って来るなという気持ちの表れだ。

「僕、あの奥さんが焼いたクッキーの味、好きだったのにな」

「俺もだよ……」

さっくりと美味かったクッキーを同じようにおいしく食べていたリグスビーは、ボスへの言いわけを考えながら、がっくりと肩を落として歩いている。

「ね。今回、ご一緒してるFBIは、やっぱり君にとっても邪魔?」

「邪魔……だけど、急になんでだ? 上手くやれってボスから言われてるだろ」

「あ、うん、……そうだね。でも、ちょっと待って、あ、すみません」

人差し指を立てて、リグスビーを制したジェーンはいきなり擦れ違った村人に声をかけ、携帯を借りた。

「あの、ちょっとお伝えしたいことがあって。いえ、名前は言えません。でも、本当のことです。ラウドーの家の畑に、現金が埋まっているという噂があって」

ジェーンは素早く電話を切る。

「ジェーン! お前、それはないって、さっき自分で言ってただろうが」

「うん。でもさ、あの年齢じゃ、畑を耕すのも大変だろう? こうして電話しとけば、熱心なFBIがない現金を探してラウドー家の畑を残らず土起こししてくれる。僕たちも、邪魔されずに捜査が出来る」

「ジェーン……!」

ジェーンはちらちとまだ白いひげの家人が玄関に仁王立ちのラウドー家を振り返る。

「また、お茶に誘ってくれるかなぁ、ねぇ、リグスビー?」

 

 

*直情ロマンティスト

 

「……あー、あのさ、勿論、嵌めてくれなくていいから、……その、指輪を送らせてくれ」

事件のせいで懇意になった高級宝石店へとリグスビーに連れてこられていたジェーンは、彼の給料では精一杯だろう指輪を目の前に差し出され、額へと皺を寄せた。

「なに、これ……?」

「何って、……その、迷惑だろうけど、」

リグスビーは自分がすることを少し誇りに思いながらも恥ずかしいとも思っているようだ。何度もスボンのポケットに手を入れたり出したりしている。

「それで、……パトリックへ愛を込めてウェインよりって彫ろうと思ってるんだけど、どうだ?」

真摯な目で見つめられて、仕方なく、ジェーンは真面目に返答を返した。

「……そうだね、僕だったら、ウェインより愛を込めて程度にしとくかな」

 

 

*恋人の真意

 

何か欲しいものはないかと、しつこくリグスビーが聞いたから、見て楽しめるきれいなものが欲しいかなと答えたのだ。

リグスビーが寄こした何の変哲もない鏡を手に、彼が本気でこれを贈って寄こしたのか、それとも違うのか、いや、できれば違っていてほしいとジェーンはずっと悩んでいる。

 

 

*わざとじゃないんだよ?

 

「待ってー! お願いだ、待ってくれ! 頼む、止まって!」

懸命にジェーンが追いかけてきていたのは知っていたが、リグスビーは、それこそ、必死に、走って逃げた。

「ごめんね。こんなことになるなんて」

ジェーンはまだ謝っている。

「ほら、君も謝りなさい。ジョン。リグスビーに噛みつくなんて悪い犬だ」

「……そんなデカイ犬の手綱を放した、あんたが一番悪い奴だろ……!」

 

 

*何したの?

 

「ねぇ、リグスビー、おまわりさんって、悪い奴を捕まえるのが仕事だよね?」

「うるさいっ! あんたのせいだろ。黙ってとにかく逃げろっ!」