メンタリストでなんちゃって童話 4

 

 

小人の靴屋

 

あるところに、リズボンというとても真面目な靴屋さんがいました。

リズボンの靴は履きやすいと評判で、作っても作っても、すぐ売れていき、注文が後をきりません。

今晩もリズボンは、疲れて眠い目を擦りながら、靴を作っていました。

しかし、とうとう我慢ができなくなって、リズボンの瞼は、くっついてしまったのです。

 

けれども、朝、起きてみて、リズボンは、驚きました。

確かに、作りかけたまま眠ってしまったはずの靴が出来上がっています。

しかし、それは、リズボンが作るよりは、少し不格好です。

 

不思議に思いましたが、靴の悪かった部分を直したリズボンは、その日の注文をこなすため、また一生懸命靴を作り続けました。

ですが、やはり、注文が多すぎて、その晩も眠れそうにありません。

また、うとうとしてしまっていたリズボンは、不思議な声で、目を覚ましました。

 

「ほら、こっちから縫うんだってば! リグスビー、こっち、こっち!」

親指ほどの大きさの金色の髪をした小人が、盛んに口を動かしています。

「ジェーン、お前、口ばっかりじゃなくて、自分も動けよ」

「僕は、頭脳労働者。指示を出してあげるから、きりきり動いて。リズボン、今日、君が縫ってたところを直してたんだよ。迷惑かけないように、ちゃんときれいに縫い目を揃えてよ。あ、チョウ! 皮をなめすときは、もうちょっと優しくね」

「リグスビー先輩、これ、どこに置いたらいいですか?」

「そんな、ヴァンペルト、重い物は俺が持つから! ……あの、さ、この針に糸を通してくれないか? それで、できれば、一緒に縫うのを手伝ってくれよ」

なんと、小人たちが、靴を作っています。

しかも、どうやら、不器用ながらも恋愛まで進展しているようです。

リグスビーと呼ばれていた小人が、真っ赤になって緊張しながら、ヴァンペルトというかわいらしい小人と一緒に靴を縫っています。

「リグスビー、デレデレしててもいいけど、縫い目はまっすぐにね!」

ジェーンという小人は、やたらとおしゃべりですし、反対に、チョウと呼ばれた小人は、黙々と仕事をこなしています。

 

あまりのことに、リズボンが茫然と小人たちの仕事を眺めていると、いつのまにか部屋の中に朝日が差し込みだしました。

「やばい、朝だ! リズボンが起きるよ。早く隠れなくちゃ!」

わらわらと逃げ出した小人たちの後には、昨日に比べて、見違えるほど出来のよくなった靴が残されています。

 

その日、リズボンは、仕事を休みました。

 

そして……、店の看板を、リズボンと小人の靴屋と直し、小人たちのための、小さな靴を縫うと、そっと机の上において、眠りました。

 

「これで僕らも共同経営者になったわけだし、利益配分は、50:50って要求してもいいよね?」

靴を履きながら、ジェーンがこんなことを言ってましたが、もう、夢の中のリズボンは聞くことができませんでした。

 

End

 

このお話の教訓:寝てる間に、CJ話を書いてくれる小人さん欲しいよー!

 

 

鶴の恩返し

 

昔、むかし、あるとろこにリグスビーという善良な若者がいました。

今日も山岳警備のために、リグスビーが山に入ると、一匹の鶴が、なぜそんな目にあわされているのか、足を木に繋がれ、悲しそうに項垂れているではありませんか。

「いったい、どこの悪ガキの悪戯だ」

ナイフを片手にリグスビーが近づくのに震える鶴は、大変な美しさでした。

憤るリグスビーは、素早く、鶴の足の綱を切り取りました。

鶴は、大きく羽を広げて、リグスビーにお礼でも言うように、軽く跳ねると飛び立ちます。

 

その晩、リグスビーの家のドアを叩く音がしました。

「こんな晩に、一体だれが……」

訝りながら、リグスビーがドアを開けると、そこには、美しい金色の巻き毛をした青い目の男が立っていました。

「僕は、君が昼間に助けてくれた鶴だよ、君に恩返しをしに来たんだ」

男の言葉は胡散臭過ぎて、リグスビーには信じられませんでしたが、言われてみれば、すらりとしたその身体のラインと、それなのに色気のあるふくよかな腰付きは、なんとなく昼間の鶴を思い起こさせるものがあります。

「……キャンプに来て、道に迷ったんだろう。いいよ。一晩くらい泊めてやる」

しかし、現実的に考えて、人間の男が、鶴だなんてことはあり得ませんから、いつも通り、リグスビーは男を軽装で山に昇ろうとして迷子になった不心得なハイカーだと考え、泊めてやることにしました。

「ねぇ、僕に、一部屋くれないかな? そして、絶対に覗かないで欲しいんだけど」

図々しい男だと、思いながらも、リグスビーには、心にきめたヴァンペルトという恋人がいましたので、ジェーンだと名乗ったその男に一部屋与え、覗いたり、襲ったり、勿論、犯したりもしませんでした。

翌日、ジェーンは、昼ごろになると、やつれた顔で、起きてきました。

「これ、恩返しの品……」

何をどうして、こんなものが出来上がったのか、ジェーンは、純白の豪華なウエディングドレスを差し出します。

「ヴァンペルトに着せて上げて。リグスビー、君、もう、さっさとプロポーズしなよ」

「え? なんで、お前がそんなこと知ってるんだ!?」

「だって、君たち、山によくデートに来てるし」

疲れた顔で、にこりと笑った男は、そこで、急にするりと鶴へと姿を変えて、山へと飛んで行ってしまいました。

リグスビーは、自分の身に起きた超常現象に、あわあわと泡食っています。

 

「……ねぇ、チョウ、僕たち鶴が、恩返ししなきゃいられない種族だって、僕を助けて、自分だって身をもって知ってるんだから、怒らないでよ」

「怒ってなんかない。お前の羽根が少なくなって心配してるだけだ」

しかし、そういうチョウの目は、一晩帰らず、疲れた様子のジェーンの腰を見つめ、憮然と細められています。

「だったらさ、放置プレイなんて、もうやめてよ! 僕、あんなところに繋がれて、もし、君が、もう僕のこと捨てる気になって、本当に戻って来なかったらどうしようかと、泣きそうだったんだからね!」

 

END

 

このお話の教訓:親切な若者は、時々、プレイ中のSMの邪魔をすることがある。

 

 

 

赤ずきんちゃん

 

あるところに、リグスビーというがたいはデカイものの、心の素直な、それはそれはかわいらしい女の子がいました。

その日はよく晴れた一日でした。

「リグスビー、森の奥のミネリおばあちゃんのところへ、このパンとワインを届けてきてちょうだい」

リズボンママに、言いつけられれば、リグスビーは、はい!と素直に従います。

「寄り道は駄目よ。森には狼がいるんだから、気をつけていくのよ」

大きな身体に、まっかなフード付きマントを着せられたリグスビーは、狼と聞いて、びくりと身体を竦ませましたが、ミネリおばあちゃんのためだと、勇気を振り絞り、目を潤ませたままミニスカートで森を行きます。

 

途中、リズボンお母さんの言いつけを守らず、ちょっと寄り道して花なども摘んでしまったリグスビーでしたが、無事、ミネリおばあちゃんの家にたどり着きました。

「おばあちゃん、俺だよ、入るよ」

なぜか、ミネリおばあちゃんのおうちの中は、いつもより薄暗い感じでした。

「おばあちゃん……?」

リグスビーは、近頃、ミネリが、頭の毛が薄くなってきたことを気にしているのを知っていましたので、恥ずかしがって薄暗くしているのだろうと、善良にそのことを解釈しました。

「おお、リグスビー、来てくれたのかい?」

声が聞こえて、リグスビーは、ベッドの側へと近づきました。

「おばあちゃん、ママに言われて、パンとワインを持って来た、調子はどうだい?」

しかし、ベッドに近づけば、布団から覗く頭は、ふさふさです。しかも、金髪なのです。

「……カツラ……?」

薄くなった頭頂部が気になり過ぎて、とうとうそういったものに手を出したとなれば、確かに恥ずかしくて、薄暗い部屋の中で布団の中に隠れていたくもなるはずです。

しかし、金髪のくるくるとした巻き毛のカツラを選ぶとは、ミネリの若づくりが激しくて、リグスビーは引き気味です。

けれども、たった一人のおばあちゃんです。

「おばあちゃん、顔を見せてくれよ」

布団から覗く手も、なんだか、前より肌艶が増しているようで、リグスビーは、ミネリがどんな高価な美容法を試しているのか、リズボンが怒りださないか心配になります。

「おまえこそ、かわいい顔をみせておくれ」

 

ミネリに近づいたリグスビーは、いきなり布団を剥いで現れた金髪の男に、心底びっくりして床にひっくり返って尻もちをつきました。

あらあら、リグスビーのミニスカートがめくれちゃっています。

顔を真っ赤にして、男の目から、いちごパンツを隠すリグスビーは、男に狼の耳と、尻尾があるのに気付き、また、大きく目を見開きました。

「ぎゃぁー! 化け物!!」

「お腹がペコペコだよ。あー、よかった。君は食べがいがありそうだ」

 

舌舐めずりした狼ジェーンが、今、まさに、ミニスカのリグスビーに襲いかかろうとしました。

バァーン!

ドアを蹴破るものがいました。

「狼め、退治してやる」

狩人のチョウです。

チョウの銃は、揺るぎなくジェーンを狙います。

しかし、凄まじい緊迫感をもって自分を狙う銃には目もくれず、ジェーンは、チョウの身体ばかりを舐めるように見つめています。盛り上がった肩。発達した大胸筋。太い二の腕に、締まった腹。

「……どうしよう。すっごい、好みのタイプだ……!」

短い髪も、鋭い黒い目も、チョウは、ジェーンの好みのタイプど真ん中だったのです。

決してそんな場面じゃないというのに、ぶんぶんと大きくジェーンの尻尾は左右に振られ、目を潤ませながら、きゅんきゅんと声を立てて鳴き出しました。

しかも、はしたなくも、ケダモノの股間で大きくなってしまっているのを、狼に踏みつけにされているミニスカリグスビーは、感じたくもない腿に感じています。

「……やめてくれよ……」

生温かいものを擦りつけられるリグスビーは、泣きそうです。

チョウは、ちょっと考えるように、そんなはしたない狼の様子を、じっと眺めていましたが、チョウのねっとりした目で身体のラインを見つめられるジェーンは、我慢がきかないようで、はぁはぁと興奮に、息を荒くしだしています。

銃からまだ手を離そうとしないチョウに、青い目を潤ませ、せつなそうに身悶えしています。

ぼそりとチョウが言います。

「……悪くないな。……なかなか、旨そうな腰付きだ」

銃を下ろしたチョウは、狼ジェーンに近づきました。

いきなりジェーンの尻尾を掴み上げます。

「キャン!!」

リグスビーの脛で顔を打ったジェーンは、大きな声で鳴きました。

勿論、脛を顔で強打されたリグスビーも呻いています。

けれども、チョウは二人を気にせず、ジェーンの尻尾の辺りに鼻を近付け、そこの匂いを嗅ぎます。

「いい匂いをさせている。発情期か?」

尻を高く掲げて、這わされているジェーンの顔がさぁっと真っ赤になりました。

巻き毛の中の耳が垂れてしまっています。けれども、ドクドクと心臓の音を早くしています。

「犯って欲しいのか? ……ほしいんだな」

チョウの視線を強く当てられても、ジェーンは答えませんでした。

しかし、ジェーンの尻尾は、チョウに従い、服従を示していました。

そんなアダルトな狩人と狼の会話を、踏みつけにされた身体の上で交わされているリグスビーは、やっぱり泣きそうです。

だって、リグスビーは、まだ、赤いずきんに、いちごパンツのお年頃なのです。

 

そして、狩人のチョウに狼ジェーンは洗いざらい白状させられ、スジスジでおいしそうじゃなかったミネリは、押し入れの中から発見され、リグスビーは、無事、リズボンから言いつけられたお使いを果たすことができました。

 

ただし、赤ずきんちゃんを食べるはずだった狼さんが、かわりに、狩人においしくぺろりと食べられてしまったようですが。

 

 

「ねぇ、チョウ、この首輪、苦しいよ!」

ジェーンは、自分の首に嵌まった首輪を懸命に外そうともがいています。

「お前が、俺の狼だってわからないと、他の誰かに撃たれてもしらないぞ」

チョウは、夕食の片づけの最中です。

「……それって、僕のこと、心配してくれてるってこと? チョウが、僕のこと、大好きだってこと?」

「…………」

 

まぁ、幸せそうなんでいいんですけど。

 

と、いうわけで、

 

めでたし、めでたし。

 

 

このお話の教訓:恋愛も、注意一秒、怪我一生