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*緊急事態
「おい、ハウス、たまにはカディの言うことを聞いて、診察しろよ」
診察室に入るなり、出てきた親友のあまりの態度に、苦笑する腫瘍学部門部長は、尻に帆を掛けて逃げ出そうとしているハウスの襟首を掴んだ。ハウスは、キっと睨んでくる。その顔に、外来受付スタッフが笑っている。
「じゃぁ、お前が診ろ!」
「なんで僕が? 今日は君が診察の日だろ? 僕は、君が逃げ出さないように見張っててくれってカディに頼まれてここにいるだけなんだよ」
スタッフは、今度、ウィルソンの言葉に笑っている。ウィルソンは、この病院を代表する優秀な医師の一人なのだ。だが、自分の思い通りハウスを扱えるたった一人でもある。
「お前は、親友の俺が死んでもいいのか!」
「はぁ?」
ハウスはまくしたてる。
「診察室いるばあさん、もう、私も、神様のお迎えが近いですからなんてちょこんと座ってやがるけどなぁ、カルテをみたら、もう3人、先に主治医の方が死んでるんだぞ。お前は俺を名誉ある4人目にしたいのか、ウィルソン!」