ついーとのわとほむ(69)

 

口の中を占める太い肉の感触を味わうように、ホームズはしきりと舌を動かし、ワトスンのものを舐め続けていた。

無精髭の生えた口の周りが唾液とそれ以外のいやらしい液体でてらてらと濡れている。自分のものがワトスンに吸われるのにも、ひくひくと腰を動かしている。

この状態に、友人がひどく満足しているのが、ワトスンには手に取るようにわかった。

ワトスンの口の中にある彼のものは、少し飲み下しにくい味のするものをとろとろと漏らし始めている。その味のまずさに、ワトスンがちらりと足元にあるホームズの顔へと視線をやれば、彼は、ワトスンの金色の陰毛へと顔をうずめ、長いまつげを伏せて、熱心に舌を使っている。

少し擽ったいような舌の使い方を、ホームズはする。重い重量のペニスを受け止めている舌は肉厚でたまらない感触だというのに、勿体ない限りだと、ワトスンは時折思うのだ。

ホームズを観察するワトスンの口腔性交に手が抜かれているのを感じると、ホームズは茶色い目を開けて、ワトスンを見つめてきた。

その目には、深く澄み巨大な知能を伺わせる英知の光を感じさせるというのに、今、求めているのは、勃起した性器への卑猥な刺激だけだ。こんな時間をホームズとの間に誰にも知られず持てることに、ワトスンは、心の端でかすかな愉快を感じるのだが、同時に、ただこれだけのことに執着し、こんな簡単に堕落してみせるホームズを恨むような気持にもなった。

ホームズは、ワトスンのことを好きだと言う。

こういう許されない触れ合いを求め、誘惑するのも彼だ。いやらしく、汚れた性器を舐め、また、舐めさせ、さらに、それよりも、もっと際どい行為を望み、馬鹿な医者をたぶらかす言葉を使うのも彼だ。

ホームズは舌を動かさなくなったワトスンを、官能に火照り潤んだ目でうらむように見つめてきた。医者の目に見えるように、赤い舌を動かし、脈打つ太いもののぬめった表面を舐めていく。それでも、ワトスンの目に激情の波が立たないのを読みとると、ホームズは目をそらした。深く、口へと咥えこんだものを熱心に吸い上げ、離そうとはしない。

「……やめないぞ」

もごもごと声が聞こえる。

「知ってるさ」

「知ってるなら、僕が求めていることだって、君は知ってるんだろう。どうして、誰にでも、優しい君が、僕にだけ、こう勿体ぶるのか、その理由を考察してみたんだが、」

くどくどしくうるさいホームズの言葉を最後まで聞いているのがわずらわしくなり、ワトスンは、やめていた口腔奉仕を、再開させた。

口に含み、舌で先端の丸みの下のくびれをこするようにしながら吸い上げてやると、途端に、シーツに皺を寄せ、ホームズが腰を我慢しきれないように捩る。

「ワトスン、君は、ゆっくり僕を楽しませるという気が」

「ないね。さっさといけ」

ワトスンは、口髭のある唇をすぼめ、追い上げるように、ホームズのものをしゃぶりあげる。

ホームズは、びくびくと腰を揺らしながら、けれども、ワトスンの太いものへと舌を絡めるのをやめようとはしなかった。

 

いったのは、ホームズの方が早かった。

喘ぐようなうめき声を上げながら、それでもまだ、口へと咥えこんだものを離そうとしないのだから、たいしたものだ。

「もう、ずいぶん、味の濃いものが出てるよ。ワトスン。……もう、我慢するのはやめたらどうなんだ、君」

その嫌味と、低くかすかな呻きを伴ったワトスンの射精は、ほとんど同じだった。そのため、口を開けていたホームズは、派手に顔を汚し、頬には精液がどろりと伝っている。だが、そんな下品な行為をされて、うっとりと満足そうに、潤んだ目を細めるのもホームズだ。

「なぁ……」

露骨に、その先へと誘う声を聞かされて、医者は、手近にあったタオルを、顔をいやらしく汚すホームズへと投げつけた。

「もうしない」

「ケチだな、君は」

「もう、今日は十分につきあった」

医者の声は、必要以上に機嫌が悪い。

ホームズは、にやつくばかりでタオルを使おうとはしない。

 

「じゃぁ、恥ずかしがり屋の君のために、明日の晩、また月が雲で隠れていたら、ここで会うことにするとしよう」

手の甲で顔を拭い、ホームズは、手についた精液をべろりとこれ見よがしに舐めとった。

 

ワトスンは、青い目を険しく顰めた。

 

END

(でも、次の日も、ホームズのベッドに行っちゃうお医者さんv)