恋人の評価

 

ベッドの中は、温かく心地よく、いつまでもこのなかにいたいとぼんやりと考える頭は、自分の身体に触れる指の存在にも気付いていた。覚醒する前の肌は、表面に一枚膜でも張ったかのような、感覚の鈍さだが、その指のすることが心地いいとは感じている。

「……今、何時なんだ?」

枕に頭を埋め、目を閉じたままロバートは、ジュードに尋ねた。

「うん? まだ、早いよ。起こした?」

「うん。……好きだぞ」

目を瞑ったままで、身体だけ向きを変えると、ジュードの唇を探して、ロバートはキスした。

だが、朝の光が瞼の裏に差しこもうと、開いてない目では、目測を誤り、唇が捕えたのは、ざらざらとしたジュードの顎だ。だが、まぁ、いいかと、ひげの伸びた顎に唇を押しつけると、ロバートはそのまま首元へと顔を埋める。くすりと笑ったジュードの身体が、僅かに揺れる。

「眠い……?」

「うん、……眠い……」

ジュードの指は、さっきから、ロバートの乳首を柔らかくつまんだり、撫でたりしている。

優しい手つきで触られるのは、心地よかった。刺激に小さく勃っているそこは、ロバートにとって触られるのが好きな部分で、ジュードも弄るのが好きな部分だ。昨夜のうちなら、もっとと、求めたくなったかもしれないが、今は、まるで安心感を求めるように触れてくるジュードのやり方がちょうどいい。じゃれかかるジュードに対して、愛しさだけが胸に湧く。

首元に鼻を深く突っ込んで密着したまま、腕を伸ばしてジュードをぎゅっと抱きしめた。もしかしたら、ジュードの求める抱擁はこういうものではないのかもしれないが。

「好きだぞ。……好き」

どうしても、目が開かないのも、一緒に目を覚ましてやることができないのも、この際、許してくれとロバートは思った。腕の中にある体温があまりに心地いいのだ。寝心地の良さを求めて、更に足を絡めてみる。しっくりきた。

ジュードの唇らしきものが、そっと額に押し当てられる。

「俺も」

 

 

 

耳慣れない携帯の着信音のしつこさに、ロバートが顔を顰めたのは、目が覚めて、一瞬だった。

バシバシと、一緒になって二度寝してしまったらしいジュードの頭を叩き、大声を出す。

「ジュード、お前、今日の撮影、何時からだ!」

くそっ!と、叫ぶなり、ジュードは飛び起きた。そして、鳴り続ける携帯を掴むと、そのまま切る。

年下は、慌てて、ジーンズに足を突っ込み、バランスを崩しそうになっている。

「おはよう。ジュード、愛してるぞ」

我儘の許されるキャリアを築きながら、遅刻を嫌うのは、この年下の愛すべき性質だ。最優先でジュードの車をホテルの前まで回して貰えるよう電話で頼みながら、ロバートは笑った。

今すぐにでも、背中を向けて飛び出していくだろうと思っていたが、

「俺も!」

だが、ジュードは、上着を掴んだまま、ロバートに駆け寄ると、年上がのけぞる破目になるほど、強引に腕をまわして引き寄せ、きついキスをした。

ばんっと、勢いよくドアは閉められる。

 

 

これが、現在のロバートの恋人だ。

なかなかのもんだろう、と、ロバートは思っている。

 

END