メンタリストでなんちゃって童話 6
*シンデレラ
むかしむかし、スマイル王国に、灰かぶりのあだ名を持つ、チョウという少女がいました。チョウには義理の母と、義理の姉が二人います。
「チョウ! ほら、チョウ! 居間の掃除は? もうすんだ?」
上の姉のジェーンがチョウを呼び付けます。
「そこは、後だ」
チョウは台所の掃除中です。そこの掃除を言いつけたのは、義母のヴァンペルトです。
「お義母さんは、あまり台所仕事が得意じゃないんだ。お前も知ってることだろ。この汚れものの山をどうにかしないと、今晩飯も食えない」
「でも、僕が頼んだのが先」
「しょうがないだろ。待ってろ。後でやる」
いじめるには、末娘は図太過ぎて、何を言っても、動じないので面白くないのですが、それでも、ジェーンは、新しくできたこの妹が構いたくて仕方がありませんでした。
「じゃぁ、朝に頼んだ、僕の部屋の掃除は?」
「してある」
確かにしてあるのです。しかし、掃除済みのはずのジェーンの部屋は、ぴかぴかの一歩手前というか、文句を言うには、きちんとしていて、けれども、手放しでほめるには、今一つ納得いかない。このむず痒くもグレーな出来栄えです。いつもこんな仕事をチョウはします。チョウの仕事ぶりはけちが付けにくいくせに、何か言わずにはいられない感じで、ジェーンの欲求不満は募ります。
「あの、……チョウ」
「お前の部屋の掃除も終わってる」
次姉のリグスビーなど、眼光の鋭いチョウ相手に、頼み事をするのも難しい様子で、ドアの陰から、おずおずと半分だけ顔を出しています。
「お前ら、3人とも、全員家事能力がゼロって、全く、今までどうやって生き延びてきたんだ」
そうなのです。別段、チョウは、一人で家事をさせられて、いじめられているわけではありません。継母一家が、まるで家事ができないせいで、一人で家を切り盛りしているだけでした。手伝わせると、余計に仕事が増えるので、その方が迷惑だとチョウは思っています。
ジェーンが、まだ、チョウの周りをウロウロしています。
「あのさ、チョウ、僕のドレスを洗濯……」
「した」
「じゃぁ、その中に、下着が」
「知るか。自分で探せ」
「ジェーン、俺が一緒に探してやるから」
ごくたまに、奇跡のようにとびきり美味いものを作る姉と、何を作ってもおいしくない母の食卓しかしらないリグスビーは、毎食、安心して食べられるものを作ってくれるチョウは、尊敬の対象で、逆らう気は毛頭ありません。
「チョウ、台所が済んだら、絶対にすぐに居間の掃除をしてよ。僕が頼んだのに、後に回したら承知しないよ」
「ジェーン! そんなに我儘を言って、チョウが怒ったらどうするんだ」
「怒らせないよ。だって、僕の方がお姉さんなんだからね」
「わかった。わかったら、もう静かに」
「もう、ちょっと、押さないでよ。リグスビー」
そんな3姉妹の家には、スマイル王国から、お妃さま選びのダンスパーティの招待状が届いていました。
年頃のRJ王子は、ハンサムだと噂です。……ですが、実は、国民は誰も顔を見たことがありませんので、あくまでも噂です。
噂といえば、RJ王子が親善のために他国を訪れると、大抵そこには、ウサギの死骸だったり、飛べなくなった鳥が残されているということですが、王子を守る親衛隊が張り切って後始末をしているので、この風聞も、あくまで噂の域をでません。
謎が、謎を呼び、いつの間にか、国民たちにミステリアスだと人気の高い、RJ王子です。
「なになに? お美しい、貴家の子女を、パーティーにお招きしたく……」
「じゃぁ、チョウは、いけないね。このうちの美しい娘と言えば、僕だから。あ、リグスビーは、来てもいいよ。リグスビーは、若さで勝負しなくちゃね。お金持ちのお坊ちゃんたちに早めに顔を売っておかないと、嫁き遅れちゃうっても困るし」
自慢の金色の巻き毛をくるくると指で弄びなら、また勝手なことをジェーンが言っています。
「あの……ね、チョウ。実は、何かの間違いがあったようで、招待は、二人ってなっていて」
ヴァンペルトが言いにくそうに、チョウを見つめています。実は、ヴァンペルトも、家事能力の高い継子のチョウを、まだ手放したくないという事情がありました。なんといっても、我が子は、口ばかり達者なジェーンと、いい子だけれども、役には立たないリグスビーです。夫のリズボンの仕事は、軌道に乗り始めていて、手伝うのが楽しくてしょうがないのです。
チョウは気にした様子もなく継母に頷きます。
「料理さえ、持って帰って来てくれるなら、俺は、かまわない」
「えー、行きたくないの? チョウ? お城のダンスパーティなんだよ。すごく素敵なんだよ!」
途端に、ジェーンがゴネ始めました。どれだけお城が美しいのか、料理がおいしいのか、わめきたてます。
チョウは、やれやれと肩をすくめます。
「……ジェーン。お前、俺に、行って欲しいのか、欲しくないのか、どっちなんだ」
「そりゃぁ。行きたいって悲しそうな顔をしてるのに、無下にダメって言うのが、理想」
「ジェーン!」
母と次姉は、大事な命綱の継子に意地悪ばかりするジェーンに、悲鳴のような声を上げています。
そして、パーティーの当日なのですが。
……実は、お城のダンス会場には、リグスビーの姿しかありませんでした。
しかも、何をどう、見込まれてしまったのか、リグスビーの目は、怯えて泳いでいますが、RJ王子は、ダンスの相手をリグスビーから変えようとはせず、……ずっと離しません。
それで、ジェーンとチョウがどうしているかと言えば。
「やだっ、ねぇ、……やだっ、ぁ、あ、……チョウっ!」
ドレスの裾を大きく捲られたジェーンの処女地には、ずぷりとチョウの太いものが嵌まっていました。
端的に言えば、ジェーンがチョウをからかい過ぎたせいでこうなったのですが、まさか、ジェーンも、自分がこんなに末の義妹から愛されているとは夢にも思っていなかったのです。実は、ジェーンの下着は、洗濯の度に行方不明になっていて、ジェーンは、自分の美貌に憧れる近所の若い男たちのせいだろうなどとナルシスティックにうぬぼれ、危機感も薄かったのですが、実は、このひそかにジェーンに惚れていた義妹が盗っていたようです。
ジェーンがノーパンだったせいで、ここまでの展開も、急展開で進みました。
スカートをめくれば、即、生尻ですから、口ばかりは人よりずっと回りますが、腕っ節はからきしのジェーン相手に、解すのも、入れるのも簡単だったのです。
「やだっ、……やっ、チョウっ!」
ジェーンは髪を振り乱して、泣いています。美しい青い目からは、ぽろぽろと涙が零れ落ちていました。けれども、そんなジェーンを押さえつけ、チョウは、無理矢理唇を奪います。あ、勿論、痛々しくも引き延ばされた処女のあそこにも無理矢理、みっしりと血管の浮き出た獰猛な太い竿は挿しっぱなしです。
「痛いよっ……チョウっ! ……なんで、っ、こんなこと、するのっ」
涙を零し続けるジェーンの青い目をチョウは見つめます。
「ジェーン、いいか、一度しか言わないから、よく聞け」
しかし、このお話は、シンデレラですので、もう一人、重要な登場人物がいました。
「あー、ごほん」
ドレス姿の若い娘がくんぐほぐれつになっている背後から、遠慮がちに、魔法使いのミネッリは、咳払いをしました。ミネッリも、ものすごく居心地が悪いです。不幸せなかわいい娘を幸せにするはずが、どうして、こんな場面に出くわしてしまったのか、自分の間の悪さに、目が泳いでしまいます。
「この家に、お城の舞踏会に行けない、かわいそうな、よい娘がいると聞いてきたんだが……」
「今、忙しい」
確かに、チョウは、今、大変忙しい最中でした。逃げようともがく、ジェーンを押さえつけたまま、激しく腰を使っている最中です。もがくジェーンを押さえつけは、何度も唇を合わせています。こればかりは、チョウの仕事ぶりが、手抜きなく、きめ細かで、すばらしかったようで、とうとう処女だというのに、ジェーンの肌がピンク色に色づいてきました。
「やっ、ぁっ、あっ、……やっ」
頬が赤らみ、目の潤み方が変わってきています。
「……あのな、この家に、シンデレラという、娘が……」
しかし、ミネッリも魔法使いとして、やらねばならない仕事がありました。
「なぁ……君じゃないのかね? 君だけ、ドレスが、そんなにみすぼらしい……」
しかし、しつこいほどジェーンの唇を奪う、チョウは、まるでミネッリの話など聞いてはいませんでした。
がつがつ、ジェーンを揺さぶりながら、さっき言いそびれた告白をしています。
「ジェーン、お前を愛してる。お前がこの家に来た時からだ。お前を、お城の舞踏会になんて、絶対に行かせない。わかったか。絶対だ」
初めての快感に、訳も分からず、ほんのりと肌をピンクに染めたジェーンは、チョウにしがみついたまま、突き上げられる衝撃を堪えるのに懸命で、ミネッリの話どころか、チョウの言葉も聞いている余裕はなさそうです。けれども、いつの間にか、ジェーンの足がチョウの腰に絡みついています。
「だらかだね、お城の舞踏会のことなら、……ああ、そうだ。なんだったら、二人とも今から行けるよう魔法をかけてあげるようか? 素敵なドレスはどうだい?」
「いらん」
チョウに短く切り返されたミネッリは、激しく二人が縺れあうこの場に、確かに、どう考えても、自分は不要だと、ぽりぽりと額をかきました。
「っぁ……んっ……あ、……っ! ……ぁっ……あ!」
「まだ、何か用か?」
なかなか立ち去らない魔法使いの存在は、やはり気になって、爆発しそうな股間だというのに、いけないでいるチョウは、イライラとミネッリを振り返りました。それに、ジェーンが甘い声でごねます。
「やだっ……! やだっ! チョウっ! ぁ」
大分夜も更けてきましたが、まだ、リグスビーは、涙目のままぶるぶるしながら、RJ王子と踊っています。リグスビーの身体は強張り、はっきりと帰りたいと顔に描いていましたが、王子は、なぜか、それに至極御満悦の様子です。
「……あの、王子、もうずいぶん、俺ばかり踊って……」
王子の周りには、ダンスの順番を待つ美しい娘たちが、列をなしています。
「構わない」
「……いえ、でも、俺が、構うっていうか、……あ、あの、12時までには、家に帰る約束を親としていて!」
時計の針は、もう12時を指そうとしています。
あ、鐘が鳴りだしました。
そわそわと落ち着かないリグスビーの言いわけを聞きつけた娘たちも、では今度は私たちとと、うるさくざわめきます。
仕方がなさそうに、とうとう王子は、リグスビーを解放しました。
リグスビーは、挨拶もそこそこ、飛ぶように逃げ出します。
けれども、RJ王子は、ただでリグスビーを逃がすつもりはありませんでした。すぐさま兵士を大階段に差し向け、リグスビーが家へと逃げ帰ろうとするのを、阻みます。しかし、長時間RJ王子と踊ったリグスビーは、RJ王子の目に、ただならぬ危険なものを感じていましたので、捕まったら終わりだと、必死の抵抗を試みました。そして、命からがら逃げかえったのですが、お城の階段には、お約束にも、脱げた靴が片方残されてしまったのです……。
「おお! まさに、この靴は、貴女様のおみあしにぴったり!」
お城の侍従が、跪いたリグスビーの前で高らかな声を上げました。大きな肩を必死に竦め、足の指も丸めこみ、靴が足に合わないと抗弁しているリグスビーの目は涙でぐっしょり濡れています。
リズボンも、ヴァンペルトも、リグスビーから、王子の目が尋常じゃなかったから、名乗らず逃げてきたという話は聞いていたのですが、靴を持ち、しらみつぶしに各家を回った王子の偏狂的な行為に背中にぞぉっとするものを感じています。
警護の兵士たちに促され、RJ王子が前へと進み出ます。
「やっと会えた、あなたが、私の妃だ」
ぎゅっと抱きしめられたリグスビーは、震えあがっています。
「どうやら、金髪は、RJ王子の好みじゃなかったみたいだな」
家族が、王族へと輿入れすることが決まった瞬間に、こっそりと囁いたチョウを、ジェーンは睨みます。
「やきもち焼き」
「そうだとも。覚えておけ。お前は俺のだ。もし、王子に、そのきれいな目で色目でも使ってみろ。丸裸にして通りに放りだしてやる」
ジェーンは、あんな風に結ばれることになったのですが、渾身のチョウの告白が効いたのか、腰づかいが良かったのか、……いえいえ、実は、ジェーンも、初めて会った時から、チョウのことが、そういう意味で気になって、しつこくちょっかいをかけていたわけなので、ひょんなことから、両想いになっただけなのですが、王子の視界を遮るように、さりげなく家の奥の台所に続くドアの方へと連れ出しながら、睨みつけてくるチョウの本気の目に、ジェーンは、自分がとんでもないのに惚れられたのだということもこの時わかりました。もう一人の妹の方が、もっととんでもないのに惚れられて、がたがたと震えているようですが。
「さぁ、プリンセス。私の城へ」
「いいえ、とんでもない! 俺なんて、お城になんてとてもいけません。俺は……! 俺は……! 母さん! 義父さん、助けてー!」
しかし、たかが、一般市民に、王子からのプロポーズを断る権利などないのでした。
「ジェーン! チョウ! 助けてくれー! ……王子、俺には、もっときれいな姉と、すごく素敵な妹が!!」
とうとう、リグスビーは、自分が助かるために、姉妹まで売りにでましたが、チョウが抜け目なく、ジェーンをキッチンの戸棚の中に、押し込めていましたので、RJ王子が、素敵な金髪をみることはありませんでした。
「いやだー! 俺は、お城になんか行きたくないー! 絶対に、この王子変だ! 変だって!」
しかし、
いつもぷるぷると涙目でしたが、お城に嫁いだリグスビーは、一時も側から離してもらえないほどRJ王子に愛され、末永く幸せに暮らしたということでした。
ちなみに。
「……いつか、魔法使いが必要になった時に、連絡をくれればいいから……」
チョウとジェーンの無視され続けた魔法使いのミネッリは、激しくフィニッシュを迎える二人の脇へと、そっと名刺を置いて立ち去っていました。
まさに、目がしらがつーんと痛くなるような話です。
でも、まぁ。
「ねぇ、チョウ、僕のこと好き?」
「二度と言わんって言った」
「じゃぁ、そろそろ、僕のパンツ返さない?」
「…………いやだ」
なんとも、仲睦まじいことで
では。
めでたしvめでたしv
END