CJ 0.5
遅い昼食を終えたばかりのチョウとジェーンは、聞き込みのため狭い前庭を通り抜け、ドアに近づこうとしていた。
だが、その芝生には、犬がいた。
ただし、犬は、番犬の自覚がないんじゃないかと思う程、のん気な顔で眠っており、二人の足音にもまるで目を覚ます様子はない。日差しが暖かい。
「幸せそうだ」
思わず、ジェーンが声に出して言いたくなる程、目尻の下がった幸せそうな寝顔だ。
ドアを開けるために階段を昇ると、てっきり、チャイムを鳴らすのだとばかり思ったチョウの手が、急にジェーンの顔へと伸びた。避ける間もなく、両手がジェーンの顔を掴む。
「チョーウ、何するんだ、君」
ドアの前で、いきなり指先で目尻をぎゅっと下げられたジェーンは情けのない声を出す。
「もう垂れてる目じゃ、あまり変わらないな」
「悪かったね、垂れ目で」
チョウの目が、検分するように、ジェーンの顔を眺めまわす。
「残念だ。お前のじゃまるで泣き顔だ。普通の方が、まだいいな」
「何がしたいんだい?」
やっと、チョウの指が目尻から離れた。
「いいや、あの垂れ目の犬があんまり幸せそうな顔して寝てたからな。もっと目が垂れれば、お前もあんな顔になるかと思ったんだ」
チョウは、もうチャイムを押している。
ジェーンは、まるで忘れていた呼吸を、急に思い出したかのように、短く息を吸った。
「…………悪かったよ。解決を焦り過ぎた」
居心地悪げに、ジェーンは、ポケットに手を突っ込む。
「わかればいい」
「はい、どなた?」
ドアが開いた。
end