紫のドレス

 

「今日、面白かったよねぇ」

部屋に来るなり、ベッドに腰掛けた、ジェーンはくすくすと思い出し笑いをしていた。着ていたスーツをハンガーに掛けるチョウは、振り返り、まだスリーピース姿でいるジェーンに向かって手を伸ばす。

「あ、うん。ありがとう」

ベッドから腰を上げて、上着を脱ぎ始めたジェーンに、しめた!と思いながら、だが、顔には出さず、チョウは、新しいハンガーを手に取った。くつろぐジェーンは、シャツのボタンを開け、腕も袖をまくる。昼間のことが、よほど楽しかったのか、目尻に皺を寄せている。

「リグスビーのお母さんに、あの姿、見せてあげたかったよね。立派な息子さんは、ちょっとびっくりするような美人の娘さんでもあったようですよって」

流石にそれは、悪趣味だろと、チョウは、顔を顰めながら、ジェーンの服をクローゼットの中に掛け、自分は部屋着に着替えた。

「え? だめかな、チョウ?」

「あんなの、家族には絶対に見られたくない姿だろ」

「そうかなぁ。あれだけ、美人だったら、ちょっと見せびらかしたくならない?」

金髪は本気のようだ。

「少なくとも、俺は絶対にならない。仕事じゃなきゃ、リグスビーも、絶対にしなかったはずだ」

「そうなの? すっごくきれいだったのに」

 

今日解決に持ち込んだ、下院議員の息子の絡んだ事件は、秘密裏に迅速に事件を解決する圧力が掛けられていて、そのせいでリズボンのチームに回って来たのだが、なぜ、秘密が守られなければならなかったかと言えば、議員の息子の特殊な趣味のせいだ。

彼の所属する、特別な会員制クラブは、美意識の高い女装愛好者しか、入会を許さなかった。だが、その小さく平和なクラブの中で、殺人が起こり、議員の息子は、容疑者として名前が挙がったのだ。

「でも、不思議なところだったね。美しい女性になって、その姿で愛し合うためのクラブなんて」

「リグスビーは、今までの人生の中で、今日が一番もてた日だって泣いてたぞ」

水を入れたコップを片手に、チョウはベッドの側まで戻っている最中だ。狭い部屋だ。どこにいようが、大抵、声は聞こえている。

「飲むか?」

「ありがとう」

チョウの差し出したコップを、ジェーンは喜んで受け取った。

「しかし、あんたの顧客層の広さには、いつも驚かされる」

「彼女、すごかったね。実際、僕も彼女の腕前をはっきり見せて貰ったのは、今日が初めてだったんだけど、リグスビーのあの出来栄えは!」

くすくすと、ジェーンが目尻に皺を寄せ笑う。チョウも、化粧が済み、現れたリグスビーを見た時の衝撃を思い出して、つい、笑ってしまった。

女装を嫌がって、やけくそのように休憩室から現れたリグスビーは、しかし、長身のゴージャスな美女に変身していて、事情を知らない同フロアーの警官たちは、いきなり現れた黒髪の美女に口笛を吹きさえした。

思わず、チョウも、書類から目を上げたまま、同僚の変身ぶりに唖然とし、女性陣など、信じられないとばかりに口をぽかんと開けていた。そんな彼らの前で、リグスビーは、腕と足と胸毛の一部を剃られたことで、毛が、毛が!と、懸命に訴えていたが、上品なランチパーティに潜入するのだから、ドレスから露出した部分は、脱毛されても当然だ。

リグスビーの目元は、眦が切れあがるように仕上げられ、その眼差しでじっと見つめられたら、下心を刺激されずにはいられないセクシーなものなのだ。

あまりの変身ぶりに唖然とするあまり、いままで誰も、彼の容姿を褒めはしなかったが、大きな声で感嘆の思いをジェーンが伝えた。

「リグスビー、すごくきれいだよ!」

顔色を変えて、リグスビーがジェーンに突進する。

「名前を呼ぶな!」

タックルする勢いで近づき、泣きそうに眉を寄せて、ソファーの側に立つジェーンの胸元を締めあげる美女の正体がリグスビーと知れて、周りに大きなどよめきが起こった。

「……マジか、あれが、リグスビー……?」

「あれ、リグスビーなのかよ? あそこのコンサルタント、やっぱり、怖ぇよ……。リグスビーをあんな風に……」

瞳の色と合わせた鮮やかなブルーのドレス姿をじろじろと見られて、リグスビーの眉は、ますます、泣きそうに寄ったが、女性陣の眉も寄っている。

「ねぇ、ヴァンペルト、私たち、彼女のサロンに行くべきかしら?」

「……来年まで予約は、いっぱいらしいですよ」

「ジェーンの同僚なんですもの。来てくれたら、今でもきれいなあなたたちを、もっときれいにさせてもらうお手伝いを、いつでもしますよ」

ジェーンの顧客であった彼女は、年の割に張りのある白い手をリズボンと、ヴァンペルトの肩に置いた。

「どう? 満足したかしら、ジェーン?」

「とても満足したよ。さすが、君の腕は噂通りなんだね」

 

 

そして、リグスビーは、一生分の恥をかきながら、女装クラブに潜入し、ランチパーティに集った美女たちから、激しくナンパをされたわけだが、結局、犯人は、会員ではなく、その会場からの帰り道に拾ったタクシーの運転手だということが判明した。

ついでにいえば、ジェーンとチョウは、リグスビーを丸め込んで女装させるために口にした、入会規約が30歳以下の男性であることが条件というのが、真っ赤な嘘だったこともばれた。

「変だと思ったんだ! あの会員規約は、誰が!」

「ヴァンペルトがちょっと手直しを……」

「でも、リグスビー、美しい女性に限るってとこは、本当なんだよ」

リグスビーは、ルージュで電話番号を書き込まれた手で、長い髪の鬘を毟り取っている。

「くそっ、本当に、お前らときたら!」

「いいじゃない。あんなセクシーなカウガールのジョン議員の息子からも、ナンパされて、おまけに名刺まで貰ったって?」

「あんたたちのこと、染みだらけの肌のたるんだじじいって呼んでやるからな!」

二人は、年齢なんてすぐ詐称できると言い張るリグスビーに、「僕らじゃ、肌で、すぐ年がばれるから」と、この厄災をおっかぶせて逃げたのだ。

 

「ジェーン、実は、リグスビーが俺とお前のどっちかが、同じ恥をかかなきゃ、辞職願を出すと言っている」

ひとしきり笑い終えたジェーンに、チョウは、ぼそりと切り出した。

ごほりと、ジェーンは飲んでいた水を喉に詰まらせた。

「……本気……?」

「……いや、本気で辞職するほど馬鹿じゃないと思うんだが、……大分拗ねているのは、本当だ。リズボンが、俺たち二人は、逃げたんだから、当然、そのくらいのことはしてやれと」

じっと見つめているチョウの前で、ジェーンは天井に向かって、大きくため息を吐き出す。

「リズボンも、人ごとだと思って、笑ってるね?」

「ヴァンペルトも笑っている」

欠片も笑わずにチョウは告げる。

「だろうね。なんでだか、女性って、男が恥をかくのを見るのが好きなんだよね」

そして、じっと自分を見つめるチョウの顔に視線を戻し、ジェーンは感情を読みとろうとするように目を眇めた。

「で、チョウは、全く交渉の余地なく、ドレスを着る気はないと言いたいわけだね」

「当然だ」

ここぞとばかりに強気でチョウは言い切った。

「似合うと思うよ?」

たらし込むような甘い笑顔をジェーンが瞳に乗せる。

チョウも、やっとにっこりと笑ってみせた。

「残念だ。借りてきたドレスは、お前のサイズだ」

 

「酷いな、チョウは!」

ジェーンが声を尖らせている。そして、ごそごそ、もがいている。

「これ、小さいみたいだよ。きついんだけど、ねぇ、チョウ」

「ドレスのラインに響かないように、サポート力が強いんだそうだ」

一応、気を使って、チョウは着替え中のジェーンに背中を向けていたが、ジェーンが何に文句を垂れ、今、何をしているのかは、動く音から、なんとなく予想がついた。今、手に持っているのは、間違いなく、黒のTバックだ。

「僕のが小さいって思われてるのかと思ったよ」

「安心しろ。リグスビーも、金玉が痛くてしょうがなかったって言っていた」

「あの美女ぶりの影に、そんな苦労があったなんてね……悪いけど、僕は、毛まで剃る気はないからね」

「……楽しいか、ジェーン?」

声を尖らせているが、本気で怒っているか、振りをしているだけかくらいは、チョウもわかる程度には、ジェーンとの付き合いが深くなった。金髪は、かなりこの企画に乗り気だ。

心の中で、チョウは、リグスビーに謝る。ジェーンがこんなに抵抗がないと見抜けていたら、なにもリグスビーが泣く必要はなかった。

「チョウ、違うよ。確かに、君と二人きりだし、僕は、少し、この遊びを楽しんでるけど、他人にこんな姿は見せなくないよ。それにね、僕が逃げ出せないようにって、服をクローゼットにしまっただけのくせに、まるでクローゼットに僕のスペースを作ってくれるのかって、僕のことをぬか喜びさせたチョウに、そんな風に思いあがる権利はないと思うよ。……ね、背中のファスナー、上げてくれるかい?」

近付いた金髪の無防備な項は、チョウをどきりとさせた。

紫のネックドレスのファスナーは、ジィっと音を立ててするりと上がる。剥き出しの肩と、背中のラインが、なまめかしかった。

だが、ほら、出来たと声をかけて、振り返ったジェーンを見ると、思わずチョウは吹いていた。

「……予想外だ。お前なら、もっと似合いそうな気がしてたのに」

物腰のやわらかさから、ドレスを着ても、なかなかいけるのではないかと思っていたのに、意外なことに、道化ほどにも、ジェーンにセクシーなドレスは似合っていない。まるで丸太に布を巻きつけたような出来栄えだ。

「そんなもんだよね。だって、化粧もしてないし、胸の詰め物もないし」

ラインストーンの付いたすかすかの胸を持ち上げ、でも、と、ジェーンは言う。

「でも、チョウは、僕のこときれいだって言うべきだよね」

にっこりと笑顔で、強制されて、チョウは、あまりにも真実と違い過ぎる言葉に、ぶすりと口を開いた。

「……きれい、だ」

「ほら、ついでに、きれいなジェーンを愛してるって言ってみようか」

ジェーンの笑みが深くなる。

さすがにそれには、苦虫をかみつぶしたような顔をチョウがすると、ジェーンはやれやれと肩を竦める。そして、リグスビーに見せる、証拠の写真をさっさと撮ろうと言い、いつのまに隠し場所を突きとめていたのか、チョウが小銭を溜めている貯金箱を手に戻る。

「お前なぁ……!」

「僕ばっかりが恥をかくのは嫌だからね」

2、3ポーズ、貯金箱をメインにした立ち姿でチョウに写真を撮らせる。

「あー、明日、恥ずかしいな」

貯金箱をチョウに渡しながら、ジェーンはベッドに腰掛け、そのまま仰向けに倒れ込んだ。

両手を上に突き出し、チョウを呼ぶ。

「チョウ、キス、キスしてよ」

ジェーンが見ていないことを確かめながら、貯金箱を新たな場所に隠していたチョウは、眉の間に深い皺を刻んだ。

「なんでだ?」

迷惑そうな声は、はっきりと聞えているはずなのに、金髪は厚顔だ。

「僕が、キスして欲しいから」

渋顔のままチョウは、ベッドの金髪の側に戻った。

「ドレスを着たままやりたいのか?」

少し、面倒だなとチョウは感じている。

くるりとジェーンがうつ伏せになった。ドレスは、身体にぴったりと張り付くラインで、確かに、年相応の脂肪を乗せた滑らかな腰のラインや、盛り上がった尻には、十分そそられる。

「なんでもいいけど、まず、このきついショーツは脱ぎたい」

尻を上げて、スカートの裾から、ごそごそとジェーンが手を入れる。色気もなく捲られたスカートだったが、チョウは思わず顔を顰めた。

「……ジェーン」

なに?と、ジェーンは目を上げる。

「お前、それは、狙ってやってるのか?」

派手に捲りあげられたスカートの裾は、深いスリットの助けもあり、尻の上まで捲れあがっている。そして、きゅっと盛り上がった尻の谷間に、黒い下着が食い込んでいる。

「チョウ、興奮する……の? それは、予想外」

ショーツを下げようとしていた手を止めた金髪に目元だけで笑われ、チョウは、一発、罰するように剥き出しのうまそうな尻を張り飛ばした。

「痛いっ!」

「手加減してやっただろ」

後ろから圧し掛かって、思い知らせるように、下着を付けたままの尻へと自分の股間を擦りつけてやる。ジェーンは驚いたように振り返った。

「硬いんだ……」

ジーンズのジッパーを下ろし、チョウは取り出したものを、手早くジェーンの腿に挟ませる。

「あんたが、美女に変身しなかったからな」

「チョウって変な趣味だね」

「まぁ、すごい美女なあんたよりは、今の方が、ずっとましだ」

-「ねぇ、キスがまだだよ」

やたらとキスに拘るジェーンに、腿に勃ったペニスを挟んでもうしてる最中なのにマジかと思いながら、チョウは仕方なく顔を近付ける。

チュっと唇を合わせ、充分だろうとチョウは思ったのに、しつこくジェーンの唇が追ってきた。

それで、チョウも、少し意地の悪いことを思いついたのだ。太腿の間に挟んでいたペニスを引き抜き、ジェーンの足を掴む。大きく足を開かせたまま、仰向けにひっくり返した。

「えっ!?」

ドレスの裾は捲れあがっている。股間を覆う布は小さく、ぴちぴちの前は食い込むほどだ。際どいそれはもともと隠すつもりまではないデザインのせいで、残念ながら、処理されていない金色の陰毛は、布の中からはみ出している。

モノの形まではっきりわかる股間をチョウが注視しているのに気付いて、金髪は咄嗟に顔を覆う。

だが、一気に首元まで赤くなった肌の色は、両手だけでは隠せていなかった。

現場の捜査官との体力の差については、十分自覚済みのようで、足首を掴まれて大きく足を開かされているのに、身を竦ませるだけでジェーンは抵抗しなかった。

ただ、たまらなく恥ずかしいと言いたげに、必死で顔を覆っている。

「……チョウ……!」

チョウは、コンサルタントのそんな姿に、そそられ、開いた足を、更に胸の方へと押し上げた。

黒の下着は、ドレスのラインを乱さない極小量でペニスとボールを隠す慎みは持ち合わせていたが、卑猥な股の間を繋ぐのは、紐のように細い布地だ。薄赤く色づいたそこを隠す気など、全く持ち合わせていない。

短くやわらかな毛がまばらに生えた猥雑な色合いの窄まりも全て見えた。酷く緊張したそこは、早い息に合わせて、きゅっと窄まり、ほんの少しだけ解けてみせる。

ゴージャスな紫のドレスの中で、肌を真っ赤にしてたジェーンの両手はまだ顔に乗ったままだ。

小さな声がした。

「……今日は、何もなしで君の部屋に泊めて貰えるようになったかどうかが知りたくて寄っただけだったのに……」

「……ジェーン?」

チョウは、不思議だった。

「……ソファーでもいいから、泊めてくれるかなって……」

そのジェーンのひそやかな願いは、もしかしたら、チョウの心を打ちそうなものだった。だが、しかし、現状が裏切っている。チョウの声は、どうしても怪訝になる。

「けど、……あんた、勃ってるぞ?」

やりたいと誘ってきたとしても、確率的に、半々といったところまでしか、勃起しないジェーンのペニスが、きつそうに下着を盛り上げ、形を如実にしていた。

「……全く!」

チョウの冷静な指摘は、ジェーンは大きなため息を吐いた。真っ赤な顔を勢いよく晒して、ジェーンはチョウを睨みつける。

「知ってるよ。僕の身体なんだから。それより、さっきから、すごく痛いんだ。チョウ、もう、脱がしてよ」

眉間に皺を寄せているコンサルタントに睨まれながら、チョウは、肌に食い込んでいる黒の下着を尻からむしり取る。

もぞもぞ動く尻を、真上から見下ろしながら、下着を下ろしていく作業は、なかなか視覚的にいやらしく、脱がせてしまえば、やわらかい肌には、くっきり赤く、下着の跡が痛々しいほど残り、劣情をそそる眺めだ。

ジェーンのペニスも緩くだが、 勃起している。

だが、チョウは、そのまま足の間に自分の身体を割り込ませることをせず、まだ、ドレス姿のジェーンの手を掴んで、自分の硬い股間を握らせると、聞いた。

「あんたもして欲しいか?」

仰向けに寝そべったまま、ジェーンが情けなく眉を寄せ、天井に大きく息を吐き出す。

ゆるゆると、チョウのペニスを扱き始めたが、ジェーンは、横へと首を振った。

「僕は、いいや。我慢できないほどじゃないし」

「あんた、本当に、ここに泊りたかっただけなのか?」

「……実は、そう。……まさか、こんなドレスが出てくるなんてことも思ってもいなかったし」

苦笑しながらジェーンは、身を起こすと、乱れたドレスの裾を直した。

「あ、見えてないといけないかい?」

実に率直に、困った顔をして瞬きした金髪に、チョウはぐっと顔を寄せ、キスをした。

ジェーンがして欲しがっていた、ただ、唇を合わせるだけのおやすみのキスだ。

 

「自分で抜いてくるから、服を着替えて先に横になってろ」

「僕がやってあげるよ……?」

「いい」

チョウは、すたすたと歩いて行き、バタンとバスルームのドアを閉めた。

「何を想像してやったのか、教えてよ!」

背中を追ってきた、からかうような、ジェーンの声は無視だ。

 

 

「せまいね」

さっきから、ジェーンは身じろぎを繰り返している。

「……思ってたのより、寝にくい」

ため息も何度もだ。

「どうして、チョウは、こんな状況でさっさと寝られるんだい?」

独り言が多い。

「こんなに簡単に泊めてくれると思わなかった……」

まだ、しばらく独り言は続き、やっと隣が静かになった。

チョウは、ジェーンの寝息に合わせ、ゆっくりと自分の呼吸の速度を落としていく。

 

 

 

ちなみに、後日談。

「マジで、着たんだ。ジェーン!」

デジタルカメラの画像を見ながら、恥かき仲間が出来たことにリグスビーがはちきれんばかりの笑顔だ。

「意外、似合わないものね!」

画面を覗き込み、リズボンも笑っている。

「はい、はい。では、証拠隠滅」

いつも通り、上機嫌のコンサルタントが、するりとデジカメを取り上げ、さっさと画像を消去していく。

その笑顔の理由を知るチョウだけが苦笑いだ。

今朝、ジェーンは、自分でチョウのクローゼットに自分用のスペースを確保したのだ。しかも、そこには、紫のドレスがかかっている。

「チョウ、お前、すごいよ!」

満面の笑みのリグスビーが飛びつくようにハイタッチしてきて、チョウの苦笑はますます深まる。

「ひどいです。ジェーン、私、まだ、見てません!」

CBIはなかなか平和だ。

 

END