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*お誘い

 

妻との離婚を正式に決め、気鬱な日々も長くなったある日。

「よう! ウィルソン」急ぎ足で杖をつく、ハウスがウィルソンに追いついてきた。彼は、外来診察の時間のはずだった。

「相変わらずしけた面してるな」

「悪かったな。ほっといてくれ」

「そんなこと言うなよ。俺達、親友だろ? ジミー?」

「…………」ウィルソンは、あきれた気持ちになり、じっとハウスの顔を見つめた。ハウスは嘘偽りなく正直な気持ちで言ったのだとアピールしたいのか、大きく手を広げて、じっとウィルソンを見つめ返している。

仕方なく、ウィルソンは、ハウスのハグに応えた。「そうだ。それでいい。ジミー」ポンポンと、ハウスは背中を叩く。

「ところで、落ち込んでいるお前を励まそうと、パーティーを企画した。俺の家でやる。今晩9時からだ。お前、来るか?」

「パーティーを? 君の家で?」

ウィルソンは、何かの間違いではないかと思った。人間嫌いのハウスが、他人を家に呼び、パーティー!?

しかし、ハウスは本気のようだ。

「そうだ。 少しでもお前が楽しくなれればいいと思って」青い目が、期待を押し隠しながら、じっとウィルソンを見つめている。

「……え? ……あ、いや、うれしいよ、ハウス。 ぜひ、参加させて貰うつもりだ」

途端に、ハウスの顔が輝いた。

 

しかし、二歩も歩き出さないうちに、ハウスはいい難そうに口を開く。

「……その、ずいぶん酒を飲むかもしれない。そんなのでもいいか?」

「いいよ。僕も飲みたい気分だ。まさか、ドラッグまではやらないんだろう?」

 

だが、また、3歩も歩かないうちにハウスがウィルソンの顔をうかがう。

「…………大騒ぎになるかもしれないが、……そういうのは嫌か?」

「どうしたんだ、ハウス? 君がそんなに気兼ねするなんてめずらしい」

ウィルソンは、ハウスにそんな陽気な友達がいたこと自体、不思議な気持ちでいっぱいだった。だが、一方、もしかしたら、ハウスが自分を慰めるために、精一杯の人脈を使ったのかと、胸の熱くなる思いも味わっている。

「いや、……嬉しいよ。ハウス。騒がしいのは嫌いじゃない」

安心したように小さく笑ったハウスは、ウィルソンに軽く手を上げ、今来た廊下を戻ろうとした。だが、また、二歩も行かないうちに、急いで戻ってくる。

 

せわしない年上の友人は、切り出しにくそうに言いだした。しきりに舌が唇を舐めている。

「あの、な。……もしかすると、お前の好みじゃないかもしれないが、……濃厚なセックスって奴がそのパーティーには、付いてくるかもしれない」

上目遣いの医師の種明かしに、ウィルソンは、苦笑した。

なるほど。パーティーの相手は、娼婦というわけだ。酒も馬鹿騒ぎも、だったら納得できる。

しかし、ハウスの精一杯には違いない。

「ありがとう、ハウス」ウィルソンは、ハウスの好意に応えることを選んだ。「パーティーに、ドレスコードはあるかい?」

「いいや? 何でも好きな服で来てくればいい。どうせ、二人きりだ」