日曜の朝の憂鬱

 

 

仕事のない日は、ぼんやりとコインランドリーで午前中を過ごすことが多かった。

部屋の掃除は、週に二度頼んでいた。洗濯ものもほぼクリーニングだ。それでも、こまごまとしたものは、どうしても手元に残る。

ジェーンは、それを紙袋に入れて、近所のランドリーまで行くのだ。

待ち時間に本を読んでいるのに飽きれば、ぼんやりと街並みを眺める。だが、毎週通う場所の風景がそれほど変わることはなく、大抵ジェーンは、すぐつまらないと感じる。けれども、そのつまさなさこそ、本来の自分には似合いだと思うのだ。隅には埃の溜まった剥き出しのコンクリートの床と、ペンキの禿げたコンクリの壁、未だ、RJへの手掛かりさえ掴めずにいる自分は、事件解決率の高さを州知事から伝言で言葉が貰えるような輝かしい立場にいるべきではなく、この湿った場所が似合いだとさえ、がたつく椅子に腰かけながら思う。

CBIへと着ていくYシャツを、クリーニングに出さず、皺くちゃのまま着るのも、それが自分に似合いだと思うからだ。だが、そのせいで、毎週、ジェーンは、お気に入りでもなんでもない場所に通い続けている。

「やぁ」

目の前にやっと歩ける程度の小さな女の子がふらふらと歩いてきて目があったから、挨拶をしたら、途端に、母親がすごい目付きでジェーンを睨み、大事な子供を抱きかかえて、自分の洗濯機の前でイライラと乾燥が終わるのを待ち始めた。日曜の朝の憂鬱さとさえ無縁であれば、ジェーンは笑顔一つと、ほんの数語の会話で、あの親子の家に招待されることさえできる自信があった。

だが、よく晴れた、気持ちのいい日曜に、そんな嘘にも似た言葉を並べ立てる気にもならず、ジェーンは、椅子から腰を上げると、自分の洗剤まみれの洗濯物を、洗濯機から取り出すとそのまま紙袋に突っ込んだ。紙の袋には、すぐさま、濡れ染みが広がっていく。それも気にせず、突然のジェーンの行動に怖がっている母親に、ほんの少しの笑顔を見せ、軽く手を振ると、コインランドリーを後にした。

 

 

「お前、何しに来た? ……それは、何だ?」

「僕の使ってたランドリーの洗濯機が途中で故障しちゃってさ、洗濯機を貸してよ。この時間だし、チョウなら、もう洗濯も終わってるよね?」

ぽたぽたと紙袋からは水滴が伝い床へと落ち水たまりを作っている。それを抱えているジェーンの服もズボンもぐっしょりと濡れている。

「……まぁ、いい、入れ」

にこにこと笑いながら玄関に立つジェーンの状態は完全に不審だというのに、余計なことを聞こうとせず、受け入れる懐の広さが、チョウのいいところだ。

「ちょっと待ってろ」

だが、さすがに、このままでは家には入れてもらえず、洗濯ものは取り上げられ、紙袋のままゴミ袋に突っ込まれた。そして、突っ返される。

「洗濯機は、バスルームの手前だ」

チョウは言ってから、濡れて、洗剤の匂いをぷんぷんとさせているジェーンの全身を眺めまわした。

「お前、ついでに、今、着てるものも全部、突っ込め。Tシャツと、短パンを貸してやる」

 

一緒に洗濯機に入れなければ、この部屋にいさせないと言わんばかりだった表情のチョウに、着る物を渡されたジェーンは、家主の指示通り下着以外全部洗濯機の中に突っ込み、ぼんやりと振動する機械の上で頬杖をついていた。ランドリーにいた時の気分が抜けず、いくらでも暇つぶしの方法があるチョウの部屋にきていながら、つい同じように時間を潰していただけだが、いきなり洗濯機を貸すことになったチョウの方はそんな気分でもないらしかった。

「どうしたんだ? なんでこっちにこない?」

ぼんやりとしていると、いきなり太い腕に後ろから抱きしめられて、ジェーンは驚いた。

しかも、チョウの唇は、無防備だった項に落ちている。項に数度キスした柔らかな唇は、その後、ジェーンの耳を噛んだ。首を竦めたジェーンが事態にどう反応しようかと迷っているうちに、腹を抱きしめるように回されていた手は、不埒な動きで、Tシャツの裾から中へと侵入しようとしだし、だが、ジェーンがあまりはかばかしい反応をしていないと気付くと、その手は、そのまま尻へと動いた。

「嫌なのか?」

温かな手が尻を撫でながら耳元で囁く。こんなチョウは珍しい。

「……別に、嫌なわけじゃないけど、……ちょっと、いきなりで驚いたっていうか」

「そうか」

ジェーンの戸惑いを、薄弱な同意だと強引に片付けたチョウの指は、短い短パンの裾から、潜り込み、ジェーンの尻を直に触り出す。

ぴっちりとした短パンと、その下の下着とが尻に食い込み、軽い痛みはジェーンに眉を顰めさせた。だが、チョウは、気にせず、熱心に指をたっぷりとした尻肉の谷間へと忍び込ませ、とうとう直に慎ましげに口を閉じた窄まりの上へと到達する。

「ねぇ! ちょっと、チョウ!」

短く生えた薄い毛と一緒に、口を閉じるためにきゅっと窄まった皺を撫でられ、ジェーンは焦る。

隣には、歯ブラシの立つ、洗面台だ。

「何? どうしたの? やるのかい? わざわざ、こんなとこで?」

身動きを封じるようにジェーンの腹が押し付けられた洗濯機は、さっきから、懸命に振動中だ。

振り向くことさえ阻むチョウは、しつこくジェーンの頬へとキスを繰り返し、力強い身体を押しつけている。

ジェーンが、肛門の皺の上ばかりを緩く撫で続ける指の動きに、そのまま捻じ込まれるんじゃないかと、痛みを想像し強く身を竦ませると急に手が尻から離れた。

しかし、ジェーンがほっと息を付く暇もなく、その手は戻って来る。しかも、また強引に裾から手を入れ谷間に触れてきた指は濡れていた。チョウが唾液で濡らしたのだ。

「ねぇ! チョウ!」

懸念通り、指はそのまま、捻じ込まれる。濡れているといっても、多少だ。クリームを使った時のような滑らかさはない。重苦し痛みと共に、指は浅く捻じ込まれ、そこでぐりぐりと動かされる。

チョウは、自分の熱く勃起した腰をぐいぐいとジェーンの尻に押し付ける。

その気でもないのに、強引に捻じ込まれた指の不快感に、ジェーンが呻くのを、なだめすかすように、チョウは項に何度も口づける。

「ジェーン、嫌なのか?」

開いた尻穴の中を弄る指先は、さっさとその気にさせようというように、せわしなく肉壁の中を掻き回す。ぴっちりとした短パンが無理矢理引きあげられ、尻に食い込むのも痛かった。

「ねぇ、チョウ、落ち着こうよ」

きつく洗濯機に押し付けられている下腹も痛い。

「君、洗剤の匂いをさせてる人に、発情する癖でもあったの?」

強引に振り返り、仕返しに、ジェーンはチョウの唇へと噛みついた。圧し掛かっているチョウの腕力から完全に逃れるのはさすがに無理で、少し、目標からずれたから、噛みついたのは殆ど顎ばかりだが、ジェーンの不機嫌は、伝わったようだ。

強引に肉壁を押し広げながら、奥ばかりを目指していた指が戸惑うように動きを止めた。だが、チョウがためらったのは一瞬だった。顔を顰め、睨みつけているジェーンの唇を正確に塞ぎ直すと、今度は動きを丁寧なものに変えて、指が肉壁の中を動き出す。

「やめっ」

緩やかに、こんもりとした膨らみの上を太い指で撫でられ、キスで唇を塞がれたジェーンの喉は、クゥッんっと、情けなくも歓迎の音を上げていた。ビクリと腿に力が入り、自然と穴が咥え込んだ指を締めあげる。慎重に力加減されたチョウの指が、何度もそこばかりを攻めてくれば、ジェーンの前は、正直に勃ち上がってしまった。盛り上がった短パンの布を、チョウの手がこれ見よがしに包み込む。

後ろから、指を入れられ、前は薄い布越しにしつこく弄られ、ジェーンの腰は揺れてしまう。

「……っん……チョウっ」

「ジェーン……」

チョウは、硬く勃った腰を尻へと押しつけてくる。

「……っ、無、っ理、っ」

懸命に振られるジェーンの額に皺が寄る。

散々弄られ、指の太さに馴染んだ肉筒は緩み、指程度なら、もうチョウの思い通りに抜き挿しも可能で、多少強引な動きをしてもジェーンを鳴かせはしたが、それは、嫌だと、ジェーンは何度も首を振った。

チョウは、弄られる前と後ろに、熱を発して、色気を溜めているジェーンの背中から尻へのラインを舐めるように見つめると、すばやく決心し、ジェーンの短パンを、ずるりと、ずり下ろす。

膝の辺りに短パンを纏わりつかせた足を蹴って、腿の幅を狭めさせると、取り出したものを、尻の下の僅かな隙間に捻じ込んでいった。

たっぷりと肉のついた、金髪のやわらかい腿は、狭くて湿った気持ちのいいあの穴と比べても、チョウをさほどがっかりとはさせなかった。

吸いつくようなきめ細かい肌質は、ジェーンの年が若すぎないせいで、張りと一緒に蕩けるような肉の柔らかさを持ち合わせ、突き入れる度に、チョウを満足させる。

チョウは、剥き出しになり、揺れているジェーンの勃起を掴むと、濡れている先端を包皮で包み込むようにしてぐじゅぐじゅと扱きあげた。

「……あっ、……んんっ」

肩口に顔を埋めてジェーンのいい匂いを嗅ぎながら揺さぶれば、ジェーンが押し当てられている洗濯機に腰骨が当たるほど、腰を振る。

「あっ、っ、……チョウっ」

後ろから腿の間に硬いペニスを突き刺され揺さぶられるままに、手の中に包まれたいやらしいものを、同じペースで扱かれるのは、たまらない快感だった。

こんな場所でとういのも、ジェーンを興奮させていた。洗濯機は、単調な動きで、仕事を続けているのだ。

だが、興奮の中にあっても、腰を掴んでいるチョウの右手が、いつまでも、そこに留まるのが、ジェーンを焦れさせていた。

さっきまでのように、尻の中を弄って欲しかった。

前を扱かれて喘いでいるくせに、まだ、そんな風に望む自分が恥ずかしくて、きつく瞑られたジェーンの目元は赤く染まる。

「ねぇ、……っ、チョウっ」

言い出しづらさに唇を舐めるジェーンの舌を、誤解したチョウが吸い上げる。チョウの腰の動きが激しくなる。

激しく揺さぶられ、ジェーンの我慢も限界だった。

チョウの手の中で弄られ続けたものは、とろとろといやらしい液を漏らして、チョウの手を汚し、もう、今にも出そうなのだ。

じくじくと痛みのように急き立てる下腹の疼きに、はぁはぁと荒い息が止められない。

「ねぇっ、……ねぇっ」

捩られる尻に、チョウがますます身体をジェーンへと押しつける。

深く、腿を犯され、汚される恥ずかしさで、ジェーンは頭がくらくらする。

「……ぁっ、……ねぇ、……んんっ、チョウ、も、いくっ」

ジェーンは腹の下の洗濯機と、チョウの身体の間で、身体を震わせた。

「……あっ、も、ダメっ、……イクっ、チョウっ、ンっ……イク、イクっ!」

 

 

 

 

チョウの精液で汚れた内腿を簡単にタオルで拭われて、居間へと引き摺られたジェーンは、チョウと一緒に床で足も投げ出し寝そべったままだ。

ふーっと、長く息をジェーンが吐き出す。

「なんだか、すっきりしたよ」

「……そうか、よかったな」

怪訝そうなチョウの声に、目を瞑ったままくすりとジェーンは笑う。

「何のことだか、わかんないくせに」

 

 

 

洗い終わった洗濯ものを干す時間は、まだ十分にあった。

 

 

 

 

 

END