12
*ハウスの約束
その朝ブレインズボロ病院で起きたスキャンダルを、遅刻してきたハウスは知らなかった。
「おい、教えろよ。ウィルソン」
付きまとうハウスに、ウィルソンは顔を顰めた。だが、仕方なく、耳へと口を寄せる。
「外聞のいい話じゃないんだ。君はちゃんと秘密が守れるかい?」
「ああ」ハウスは受け合った。「でもな、俺の次のやつがそうかどうかは知らないぞ」
*質問
オフィスには、ハウスとチェイスの二人きりだ。
専門書を読みながらメモを取るチェイスの側で、ハウスはつまらなそうに雑誌を放る。
「なぁ、チェイス。俺は、ここひと月、ウィルソンとしかキスしてない」
部下に打ち明けるのに、ふさわしい話題なのか。しかし、ブレインズボロ病院の誇る腫瘍学部門部長と、解析医療部門部長が付き合っているのを、ハウスの3人の部下たちは知っている。
チェイスは本からちらりと顔を上げた。
「それは、ノロケですか? それとも愚痴?」
*夕べ、犯ったな!
昨夜遅く、ハウスの患者が一人亡くなった。
無口になり、ポケットに財布だけ詰め込んだ医師は、彼らの弟子に、帰っていいと一言だけ言った。
そのかたくなで、悔しげな肩を追う親友の背中を、フォアマンは駐車場で見たのだ。
「あ、おはようございます。ハウスはどうですか?」
明るい陽の差す外来受付で、ウィルソンの姿を見つけたフォアマンは、朝の挨拶と一緒に、いつも通り遅刻して姿のない彼の上司の様子を聞いた。
ウィルソンは小さく首をかしげた。
「誰と比べてだい?」