メンタリストで、なんちゃって、童話

 

 

桃太郎

 

むかし、むかし、あるところに、ミネリというとおじさんがいました。ミネリが川で洗濯ものをしていると、どんぶらこ、どんぶらこと、大きな桃が流れてくるではありませんか。

川から桃を掬ったミネリが、さっそく食べようすると、桃の中から、かわいい、かわいい女の子が生まれてきました。ミネリは、この子をリズボンと名付け、大事に大事に育てました。

さて、リズボンは大きくなりました。そして、ある日、

「ミネリ、私、今までの恩返しに、あなたが逮捕出来ずに悩んでいるRJを退治しに、ブラッディ・にこちゃん島に行って来るわ」

と、言うではありませんか。RJは、連続殺人犯です。ミネリは懸命に引きとめましたが、リズボンは、一度こうと決めたら、意思の固いタイプです。仕方なく、ミネリは、ブラッディ・にこちゃん島を目指すリズボンにきび団子を持たせました。

 

RJ退治に向かうリズボンに話しかけるものがいました。犬のチョウです。

「リズボン、どこへ行くのですか?」

「RJ退治に、ブラッディ・にこちゃん島よ」

「もし、きび団子をわけてくれるのなら、付いて行く」

面構えのいいチョウは、頼りになりそうだと、リズボンは、きび団子をわけました。

また、道を行くと声をかけるものがいます。おさるのリグスビーです。

「リズボン、その腰のきび団子は……?」

リグスビーは、ものすごく欲しそうに、リズボンのきび団子を見ています。

「リズボン、リグスビーは、ガタイがいいし、体力もあります。RJ退治と言えば、大仕事です。ぜひ、一緒に連れて行くべきです」

「そうね……」

少し迷いましたが、リズボンは、チョウの助言に従って、リグスビーも家来にしました。

一人と二匹はずいぶん歩きました。ブラッディ・にこちゃん島はもうすぐです。その時、空から、声を掛けるものがいました。鳥のジェーンです。

「君たち、RJ退治をしようというのは、本気のようだね。また、大ぼら吹きの勇者が現れたのかと、ずいぶん前から、見ていたんだけど、君たちは、迷いもせずに、ブラッディ・にこちゃん島を目指している。ね、僕も、一緒に連れて行ってくれないかい?」

鳥の青い目が、うっすらと涙で曇っていることに気付いたリズボンは、何も言わずに、鳥にもきび団子を与え、家来にしました。

ブラッディ・にこちゃん島に着きました。RJの趣味満載なこの島は、至るところに、人を食った仕掛けがあり、手こずらされましたが、リズボンのきび団子を食べた家来たちが、懸命な働きをみせます。

そして、とうとう、RJ本人を前にしたリズボンは、ためらいもせず、銃の引き金を引きました。

RJは絶命です。

 

そして、RJに誘拐されていた女性たちを助け出したリズボンは、ミネリの元に帰りました。

その後は、幸せに、幸せに、暮らしたそうです。

 

このお話の教訓:僕らのヒーローは、リズボン!

 

 

北風と太陽

 

ある日、北風(リズボン)と、太陽(ジェーン)は、言い争っていました。

「私の方が権限が上なの! どうして従えないの、あなたは?」

「リズボン、僕のやり方の方が、きっと上手くいくよ」

にっこり笑って、超法規的なことをしでかそうとする太陽(ジェーン)にほとほと困り果てた北風(リズボン)は、ある提案をしました。

「今から、この道を歩いてくる最初の旅人のコートが脱がせられた方が、賢いということにしましょう」

「いいけど……そんなのでいいの?」

自信たっぷりで上機嫌な太陽(ジェーン)の笑顔が、むかつきます。

 

道を一人の旅人が歩いてきました。チョウです。

リズボンは、ビュービューと冷たい風を吹かせ、チョウのコートを吹き飛ばそうとしました。

しかし、寒さのあまり、チョウが、コートの襟を引き合わせ、ぐっと握りしめるせいで、コートは飛んでいきません。

「部下に仕事を教える時は、しかるばっかりじゃなく、褒めてもあげないと、伸びないよ?」

ジェーンは、そう言うなり、太陽の光で辺りを照らしだしました。

震えるほどだった気温が、ぽかぽかと温かくなり、チョウの顔も緩みます。歩いているうちに、チョウは、熱くなってきました。コートを脱ぎます。半袖のたくましい腕が見えます。しかし、チョウは、脱いだコートを腕に掛けることなく、頭からすっぽりとかぶります。

「なんでこんなにカンカン照りなんだ。くそ熱い……」

チョウは、汗、だらだらです。

太陽(ジェーン)は、北風(リズボン)を振りかえりました。

「……僕の、勝ちだよね?」

コートがチョウを隠す面積はさっきよりも増えています。

にこりと北風(リズボン)は笑いました。

「さぁ、どうかしら?」

 

このお話の教訓:チョウは、いい迷惑

 

 

ありとキリギリス

 

あるところに、ありのチョウと、キリギリスのジェーンが住んでいました。

チョウは、CBIに勤め、少ない公務員の給料ながらに、小金をためながら、こつこつと暮らしていましたが、キリギリスのジェーンは、霊能力者などという胡散臭い商売で手広く儲けていました。

「ねぇ、チョウ、よかったら、僕のマネージャーをしないかい? 世界中を旅してまわろうよ。僕の仕事なら、どこでだってできるんだから」

「……なぁ、ジェーン。お前、地に足のついた真面目な暮らし方をしろよ。お前みたいなエセ霊能力者なんて、そのうち、みんなに飽きられて、捨てられるのが落ちに決まってる」

しかし、ショウで儲けた金を投資に回し、そちらでも儲け出しているジェーンは、堅実すぎるチョウの意見には従えませんでした。

「僕は、幸せになりたいんだ。僕の能力で、みんなも幸せになってくれてる。僕は、もうしばらく、この暮らしを続けるよ」

 

しかし、リーマンショックで、世の中が冷え込んでくると。

ドンドンドン。

チョウの家のドアを叩く者がいました。

「……チョウ」

ピカピカのスーツも擦り切れてしまったジェーンが立っています。皆の暮らしが苦しくなると、霊能力者なんていういかがわしい商売は必要とされなくなり、……そして、不動産投資で、失敗したのだと青い目を潤ませています。

「……僕、」

チョウは、苦笑でジェーンを迎え入れました。

「いいさ、ジェーン。友達じゃないか。幸い、公務員の給料は薄給だけど、二人、食べていけないわけじゃない」

俯くジェーンの肩が小さく震えます。……実は、すっかり話を信じているチョウがおかしく、ジェーンは笑いをかみ殺しています。確かに、さすがのジェーンも、このリーマンショックを乗り切るのは難しく、多少投資で失敗はしましたが、多少です。まだ、銀行に眠る金は、チョウの預金の数十倍と言ったところです。

けれども。

「君って、本当に優しいんだね。大好きだよ、チョウ」

これは、本当です。旅をして、ジェーンは知ったのです。チョウは顔を顰めます。

「やめろよ、ジェーン、照れ臭いだろう」

 

このお話の教訓:簡単にジェーンの言うことを信じちゃ、ダメ! ダメ!

 

 

いばら姫

 

昔、長い間子供のなかった王様とお妃様の間に、とてもかわいらしい女の子が生まれました。

名前は、リグスビーと言います。

王様と、お妃さまは、リグスビーの1歳の誕生日会に、3人の良い魔女を呼びました。

一人目、二人目の魔女は、お誕生日のお祝いとして、プリンセスにふさわしい美しさと、上品さをリグスビーに与えました。

しかし、そこへ、誕生会に呼ばれていなかった悪い魔女が突然やってきて、魔法をかけました。

「この娘は年頃になると、紡ぎ針で指を刺して死んでしまうだろう」

嘆き悲しむ王様とお妃さまに、願い事を残していた3人目の良い魔女が申し出ました。

「私の魔力では、悪い魔女の魔法を解くことはできません。けれども、プリンセスが紡ぎ針で指を刺した時、深い眠りにつくという魔法をかけることならできます」

 

そして、リグスビーは、すくすくと大きくなり、とうとう年頃の姫となりました。

リグスビー、なりはデカイですが、手先が器用で、手芸など大の得意です。

そうなると、運命の日はきてしまうのです。

どこにあったのか、やめておけばいいのに、どうして、そんなのを探し出してきてしまったのか、ガタイのいいリグスビー姫は、自分オリジナルの糸を紡ごうとして、紡ぎ針で指を刺してしまったのです。

姫は、深い、深い、眠りにつきました。

 

そして、残念なことに、辺鄙ないばらの国を通りかかる王子様はおりませんで、今も、リグスビー姫は、深い、深い、眠りについています。

 

このお話の教訓:王子様も、本当は、にぎやかな街道沿い旅したいらしい。

 

 

手袋を買いに

 

雪深い、山の話です。

子狐のヴァンペルトは、母親狐のリズボンに言いました。

「おかあさん、私も、チョウお兄ちゃんや、ジェーンお兄ちゃんのように、捜査について行きたいです」

畏まってヴァンペルトは言いますが、そうはいっても、ヴァンペルトは、まだ子狐です。

困ったリズボンは、一計を案じました。

「この雪深い山の中で捜査をするのは、とても手が冷たくなるの。だから、もし、あなたが、ふもとの村の手袋屋に行って、手袋を買って来られたら、一緒に捜査に連れていってあげてもいいわ」

山からふもとの村までは、かなりの距離がありました。

そして、ヴァンペルトは、木の葉のお金しか持っていません。

リズボンは、雪山を途中で引き返してくるか、店で木の葉のお金では買えないと追い返されるかするだろうと思ったのです。

 

トントントン

雪深い日、リグスビーの手袋屋のドアを叩く小さな音がしました。

「だれだろう。こんな日に……」

リグスビーがドアを開けようとすると、小さく開いた隙間から、小さな、小さな手が差しだされました。

「この手に合う手袋を下さい」

小さな手の上には、木の葉のお金が乗っています。

リグスビーは耳を疑いました。しかし、小さな声はおずおずと尋ねます。

「ダメですか……?」

確かに、ヴァンペルトの声です。

「……ダメなもんか!」

リグスビーは、さっそく、速攻、5分も待たせず、ヴァンペルトの手袋を編み上げました。

一組だけと言わず、二組も、三組みも作って持たせます。

「……ありがとうございます」

ヴァンペルトは、ちらりと姿を現し、ぺこりと頭を下げました。

子狐相手に、リグスビーは真っ赤です。

「……そんな、礼なんて、ヴァンペルト」

 

ヴァンペルトは、山へ駆けもどりました。

「おかあさーん! 手袋、一杯、貰ったよー!」

「あらら、うちの子ったら、やるわね」

 

このお話の教訓:リグスビーは、ヴァンペルトなら、なんでもいいらしい。

 

 

 

 

 

 

そして、

 

意地悪なお姉たちが、お城の舞踏会に出かけてしまったシンデレラ(リグスビー)は、大きな肩を窄めて、小さくため息を吐き出しました。

「俺も、お城の舞踏会に行きたかったぜ……一度だけでいいから、王子さまと踊りたかった」

けなげなリグスビーの声を聞きつけた者がいました。

魔法使いのジェーンです。

「今晩は、お城で舞踏会があるのかい?」

「ああ、そうなんだ。王子がお妃さまを選ぶ、盛大なパーティが行われるらしくて」

リグスビーは年頃の女の子らしく、自分のみすぼらしいドレスを恥ずかしそうにしました。

「俺も、行きたかったんだけど……」

「そうかい。それは、急がないといけないね。ちょっと目を瞑っていてくれるかい?」

ジェーンは、魔法のステッキを振りあげました。

「ちちんぷい!」

自分に何が起きたのかと、期待しつつも、怖々そっと目を開いたリグズビーは、驚きに目を見開きました。

「……ジェーン、これは!?」

「だって、チョウ王子がお妃さまを探すパーティだって言ったよね?」

リグスビーは、灰かぶり姫のみすぼらしい格好のままですが、魔法使いのジェーンは、どこのプリンセスかという素晴らしいドレス姿です。ジェーンは、かぼちゃの馬車に乗り込みます。

「じゃ、僕、行ってくるから!」

 

「……勝手にしてくれ。……くそっ、せめて、御馳走を包んで持って帰って来いよ!」

 

 

と、いうわけで、魔法使いのジェーンは、チョウが大好きなようです。チョウ王子がジェーンのことを気に入ってくれるといいのですが……。

 

 

「王子、先ほどのプリンセスがお忘れになった靴に、『ジェーン』と、太マジックで名前が書いてあります!」

「……王子! 道路にプリンセスのお宅までの地図が!」

「おお、十字路に、プリンセス宅こちらと、矢印まであります!」

 

心配ないようです。

 

それでは。

その後、二人は、末永く幸せに暮らしたそうです。

めでたし。めでたし。

 

 

END